No.674553

遊☆戯☆王 Love†Princess 汜水関の戦い 鳳統VS華雄!

恋姫†無双と遊戯王を組み合わせた短編集。
デュエルだからできた、絶対にあり得ない対戦カード。
皆デュエル脳になった結果、話もキャラもぶっ飛んでる。
それに伴い、あの華雄さんが某普通の人より(相対的に)まともになるという不思議現象が発生。

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2014-03-29 15:50:59 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1334   閲覧ユーザー数:1245

汜水関の戦い 鳳統VS華雄!

 

 

 

 

 反董卓連合。

 諸侯の中で最も大きい勢力である『チーム袁紹』の呼びかけにより各地から『チーム曹操』や『チーム孫策』を始めとした諸侯が集まった連合である。

 連合の目的は、洛陽にて暴政を行い、レアカードを独占している董卓を倒し、幼き皇帝・劉協を救い出すこと。

 俺、北郷一刀が所属する『チーム劉備』は、連合への参加を呼びかけられた当初は所持するカードの少なさ、情報の不安定さ故に参加に迷っていた。しかし、参加しなければ他の諸侯からの反感を買い、後々不利な立場に立つことになるかもしれないという軍師2人の進言に従い、連合への参加を決定した。

 

 

 

 そして今、俺達『チーム劉備』は連合の先鋒を担当している。もちろん自分から願い出たわけではない。

 連合での軍議の際、総大将が中々決まらないことに我慢できなくなった桃香が袁紹を推薦してしまったのである。この発言がきっかけとなり『責任重大な総大将を推薦したのですから、もちろん先鋒を担当してくれますわよね?』と袁紹に言われ、結果として俺達が先鋒を押し付けたれた。

 軍議終了後、俺は袁紹に対して『先鋒を務めるんだから《死者蘇生》や《サイクロン》のような汎用カードを貸してくれ』と頼んだのだが、彼女が取り出したのは表面が反りまくったゴールドレア仕様のカードばかり。アレってスリーブに入れにくいんだよな。向こうの世界では、管理するのが大変だった。

 聞くところによると、『チーム袁紹』の使用するカードはゴールドレアのものばかりらしい。

 しかも、『わたくしのデッキはほぼ全てゴールドレアですわよ?』と自慢ばかりしてくるものだから、面倒くさくなった俺達はカードを受け取らず、彼女を無視して陣に戻った。

 陣に戻った後、俺達は汜水関に向けて斥候を放った。調べによると、主な守将は華雄。圧倒的な攻撃力で敵を粉砕するパワーデッキを扱う決闘者らしい。

 対して俺達『チーム劉備』からは、正反対のバーンカードを主体として戦う決闘者、雛里が出ることになった。

 

 

 

 

 汜水関。

 虎牢関と並ぶ鉄壁の城塞として知られる関である。

 現在この関の守将を務める女性、その名を華雄という。上半身を守るための甲冑は腕部と胸部以外の部分が露出している。普通ならば肌寒さを感じてしまうであろう服装だが、デュエルの腕を磨くために修行を重ねた彼女からは特に気にした様子は見られない。短く切りそろえられた銀髪も、鍛えあげられた肉体と共に、活発そうな印象を持たせている。そんな彼女の元に、報告がもたらされた。

 

「華雄将軍、物見より報告です!」

「どうした、何があった。申せ」

 

 物見からの報告を伝えに来た兵士の声に、デッキ調整を終えたばかりの華雄が声を返す。

 

「はっ! 連合の先陣が進軍を開始! 先鋒は『チーム劉備』!」

「初めて聞くチームだな。どのようなチームだ、情報はあるか?」

「ここ最近になって頭角を現してきたチームらしく、何でも『天の御遣い』が所属しているという話です」

「『天の御遣い』か。確か《シューティング・スター・ドラゴン》に乗って現れたとかいう胡散臭いやつだったな」

「はい。しかし、我らは百戦錬磨の『チーム董卓』! 誰が相手だろうと負けるはずがありません!」

「よく言った! それでこそ……ん?」

「……華雄将軍? どうなさいましたか?」

 

 急に言葉を止めた華雄に兵士が何事かと訝しんだ。当の華雄は彼の不安げな表情とは逆に笑みを浮かべ、その疑問へと答える。

 

「『チーム劉備』の鳳統という者が、私にデュエルを申し込んでいるらしい。貴様には聞こえていないようだがな」

「え、ええ。そのような声、全く聞こえてきませんが。物見からも『チーム劉備』の誰かが華雄将軍に対してデュエルを挑むだろうとのことしか聞いておりません」

「決闘者であるならば、自身に対してデュエルを挑む者の声を聞き取るのは当然のことだ。確か貴様は最近チームに入ったばかりだったな、無理もない。これから鍛えていけばよい」

「はい、精進いたします!」

「ああ、しっかり励めよ。さて、私はそろそろ行く。この私にデュエルを挑んだ愚か者を叩き潰してやる」

「華雄将軍、お気をつけて!」

 

 兵士との会話を終えた華雄は、自身のデッキと金剛爆斧を手に取り、汜水関の門へと歩き出す。しかし、背後から彼女を止める声がかけられる。

 

「待たんかい、華雄! なに勝手に出撃しようとしとんねん!」

 

 声をかけたのは、汜水関を守るもう1人の将、張遼。真名を霞という。髪とほぼ同じ色の紺の袴、外套のように肩に引っ掛けられた上着、サラシを巻いただけの胸と、それだけを身にまとった、なんとも扇情的な格好をした女性である。先程から何人もの男性兵士がチラチラと彼女を見ては目を逸らしている。

 華雄は自身を諌める張遼の方へと振り向かず、

 

「張遼か。何か用か?」

 

 ただ一言、それだけを返した。

 

「何か用か、やて? ウチらの目的は汜水関を守り、連合を(ゆえ)っち達の元へ近づけさせんことやろ! あんな安い挑発なんかに乗るもんやないで!」

「確かにそうかもしれないな。だが、我々は決闘者だ。あれほど必死に声を張り上げている者の声を無視することは、決闘者の誇りに傷がつく。違うか?」

「ぐ、それは……」

 

 

 ――決闘者の誇り

 

 

 これを持ちだされては、さすがの張遼も華雄を止めることは躊躇われた。彼女とて《神速》の異名を持つほどの強さを誇る決闘者。もしもデュエルを挑まれたのが自分であったなら、出撃してしまったかもしれない。

 

「案ずるな、張遼。最近名が売れてきたばかりで調子に乗っているチームなど、私1人で十分だ」

「華雄……。わかった、そんなら好きにせえ。ウチは側近を何人か連れて虎牢関に引く。それでええな?」

「ああ。後のことは任せたぞ」

 

 2人に言葉はそこで終わった。華雄は結局最後まで張遼へと振り返らないまま、再び門へと歩き出す。

 張遼は踵を返し、彼女の側近数人を連れて虎牢関へと引いていった。

 

 

 華雄を引きずり出すため、雛里が『おい、デュエルしろよ』と汜水関へと声を飛ばす。今、この場にいるのは俺と雛里の2人のみ。桃香達は本陣に下がってもらっている。

 もしもこれから行うのがデュエルではなく、剣や槍を持った本物の戦争であるのならば、見た目小学生の雛里とただの学生である俺だけで最前線に立つなど愚の骨頂。

 しかし、これはデュエルだ。1対1の真剣勝負。であるならば、デュエルを行わない者達は後ろから見守るのみ。本当は俺も後ろに下がるべきなのだが、雛里がデュエルをすると決まった時、

 

『ご主人さまも知っての通り、私、このような場でデュエルするのは初めてなんです。だから、ご主人さまに傍で見守って頂きたい、でしゅ……えと、その、いいでしょうか?』

 

 涙目でこんなお願いをされてしまっては、頷く他なかった。

 

 

 

「我が名は華雄! 私にデュエルを挑んだ愚か者、鳳統はどいつだ!」

 

 声を飛ばし続けてから10分程経っただろうか。

 汜水関の門が開き、1人の女性が現れた。短い銀髪、そして大斧。なるほど、彼女が華雄か。報告通りだ。

 

「私です、華雄さん。あなたを倒して私達『チーム劉備』が汜水関を頂きます」

「威勢だけは褒めてやろう。して、貴様の後ろに立っている男。もしや『天の御遣い』とか言われている者か?」

「はい、このお方は北郷一刀様。我ら『チーム劉備』を導くご主人さまです」

「そうか。ならば、そのご主人さまとやらの前で、貴様を屠ってやるとしよう! さあ、構えるがいい!」

「望む、ところでしゅ!」

 

「「デュエルディスク、セット!」」

 

 2人は同時に叫び、その手に持ったデュエルディスクを空中へと放る。雛里が扱うデュエルディスクは薄い本を模したもの。軽量で、雛里のような華奢な少女でも扱いやすいために、水鏡女学院では全員が所持していたという。

 対する華雄のデュエルディスクは――

 

「バカな!? 大斧型デュエルディスクだと!?」

 

 なんと彼女は、数10kgはあろうかという大斧を片手で軽々と上空へと放ったのである。そして、投げた大斧は超大型デュエルディスクへと変形し、その左腕に収まった。

 

「そ、そんな……」

 

 見る者全てを圧倒するかのような巨大なデュエルディスク。その迫力に押され、雛里は一歩後ずさってしまう。

 

「雛里、気をしっかり持て! 確かに奴は多くの鍛錬を積んできたであろう決闘者! だけど雛里だって今まで頑張ってきたんだ! 絶対に勝てる!」

「……はい! しゅみません、ご主人さま! もう、大丈夫です!」

 

 雛里はずれた魔女帽子をかぶり直し、デュエルディスクを構える。どうやら、デュエルの前に気持ちで負けてしまうということは回避できたようだ。

 だが、華雄は恐ろしいまでに自身を鍛え上げた決闘者。そこから発せられるフィールは尋常じゃないはず。……雛里、勝てよ!

 

「「デュエル!」」

 

 

 

 

 『チーム劉備』本陣。

 今ここでは、一刀と鳳統を除くメンバーが、後方より鳳統のデュエルを見守っていた。

 

「あの華雄って人、あんな大きなデュエルディスクだけど、雛里ちゃん大丈夫かな? 心配になってきたよ~」

 

 不安げな声を出した少女の名は劉備、その真名を桃香という。濃い桃色の長髪、豊満な胸部が特徴的な、『チーム劉備』のリーダーである。

 『誰もが笑顔で楽しくデュエルができる世の中にしたい』という思いを胸に、義姉妹の誓いを交わした関羽、張飛と共にチームを立ち上げ、『天の御遣い』である一刀を加える事で彼女のチームは知名度と実力を伸ばしていった。

 もっとも、リーダーである劉備自身のデュエルの実力は関羽達ほど高くなく、諸葛亮や鳳統、そして一刀から細かいルールやプレイングについて学んでいる最中だったりする。

 

「桃香様、少し落ち着きなされ。チームの長がどっしりと構えていなければ、チーム全体の士気に関わりますぞ」

「星ちゃん……」

 

 そんな桃香を諌める少女の名は趙雲、その真名を星という。丈の短い白い着物を纏い、胸元は惜しげも無く開かれている。

 彼女は元々公孫賛のチームに所属していたのだが、『服が白いからといって《青眼の白龍》を使わせようとする伯珪殿のチームではやっていられない』とチームを離脱。その後は各地を転々として、最終的には『自分自身の実力をより一層伸ばすことができるだろう』という理由で劉備のチームに参加した。

 飄々とした性格をしており、デュエルにおいても対戦相手の心理を利用する戦法を取ることが多い。それにより、デッキパワーで劣る相手に対しても言動・プレイングによって翻弄し、数多くの勝利を収めてきている。

 

「心配は無用です。雛里は我らが『チーム劉備』が誇る決闘者。例え相手が猛将・華雄であろうと、必ずや勝利を収めてくれるでしょう。

 それに、朱里をご覧下され。我らの中で最も不安を覚えているのは彼女であろうに、あの通りです」

 

 趙雲が視線を送った先、本陣の最前線に立つのはベレー帽を被った小柄な少女、諸葛亮。真名は朱里。鳳統と共に水鏡女学院でデュエルを学んだ秀才決闘者である。

 ただじっと立つ彼女は一見落ち着いているように見える。しかし、よく見ると足は震え、手は汗でびっしょりと濡れている。劉備達からはその表情を窺うことはできないが、正面に回ればきっと、今にも声を上げそうになるのを必死に堪えているはずである。

 諸葛亮達が水鏡女学院に通っていた頃、鳳統は常に諸葛亮の後ろをついて来ていて、思ったことを素直に口にできないような内気で恥ずかしがり屋な性格だった。『チーム劉備』に所属してからもしばらくはそんな状態が続いた。

 そんなある日、彼女を見かねた一刀がデュエルによってカウンセリングを行った。その結果、ある程度だが改善することに成功したのだった。

 とはいえ、鳳統が今回のような大仕事を任されるのは初めてである。そんな彼女に対して少しも不安を覚えないということはあるはずがない。それでも諸葛亮は親友として、鳳統を見守ることを決めたのである。

 

「……そうだよね。ありがとう、星ちゃん。私、頑張って応援するよ! 雛里ちゃーん! 頑張れー!」

 

 趙雲の指摘を受け、劉備は落ち着きを取り戻した。いや、劉備だけではない。彼女と同じく不安を覚えていた関羽も、『自分が戦いたかった』と駄々をこねていた張飛も、鳳統の勝利を信じて声援を送る。

 

「雛里! 我らには『天の御遣い』がついているのだ! 臆せず戦えば必ず勝てる!」

「華雄なんて丸焼きにしてやるのだ!」

 

 これまで口をつぐんでいた諸葛亮も、小さい声量ながら、声を張り上げる。

 

「雛里ちゃん、頑張って!」

 

 そして趙雲は彼女達のように声を上げず、ただ一言。

 

「こちらはもう大丈夫です、主。あなたは雛里を傍で支えてくだされ」

 

 

「先攻は私です、カードドロー! 私は手札より《連弾の魔術師》を召喚します!」

 

 デュエルディスクによって先攻となった雛里がカードをドローする。そして彼女の目の前にソリッドビジョンにより投影された魔術師が出現する。

 このモンスターこそが雛里のデッキの核。いつものパターンならこの後に来るのは――

 

「続いて魔法カード《デス・メテオ》を発動! 華雄さんに1000ポイントのダメージを与えます!」

「くっ……!」

 

 華雄 LP8000 → LP7000

 

 雛里の身長とほぼ同じ大きさの巨大な火球がデュエルディスクより放たれ、華雄へと直撃する。ソリッドビジョンのため、実際に火傷を負うことはないが、初期ライフの10分の1を削る効果ダメージは強烈だろう。しかし、これだけでは終わらない。

 

「更に、《連弾の魔術師》の効果発動です! 通常魔法を発動したことで、400ポイントのダメージを与えます!」

 

 華雄 LP7000 → LP6600

 

 魔術師の囲んでいた球体の1つが飛び出し、華雄のライフを削り取る。それと同時に、

 

「「出た! 雛里ちゃんのマジックコンボ!」」

 

 背後の本陣から桃香と朱里の声が響き渡った。

そう、バーン効果を持つ通常魔法と通常魔法を発動する度に効果ダメージを与える《連弾の魔術師》のコンボこそが雛里の十八番(おはこ)。彼女は度重なるドロー特訓のおかげで、このコンボの初手成功率は7割を超えている。

 

「いきなり1400ポイントのダメージとはな、やるではないか」

「驚くのは まだ 早いです」

「なんだと!?」

 

 雛里は笑みを浮かべると、更なるカードを魔法・罠ゾーンへ挿入する。これはまさか……。

 

「通常魔法、《火炎地獄》! 華雄さんに1000ポイントのダメージを与え、私は500ポイントのダメージを受けます!」

 

 鳳統 LP8000 → LP7500

 華雄 LP6600 → LP5600

 

「そして再び《連弾の魔術師》の効果発動!」

「ぐあああ!」

 

 華雄 LP5600 → LP5200

 

 地面より発せられた炎が両者を焼き、魔術師から放たれた魔法球が華雄へと更なる追撃を行う。連続でコンボを成功させるとは、さすが雛里。このデュエルにかける思いは半端じゃないということか。

 

「先攻1ターン目は攻撃ができません、リバースカードを1枚伏せて、ターンを終了します」

 

 カードを1枚デュエルディスクへと挿入し、華雄へとターンを回す。いつもと同じなら、雛里が伏せたのは恐らく相手モンスターの攻撃宣言時に発動する《炸裂装甲(リアクティブ・アーマー)》だろう。これで相手モンスターを破壊し、次のターンで更なる攻撃を仕掛ける。これが、雛里の必勝パターン!

 

「まさか先攻1ターン目で2800ものライフを削り取るとは恐れいった。しかもこの衝撃、まずまずのフィールを持っているようだ。どうやら貴様を少し甘く見ていたらしい。

だが、調子に乗っていられるのもこれまでだ! 私のターン、ドロー!」

 

 雛里のフィールを受けたにも関わらず、華雄はその余裕を全くと言っていいほど崩さない。更に、恐ろしいほどの気迫を放ち、カードをドローする。

 雛里の方を見ると、デュエル前ほどではないが、圧倒されてしまっている。猛将・華雄……、ドローだけでなんてフィールだよ……!

 

「まずは永続魔法《勇気の旗印》を発動! このカードは自分のバトルフェイズ時、自分フィールド上のモンスターの攻撃力を200ポイントアップさせる!」

 

 華雄の背後より何本もの旗が出現する。旗には『華』の文字が描かれている。

 自分のターンのみ攻撃力を少しだけ上げるこのカードは、本来誰も使わないはずである。俺自身、この世界に来るまでは使ったことも、使用者を見たこともない。だが驚くべきことに、この世界では誰もが3枚積みする程の必須カードであるという。

 黄巾党討伐の時に曹操の軍と共闘した際、彼女がフィールドに3枚並べ、攻撃力1900の《デーモン・ソルジャー》の攻撃力を2500までアップし、《闇のデッキ破壊ウイルス》のコストにするという戦法を何度も見たほどだ。

 

「更に、私は《アックス・ドラゴニュート》を召喚!」

 

 続いて華雄の眼前に呼び出されたのは、蒼い身体の竜。その手には華雄が使っているデュエルディスクとほぼ同じ大きさの斧が握られている。

 

「まだ行くぞ、更にこの2枚の装備魔法を《アックス・ドラゴニュート》に装備!」

 

 華雄が2枚のカードを魔法・罠ゾーンに挿入すると、竜は手にしていた斧を後ろへ放り投げ、新たに2本の斧を両手にそれぞれ握りしめた。

 右手に構えたのは《デーモンの斧》。墓地に送られてもフィールドのモンスターをリリースすることでデッキトップに戻る装備魔法。

 左手に構えたのは《愚鈍の斧》。装備モンスターの効果を無効にし、使用者のスタンバイフェイズ毎に装備モンスターのコントローラーへと500ポイントのダメージを与える装備魔法。

それぞれの上昇値は1000ポイント。《アックス・ドラゴニュート》の攻撃力は2000ポイント。つまり現在の攻撃力は……。

 

「そ、そんな……、攻撃力4000!?」

「その通りだ! さらに《愚鈍の斧》の効果によって《アックス・ドラゴニュート》は攻撃後に守備表示になる効果が無効となっている! やれ、《アックス・ドラゴニュート》! 雑魚モンスターを粉砕しろ! ダブル……アックス!」

 

 華雄の宣言と共に、竜は両手の斧を振りかぶる。《勇気の旗印》によって攻撃力は上昇し、その攻撃力は4200。対する魔術師の攻撃力は1600。このままでは2600もの大ダメージを受けてしまう。だが、雛里には罠カードがあるはず。

 

「と、罠発動です、《炸裂装甲》! 攻撃してきたモンスターを破壊します!」

 

 やはり《炸裂装甲》! いくら攻撃力が上昇しても、これなら……!

 

「甘いわ! 速攻魔法《我が身を盾に》! ライフを1500支払うことで発動し、『フィールド上のモンスターを破壊する効果』を持つカードの発動を無効にして破壊する!」

「あわわ!?」

 

 華雄 LP5200 → LP3700

 

 竜を返り討ちにするはずだった爆発が相殺される。そして、攻撃は続行され、2本の斧によって魔術師は叩き斬られてしまう。

 くそ、こんなことなら袁紹を無視せずに《次元幽閉》を受け取っておくべきだったか?

 

 鳳統 LP7500 → LP4900

 

「きゃああああ!」

「雛里!」

 

 魔術師が破壊された衝撃によって雛里が吹き飛ばされる。俺は咄嗟に雛里の後ろへ回り込み、その身体を受け止める。

 

「雛里、大丈夫か?」

「は、はい。ありがとうございます、ご主人さま。それにしても、さすがは猛将華雄さん。もの凄いフィールです……」

「ああ。だが、まだデュエルはこれからだ! 雛里、やれるな?」

「……はい! もちろんです!」

 

 俺の問いかけに雛里は堂々とした声を返し、俺の手から離れると再びデュエルディスクを構える。

 

「今の衝撃を耐えたか、だが次はどうかな? 私はリバースカードを1枚伏せてターン終了だ。さあ、精々足掻くがいい!」

 

 華雄がカードを伏せたことで、彼女の手札は0枚となった。相手の場には高攻撃力のモンスターがいるが、雛里の手札は次のドローで3枚。まだ逆転は可能だ。

 

「私のターン、ドロー。……モンスターを裏守備表示でセットして、ターンエンドです」

 

 雛里はモンスターを伏せ、ターンを終える。《アックス・ドラゴニュート》を倒すカードは引けなかったようだが、守備表示ならダメージは受けない。まだ持ちこたえられるはずだ。

 

「守備表示だと? 姑息な手を……。そのような軟弱な戦法はこの私には通用しないということを教えてやろう! エンドフェイズに、永続罠発動! 《最終突撃命令》!」

「そ、そのカードは!」

 

 華雄の場に伏せられていたカードが発動され、雛里がセットしたばかりのモンスターが攻撃表示へと変更されてしまう。現れたのはマントとシルクハット、丸眼鏡を身に付けた人型モンスター、《マジカル・アンダーテイカー》。攻撃力はわずか400だ。

 

「ま、《マジカル・アンダーテイカー》のリバース効果! レベル4以下のモンスターを蘇生させます! 来てくだしゃい、《連弾の魔術師》!」

 

 リバース効果によって魔術師がフィールドへと蘇る。本来なら守備表示で出したいところだが、今は《最終突撃命令》の効果によって強制的に攻撃表示となってしまう。

 

「私のターン、ドローだ!」

 

 エンドフェイズにカードが発動されたため、雛里にはこれ以上の行動ができない。よって、そのまま華雄のターンとなった。

 

「このスタンバイフェイズ、《愚鈍の斧》の効果によって私は500ポイントのダメージを受ける」

 

 華雄 LP3700 → LP3200

 

「鳳統、貴様は先程こう考えていたはずだ。『モンスターを守備表示で出して攻撃を凌ぎ、《愚鈍の斧》のデメリット効果やバーンカードによってライフを削り取れば勝てる』と。だが、この《最終突撃命令》によって貴様の目論見は崩れ去った」

「そ、それは……」

「『高攻撃力のモンスターによる敵の粉砕』……私はこれのみを追い求めてこれまで鍛錬を積んできた! 我が強さを証明するために! 董卓様をお守りするために! よって、このカードを装備することで更なる力を見せてやろう!」

 

 華雄の魔法・罠ゾーンに5枚目のカードが挿入され、《アックス・ドラゴニュート》に3枚目の装備魔法が装備される。装備されたのは《団結の力》。自分フィールド上のモンスター1体につき、攻撃力を800ポイントアップさせるカードだ。現在華雄の場にはモンスターが1体しかいないため、上昇値は800のみ。だが……、

 

「これにより、《アックス・ドラゴニュート》が攻撃するときの攻撃力は5000! あの《F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)》と同じ攻撃力だ!」

「あわわ……!」

 

 まさかレベル4のモンスターの攻撃力をここまで上げるとは……華雄、やはりただ者じゃない!

 

「さあ、再びその魔術師を叩き潰してくれる! やれ! ダブル……アックス!」

 

 先程と同じく魔術師が粉砕される。いや、同じではない。今度はダメージが800ポイント増え、戦闘ダメージは3400。白蓮が扱うエースモンスター、《青眼の白龍》の直接攻撃を超える威力だ。

 

「う、くううう!」

 

 鳳統 LP4900 → LP1500

 

 だが、3400もの大ダメージを受けても、雛里は左足を一歩後ろに下げるのみで、さっきのように吹き飛ぶことはない。『チームのために勝つ』という思いを新たにした彼女のフィールが、華雄のフィールをどうにか受け止めたのだ。

 

「まだ……まだ、です。私は『チーム劉備』の鳳統。チームの皆のためにも、朱里ちゃんの後ろを歩いてばかりだった私を変えてくれたご主人さまのためにも……、負けるわけにはいかないんです!」

「雛里……」

「その気勢だけは褒めてやろう。だが、貴様は私のモンスターの攻撃を2度も受けた。立っているのもやっとのはずだ。次は無いぞ、私はこれでターンエンドだ」

 

 そう、雛里は必死に声を絞り出しているが、その身体はふらついている。恐らく、次のターンで華雄を倒せなければ、力尽きて倒れてしまうだろう。

 華雄を倒すには、攻撃力4800の化け物を倒し、3200のライフを削り切る必要がある。本来なら非常に困難なことだが、雛里にはアレ(・・)がある。俺はただ雛里を信じるのみ!

 そんな俺の思いと『チーム劉備』の思いが重なったのか、本陣より桃香達の声援が轟いた。

 

「雛里ちゃん! 雛里ちゃんには私達がついてる! 絶対に勝てるよ!」

「桃香様の言うとおりだ! 雛里、次で決めろ!」

「華雄なんて、粉砕! 玉砕! 大喝采! なのだ!」

「雛里、お前が今まで培ってきた努力を、奴にぶつけよ!」

「雛里ちゃん! もう一息だよ!」

 

 雛里の勝利を信じて疑わない俺達の仲間……、桃香、愛紗、鈴々、星、朱里。彼女達の声援を受けた雛里の眼からは、涙の粒が溢れていた。

 

「雛里、泣いている暇は無いぞ。次のドロー、それで勝負を決めるんだ!」

「……はい!」

 

 雛里は右手で涙を拭い、華雄へと向き直る。彼女はもうふらつくこともなく、その背中からは次のターンで勝負を決めるという気迫が感じられた。

 

「茶番は終わったか? ならば、最後のカードを引くがいい!」

「はい、お待たせして申し訳ありませんでした。お詫びとして、このドローによって、あなたを倒してみせます」

「戯言を……。負け惜しみも大概にしろ!」

「いいえ、やれます……。やって、みせます!」

 

 華雄が挑発する。しかし、今の雛里にはそのようなものは通用しない。

 あの水鏡女学院でデュエルを学んできた雛里が! 今日この時まで俺達と共にデュエルの腕を磨いてきた雛里が! チーム全員の声援を受けた雛里が! この局面で逆転のカードを引けないなんてこと、ある筈がない!

 

「私の、タァーーーーン!!」

 

 雛里は今まで出したこともない大声で自身のターン開始を宣言し、カードをドローした。そして、その右手に握られた運命のカードを確認する。

 

「いいカードは引けたか? 鳳統よ」

「はい。……勝利の方程式は、ここに全て揃いました!」

「な、何だと!? そんなことがあるはずがない!」

 

 雛里の迷いなき勝利宣言。

 華雄は信じられないといった表情を浮かべ、眼を見開く。

 だが、雛里が逆転のカードを引き当てたことは当然のこと。勝利を信じ、かっとび続ける決闘者のドローは全て必然となるのだから!

 

「……どうしても、信じられないようですね。でしたら、証明してみせましょう、あなたの敗北によって!

 私は墓地の《連弾の魔術師》をデッキに戻すことで、手札より《究極封印神エクゾディオス》を特殊召喚します!」

 

 ――《究極封印神エクゾディオス》

 

 このカードは、自分の墓地のモンスターを全てデッキに戻した場合のみ特殊召喚できる、レベル10のモンスター。

 

「攻撃力0? ハハハハハ! 驚かせおって! やはりただのハッタリか!」

 

 確かに、このままならそう見えるだろう。しかし、エクゾディオスは雛里の切り札を呼び出すために使用される第一のカード。

 このターンで終わらせると宣言した雛里が次に使用するカードは――

 

「魔法発動、《ギャラクシー・クィーンズ・ライト》! このカードは、自分フィールドのレベル7以上のモンスター1体を選択して、自分フィールドの全てのモンスターのレベルを選択したモンスターに合わせます! よって、レベル2の《マジカル・アンダーテイカー》をレベル10に変更します!」

「レベル10のモンスターが2体……、まさか!?」

 

 そう、同じレベルのモンスター2体以上によって行われる召喚、エクシーズ召喚。しかも、そのランクは10!

 

「いきます! 私は、レベル10の《究極封印神エクゾディオス》と、《マジカル・アンダーテイカー》をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築します! エクシーズ召喚!」

 

 雛里の目の前に光の渦が巻き起こり、紫色の球体へと姿を変えた2体のモンスターが吸い込まれていく。

 

「鉄路の彼方より、地響きともに、ただいま到着!」

 

 そして、莫大な光が辺り一面を埋め尽くし、鋼鉄の兵器がその姿を現す!

 

「く、うおおお!? なんだ、このフィールは!?」

「これが私の切り札! 来てください、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!」

 

 超弩級。その名の通り、門前を埋め尽くす程の質量を持つランク10の超大型モンスターエクシーズ。これこそが雛里の切り札であり、この勝負を決めるための第三のカード、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!

 

「グスタフ・マックス……だと!? あり得ない! なぜ【連弾バーン】でそのモンスターが出てくる!?」

 

 そりゃあ驚くだろうな。俺だって、初めて雛里とデュエルした時は同じ反応をしたものだ。というか、イメージに合わない。

 

「確かに、【連弾バーン】ならば入らないカードです。ですが、このデッキは【連弾グスタフ】!

 さあいきますよ、グスタフ・マックスの効果発動です! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、華雄さんに2000ポイントのダメージを与えます!」

「な、2000ポイント!?」

 

 グスタフ・マックスの周囲を旋回していた光球の1つがその巨体に装填され、姿を変えていく。その中から巨大な砲塔が出現し、華雄へと狙いを定める。

 

「発射オーライ・ビッグ・キャノン!」

 

 効果名の宣言と共に弾丸が発射され、華雄へと直撃する。2000ポイントという初期ライフの4分の1の大ダメージを受けた華雄は、後方へと大きく弾き飛ばされた。

 だが、彼女は空中で一回転し、着地してみせた。なるほど、鍛えあげられた肉体は伊達じゃないということか。

 

 華雄 LP3200 → LP1200

 

「ハア、ハア……。この衝撃、この威力……。私をここまで追い詰めるとはな……。認めてやろう、貴様のフィールを。だが、それもここまで。

 私の《アックス・ドラゴニュート》の攻撃力は4800。対して貴様のグスタフ・マックスの攻撃力は3000。本来なら《青眼の白龍》と並ぶ程の高い攻撃力だが、私のモンスターには及ばない。……勝負ありだ」

 

 いや、華雄は1つ忘れている。雛里はこう言った。『勝利の方程式は、ここに全て揃った』と。

 雛里は右腕を振り上げる。同時にグスタフ・マックスの砲塔の先端がハンマー状となり、同じように天へ掲げられる。

 

「それは、どうでしょう? 私は、グスタフ・マックスで《アックス・ドラゴニュート》を攻撃します!」

「自爆特攻だと!? 馬鹿め、血迷ったか!」

 

 華雄の言うとおり、攻撃力の劣るモンスターで攻撃するなどまずあり得ない。だが、雛里は笑みを浮かべ、手札に残った最後の1枚を魔法・罠ゾーンへと挿入する!

 

「こう、するんです! ダメージステップ、速攻魔法《リミッター解除》を発動です! これにより、機械族モンスターであるグスタフ・マックスの攻撃力を2倍にします!」

「2倍!? ということは……!」

 

 《リミッター解除》が発動され、グスタフ・マックスの機関部分が激しく鳴動する。そして、ハンマーの部分が巨大化した。

 グスタフ・マックスの現在の攻撃力は3000。よってその攻撃力は――

 

「攻撃力……6000だとぉ!?」

「これで、終わりです! グスタフ……、ハンマーァアアアアア!!」

 

 巨大なハンマーが、斧を携えた竜へと振り下ろされる。構えた斧で受け止めようとするものの、6000もの攻撃力を受け、あっさりと粉砕される。

 更に戦闘破壊とダメージによる衝撃による余波が華雄を襲い、またも彼女の身体を吹き飛ばす。

さすがに今度はその衝撃を受け止めることができず、彼女は地面に叩きつけられ、そのまま転がっていく。

 戦闘ダメージは1200。残りライフ1200の華雄のライフはピッタリ削り取られ、雛里の勝利によって勝敗は決したのであった。

 

 華雄 LP1200 → LP0

 

 

「負けた、のか。この私が……」

 

 華雄は仰向けになって呟く。

 自分の戦術は完璧だったはずだ。自分のモンスターの攻撃力を極限まで高め、相手に防御を許さず、圧倒的な力によって叩き潰す。

 この戦術によって今まで多くの敵を倒し、主である董卓に貢献してきたのだ。

 だが、現状はどうだ。当初は格下と侮っていた相手に攻撃力で逆転され、あまつさえ敗北し、地面を転がり、指一本動かせないでいる。

 ああ、なんと無様なのだろう。

 

「申し訳ありません、董卓様……」

 

 眼をつぶったまま自嘲や謝罪の言葉を言い連ねていると、ふと、右横に立つ気配に気がついた。

 眼を開くと、そこにいたのは自分を下した決闘者、鳳統。

 

「鳳統か。なんだ、私を嘲笑いにきたのか?」

「……いいえ。そんなこと、ありません」

「別にいいさ。私は敗者であり、貴様は勝者。敗者は勝者のどのような命令にも従わなければならない。それがこの世界の掟。さあ――」

「華雄さん!」

「っ!」

 

 ――好きなようにするがいいさ。

 

 そう言おうとしていたが、鳳統の叫びによって遮られた。それは、まるで自分を叱るようではないか。

 自分は何か間違ったことを言っただろうか。

 

「私は、あなたを害するなんてこと、絶対にしません。

 いえ、私だけではありません。『チーム劉備』には、敗者を辱めるなんてことをする人は、誰一人としていません」

「……だが!」

「納得出来ませんか? ……でしたら、仕方ありません。勝者として、貴女に命令をさせて頂きます。この命令に対して、拒否権は認めません」

「……。ああ、わかった」

「それでは、命令です。『今後あなたは私達のチームに籍を置き、劉備様と北郷一刀様のために、その力を振るって頂きます』」

「な!? そんな命令――」

「拒否権は認めません、そう言いましたよね?」

「ぐっ……! だが、いいのか? 『チーム董卓』の一員である私をチームに加えれば、連合内でどのような立場に立たされるか……」

「確かに、そうですね。えっと、では、ひとまず捕虜ということでどうでしょう?」

「いや、そういう問題では無くてだな」

 

 てっきり処分されてしまうのではないかと考えていた矢先に、チーム参加の依頼……いや、命令か。予想もしていなかった鳳統の言葉に、華雄は戸惑う。

 すると、2人の前に新たな人物が歩み寄ってきた。

 

「華雄さん、雛里はこうなっちゃったら絶対に考えを曲げないから、諦めたほうがいいよ?」

「貴様は、『天の御遣い』……」

 

 それは、自分達のデュエルを見届けていた、白く輝く衣を纏う男、北郷一刀であった。

 

「雛里ってさ、内気で恥ずかしがり屋さんなんだけど、一度こうと決めたら、絶対に譲らないんだよ」

「内気? とてもそうは見えないが……」

 

 一刀へと向けていた視線を鳳統へと戻す。そこには「あわわ……」と慌てながら帽子を深く被り、御遣いの足をポコポコと叩く少女がいた。

 

「……」

「あはは、これでも少しは改善されているんだけどね」

 

 今の鳳統からは、先程までの力強さは感じられない。もしかしたら、デュエル中やその前後で性格が変わってしまうのかもしれない。確か、自分の主もそんな感じだった。

 

「まあ、そういうことだからさ。俺達と一緒に来てもらってもいいかな? それに……」

「それに、なんだ?」

「俺達は、董卓さんを助けたいって思ってる」

「……は?」

 

 自分を害さないだけでなく、主を助けたい。目の前の男はそう言い放った。更なる衝撃の言葉に、呆けた声を出してしまう。

 

「華雄さんのデュエルを見ていて思ったんだ。華雄さんからは自分のデッキに対する絶対的な自信と共に、主である董卓さんを必死に守ろうとする思いが感じられた。

 だから、貴女がそこまでして守ろうとする人が、都で暴政をするような悪人だなんてこと、ある筈がないってね。

 雛里もそう思っているよ。な、雛里?」

 

 男は迷いなく言い切り、少女は言葉こそ発しなかったが、コクコクと何度も頷いている。

 

「ククク、ハハハハハ! 面白い、面白いぞ、貴様等!」

「……え、えっと、華雄……さん?」

「あわわ……」

 

 突然笑い出した自分をおかしく思ったのか、目の前の2人は少し戸惑っている。

 

「いやなに、敗北したからといってウジウジしていた自分がバカらしく思えてな。……いいだろう。貴様等の命令に従い、『チーム劉備』の一員となることをここに宣言しよう!」

「……華雄さん!」

「我が名は華雄。故あって真名は持ち合わせていない。すまないな」

「気にしないでくれ。俺は北郷一刀、字も真名も無い国から来た。北郷でも一刀でも、好きなように呼んでくれ。さあ、雛里も」

「……は、はい! 姓は鳳。名は統。字は士元。真名はひにゃりでしゅ……あわわ、噛んじゃいました」

 

 最後の最後で噛むとは、なんとまあ締まらないものだ。

 だが、これはこれで面白いのかもしれない。主・董卓達もこの2人がいるチームと行動を共にすれば、今の自分のような笑顔を見せてくれるだろうか。

 敗北によって鬱屈していた心は、いつの間にか見上げた青空のように澄み渡っていた。

 

 

 

 

 

 汜水関の奪取。

 成し遂げたのは、『チーム劉備』に所属する決闘者、鳳統。

 

●オマケ1……デュエル終了直後の『チーム孫策』の様子

 

 

雪蓮「《マアト》の効果発動! 宣言するカードは《死者蘇生》、《大嵐》、《オネスト》! やった、全部正解♪」

冥琳「さっきの《マインドクラッシュ》といい、……どういう勘してるのよ、貴女は」

兵士(どうしよう、声かけづらい)

 

 デュエル中でしたとさ。

 

 

 

●オマケ2……いつの日か、月のデュエルを見ることとなった雛里の反応

 

 

月「私は魔法カード《七星の宝刀》を発動します。手札の《焔征竜ブラスター》さんを除外して、カードを2枚ドロー。そして、ブラスターの効果でデッキから《八俣大蛇》さんを手札に加えます」

雛里「いいな、あのカード欲しいな……」

 

 『ほうとう』

 

 

 

●オマケ3……とある管理者の日常風景

 

 

于吉「《ブラック・マジシャン》で攻撃ィ!」

左慈「誰か助けて」

 

 それでもデュエルに付き合う苦労人、左慈。

 

Q.フィールって?

A.ああ!

 

Q.なぜこの対戦カードにした?

A.紅蓮の悪魔の仕業でございます。

 

Q.水鏡女学院ってどういうところ?

A.美少女たちがデュエルを学ぶところ。

 

Q.こんなの雛里じゃない!

A.一刀さんのデュエルカウンセリングの結果……、というのは半分冗談。正直やりすぎた。

 

Q.華雄さんのデッキってどうなってるの?

A.斧持ったモンスターに斧を装備して殴るだけのデッキ。初心者でもわかりやすいぞ!

 

Q.《勇気の旗印》に文字を書き込んでいるようですが、ルール上問題にはなりませんか?

A.この外史では、《勇気の旗印》のみ問題ないという裁定となっております。

 

Q.相棒がやたらとデュエルを挑んでくるんだが。(管理者Aさん)

A.挑まれたデュエルは必ず受けましょう。

登場人物紹介その1

 

『鳳統』

 バーン大好きの魔女っ娘決闘者。1ターンキルも大好き。周りからは『魔砲幼女☆ひなりん』と呼ばれている。

 この娘のせいで初期ライフ8000にせざるを得なくなったと言っても過言ではない。

 一刀先生のデュエルカウンセリングによってキャラ崩壊。

 今回の使用デッキは【連弾グスタフ】

 「グスタフいらないよね」とか言ったら怒るらしい。

 多額を支払ってグスタフを買った直後に再録決定を知り、ショックでしばらく寝込んだ。

 《カタパルト・タートル》がエラッタされた時はちょっぴりへこんだ。

 《ダーク・ダイブ・ボンバー》がエラッタされ無制限になった時は狂喜乱舞した。

 

『華雄』

 真名は無い。オリジナルの真名を与える予定も一切無い。ごめんね。

 他のキャラと比べてキャラ崩壊の度合いは少なめ。他がブレまくってるので相対的にそう見えるだけかもしれないが。

 使用デッキは【斧ビート】

 斧を持ったモンスターに斧を持たせてひたすら殴るデッキ。

 そこ、紙束とか言っちゃいけない。

 


 
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