No.675253

独立国家ヤマト戦記 ~異世界チートは鉄の味~

海平?さん

本日三話目であります

2014-03-31 23:01:32 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1585   閲覧ユーザー数:1572

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二話 サンドリア王国 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前進基地(薩摩島と命名)設営から3ヶ月。原生生物排除作戦によって大幅レベルアップ(レベル5⇒20)を果たした亮輔の設備・兵員・装備召喚能力によって瞬く間に軍事要塞島へと変貌した薩摩島には、亮輔が召喚した空軍作戦機400機余りと、戦艦大和を旗艦とする海軍外洋遠征艦隊40隻、そして戦車機甲部隊を主力とする陸軍30万名あまりが存在していた。

 

 

 

「だいぶでかくなったな」

 

 完成した薩摩島要塞を、その中心部に建造した巨大な要塞管制塔、通称ツリーの最上階展望室から見渡しながら、亮輔は副官の星田少佐を傍に侍らせつつ、自軍の戦力をそう評した。

 

 

「ここ数ヶ月、薩摩島原生生物殲滅戦や、マサラ島および薩摩島周辺に出没する海洋魔獣との交戦により、ご主人様の召喚レベルが上昇した結果、実現した軍勢ですよ」

 

 その評価に、以前よりも随分と物腰柔らか、もっと言えば随分おしとやかに変化した星田少佐が付け加える。まるで、夫の三歩後を付いて行く妻のような立ち位置であるが、亮輔自身は全くそれを意識していない。

 

 

「では星田少佐。そろそろ所定の計画に従い、南に存在する『オルマ大陸』へ向かうとしようか」

 

 

「はい。まずは現地の国家、『サンドリア王国』と接触することが目的でしたよね」

 

 

「うん。偵察部隊のおかげで街の仕組みや通貨もなんとかなるようになったしね。もっとも、先方はこっちの言い分を聞いてくれるかどうか、と言う問題はあるけど」

 

 

「そこは、ご主人様の腕の見せどころかと」

 

 

「デスヨネー。・・・まぁ、なるようになるっしょ」

 

 近い将来訪れるであろう、人生初の外交交渉に思いを馳せ、緊張で気が沈むのを自覚しつつ、彼は星田少佐を伴い、軍港へと向かった。

 

 

 

 

 

 薩摩島の南方に大陸が存在することが確認されたのは、薩摩島の要塞化を始めてから2ヶ月後(つまり今から1か月前)のことである。

 

 当時完成したばかりの薩摩島第一飛行場へ進出を果たした彩雲偵察機が、薩摩島周辺の海洋情勢を探っていた時に偶然陸地を発見したのが始まりである。

 

 薩摩島から南へ480㎞程行ったところにあるそれは、偵察機仕様としたB-36の偵察行動の結果、ほぼアフリカ大陸に匹敵する面積を誇る巨大大陸であることが確認された。

 

 また、無人島であった薩摩島と違い、集落のようなものの存在が確認されたため、亮輔は軽武装させた特殊作戦部隊を現地へ派遣し、情勢を探らせていたのである。

 

 その結果、その大陸は『オルマ大陸』と呼ばれ、『サンドリア王国』『フィルグリア帝国』『アースリオン公国』『セルビオス王国』『エルタリア王国』『クラード王国』『ロナルディア連合王国』『マーブ首長国』『レガリア王国』の9つの国家が群立し、いくつかの陣営に分かれて覇権を争っていることが判明した。

 

 今回彼らが接触を試みるのは、その中でも比較的中規模な国家であり、大陸最北端に位置する国家『サンドリア王国』である。大陸でも四国しか持たない海軍国家の一つでもあり、クラード・マーブの二国と領海を接しており、あわよくばこの世界の技術水準というものを確かめてみたいという意図も含まれている。

 

 そして、国家と接触するにあたってこちらが根無し草の武装集団では確実に侮られ見下され、まともな交渉など望むべくもないだろうという文官勢からの意見具申によって、森岡軍は亮輔の生まれ故郷である日本の、その古名の一つから名を拝借し、自らを『ヤマト』と名乗る。そして、転生者にして絶対権力者であった亮輔は、軍の最高責任者であったこともあってヤマトの国家元首に就任。自らを『総統』と名乗ることとなったのであった。

 

 

 

 

 

 高速駆逐艦『島風』に乗り、荒れ狂う海を船酔いに耐えつつ1週間弱。彼らはオルマ大陸への上陸を果たした。

 

 

「オゥエエエ。もう二度と小舟で海なんか渡るもんかぁ・・・。今度から渡るときは戦艦か空母を使ってやるぅ・・・」

 

「ご主人様。お願いですからそれだけはやめてください。主力艦が連絡船がわりなど、艦も乗組員も不憫すぎます」

 

「うぇ~~い・・・」

 

 陸に降り立った途端、グロッキー状態でフラフラになりながら阿呆なこと口走った亮輔に、彼女は口を出さずにはいられなかった。

 

 

 1時間ほど手を尽くし、なんとか船酔いから覚めた亮輔は、早速直轄大隊から引き抜いてきた精鋭1個分隊(10名)を引き連れ、予め待たせておいた先遣隊のキャンプへ向かう。移動には召喚したジープとハーフトラックを使用した。

 

 

「お待ちしておりました、総統閣下」

 

 先遣隊として派遣した人員の一人、穂村礼二少尉が、キャンプの入口で彼らを出迎えた。

 

 

「うん。出迎えご苦労。人員は揃っているな?」

 

「はっ。既に全員、準備万端整っております」

 

 そう言って穂村少尉の周囲には、連れてきた分隊員を含めて60名、小隊規模相当の人員が集結した。

 

 

「ではこれより、サンドリア王国への接触のため、王都を目指す。命令あるまで、現地住民との無用な交戦は厳に慎むように」

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 そして亮輔の号令一下、森岡小隊は一路サンドリア王国王都、サンドロスを目指す。

 

 

「ところでご主人様。今更なことですが、車両を使用してよろしかったのですか?しかも、ジープやハーフトラックのみならず、戦車まで」

 

 道中、ふと思いついたのか星田少佐が亮輔に問いかける。

 

 言われてみれば確かに、この大陸は剣と魔法が主流を占めるファンタジーな世界である。そんなところへ、科学技術の結晶である車両群をいきなり持っていかれれば警戒されるか、最悪魔物扱いされて問答無用の先制攻撃を受けるかも知れない。

 

 しかし、亮輔はそんなことを心配はしていなかった。

 

 

「構わないよ。なにか言われたら新型のマジックアイテムとか言って誤魔化しておけばいい。なにより、60人分の食料医薬品武器弾薬その他を運ぶとなると、どうしても馬車より車両の方が効率がいいんだし、そもそも馬が手に入らないんじゃ馬車は用立てようがないからね。かと言って人力車の群れで行軍するわけにもいかないし」

 

 そう言って彼は彼女の不安を退けた。

 

 今この場には、第2次大戦期のアメリカで運用されていたジープやハーフトラックの他、旧ソ連で用いられていたT-34中戦車3輌が周囲を固めていた。また対空車両として旧ナチスのヴィルベルヴィント対空戦車もおり、火力はそこそこ充実していると言えた。

 

 加えて、ジープには架台が設けられ、そこには1903年から今日に至るまで生産が続けられている傑作銃である、ブローニングM2重機関銃が備えられ、支援火力を底増すと同時に、歩兵には世界的ベストセラーアサルトライフルであるAK-47や対戦車兵器であるパンツァーファウスト、対戦車ライフルPTRS-1941などと言った強力な小火器が配備され、魔物、人間、双方に迅速に対応出来るよう体制が整えられていた。

 

 

 色々と雑談を交わしながら進んでいくと、前方から斥候が慌てた様子で連絡を入れてきた。彼ら斥候部隊には高機動のオートバイが配備されている。

 

 

「閣下!前方にて戦闘行為が行われているのを確認しました!」

 

「なに!?状況は!?」

 

「大型の馬車が一台と、その周辺に護衛と思しき騎兵6!さらにその後方から、馬賊らしきものを50騎以上確認!どうやら馬車が襲われているようです!」

 

「よしわかった!全車増速!現場へ急行する!」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

 斥候から報告を受けた亮輔は、即座に馬車の救援を決定。麾下中隊を急行させた。

 

 

 

 

 

 

「グッ!クソッ!奴らどこまで追ってくる気なんだッ!!?」

 

 一方その頃、亮輔達が救援対象とする馬車を守る6人の騎士の一人、シルヴィア・ノースロックは、背後から追い上げてくる馬賊の方を睨みつけ吐き捨てた。

 

 もうかれこれ半日は追い立てられ続けている。とうの昔に魔力は尽き果て、そろそろ体力も限界が近い。にも関わらず敵は自分たちの10倍近い戦力を未だ保持しており、精神的にも追い込まれつつあったのだ。

 

 

 

「逃がすなぁッ!あの馬車に乗ってる奴を引っ捕えた奴には、俺のお気に入りの中から気に入ったのを一人くれてやるぞ!!気張れぇ!」

 

 一方の馬賊の頭もまた内心で焦りを覚えていた。自分達の10分の1以下の戦力しか持たない者達相手に、もう半日以上も逃げられ続けているのである。いい加減自分達も馬達も疲労困憊しており、さりとて馬賊の頭である以上、襲いかかった以上は某かの戦果を挙げねば部下達に示しがつかなくなってしまう。特に、当初は100騎以上いた手勢が、今では半数を切ろうかというところまですり減らされた現状では、なんの成果もなく手ぶらで帰るなん選択肢は残念ながら彼には存在していなかった。

 

 

「クソッ!王国騎士めが梃子摺らせおって!」

 

 そう言って頭は、眼前でしぶとく抵抗を続ける王国騎士を罵倒する。いい加減諦めてこっちに捕まってくれればいいものを。

 

 

「ええい!野郎ども!こうなりゃ一か八かだ!形振り構わず突っ込ぇ!!!」

 

 

「「「「「「「ウオオオオォォォォーーーーー!!!」」」」」」」

 

 

 

 

「なっ!奴ら血迷ったかッ!!?」

 

 とうとう痺れを切らせて、後先構わぬ全力走に入った馬賊の姿を見て、驚きのあまりシルヴィアは叫んだ。半日も走り回った上であんな無茶を働けば、遠からず馬は過労で倒れてしまうというのに。

 

 しかし、それによって自分達がさらに追い詰められたこともまた事実だった。グングンと彼我の距離が縮まっていく。このままでは彼らの根が尽きるより先に追いつかれてしまう!

 

 

「追いついたぜコラァ!散々手間取らせやがって!!」

 

 そして、ついに最後尾にいたシルヴィアは馬賊の先頭に追いつかれてしまう。

 

 敵が振り上げた刀を、かろうじて槍で防ぐが、男と女の膂力さもあって、徐々に押し切られていく。

 

 

「く、申し訳ありません、アルト様・・・ッ!!」

 

 自身の敗北を予見した、まさにその時であった。

 

 

 

 

 

ドガアアアアン!!

 

「ぐぎゃあああああああ!!!」

 

「ッ!?」

 

 突如発生した爆発によって、自分に斬りかかっていた男を含めた馬賊の先頭集団が吹き飛ばされたのだ。

 

「な、なんだ!一体何が!?」

 

「隊長!右手の丘を!」

 

 目の前で突然起きた異常にシルヴィアが動揺していると、傍にいた部下の女騎士が叫んだ。

 

 その声に従い、右手にある小高い丘の上を睨むと、そこには見慣れぬ黒い箱状の何かが土煙を立てながら接近してきていた。

 

 と、その黒い箱が一斉に轟音とともに火を噴くと、再び馬賊集団の中で大爆発が起き、馬賊が吹き飛ばされてゆく。

 

 さらに、その周囲にいる中小の黒い騎獣(?)に乗った人間らしき人影が、馬賊集団に細長い棒状のものを向けると、甲高い音ともに、馬賊が倒れていく。

 

 

「な、なんなんだあいつらは・・・」

 

 自分の常識の範疇では想像もできない異常事態に、シルヴィアの思考は完全に停止状態になった。

 

 その集団は、やがて自分達のすぐ傍まで来ると、代表者らしい青年が一人、声をかけてきた。

 

 

「初めまして。我々は微妙に(・・・)妖しい者です。これより、あなた方の援護に回ります」

 

 これが、のちにこの世界に覇を唱える巨大国家『ヤマト』と、最初の同盟国である『サンドリア王国』近衛騎士隊との、最初の邂逅であった。

 

 

 

 

 

 早くも再びおはこんばんにちわ。

 

 最初にも述べた通り、本日3話目の海平?であります。

 

 本日は本話の投稿で最後にするつもりです。

 

 次回は、最初の主人公チートが入ります。お楽しみに。

 

 それでは、また次回お会い致しましょう

 

 

 


 
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