No.690533

真・恋姫†無双 ~胡蝶天正~ 第三部 第08話

ogany666さん

こちらの都合により1週間ほど投稿が遅れたこと、この場をお借りして深くお詫びいたします。
今回は女性キャラのセリフが一つもない・・・・

2014-05-31 10:52:26 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:11593   閲覧ユーザー数:7520

 

 

 

 

 

 

 

この作品は、北郷一刀の性能が上方修正されています。はっきり申しましてチートです。

 

また、オリジナルキャラクターやパロディなどが含まれております。

 

その様なものが嫌いな方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、張譲様。雍州を治める司馬懿と言う男は本当に我らの味方となりえるのでしょうか?話では洛陽を襲っている者どもに加担していると言うではありませんか」

洛陽を出て間もないところにある長安へと続く細い山道。

そこを通るにはどう見ても似つかわしくない格好をした華奢な男達。

数人の護衛と絢爛豪華な装飾を散りばめられた派手な馬車を引き連れて畦道を進んでいる。

それは洛陽宮中の実権を操っていた筈の十常侍の一行だった。

「案ずるな趙忠よ、わしが見るにあの男は"こちら側"。利があるのであれば必ず我らに寝返る」

十常侍の中心人物にして一刀達にとっての北景の仇である張譲が、隣に居る十常侍の序列二番の趙忠の不安な意見を打ち消すように返答する。

「趙忠も覚えているであろう、新平に送ったあの阿呆の件で送られてきた金塊を・・・・。あんな物を送ってこちらの機嫌を取る様な者は義で動きはせん」

「し、しかし、我らを捕らえて董卓派の連中と結託する事も考えられるのでは・・・・それに司馬家前当主である司馬防にとって我らは息子の仇、その禍根を水に流すとはとても・・・・」

「なに、我々十常侍を助けるは帝を助けると同義。肉屋の後任と帝、どちらに付くかなど考えるまでも無い。さらに司馬懿と言う男は司馬防の実の息子ではなく養子として司馬家に招かれた者と聞く。大方、家を潰さぬ為に止むを得ず招き入れた何処ぞの馬の骨だったのだろう」

「そ、そうなれば良いのですが・・・・・・ん?張譲様、あれをっ!」

張譲と話していた趙忠は道の先に数人の男達が整列しているのに気付き、その手前に更に一人、まわりの者を纏め上げていると思われる身なりの良い若い男が自分達をじっと見据えているのが目に入った。

張譲を初めとした他の者もその事に気が付き、護衛の兵士は十常侍を守る為に彼らの周囲に布陣する。

当初はこの辺を縄張りにしている夜盗かとも思ったのだが、若い男の周囲に居る全員が同じ衣類を着ており、男自身も野党にしては身なりが整い過ぎている事から違うと言う事が解る。

「お、お前達は何者だ!この馬車は天子様を長安へとお連れする為のもの、き、貴様らの様な下賎な輩が止めて良いものではないのだぞっ!」

最初に彼らに声を掛けたのは十常侍の序列で二番目でありながら、肝が据わっておらず実質張譲の言いなりとなっている趙忠だった。

気の小ささは警戒心の高さの現れ。

実際、彼の進言で清流派の動きをいち早く察知し、先手を打って潰した事は一度や二度ではない。

だがそれも度が過ぎると時としてやっかまれるのもまた事実。

彼の警戒心の高さは同じ十常侍にも及んでおり、自分達の中に裏切り者が居ないかと張譲以外を常に監視しているほどだった。

今回もその例に漏れず・・・。

「さ、さては何処ぞの州牧が送ってきた刺客だなっ!?我らの中の誰かが我が身可愛さに私や張譲様を売ったに違いないっ!」

間髪居れずに二言目に仲間を疑いだしたのである。

趙忠の言葉にざわつきだす十常侍の面々では在ったが、ある男の鶴の一声ですぐに静まり返る。

「取り乱すなっ!阿呆どもっ!」

十常侍の中心人物であり、彼らにとってカリスマ的存在である張譲だ。

「わしが何者かの手に落ちるは我ら全員の命運が尽きるも動議。そんな事も解らず内通するほどのど阿呆をわしは取り立てなどせぬわっ!」

張譲のその言葉は、都を落ち延びるなどという非常事に陥り、極度の緊張と疑心悪鬼になった彼ら十常侍を正気に戻すには十分なものだった。

彼らの崇拝にも似た眼差しが自分に向いているのを確認した張譲は、その期待に応えるように目の前に居る男達に自ら話しかける。

「先ほどは失礼した。なにぶん洛陽から天子様を安全な場所までお連れしなければならない故、こちらの者も気が立っておりましたのでな。見たところいずこかの役人とお見受けするが、宜しければ名をお聞かせ願えませぬかな?私は天子様に使える中常侍、名を張譲と申します。」

趙忠の威圧的な物言いとは対照的に、友好的な顔をしてまるで好々爺のような雰囲気をかもし出しながら男達に話しかける張譲。

それに返答したのは若い男の隣に配し、服装こそ同じものの他の男達よりも些か風格がある者。

「我らは雍州の州牧であらせられる司馬仲達様の忠実なる家臣。そしてこのお方こそ我らが主、司馬仲達様だ」

男からの返答を聞いた張譲は心の中でほくそ笑む。

彼にとってこの状況は願っても無い助け、天啓とも言える展開だったからだ。

反董卓連合に加わっている筈の司馬仲達本人が何故この場に居るのかが気掛かりではあるが、それは大事の前の小事。

ここで司馬懿を見方につけるは反董卓連合全てを味方につけるのと同じ。

董卓の勢力と呉越同舟して共倒れにならずにすむ。

「おお、そなたが司馬仲達殿か。我らも今まさにそなたが治める長安へと天子様を連れて助けを乞おうと向かっておりました。ささ、天子様の馬車の前へ」

そう言いながら張譲は司馬仲達と思われる若い男に帝の馬車の前で拝謁するように進める。

だが・・・。

若い男は彼の進めにも微動だにせず、ただじっと張譲を見据えるばかり。

「どうなされた仲達殿。天子様に拝謁するは我ら漢王朝に仕える者にとっては最高の名誉ですぞ?」

その様子を不思議に思ったのか、張譲は再度拝謁するように促す。

若い男は張譲の顔を見て口元に笑みを浮かべながら只一言・・・。

「老いたな、張譲」

見下すような口調でそう述べた。

 

 

 

 

俺のその一言を聞いた張譲は本能的に察したようだ。

"この男は自分達を捕らえるために此処に現れた"と・・・。

「衛兵!即刻あの者の頸をっ!」

張譲が護衛の兵士に命を飛ばすよりも早く俺は高らかと振り上げた手を一気に振り下ろし、後ろに居る数人と周囲に潜ませている一個分隊クラスの規模の諜報部隊に指示を飛ばす。

俺からの指示を今か今かと待ち望んでいた諜報部隊は一斉に張譲たちを守る護衛に襲い掛かる。

それはまさに、数匹の兎に大挙して襲い掛かる群狼。

宦官に飼われている私兵がかなう筈も無く、成すすべも無く命を狩り取られていく。

その様を目の前で見せられた張譲たちは帝が乗っているであろう馬車も捨て、我が身可愛さに逃げ出そうとするがそれを見逃すほど俺の兵は甘くは無い。

瞬く間に全員取り押さえられ、その場に組み伏せられてしまった。

「仲達様、状況終了いたしました」

「ご苦労」

部隊長の報告に俺は端的にそう応える。

互いに無機質な応対ではあるが、心のうちでは歓喜に打ち震えており、笑い出したくなるのを必死に堪えるのに精一杯なだけだった。

そんな俺達の耳に、憤怒の色を隠さない張譲の怒声が叩きつけられる。

「貴様らっ!天子様に仕えるわしをこんな目に合わせてただで済むと思っておるのかっ!?その気になれば天下に檄文を発して貴様らを処罰する事も出来るのだぞっ!」

今の張譲についさっきまでの人のよさそうな好々爺の面影は全く感じられず、そこには周囲の人間を威圧していた十常侍張譲の本性を露わにした姿があった。

俺は他の十常侍同様、地面に組み伏せられた張譲の眼前に立ち、有態にいえば見下ろす形で話しかげる。

「十数年会わない間に外見もそうだが頭の中身まで老け込んだようだな、張譲」

「一体何者だっ!?貴様のような若造に十数年も前に会うわけなど・・・・・っ!!?」

どうやら張譲は十数年という単語を自ら口にしたことで、俺の正体に思い当たったと見える。

それを口に出さないのは、恐らくそうであって欲しくないというこいつの願望の現われだろう。

俺はその願望を打ち砕くべく、腰に差した正宗を抜いて見せながら北郷として顔を合わせた最初で最後の時のことを口にする。

「霊帝陛下の御前、この刀を持ってお前の顔に泥を塗って以来だな・・・・張譲」

「・・・・やはり貴様か・・・・確かに、この張譲も老いたいたか。追い詰められたこの瞬間まで司馬仲達の正体に気が付かんとは・・・」

「お前が俺の正体に気が付かなかったかも容易に想像が付く。対極ではあるがお前はある意味では我が実父、北景に似ている。濁流派と清流派"白と黒をはっきりと分けて考えてしまうところ"は特にな。だから俺の様な灰色の存在に足元をすくわれる」

「白と黒を分けて考える、か・・・・・言う通りかも知れんな。貴様が賄賂を送ってきた時点で、わしは司馬仲達があの男の息子である可能性を除外しておったわ」

是非も無し。

俺の正体を突きつけられ自らのことを語る張譲から感じるのは、小悪党のような往生際の悪さではなく、敵将に討たれる前の名軍師の風格。

組み伏せられながらも、体を小刻みに震わせて自らの死を受け入れるのを拒んでいる他の十常侍と比べても、その格の違いが解る。

「漢王朝を権威を衰退させ、存亡の危機にまで追い込んだお前らの罪。死を持って償ってもらう」

「・・・・」

形式ばった俺の台詞に張譲は反応せず、ただ地面に突っ伏したまま一点を見ているように見える。

もう貴様と語ることなど何も無い。

そう言わんばかりの姿に俺も自分のやるべきことを取り掛かる。

「先ずは天子様がご無事であるかを確認しないと・・・・」

そう言いながら俺は張譲たちが護衛していた皇帝御用達の馬車へと足を進める。

「天子様、私めは雍州の州牧にして西園八校尉が一人、司馬仲達と申します。火急の事態ゆえ、その御身のご無事を確認させて頂きます」

乗り口の前から話しかけているため、聞こえていないと言うことは無いはずだが馬車からは何の返答も帰ってこない。

それどころか、中にいる人物が反応した様子すら感じ取る事が出来なかった。

「御免」

おかしいと思った俺は御者が据わる場所に足を掛け、前に掛かっていた簾を退けながら中を覗き込んだ。

「これは・・・・」

違う。

俺は現皇帝である献帝に会ったことも無いし顔も知らない。

だが目の前に居る彼女は違う。

はっきりそう断言できる。

だって彼女は・・・・。

いや、彼女達は・・・・。

「張譲、何故ここに董卓と賈詡しか居ないっ!?天子様を何処へやったっ!?」

今目の前で意識を失い、身動きを取れないように縛られている彼女達とは前世で一度会っているのだから。

董卓の身柄が張譲たち十常侍の手中にある可能性は想定していたが、帝が奴らの傍に居ないのは想定してはいなかった。

俺は張譲に対して帝が何処に居るのかを問いただすが・・・。

「・・・・」

この問いに対しても奴は一切の反応を示さず、俺からただ顔を背けたままだった。

埒が明かないと感じた俺は部隊長から今現在の持っている洛陽の情報を聞いて自分なりの結論を出す作業に入る。

「洛陽では献帝様を確認出来ていないんだよね?」

「はい、後宮にまで部下を潜り込ませましたが、その姿を確認する事は出来ませんでした」

「諜報部隊が董卓を見つけられなかったのは、本格的に潜入する前の段階からこいつら十常侍の手によって誘拐されていた為か。確か潜入した時期は反董卓連合が虎牢関へと軍を進める数日前だったね?」

「はい・・・」

自分達の不甲斐なさを気に掛けてか、本当に申し訳なさそうに返答する部隊長。

だがそれも潜入した時には既にこの馬車内に軟禁され、宮中に居なかったのだから仕方が無い事だ。

ん?

待て。

宮中に居なかった・・・・。

まさかっ!?

「張譲、皇帝の権威をより自在に使う為に天子様を手にかけたなっ!?」

俺が思い至った結論、それは至極単純なものだった。

曲がりなりにも大陸最強と自負している俺の諜報部隊が、宮中という狭い範囲で数日経っても帝や董卓たちほどの要人を見つけることが出来ないなどあるだろうか?

否、ありえない。

ならば行き着く結論は只一つ、三人は既に宮中には居なかったと考えるのが妥当だ。

少なくとも十常侍たちと対立している董卓たちは呂布や霞に指示を出した時までは宮中に居たのだろうが、諜報部隊が宮中内に潜り込んだのはそれよりも遥かに後のこと。

その間に十常侍によって拉致され対立している董卓派に対する人質として秘密裏に連れ出されたのであれば、誰もその姿を宮中で見つけ出すのは不可能だ。

そして帝の姿が無いにも拘らず、何故その権威を振りかざしている十常侍が誰一人として騒がないのか。

安全な場所に帝の身柄を移動させたからか・・・。

それも違う。

この状況下の洛陽で自分達の傍以外に安全な場所などあるはずが無い。

洛陽以外の場所に既に移動させていたと言うのなら十常侍は真っ先にそこに向かうだろうが、俺の統治下にある長安でそんな不穏な動きがあれば瞬く間に諜報部隊に察知されて報告が上がってきている筈だ。

ならば結論は只一つ。

何進が暗殺され、劉協が皇帝に即位したのとほぼ同時期に殺害し、あたかも帝が居るかのように十常侍が振舞っていたという事だ。

「何進を暗殺した折に妹の何太后、その息子で曲がりなりにも皇帝だった劉弁も毒殺したのは報告で聞いていたが、まさか自らの権威の象徴で自分達が指示していた献帝すらも手に掛けていたとはっ!何故殺したっ!?張譲っ!」

「・・・・・・くっ・・・・・くっくっくっくっく」

顔を背けて何の反応も示さなかった張譲だったが、俺の顔を見ながら不敵な笑みを浮かべだす。

それは先ほどまで見ていた相手を威圧する様でも、自分の最後を悟った大物ぜんとする風格でもない。

地に這い蹲りながらも相手を見下す、傾国の悪魔と言わんばかりの様相だった。

「くっくっくっくっく、はっはっはっはっはっはっ!!全ては貴様が悪いのだぞっ!顔に泥を塗られたあの一件でわしは思いついたのだっ!必要なのは帝の権威であってその存在ではないっ!ならばいっそこの世から消してしまえば我らの意にそぐわぬ下知など下らぬっ!ご加減が宜しくないと言うだけで上奏を持ってくる役人どもは何の疑問も持たずに信じおったわっ!はーっはっはっはっはっはっ!」

「・・・・・」

「そうだっ!もう帝など必要ないっ!わしが大陸に勅命を発すれば全てが丸く収まるのだからなっ!貴様もわしを敬えは大将軍に任命して─────っ!」

ゴロン

「いい加減にその口を閉じろ・・・・」

それ以上、張譲が不快な言葉を紡ぐ事は無い。

奴の頭は既に胴体から離れ、頭一つ分横に転がっているからだ。

今、奴のまなこには頭を飛ばされた自分の首から鼓動が脈打つたびに噴き出す鮮やかな紅血が映っているだろう。

「ちょ、張譲様ぁ!」

「張譲様の首が・・・・ッ!」

「ヒイィッ!」

目の前で張譲の頸を飛ばされ、恐怖心から顔を引きつらせる十常侍たち。

恐らく舵取りをしていたのは張譲で、他の者達はそれに追従する日和見な連中だったのだろう。

だが、張譲に付き従っていた以上こいつらも同罪。

「そいつら全員の頸を刎ねろ。見分けが付くように成るべく綺麗にな」

「御意ッ!」

「助けてくれっ!全ては張譲がやっていた事だっ!わ、私は悪く無いっ!」

「私もだっ!そ、そうだっ!私の私財を全てやろうっ!屋敷には貴重な宝物が幾つもあるぞっ!」

無様に命乞いを始める十常侍たちだが手心を加える気など毛頭無い。

こいつらが送り込んだ地方官の重税に苦しめられた大陸中の民、虐げられて命を落とした者達はこいつら以上に生きたかった筈なのだから。

ザッ!

ゴト

「ヒッ・・・・・い、嫌だああぁぁああぁぁっ!死にたくないっ!死にたくないぃぃいいいぃぃぃいいぃぃっ!」

仲間の頸が転がるのを目の当たりにし、自分も今から同じ運命を辿る。

その現実を心が拒絶した十常侍の一人が発狂して暴れだす。

だが宦官という一役人程度の力では、屈強な諜報部隊の手から逃れる事など出来ず、身動きが取れないように足と腕を切り落とされてから頸を刎ねられるという無残な結末を迎える。

その姿を見た残りの十常侍どもは声を発する事すら出来ず、大きく目を見開きながら下を向いて顔中から汗を流していた。

 

 

 

 
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