No.68295

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~ 第4幕

覇炎さん

この作品の北郷 一刀は性格が全く異なりますのであしからず。
 仲間には優しいですが敵と判断すると最低です。
 主に落とし穴に嵌めたり、縄で逆さ吊りにしたりと…。しかも、いつ仕掛けたのかも解らないほど鮮やかに。
 強さは武将達と渡り合えるくらい。
しかし、武力が全てはない。

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2009-04-12 01:05:46 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9183   閲覧ユーザー数:6823

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~

第4幕「今の俺に前振りは…ねぇ!」

 

 

 

行軍中の事であった。春蘭が前方に大人数の集団がいるので、打ち合わせするから華琳が呼んでいると聞き、一刀、秋蘭、桂花は華琳の下に赴いた。

 

華琳のいる所に着くと同時に斥候が戻ってきたので、報告を聞くと『前方集団は、数十人ほど。旗が無い為所属は不明ですが、格好がまちまちな所からどこかの野盗か山賊だと思われます』との事。

 

 その報告を聞き、桂花が出した結論はもう一度、偵察部隊を出す事。

 

 

「夏候惇、北郷、あなた達が指揮を執って」

 

「おう、って何故北郷まで!?こ奴が居っても役にもたたんだろ!」

 

「そうだけど、あんたの抑え役にくらいはなるでしょ。北郷もいいわね?」

 

「…了解」

 

「どうしたの、一刀?」

 

「別に…馬に酔っただけだ」

 

「貧弱ね」

 

「あぁ、そうだな」

 

 

 桂花の悪口にも大した反応せずに、そそくさと馬に乗り走らせる。春蘭も部隊を纏め出撃した。

 

 

春蘭の馬が一刀に並んだ時、一刀はある事を尋ねた。

 

 

「なぁ、春蘭」

 

「なんだ?」

 

「これから、向かう集団…もし敵だったらどうするんだ?」

 

 

 出来る事なら、今考えている事と違う回答であってほしい、っと願う一刀だったがその願いは。

 

 

「敵なら“殺す”。当然であろう?」

 

「そうだよな…悪かった変な事を訊いて」

 

「うむ。まったくだ」

 

 

 無残にも打ち砕かれ頭を垂れる。それを見た春蘭はまさかと言った表情で言う。

 

 

「北郷、お前…恐いのか?」

 

「!?」

 

 

 春蘭の言うとおり、一刀は恐れていた。人を殺めるという行為に…

 

 こちらに来た当初は『夢』だと思っていた為、人を殺める行為に何の躊躇い・疑問も持たなかった。だから、華琳に『盗賊の討伐に協力しろ』と言われても『夢』の中の登場人物が死ぬだけ、っと考えていたが朔に『これは現実』と言われてから自分の中で戸惑いが生まれているのが分かった。

 

 そして、今やろうとしているのは討伐。人殺し行為だ、人がなんて言おうとそれは己が手を血に染める事。今となって震えだしている一刀に春蘭は独り言のように呟く。

 

 

「確かに怖いだろう。しかし、そこを割り切らなければ食われるのは自分だ」

 

「!?…割り切る」

 

 

 頭を上げ春蘭の方を向くとそこには将軍としての春蘭がいた。一瞬見とれていたが直ぐに目を瞑り心の中で春蘭の言葉を何度も復唱する。

 

 

「(こちらに来てから説教されたり、魅入ったりすることが多いがそれだけこの世界が生きているってことなのかな?)」

 

「ありがとな、春蘭。気を使ってくれて」

 

「なに、副将がそれでは士気にかかわる」

 

 

 普段は単純な奴と思っていたが、しっかりと人に気を使えれるのかと感心する一刀。

 

 

「安心しろ!いざとなったら守ってやるから」

 

「あぁ、まも…なに?」

 

 

 それも束の間。春蘭が何の事を言っているのか分からない一刀の反応に疑問を抱く。

 

 

「んっ?お前、盗賊に怯えていたのではないのか?」

 

「いや、違うけど」

 

 

何か噛み合わない気がして問い直す一刀。

 

 

「春蘭」

 

「おう」

 

「俺が何に怯えていると?」

 

「盗賊に」

 

「…何を割り切れと?」

 

「?天の国ではどうだったかは知らぬが、華琳様に“軍師”という立場を頂いた以上はしっかりと励めよ、そうしないと“軍師”という名の怪物に食い殺されるぞっと」

 

「…あはは」

 

 

 なんという誤解スパイラル。ある意味春蘭には勝てないと思う一刀。しかし、嬉しそうな笑顔をして礼をいう。

 

 

「(これはこれで靄が薄くなったような気がする)ありがと春蘭」

 

「なんだ、さっきから礼ばかり言いおって。ふんっ」

 

「それより、前方にいる集団は傭兵かも知れないから無闇に突っ込むなよ?」

 

「なめているのか!?そんな迂闊な事はせん!」

 

「やりそうだから俺が付けられたのだが?」

 

「むぅ!?」

 

 

 春蘭をからかい遊んでいると、一人の兵士が目標が見えた事を報告してきた。一刀も前を見ると、集団が一箇所に固まって騒いでいるように見える。そこから何かが飛んでいるように見え、近づくごとにそれははっきりとみえる。

 

 

「人だな、なにかと戦っているようだな」

 

「人だね」

 

 

 反応が薄い二人だが、一刀に至ってはこちらに来た際にデブの盗賊を蹴り上げているので対して驚くことはなかったが、兵士の報告を聞き春蘭が駆け出し一刀も兵士に何かを頼んでから後を追う。

 

『誰かが戦っているようです!その数…一人!それも“子供”です』

 

 

一刀が追いついた時には春蘭が盗賊を追い払っており、追撃をかけようとして止めに入る。

 

 

「ばっ……北郷、なぜ止める!?」

 

「俺達の任務は偵察だ。その子を助けるのは良い事だが敵を殲滅するな…他にやることがあるだろ?」

 

「例えばなんだ!?」

 

「逃がした敵を追跡し、本体の居場所を掴むとか!もう、追跡は出したから兵は呼ばんでいい」

 

「き、貴様にしては中々やるな」

 

 

 

 恥ずかしそうに答える春蘭は放っておき少女の方を見る。

 

 

「にゃ?」

 

 

 桃色の長髪をリボンとゴムで二房にし、薄桃の袖無し上着に活発を意味する短パン。腰と両脇、左肩には軽装な鎧がついていた。純粋な黄色の瞳で一刀を見ていたが、それよりも気になったのは少女の後ろにあった物。

 

 

「ねぇ、それ君の物?」

 

 

 一刀は少女の後ろにあった“どでかい棘つき鉄球”を指差す。少女は手に持つ鎖を引くと鉄球が動く。すげーっと驚いていると後ろから多くの馬の蹄の足音が聞こえる。

 

 

「一刀、謎の集団は?」

 

 

 そして、一刀は華琳の方を向く瞬間見た。少女の顔がゆがむ瞬間を。

 

 

「結局、報告通り盗賊の類のようだ」

 

「そう。なら近いということかしら」

 

「あのー」

 

 

 二人が話をしていると割って入るように少女が入ってくる。疑問に思った華琳が春蘭に詳細を尋ねる。春蘭が言うには報告にあった盗賊と戦っていた子供とはこの子らしい。

 

 

「おねーちゃん達、国の軍隊?」

 

「そうだが…!華琳様!?」

 

 

 春蘭が答えると共に華琳に向い鉄球が飛んで行く。それより速く春蘭が華琳を抱き抱えその場から離脱する。

 

二発目に備え構えるが、鉄球はさきほど華琳がいた場所より少し前で陥没しており、離脱しなくても華琳に届く事はなかったろう。少女の方を見ると一刀が『朔夜』を抜き、鎖と鎖の継ぎ目に通してそのまま地面に深く刺す。呆気取られている少女の手を取り引いてバランスが崩れた所で足を払い、押し倒す。その行動に睨んで来るが別に気にしている様子はない。

 

 

「悪いけど出会ったばかりの人を信用するほどお人好しじゃないんだ。どうして華琳に攻撃したんだ?(俺が言える立場じゃないけど)」

 

「国の軍隊なんか信用できるもんか!ボク達を守ってもくれないクセに税金ばっかり持っていって!だから、村で一番強いボクがみんなを護るんだ。盗賊からもお前達…役人からも!!」

 

「違う!!!」

 

 

 駄々っ子のように暴れる少女に一刀が一喝し、黙らせる。

 

 

「華琳は…曹操は陳留でそんな政治をしていない!」

 

「えっ?曹操…様?それに陳留って山向こうの!?」

 

 

 行軍中、桂花と秋蘭にこの地域の事は聞いていた。ここは華琳が納める土地ではない為、華琳は其処の政策に口出しが出来ない。今回だって盗賊追跡の名目で遠征して来ているだけだと。

 

 

「そこまでよ!一刀、その娘と話がしたいから引きなさい」

 

 華琳はゆっくりと歩いては来るが纏っている覇気は尋常じゃない物だった。一刀が退いた後も少女はその気の中てられたのか動く事が出来なかった。

 

その後、華琳がとった行動は少女に頭を下げる事だった。春蘭・秋蘭・桂花、勿論一刀ですらその行動には驚いた。

 

 次にお互いに自己紹介を行い相手が許緒〔(字:仲康)〕言う事が分かった。許緒は相手が曹操と分かると謝罪してきた。陳留の刺史はいい人と聞いていると。

 

華琳は許緒の所業を許した。

 

 

「今の国が腐敗しているのは、刺史である私が一番知っているもの。官と聞いて許緒が憤るのも当たり前の話だわ。だから…あなたの勇気と力、この曹操に貸してくれないかしら?」

 

 

 そして華琳は許緒に自分の仲間にならないかと誘いをかけた。その誘いに戸惑う許緒に華琳は自分の未来図を話した。『自分はいずれこの大陸の王となる。けれど、今の自分の力はあまりにも少なすぎる。だから…村を守る為に振るったあなたの力と勇気。自分に貸して欲しい』と。

 

 許緒はそんな華琳の覇気に飲まれそうになりそうになりながらも『王様になったら僕達の村も守って盗賊もやっつけてくれますか?』と。

 

 そんな質問に華琳は満面な笑みを浮かべ、一刀は答えなど分かりきっているだろ?という顔で行く末を見つめている。

 

 

「約束するわ。陳留だけではなく、あなた達の村だけでも無い……この大陸の皆がそうして暮らせるようになる為に、私はこの大陸の王になるの」

 

 華琳の言葉を噛締める許緒。その時、偵察に出していた兵が戻り盗賊共の本拠地の場所が分かった。そして、華琳はその盗賊団を根絶やしにすることだけでいいから力を貸して欲しいという、要求に二つ返事で返し春蘭・秋蘭の下に付き曹操軍は再び行軍を始めた。

 

 

 

 

 許緒と出遭った場所から少し行った処の、山の影に隠れるように盗賊団の砦があった。

 

 

「ほぉ、盗賊のくせに考えているな」

 

 

 斥候が逃げた盗賊を見失えば、きっと見つけ出す事は困難だっだろう。こんな場所を見つけ出した盗賊を称える一刀をおいて他の皆は軍議を始める。一刀もしっかりと耳のみはきちんと傾ける。

 

 

「敵の数は把握できている?」

 

「はい。およそ三千との報告がありました」

 

「我々も隊が千と少しだから、三倍ほどか……。思ったより、大人数だな」

 

 

 秋蘭の報告に春蘭が少し肩を落とすが、逆に桂花は口の端を吊り上げ華琳に敵について話す。

 

 

「もっとも連中は、集まっているだけの烏合の衆。統率も無く、訓練もされておりませんゆえ……我々の敵ではありません」

 

「だが、策はあるんだろ?華琳だって糧食の件を忘れるはずないだろうし…では我らが軍師殿、兵を損なわずに戦闘時間を短縮する策を授けて下さいな?」

 

「くっ、あんたに言われるまでもないわ!今から、この私の見事なまでに上手くいく策を授けてあげるから、然りとその腐った脳みそに叩きつけなさい!?」

 

「(脳みそが腐っていたら覚えられないでしょ)はーい」

 

 

 いきなり話に割り込んだ挙句、自分のセリフまで取った一刀に怒りの視線を向けながら怒鳴る桂花。すぐに華琳に向きなおり懇切丁寧に自分の策を説明し始めた。

 

 桂花の策とは、先ず華琳が少数の兵を率い、砦の正面に展開。その間に春蘭、秋蘭の二人は残りの兵を率いて後方の崖に待機。本隊が銅鑼を鳴らし、盛大に攻撃の準備を匂わせれば、その誘いに乗った敵は必ずや砦から出てくるはず。その後、華琳は兵を退き、十分に砦から引き離した所で……春蘭と秋蘭が、敵を背後から叩くというものだった。

 

 桂花は『どうよ?』と言いたげな自信に充ち溢れた視線を送っていたが、彼女の提案した案に食いついてきたのは一刀ではなく春蘭の方であった。

 

 

「ちょっとまて。それは何か?華琳様を囮に使うということか?」

 

 

一刀もそれは考えた。しかし、華琳の性格を考えるとこの案は乗ると思っている。しかし、そんなことお構い無しに桂花と春蘭の討論(口喧嘩)は激しくなり、『華琳様にそんな危険な事はさせん!』とか『なら貴女には、他に有効な策が?』など、終いには『烏合の衆なら、正面から叩き潰せばいいだけだ!』という始末。最後の発言には皆呆れかえり、溜息を吐く。

 

取敢えず、春蘭の説得を試みる一刀。

 

 

「春蘭、確かにこの案ではお前の大事な大事な華琳様が危険になるかもしれない」

 

「北郷!貴様もそう思っ…」

 

「その前に桂花尋ねたいことがある」

 

「なによ?夏候惇みたいくだらない事でいでしょうね?」

 

 

 早とちりする春蘭の前に片手を出し静止する。桂花の視線も痛い為、少し早口で話す。

 

 

「敵がこちらの策に乗ってこなかった場合の次善の策は?」

 

「馬鹿にしてんの!?あるに決まって…!」

 

「それじゃ、それを華琳に話しておいて。念の為にね」

 

 

 そして、再び不機嫌そうな春蘭に向きなおり自分の考えを話す。

 

 

「いいか、春蘭?これだけ勝てる要素があるにも関わらず、囮の一つも出来ない大将じゃ兵は不安になるだろう。増してや華琳はこれから覇道を歩むんだぞ?」

 

「ここで囮の一つも出来ずに覇道など歩める事など出来ない……そう言いたいのでしょ、一刀?」

 

「…あぁ」

 

 

 

 大将という言葉に自分を重ねているのか、唸り始める春蘭。もう一押しで丸め籠めると華琳を引き合いに出すが、肝心な部分は本人に言われてしまいふてきされたような返事をする。それが可笑しかったのか、華琳と秋蘭は口元に手を当て微笑し、桂花は二人の影に隠れながら意地悪そうな笑みを浮かべていた。

 

 

「こういう時の為に、一刀…彼がいるのよ?いざとなれば盾ぐらいにはなるでしょ?」

 

 

 それに付け加えるかのように華琳は春蘭に釘をさすがまだ納得がいかない用などで許緒も付けるという事で納得した。

 

 それぞれの持ち場に就く際、華琳に『貴方の実力…見極めさせてもらうわ』と言われ、『その眼でしっかりと俺の勇姿をやきつけろ』と冗談めいた笑みを浮かべると、華琳も小さく笑ったが直ぐに桂花の策を開始する為に兵に持ち場に付くように指示を出していった。

 

 その後、春蘭達の隊が離れていき華琳の傍に残っているのは、一刀、桂花、許緒。そして兵が少数。

 

 

「(桂花の策はきっと成功はするとは思うし、いざとなったら春蘭達が駆け付けるだろうが……)不安だな」

 

 

 一刀はそう囁くともう一度、周りを見渡す。しかし、いくら数えても今ここにいる人数が変わることは無かった。そんな行動を不思議に感じたのか許緒が心配して話しかけてきた。

 

 

「どうしたの、兄ちゃん?」

 

「(兄ちゃん?)許緒か、…さっきはごめんな?倒した上に怒鳴っちまって」

 

 

 先ほどの事を思い出して謝る一刀に許緒は気にしなくて良いよ、と言ってほほ笑む。それと同時に自分の真名―季衣―を呼んで良い事を許してくれた。

 

 

「そう言えば自己紹介してないな?俺は北郷 一刀で天の御遣いだ。今は華琳の下で仮初め軍師兼、護衛みたいな者だ。言う必要は無いけど敬語は不要だぜ?俺も今日から華琳に仕えているからな」

 

「そっか、兄ちゃんも華琳様の護衛…それって大役だよね?」

 

「まぁ、大将の首を取られれば軍隊は総崩れになるからな。でも気にすんな!」

 

「わぁ!に、兄ちゃん!?」

 

 

緊張と不安で下げている季衣の頭を、満面な笑みを浮かべてグリグリと撫でる。

 

 

「実はな、俺も今回が初陣って奴でな…緊張していたんだが今はさほどしていない」

 

「にゃ、どうして?」

 

 

 緊張を解してやろう、っとおどけて見せる一刀に質問する季衣。そして先ほどと同じ笑みをして…。

 

 

「お前がいるからだよ、季衣。一人じゃ出来ない事でも、二人いればそれ以上の事だって出来るはずさ!だから緊張すんな」

 

「……ふぇ!!?あ、ぅ、あぅ~。そうだね、それじゃすぐに行動しなきゃ!華琳様の所に行くね!?じゃ、じゃあね」

 

 

 真っ赤になり猪のような速さで華琳の方に向かったった季衣を見送った後、盗賊がいる砦を遠目で眺める。

 

 

「初陣…か。これから戦が……殺し合いが始まるんだよな?」

 

 

その一刀の横顔はさっきとは逆に陰りのついた物になっており、一人事の様にそう呟いた。

 

一刀だって争いが嫌いな訳じゃない。道場の門下生が居なくなった後、夜中でも街中を徘徊し絡んできた愚者を素手で潰しそれで味をしめて、寧ろ逆に喧嘩を売っていた位だ。まぁその後、地獄と書いて説教と読ませる祖父・『北郷 小十郎』に絞められたが。

 

 

『こうなっちなったのも俺のせいだしな。俺が直々に説教(地獄)をして(見せて)やろう。一刀、俺は最初から最後までクライマックスだぜ?』

 

 

 その後の事は精神防衛の為、封印してある。ただ、疑問なのはどうやってあの小十郎を下したのだろうか?

 

 

 それはそれとして、一刀も喧嘩はした事あっても“殺し合い”などは皆無。現実でやろうとも思ったことは無い。朔の一件さえなければ、『夢』と思い込んで殺す事も出来たろう。

 

 

「(いや、夢だからって出来るとも…)…ああ、全く!どんどん深みに嵌まっていく。『夢』だと思い込みたいのに『現実感』大きくなっていくし…朔!!おめーのせいだ…って、朔?」

 

 

 一刀は混乱してきた為に髪を掻き毟り、宝刀『朔夜』を睨む。しかし、その『朔夜』から何か“どす黒い蒸気”が発っていた。

 

 恐怖感から捨てたいが好奇心が勝った為に『朔夜』抜刀した…瞬間。

 

 

〈やっと抜いて下さりましたな!!ロリコンマスター!!〉

 

「~~!!耳が!」

 

 

 人工精霊(疑似人格)である朔の罵倒が大声で飛んできた。一刀も近くにいた為に耳鳴りが起こった。しばらく、罵倒が続いた。

 

 人口精霊曰く、

 〈『望月』に納まっている間は、話は聞こえても話す事が出来ないし、自分で抜刀する事も出来ないのですよ!?アホマスター〉

 〈マスターが氣さえ使いこなせれば抜刀しなくても、氣の波長を合わせて話す事が出来るのですから、とっとと覚えやがれですよ!軟派マスター!〉

 〈別につまらないとか、寂しいとか、私欲で言っている訳じゃないですよ!?マイスター〉

 

 だそうだ。少しして、やっと落ち着いた朔は落ち着いた物腰で一刀に先ほどの返答をした。

 

 

〈『現実感』が大きくなっているのならいっその事、受け入れたらどうですか?〉

 

「だが、それは…」

 

〈自分が“人殺し”になってしまう、ですか?〉

 

 

 いくら敵と判断したら容赦ない一刀でも、飽く迄も撃退する度合であり、殺すまではいかない。今、彼の中では“人殺しになるかもしれない”、そのような考えが渦巻いていた。そんな時だった、朔が呟いたのは。

 

 

〈『確かに怖いだろう。しかし、そこを割り切らなければ食われるのは自分だ』。…良い言葉ですね〉

 

「…それ春蘭が言っていた」

 

〈北郷 一刀、いい加減に覚悟を決めなさい〉

 

「!!?」

 

 

 今まで悪口は言っても敬語だった朔がいきなり命令口調になり、驚く一刀にお構いなく話を続ける。

 

 

〈この物語[道]を選んだのは貴方でしょう?貂蝉がどのような問いをしたかは知りませんが、選んだ以上その道を行きなさい。それが嫌なら、自分で書き換えなさい。夏候惇は勘違いしてあの言葉を言ったのでしょうが、貴方は自分なりの問いとして受け止めたのでしょ?〉

 

「……」

 

〈私は『殺すな』などとは言いません、それは偽善です。いいですか?ここはもう外史で、貴方の概念が突き通る事など有りません。この世界では生きる事、それを助けることが正義なのです。もし、それが悪だというなら……ここで盗賊に食い殺されなさい、北郷 一刀〉

 

「………」

 

〈もっとも、これは私の意見ですからお好きなように。最後に…覚悟を決めて殺せば正義、覚悟なしで殺せばそれこそ“人殺す鬼”となるでしょう〉

 

 

 一刀は下を向いたままじっとしていた。それからどれ位経ったかは分かりはしないが、作戦開始の合図が出てないのでたいして経ってはいないだろう。一刀が朔に訊いた。

 

 

「朔、お前が言う“覚悟”ってなんだ?」

 

〈自分の正義の為に他者を殺し、その十字架を背負って生きていく事です〉

 

 

 一刀の問いに即答する朔。それを聞くと顔を上げる一刀、しかしその顔は生き生きとしていた。『朔夜』を掲げ、朔に今の自分に出来る最高の返答をする。

 

 

「悪い、やはり今の俺にはこれを“現実”として受け止める勇気も覚悟は無い」

 

〈そうですか〉

 

「だけど…」

 

 落胆したように声を出す朔。しかし、そんなこと気にせずに続ける。

 

 

「自分の正義の為に他者を殺し、その十字架を背負って生きていく、その覚悟はする…いや、今した。そして、何時かはこの世界を“現実”として受け止めるから…それじゃダメか?」

 

〈ダメでしょう〉

 

 

 またも朔の即答に沈みかける一刀であったが、直ぐに〈ですが…〉と付け加える。

 

 

〈ですが、覚悟が出来た所だけでも良しとしましょう。この世界を“現実”として受け止め、尚且つ我が身滅ぶその日までお供しましょう。マイスター〉

 

 

 今の一刀の感情を一言で言い表すなら―感動―それしか言えない。本当に認めてもらえた訳では無いが二人の関係が少しだけ前進したように感じた。それから桂花より罵倒付きの集合命令がかかった。

 

 

 

 

 

 華琳の下に戻るとすぐに激しい銅鑼の音が響き渡る。同時に盗賊達の野太い声が響き渡る。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

響き渡る。

 

 

「……これも桂花の策?これは予想できなかった…恐ろしい子?」

 

〈……いえ、相手が貴方同様の無知無能なのでは?下郎マスター〉

 

 

 響き渡る銅鑼の音はこちらの軍のもの。しかし、何を勘違いしたのか城門を開けて飛び出してきた盗賊。それに呆れる桂花と華琳の横で『朔夜』を少し抜刀して朔が喋れる状態にし固まる一刀。それを横目に敵に過小評価を下す朔。

 

 盗賊達は今の銅鑼の音を出撃の合図と勘違いしたらしく、さすがの桂花も想定外だった様子。華琳は華琳で挑戦の言葉を考えていたらしく、しょうがないので次回の討伐に回す事にしたようだ。

 

 一刀は取敢えず、敵の状態と砦の様子を確認し華琳に報告する。

 

 

「華琳、桂花、盗賊どもはなんか勢い任せで突撃しているみたいぞ?砦の上に弓兵らしきもの影も見当たらない。俺的に全員で突撃してんじゃないかと」

 

「ここから見えるの!?」

 

「眼は良いんだ。この距離なら煉瓦の数は数えられないが、人の顔ぐらいならはっきりと」

 

〈(人の顔が見えるなら煉瓦の数くらい数えられるでしょうに。きっと、面倒臭いだけでしょう)

 

 

 驚く華琳に胸を張り自慢する一刀。一刀がいる所から盗賊の砦まで大体7,800メートルは離れており華琳ですら見えないほどだ。

 

 季衣が敵が近づいて来た事を知らせてくれた為、華琳は自分の隊に命令を下す。

 

 

「まぁいいわ。多少のズレはあったが、予定通りにするまで。総員、敵の攻撃は適当にいなして、後退するぞ!」

 

 

 華琳が先頭に立ち皆を先導する中、一刀は華琳の少し離れてついて行き、一定の距離を保つ。敵に弓兵がいたように見えなかったが、盗賊の隊列がしっかりしていない為に何か、若しくは誰かと重なり見えなかったという可能性も捨て切れない。その為、何かあればすぐに迎撃出る距離を保つ。

 

 走る。走る。しかし、一向に敵の殿が中々見えないのか春蘭達が奇襲したという報告が来ない。華琳もおかしく思ったのか、一刀に当たるかのように訊いてきた。

 

 

「一刀!奇襲の報告はまだなの!?」

 

「まだだよ。そう、当たらないでくれ…」

 

「苛立ってなんかないわ!」

 

 

 明らかに苛立っている華琳の暴言を適当に流しながら敵を警戒する一刀だったがふと気になった事があった。

 

 

「(敵に装飾がバラバラだとは言っていたがあの白装飾どもも盗賊か?)」

 

 

 大群の中に、白い服を着た者ちらほらと見える。他の盗賊は大して気にしてないようなので、こちらが気にしてもしょうがない。

 

その時だった。盗賊に混乱が走ったのか、突進力が弱まり暫くして兵士より奇襲の成功の報告が入ったのは。それを華琳に報告すると口の端を緩める。

 

 

「さすがは秋蘭。うまくやってくれたわね」

 

「春蘭さまは?」

 

「敵の横腹あたりで突撃したくてたまらなくなっていた所を秋蘭に抑えらていたんじゃないの?」

 

「さて。おしゃべりはそこまでになさい。この隙を突いて、一気に畳みかけるわよ」

 

 

 季衣の質問に毒舌で答える桂花が答えその横で一刀がウンウンと、首を縦に振る。そして、華琳がどこからか大鎌『絶』を取出し、締め括るかのように大きく振りかぶる。その姿はまさに王の姿と言えよう。

 

 

「季衣。貴女の武勇、期待させてもらうわね」

 

「わっかりましたー!」

 

「で、一刀はどうするの?」

 

「お、俺?俺はお前の身を守る為にここにいるんじゃないの?」

 

 

 不敵な笑みを浮かべる華琳にいやな気配しかを感じ、背筋が凍りつき後ずさる。

 

そして、一刀に取って死刑警告に近い物を華琳は言い渡す。

 

 

「今回は正直言って、危機感と言う物を感じないから貴方も戦場に行って盗賊どもを“殺して”きていいわよ?」

 

「……」

 

 

 今、戦場の中にいるというのに一刀の耳には何も聞こえてはいない。ただ、華琳の言葉のみが頭に残る。それを理解しようと頭が必死に働こうとするが…それをやめろ、と止める自分がいるのを感じる。だからこそ一刀は一端深く深呼吸をして華琳の目をしっかりと見つめ問に対してこう言った。

 

 

「…分かった。俺も盗賊どもを…“殺してくる”。季衣、行くぜ」

 

「うん、行こう!兄ちゃん」

 

 

 一刀は戦場の方を向き歩き出し、その後を季衣がトコトコとついてくる。

 

この世界は一刀のいた世界じゃない。だから、一刀は正史の概念[一刀]には死んでもらう事にした。ここからは外史の北郷 一刀の物語だから。

 

 

 ――ただ一つ、我儘を言っていいのなら。――

 

 

 一刀は振り返り華琳の方を向く。その顔は少し悪戯っぽく、けれど何処か吹っ切れたようだった。してそれを見て不思議そうに首を傾げる。

 

 

「そうだ、華琳お願いがあるのだけど」

 

「?なにかしら」

 

 

 ――この手を血に染めても…――

 

 

「『いってらっしゃい』って言って」

 

「……はっ!?」

 

 

 余りに自然にいうものだから、華琳は一瞬だけだが呆けてしまった。

 

 

 ――俺は俺でいていいよな?――

 

 

 華琳は溜息をつき、まるで可哀想な子を見るような目つきで一刀を睨む。その視線に圧倒されそそくさと反転、その時微かだか聞こえた。華琳の声が。

 

 『いってらっしゃい』という声が。その声を背にそのまま戦場に駆け出した。

 

 

――さぁ、戦いの幕開けだ!!――

 

 

 

…沈黙、屍のようだ。作者が…

 

 

自分の文才の無さに絶望中の覇炎です。今回はシリアス風味になってしまった。もう、自分自身この作品がどこに向かうのすら理解できない。

 

それでも支援して下さる方に申し上げます。

ありがとうございますと!!!

 

 

補足…北郷 一刀[Hongou Kazuto] Age.17

 

聖フランチェスカ学園2年生にして天衣無縫流継承者そして師範代。

 

剣術はすでに世界一のレベルで右に出る者はいない(祖父、小十郎を除いては)。十二歳の時に祖父を正式“試合”で下してはいるが“稽古及び練習試合”では一本も取れてはいない。

 

祖父を下した為、師範代となるがどうやっていいか分からず門下生は皆やめてしまった。それにより孤独となり人を信じる事が出来ず、一時的ではあるが家族すら拒絶してしまった。自分に自信を無くして中学生の時にグレてしまうが小十郎の説教によって道を修正された。心に大きな傷を残して…。しかし、未だに人を心の底から信じる事が出来ず友達とは表面上の付き合いが多い。

 

性格

好きな人(友達など)に悪戯して楽しむタイプだが仲間意識は強く、友達が傷つけられたりしたら笑顔で傷つけた相手を失神するまで肉体的にも精神的にも痛めつける。ある意味、拷問のプロで正史にいた時は『敵に回した者に心の傷を残す者。その名は“トラウマの北郷”』と陰で噂されていた。

一度、熱中するとトコトンはまる。代表的には忍で前に紹介したように、自分で忍具を作ったり忍術紛いな物を会得したりしている。後は医学(医者王にはかなり劣る薬学に関しては張り合える(人体の壊し方はこれを会得した際の副産物として習得))、料理など他多数。

思いやりと優しさは持ってはいる反面、冷静さもしっかりと持っている。

皆が思い悩んでいると、わざとおどけたり、悪役を買ったりと自分が道化になることも厭わない。しかし、それが地だったりする。

本作と同じで天然ジゴロ。(作者的に余り言葉の意味を理解していません!)

 

 

戦闘スタイル

ベースとしては刀で戦うが状況次第では、様々な武器…特に小回りの効く物を使用する。そしてそれはこれからのお楽しみという事で!

 

 


 
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