剣丞救出の歓喜も一段落したところで、管輅が切り出した。
「さて、お次はどなたをお救いになられますか?」
その言葉に真っ先に反応したのは蒲公英だった。
「タンポポ、翠姉様を助けたいの。…いいかな?」
蒲公英は周りを伺う。
それぞれに近しい人がおり、一刻も早く助けたいはずだ。
自分だけが我侭を言うわけにはいかないが、
「私は構いません。翠さんが仲間になってくれれば心強いです!」
「私も異論はありません」
「はい。蒲公英さんのお姉さまを助けましょう」
「鞠もいいのー!」
「あ、ありがとう!みんな!」
笑顔で承諾する仲間たち。
実際に剣丞が助けられたのを目の当たりにし、心に余裕も出てきたのだろう。
「翠姉ちゃん、か……」
剣丞は記憶の中の姉を思い返す。
姉ちゃんを一言で言えば、体育会系筋肉小馬鹿。
春蘭姉ちゃんほど完全脳筋ではないけど、少し考えが足りないところがあった。
だけど何故か、こと乗馬に関して言えば、他の追随を許さないほど上手かった。
俺が戦国の世に放り出されても最低限の乗馬に困らなかったのは翠姉ちゃん、あと霞姉ちゃんなどの指導の賜物だった。
あと、トイレがかなり近いらしく、相当大きかった伯父さんの家に、異常とも言えるほど多くトイレが設置されていたのは、翠のためだ、と伯父さんが遠い目をして、何かを思い出しながら、しみじみと言っていたのを思い出した。
ん……そう言えばさっき…
「あのさ、蒲公英姉ちゃん」
「なにー?」
「蒲公英姉ちゃんが馬岱、なんだよね?」
「そだよ?」
「あれ?それじゃ翠姉ちゃんて、あれ?」
確かさっき、なんて言ってたっけ?
「馬超だよ」
「ぃえぇぇぇぇええぇ~~~~!!!??」
馬超といえば、三国志の中でも相当上位の有名人だ。
あの翠姉ちゃんが、その馬超!?
…でも、そうだよな。俺が戦国時代に飛ばされて、あの信長やら信玄やら謙信やらと夫婦になったんだから、三国時代に行った伯父さんは、そりゃ三国志の有名どころとそういうことになったんだよなぁ。
……てことは、姉ちゃんの中に曹操とか劉備とかがいるんだろうか?
これから姉ちゃんたちを助けるのが怖くなってきたな……
「それでは、どなたが向かわれますか?」
そんな剣丞の心の内など、どこ吹く風。
管輅が人選を進める。
「タンポポは当然として…明命、来てくれる?」
「もちろんです!一緒に翠さんを助けましょう!」
「ありがとう!後は……」
「鞠も行くの!」
元気よく手を挙げる鞠。
「鞠ちゃん大丈夫?疲れてない?」
「大丈夫なの。鞠、全然疲れてないのっ」
むんっ、と可愛らしく気合を見せる鞠。
確かに問題はなさそうだ。
「ありがとう。お姉様は鬼の大軍と戦ってたから、鞠ちゃんが来てくれると助かるよ」
「……それじゃあ、俺も行っていいかな?」
「えっ?」
控えめに手を挙げる剣丞を、蒲公英がビックリしたように見る。
「剣丞って、戦えるの?」
蒲公英は他のものに尋ねる。
戦国の面子は知っているだろうし、明命も救出の時に、彼の戦いぶり?を見ているはずだからだ。
「う~ん……一刀様よりはお強いと思いますけど……」
戦力としては……、と言葉を濁す明命。
剣丞も歴史に名を残すような一騎当千の武者と比べられてはたまらない。
「そんなことありません!旦那様は、とてもお強いです」
「そうなのー!鬼との戦いなら、剣丞は役に立ってくれるの!」
双葉は全面的に、鞠は半面的に剣丞を擁護する。
「……そうなの?」
「うん。俺のこの刀は見た目は普通の刀なんだけど、鬼相手には切れ味が数段増すんだ。だから鬼相手なら、少しはお役に立てると思うよ?」
スッと、半分ほど鞘から抜いてみせる剣丞。
確かに何の変哲もない、明命のものとそんなに変わらない刀だ。
しかし、二人の証言もあるし、剣丞にも驕るような口振りでもないので、本当に勝負できる実力はあるのだろう。
「分かった。じゃあ一緒に姉様を助けよう、剣丞!」
「うんっ!」
こうして翠を助けるために、蒲公英・明命・鞠・剣丞の四人が時を超えたのだった。
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DTKです。
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、8本目です。
剣丞を救出し、次は翠を救出に向かいます。
今回はちと短めの導入です。
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