No.663912

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百十一話 海中の修学旅行(前編)

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2014-02-16 19:07:08 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:23293   閲覧ユーザー数:20312

 早くも5月が終わり、6月上旬。

 

 「修学旅行♪修学旅行♪」

 

 テンションが先程から上昇中のレヴィ。気持ちは分かるが少しは落ち着いて貰いたい。

 

 「落ち着けレヴィ。恥ずかしいであろうが」

 

 「気にする必要無いよ。周りに誰もいないんだし」

 

 ディアーチェが窘めてもこの調子だ。

 

 「ユウキは止めないんですか?」

 

 「アレは何回言っても意味無い様な気がするし」

 

 人目が付き始めてから止めればいいだろうと俺は判断する。

 

 「修学旅行♪修学旅行♪」

 

 ん?

 レヴィのいる方向とは別の方から聞こえる声。

 

 「姉さん、もう少し落ち着こう?は、恥ずかしいよ//」

 

 「アリシアったら余程楽しみなのね♪」

 

 レヴィ同様にテンションの高い奈々様ボイスに、やや恥ずかしがり気味な奈々様ボイス。そして2人の母親のボイス。

 金髪が人目を惹くテスタロッサ姉妹とプレシアさんが俺達の視界に映る。

 

 「アリシア、フェイト、プレシア、おっはー!!」

 

 「あ、長谷川家の皆じゃん!おっはー!!」

 

 『イエーイ!!』とハイタッチを交わし、テンションが段々と上昇するレヴィ、アリシア。

 

 「「「「「「おはようございます(おはよう)」」」」」」

 

 俺達長谷川家とテスタロッサ家もお互いに挨拶する。

 

 「レヴィもテンション高いんだね」

 

 「昨日は何度も持ち物の確認してましたから」

 

 「姉さんもだよ。小学校の時の修学旅行も同じ様なテンションだったしね」

 

 苦笑しながら言うフェイト。容易に想像出来るなぁ。

 

 「プレシアさんも上機嫌そうですね?」

 

 「そりゃあ私も楽しみにしてたもの♪」

 

 ニコニコ笑顔のプレシアさん。

 そう言う割にはあまりにも大人しいのが意外だ。フェイト、アリシアと一緒に旅行なのだからてっきりテンション跳ね上がって『ヒャッホーッ!!』とか叫びそうな人なのに。

 

 「「修学旅行♪修学旅行♪」」

 

 レヴィとアリシアは何時の間にやら肩を組んでいる。

 このテンションは学校に着くまでの間、ずっと維持されていた………。

 

 

 

 で、海鳴駅から日本の首都、東京に出て、そこから新幹線に乗り換える。

 

 「楽しみだな~♪楽しみだな~♪」

 

 新幹線の座席ではしゃいでいるレヴィ。この車両は海中の生徒だけとはいえ、少し落ち着けよお前。

 

 「静かにせい!」

 

 ゴツンッ!

 

 「ふぎゃっ!!」

 

 あ、ディアーチェの拳骨が落ちた。頭を両手で押さえ、痛がるレヴィ。

 可哀相に…。

 シュテルとユーリは『自業自得ですね』と言う様な目でレヴィを見ている。

 長谷川家の4人娘は同じ座席に固まって座っていた。

 他にはフェイト、アリシア、リンディさん、プレシアさん、椿姫のメンバーとなのは、はやて、アリサ、すずか、澪のメンバー。

 俺は謙介、直博、誠悟、亮太のお馴染みグループを形成していた。

 ちなみに西条は遅刻した事により海鳴市に置いてけぼりだ。おかげで女性陣は物凄く機嫌が良い。

 

 「誠悟!!私と勝負だ!!」

 

 突然沸いて出たアリシア。その手にはヴァ〇ガー〇のデッキが納められたホルダーがある。

 

 「むむ…勝負を挑まれたとあっては退く訳には行きませんなぁ…」

 

 誠悟も不敵な笑みを浮かべ、リュックサックからデッキホルダーを取り出す。準備良いね君等。俺も持ってきてるけどさ。

 アリシアは6人座席の空いてる場所…俺の隣に腰を下ろし、誠悟も直博と座席を替わり、アリシアの正面に座る。

 

 「てか旅館に着いてからファイトしろよ」

 

 膝の上に置きながらやると、いざ動きたいときに動けんぞ。トイレ行く時とか一旦カードどけないといかんし。

 

 「だってヒマなんだもーん」

 

 「アリシアさんの言う通りだ。何かして時間潰さないと退屈で仕方ない」

 

 「…マンガ貸してやるからこれでも読んどけ」

 

 俺がリュックサックから取り出したのはマンガ本。

 他にもゲームやらライトノベルやらを持ってきてるが、ソレ等は全て宝物庫に収納中。リュックサックに入れてる娯楽物は数冊のマンガ本と、P〇P…後はヴァ〇ガー〇のデッキホルダーとトランプか。

 

 「勇紀、準備が良いね」

 

 「どうせ、電車やバスの移動中はヒマになるだろうと思ってたしな」

 

 アリシアと誠悟にマンガを手渡す。

 俺は俺でリュックサックの中からジュースとお菓子を取り出す。

 

 「あ、そのお菓子私にも頂戴」

 

 「僕も」

 

 お菓子の催促をしてくる隣の席のアリシアと通路に立っているレヴィ。

 何時の間に来たレヴィ?

 

 「ほれ」

 

 まあ、欲しいと言うので分けてやる。

 レヴィは立ったまま、アリシアはマンガを読みながらお菓子を食べる。

 

 「レヴィ、座れよ」

 

 「座ろうにも座席が空いてないよ」

 

 「いや、自分の席に戻れば良いと思うんだが?」

 

 「えー!!?」

 

 何でそんな嫌そうな声上げんの?

 

 「アリシア、僕と席変わってよ」

 

 「ヤダ。私はマンガ読んでいて忙しい」

 

 「自分の席戻っても読めるでしょ?変わってよ」

 

 「レヴィが戻れば万事解決でしょ?」

 

 「「……………………」」

 

 「「う~~~……」」

 

 コラコラ、唸り合うな睨み合うな。

 

 「ねえ勇紀。最初に座ったのは私なんだからここにいるのは当たり前だよね?」

 

 「家族である僕の方がユウと一緒にいるべきだと思うよね?」

 

 そこで俺に振るな。

 

 「他の4人に聞け」

 

 俺は謙介、直博、誠吾、亮太の判断に任せる事にした。

 レヴィ、アリシアは視線で4人に意見を求める。

 

 「じゃあ、僕がどこうか?」

 

 窓側に座っていた亮太が小さく挙手して言う。

 

 「良いの!?」

 

 「うん。僕は別に他の席に座っても良いから」

 

 リュックサックを持って『ごゆっくりー』と言葉を残し、亮太は別のグループの空いている席へ移動する。

 レヴィは嬉々とした表情で亮太の座っていた席に腰を下ろす。

 

 「いやー、亮太はやっぱり良い人だね」

 

 「……そうだな」

 

 レヴィの我が儘を聞いて貰って申し訳ないよ。

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 ……何つーか、突き刺す様な視線が俺に向けられてる気がするんですけどねぇ?

 そんな事を知る由も無いアリシアとレヴィ。

 片やマンガを読み、片やお菓子を食べ、ジュースを飲みながらはしゃぐ。

 謙介、直博、誠悟は温かい眼差しを向けるだけ。

 新幹線が目的の駅に到着するまで、俺はずっと痛い視線を受け続けているのだった………。

 

 

 

 『広島ー、広島ー』

 

 目的地の駅である広島駅に新幹線が到着し、下車する俺達海中の先生と生徒一同。

 ここからバスに乗り換え、広島の平和記念公園で昼食。

 昼食時間を含め、2時間程自由時間があって再びバスに乗り、宿泊先の旅館に向かうという流れだ。

 で、バス乗り場に移動した俺達はそのままバスに乗車する訳なんだが…

 

 「いい?恨みっこ無しの一発勝負よ?」

 

 「「「「「「「「「「勿論!!」」」」」」」」」」

 

 アリサの言葉にシュテル達長谷川家4人娘、なのは達魔導師組、すずかが力強く頷き

 

 「「「「「「「「「「ジャンケン……ポン!!」」」」」」」」」」

 

 バスの前でジャンケンし出した。

 

 「「「「「「「「「「あいこでしょ!!あいこでしょ!!あいこでしょ!!」」」」」」」」」」

 

 幾度となくあいこが続くが

 

 「しまったーーー!!?」

 

 「にゃーーーーー!!?」

 

 「そんなーーーー!!?」

 

 まずディアーチェ、なのは、フェイトが

 

 「ま…負けた」

 

 「うう……しくじったわ」

 

 次にレヴィ、リンディさん…

 

 「くうぅぅぅ!!チョキを出した自分が恨めしいです!!」

 

 「ああ……またとないチャンスが……」

 

 「うう…勝てなかったよ……」

 

 シュテル、プレシアさん、すずか…

 

 「嘘ーーー!!?」

 

 「うわーーん!!!わたしのアホーーーー!!!!」

 

 「認めたくないですーーー!!!!」

 

 アリシア、はやて、ユーリが脱落し

 

 「まあ、当然の結果ね」

 

 言い出しっぺのアリサが最後まで勝ち残った。

 

 「……で、ジャンケンで何決めてたんだ?」

 

 俺は勝者のアリサに尋ねてみる。

 あれだけの気迫を出していたんだ。ちょっと気になる。

 

 「バスの席決めよ」

 

 そんな事で!?

 

 「じゃあい、行くわよ//」

 

 アリサは俺の腕に自分の腕を絡め、引っ張る。

 

 「アリサちゃん!!それは流石にズルいんじゃないかな!?」

 

 「そうだよ!!席決めだけの筈でしょ!!」

 

 なのはとすずかが何やら抗議してるんですが?

 

 「う…五月蠅いわね!!勝者の特権よ!!////」

 

 「「「「「「「「「「聞いてませんよ!?(聞いてないよ!?)(聞いておらんぞ!?)(聞いとらんで!?)(聞いてないんだけど!?)」」」」」」」」」」

 

 皆さん一斉に猛抗議してますがアリサは無視して俺をバスに連行する。

 バスに乗って空いている席の窓側に俺が座ると、隣の席には顔をやや赤くしたアリサが座る。

 暑いのか?

 

 「ジュースかお茶飲むか?」

 

 「…何でそういう事聞いてくるのか理由を聞いても良い?」

 

 「ちょっと顔赤いから。暑いのかと思ってな」

 

 とりあえずリュックサックから水筒を出す。

 

 「大丈夫よ。別に暑いって訳じゃないし、喉も渇いてないから(…まあ、気付く訳無いわよね。勇紀だし)」

 

 「そうか…」

 

 まだ顔は赤いけど……本人が『大丈夫』と言う以上信じるしかないよな。

 やや不機嫌なシュテル達も乗り込み、俺達のクラスが全員乗車してるのを確認した先生。

 バスがゆっくりと動き出す。

 

 「ねぇ…」

 

 「ん?」

 

 窓の外を眺めていたらアリサが声を掛けてきた。

 

 「勇紀は…この髪形についてどう思う?」

 

 「どうって?」

 

 「お…可笑しいとか思わない?」

 

 「別に…似合ってると思うけど」

 

 「そ……そう……(良かった)////」

 

 アリサは聞くだけ聞いたらプイッと顔を背けた。

 今、問われた質問の意味は『アリサがショートカット(・・・・・・・)にしたのが似合っているかどうか?』という事だ。

 今朝、会った時に髪をバッサリ切り落とし、短くなっていた髪形のアリサを見た時はビックリしつつ、『あ、やっとアリサの髪形がSts仕様になった』と思った。

 原作では中学3年になった時点で短くなっていたからな。昨日までは長髪のままだったから『Stsもこのままなんだろうか?』って思ってたし。

 別に長髪のままでも良かったとは思うけどな。まあ、長かろうが短かろうが似合ってるのは事実だ。そこはアリサの好きな髪形にすればいいだろう。

 

 「それとね勇紀。アンタ昔、私の彼氏役やってくれた事あったじゃない?」

 

 「また随分と懐かしい話を持ち出すなぁ…」

 

 どこぞの御曹司君達と護衛のSPさん達をボコった時の事だよな。

 

 「実はここ最近、社交界のパーティーに参加したらバニングス家とお近付きになろうって連中がまた増えて来てるのよ」

 

 「…それはまた」

 

 アリサが溜め息を吐きながら教えてくれる。

 一時期は落ち着いた筈のアプローチが徐々に増えてきだしたという。

 しかも今では前回の御曹司君達の年齢層より年上の人達もアプローチしてくるとか。

 ……アレだな。アリサも成長してる訳なもんで、アプローチしてくる輩が増えたんだろうよ。

 段々子供っぽさが抜け、元から大人の様に高かった精神が更に高まったり、身体つきも『大人』になってきてる訳だし。

 バニングス家の『家柄』とアリサの『身体』。アプローチする連中からするとこれ程の優良物件は存在しないって事だろう。

 そういう意味では月村家も当てはまるけど、社交界のパーティーには恭也さん付きの忍さんが主に参加してたのが理由で、すずかはアリサ程目に留まってない様だ。

 すずか本人もあまり社交界のパーティーとかには出たく無さそうな感じだし。

 

 「あまりにもしつこいから私は言ってやったのよ。『私には小学校の頃から付き合ってる異性がいます!!』って」

 

 そう言ってチラッと俺を見るアリサ。

 …何だこの既視感(デジャブ)は?

 

 「だ…だからね。悪いんだけどほとぼりが冷めるまでわたs「「「「「「「「「「却下ーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」……ちょ!?何!!?」

 

 う、ウルセー…。

 あまりにも大音量で騒がれたもんだから耳が『キーン』ってなってるよ。

 その大音量を出したクラスメイトの一部が物凄く俺達を睨んでいらっしゃる。

 一部……男子は謙介、直博、誠悟、亮太、吉満を除く全員が俺を、女子はシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、なのは、フェイト、はやて、アリシア、すずか、リンディさん、プレシアさんがアリサを睨んでいた。

 椿姫はこの状況をニヤニヤしながら見ており、テレサと澪は『またか…』みたいな呆れ顔をしている。

 とりあえず椿姫は後で殴ろう。

 

 「おい長谷川テメー!!バニングスさんの彼氏役をした事があるだと!!?ふざけんな!!!」

 

 「何でテメーがそんな美味しい思いを……今回は俺にその役譲れ!!!」

 

 「いや!!是非俺に!!!」

 

 お前等ちょっと落ち着けや。

 後何気に彼氏役に立候補してるけど、そういうのはアリサに直接言え。

 

 「アリサ、自分の問題にユウキを巻き込まないで下さい」

 

 「アリサちゃんは賢いんだから、それぐらいの問題なら自分で解決出来るよね?出来るよね?」

 

 シュテル、すずかを始め皆黒いオーラを僅かに滲み出している。

 

 「……てか、静かにしろよ」

 

 バスの運転手さんとシュテル達を除く女子連中に迷惑だろうが。

 しかし喧騒に包まれたバス内で俺の口から出た言葉は隣に座っているアリサ以外、誰の耳にも届いていない様だった………。

 

 

 

 広島平和記念公園での昼食、自由時間を終えて、俺達はバスで宿泊する旅館に移動する。

 バスが旅館に着いた頃には空もオレンジ色に染まり始めていた。

 

 「よぉ嫁達。遅れながら参上したぜ。俺様がいなくて寂しかっただろ?」

 

 「「「「「「「「「「(むしろ来なくて良かったのに)」」」」」」」」」」

 

 旅館前にいたのはまさかの西条。

 コイツ、自腹で追い掛けてきやがった。

 西条の姿を見た瞬間、シュテル達の顔が絶望感で一杯一杯だったし。

 そんな西条はシュテル達に近付いて来た瞬間、先生に引っ張られ、説教され始めたが。

 俺達は西条を放って旅館に入り、案内図を見てから移動する。

 

 「俺達の部屋は………ここか」

 

 俺、謙介、直博、誠悟、亮太の5人は荷物を持って旅館で寝泊まりする部屋を見付け、荷物を置いて寛ぎ始めた。

 部屋の中は完全な和室だ。ベッドなんかは無く、押入れの中には畳の上に敷いて寝る布団が入っていた。

 

 「さて……今から夕食の時間まで約1時間…何しようか?」

 

 「覗き」

 

 「「テレビ観よう」」

 

 「寝る」

 

 上から謙介、直博と亮太、誠悟である。

 

 「じゃあ俺もテレビ観ようかな。誠悟、寝るなら軽く寝ていいぞ。夕食の時間になったら起こしてやるから」

 

 「僕の意見は無視かい!!?」

 

 当然だろ。

 

 「じゃあ頼む」

 

 誠悟は畳の上で横になり、小さく寝息を立て始めた。

 

 「覗きは?ねえ覗きは?」

 

 「行くなら1人で行けや」

 

 『シッシッ』と手で払う動作をする。

 そもそも風呂に入れる時間は夕食後からだ。今行っても誰も入ってないぞ。今日は修学旅行で来ている俺達以外にお客さんいないみたいだし。

 

 「ならば僕1人で桃源郷に行かせてもらう!!後悔するなよ!!」

 

 しねえよ。

 部屋を飛び出して行った謙介を見送った後、テレビを点ける。

 

 「「「……………………」」」

 

 テレビを点けるとクイズ番組がやっていた。

 俺達はチャンネルを変える事無く、そのクイズ番組を見ていた。

 内容はともかく、時間潰しにはなってくれる。

 途中でCMに入り、チラッと携帯で時間を確認すると食事の時間の10分前。

 

 「誠悟。起きろ」

 

 軽く誠悟を揺すって起こす。

 ちょっと起こすには早いかもしれんがギリギリに起こすのもアレだし。

 

 「……ん?……もう時間か?」

 

 『ふあぁ…』と欠伸をしながら目を覚ます誠悟。

 

 「ちょっと早いけどな。もう起きとけ」

 

 「……おう」

 

 ちょっと気怠そうにしながら返事する誠悟。

 そこへ部屋の扉が開き、『誰かが夕食の知らせにでもやってきたのか?』と思って顔を向けると

 

 「ハア~…ハア~…」

 

 汗をビッシリと掻き、息を切らしている謙介の姿があった。

 服も着崩れしてるし、どうしたんだ?

 

 「謙介、何があった?」

 

 直博が直球に尋ねる。謙介はその問いに素直に答える。

 

 「じょ…女子風呂を覗けるベストスポットを探してたらみ、見たんだ。阿部先生と吉満が…吉満がああぁぁぁぁ…」

 

 「「「「……………………」」」」

 

 その先は言わなくても理解出来た。

 

 「あ…危うく食われかけたよ。逃げ切れて良かった。グスッ…ほんどう゛によがっだよお゛お゛お゛ぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 しまいには泣き崩れる謙介。

 今回食われなかったのが余程嬉しかったのだろう。

 そんな謙介の肩を亮太がポンと叩く。無言で謙介の偉業(?)を称えている。

 

 「…とりあえず顔洗ってこい。もうすぐ夕食だからよ」

 

 「う゛ん゛っ!!」

 

 涙と鼻水でグチャグチャの顔をした謙介が洗面所へ向かう。

 今回は無事に生還出来て本当に良かったな、謙介………。

 

 

 

 「さて諸君!!準備は良いか!!?」

 

 「「「「「「「「「「イエッサー!!!」」」」」」」」」」

 

 「これより僕等は己が全てを懸けて女子風呂(とうげんきょう)の覗きを敢行する!!そこに至るまでには様々な困難があるだろう!!時には仲間の死を涙を呑んで見送らなければならないかもしれない!!だが僕等が力を合わせればきっと乗り越えられる!!!そして己が目に焼き付けよう!!女子風呂(とうげんきょう)での光景を!!僕等の希望に満ちた世界の先を!!」

 

 「「「「「「「「「「イエッサー!!!」」」」」」」」」」

 

 「よし!!では行くぞ!!出陣だ!!銅鑼を鳴らせ!!」

 

 「「「「「「「「「「ウオオオオォォォォォォッッッッッッ!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 「(…銅鑼なんてねーし)」

 

 ドタドタと足音を鳴らし、俺達の部屋から出陣する男子生徒一同と生徒達を鼓舞した謙介。

 どうやら『女子風呂を覗く』という行為を諦めた訳では無い様だ。

 夕食前に『お前が無事で良かった』と思った俺の気持ちを返せ。

 

 「勇紀、止めないのかい?」

 

 「…いや、あれだけ男子を鼓舞したお前は何で残ってるんだよ?」

 

 そう…謙介だけは未だに俺達の部屋に残っている(・・・・・・・・・・・)

 直博、誠悟、亮太の3人は一足先に風呂に向かっていた。

 

 「ふっ…彼等は僕にとって使い捨ての駒さ。彼等が先生や他の女子に見付かってボコられている内に僕1人が女子風呂(とうげんきょう)の光景を収めるのさ。真の勝者はこの僕だけで充分だ」

 

 えげつねぇ作戦使いやがるなコイツ。アイツ等全員が囮か。

 

 「というかそんな事を聞いて俺がお前を見逃がすとでも思ってんのか?」

 

 「勿論思っていない。そこで僕と取引しようじゃないか」

 

 取引?

 俺が疑問に思っている間に謙介はリュックサックから1冊の本を取り出す。

 

 「勇紀がこのまま見過ごしてくれるならこの秘蔵のエロ本を……」

 

 「ふんっ!」

 

 ズムッ!!

 

 「ぶらっ!!?」

 

 謙介の腹に一撃入れて意識を刈り取る。

 これで当分目は覚めないだろう。

 

 「(俺も風呂に入るか)」

 

 リュックサックからバスタオルと着替え一式を取り出し、部屋を後にする。

 俺が脱衣所で服を脱ぎ、風呂まで来たら死屍累々としている男子生徒達がいた。

 

 「……何だコレは」

 

 コイツ等、さっきまで女子風呂を覗くのに躍起してたクラスメイトの男子達じゃん。ついでに説教を終えたっぽい西条が倒れてる姿も発見した。

 

 「ふっふっふ。覗きはいかんぞぉ~覗きはぁ~」

 

 「ん?」

 

 誰かいる。

 風呂に浸かっている人は……ウィグル先生だった。

 

 「長谷川もきたのか」

 

 「良い湯加減だよ」

 

 「極楽極楽♪」

 

 直博、亮太、誠悟の姿もある。

 

 「この死体の山は何なんだ?」

 

 「「「ウィグル先生に敗れた連中」」」

 

 あー……成る程。

 覗きを決行しようとしたが、ウィグル先生に阻止されたのか。

 風呂に来る途中でシュテル達に念話で馬鹿達の行動を伝えといたけど、『もう心配する必要は無い』って言っておくか。

 俺も風呂に浸かるが……確かにコレはいい湯加減だ。

 

 「んあ~~~……♪」

 

 今日の疲れが取れる様な心地良さ。

 僅かに睡魔も襲ってくるが風呂で寝たら大変な事になるので風呂の湯加減に身を委ね、睡魔には抗う。

 

 「そういや謙介は?」

 

 「部屋で寝てるぞ」

 

 俺が強制的に寝かせたがな。

 

 「珍しいな。アイツがこの機に乗じて覗きをすると思ってたんだが」

 

 「夕食前の出来事が堪えてるんだろ」

 

 「「「あー…」」」

 

 それらしい理由を述べると3人は納得した。

 仮に謙介が目覚め、ここに来てもウィグル先生を倒さぬ限り女子風呂は覗けんという事だ。

 俺は旅館の風呂を満喫しながら死屍累々な男子達を眺めていた………。

 

 

 

 「ユウキ、私達の部屋に来ませんか?」

 

 風呂上り。

 部屋で寛いでいたらユーリがやって来て俺を誘ってきた。

 

 「行ってもいいけど何すんの?」

 

 「皆でゲームとかして遊ぶんです。楽しいですよ」

 

 その皆っていうのはいつものメンバーだろう。

 

 「あ、誠悟も来て下さい」

 

 「俺も?」

 

 「アリシアが『決着をつけよう』と言ってました。ヴァ〇ガー〇で」

 

 「そういや電車ではファイト出来なかったし……丁度良いか」

 

 誠悟も乱入決定。

 

 「俺も一応デッキ持ってくか」

 

 アリシア、誠悟以外に対戦相手がいないのが残念だが。

 俺と誠悟はユーリの後を着いて行き、皆が集まっているという部屋に足を踏み入れる。

 

 「ツモ!!嶺上開花や!!」

 

 「また!?」

 

 「ぐぬぬ…子鴉。我の得意役を真似しおって」

 

 「東場なら対抗出来るのに。後はタコスがあれば」

 

 全自動卓で4人打ち麻雀中のはやて、すずか、ディアーチェ、アリサ。

 

 「ストレートフラッシュです」

 

 「私はフラッシュ…」

 

 「うぅ…僕はブタだよ」

 

 「ワンペアね」

 

 シュテル、なのは、レヴィ、プレシアさんはポーカー。

 

 ドンドンドンドン……カカカカカン……ドンカンドンカカン……

 

 「結構難しいわねこれ」

 

 「そうですね…けど楽しいです」

 

 リンディさんとフェイトは太鼓の達人プレイ中。

 椿姫や澪はいないのか。

 

 「待ってたよ誠悟。今日こそ決着をつけようじゃない」

 

 「ふふふ。俺の方が実力が上だと示そうじゃないかアリシアさん」

 

 アリシアと誠悟の瞳が不気味に輝く。

 ……お前等、P〇Yクオ〇ア使ってんじゃねーよ。

 俺は呆れるしかなかった。

 この『P〇Yクオ〇ア』という能力(チカラ)は俺、アリシア、誠悟が巻き込まれたとある事件の際に得た……というより覚醒した能力。

 今の所ヴァ〇ガー〇ファイト時以外に使い道無いけど。

 ていうか全自動卓は何処から用意した!?

 

 「旅館の従業員さんに冗談半分で言うたら用意して貰えたんや」

 

 マジか。

 

 「ユウキ。私達は何をしましょうか?」

 

 「いや…連れてこられた俺に意見を求められても…」

 

 どうやらユーリは連れて来た後の事について何も考えていなかった様だ。

 

 「何やったら麻雀に混ざるかー?もうオーラスやから次の半荘からやったら入れるでー」

 

 はやてから誘いがかかる。

 

 「ユウキ、どうしましょう?」

 

 「ユーリが入れば?俺見てるし」

 

 「私がですか!?そこまで強くないですよ私」

 

 「運次第では勝てるだろ」

 

 「それはそうですけど…」

 

 悩むユーリをよそにオーラスは始まり、1人1人が牌をツモり、切っていく動作を繰り返す。

 順位的には

 

 1位=はやて

 2位=すずか

 3位=アリサ

 ラス=ディアーチェ

 

 の様だ。

 親はすずか。

 

 「王様、それポンや!」

 

 はやてがディアーチェの捨てた牌を鳴く。

 この局は安手で上がってトップ取るつもりだろう。

 

 「んー……これは?」

 

 すずかが切った牌。

 3人共特に動かず。

 はやての対面にいるディアーチェは牌をツモり……

 

 「槓だ!」

 

 手牌を4枚倒し、王牌からツモる。

 

 「(子鴉からは跳満直撃か倍満ツモで逆転出来る)ならば立直あるのみよ!!」

 

 1000点棒を卓上に出し、牌を横向けにして宣言する。

 今のディアーチェの手牌の役でははやてに直撃もしくはツモ和了(あが)りでも届かない。裏ドラを乗せ、跳満直撃か倍満ツモに賭けた様だ。

 アリサは…

 

 「…現物を切るわ」

 

 ディアーチェが立直宣言した牌と同じ牌を切る。

 で、はやてだがツモった牌を見てニヤリと笑みを浮かべる。

 

 「悪いなぁ王様。ツモってもうたわ。断公九(タンヤオ)のみ」

 

 「子鴉貴様ーーー!!!!」

 

 『ガタッ!!』と荒々しく音を立てて椅子から立ち上がり、はやてを睨むがはやて本人はディアーチェの視線を軽く受け流している。

 可哀相に……逆転できる可能性があった手をゴミ手で流されて終局だもんなー。

 

 「終わったわねー」

 

 「はやてちゃん強いねー」

 

 アリサとすずかはパタンと手牌を伏せて一息つく。

 

 「むぐぐぐぐ……」

 

 悔しそうに唸っているディアーチェ。

 

 「ま、紫天の王より夜天の王の方が強いっちゅー事がハッキリしたなぁ」

 

 『ハッハッハ』と笑うはやて。

 その様を見たディアーチェの怒りゲージは急上昇だ。

 てか誠悟いるのに『紫天の王』とか『夜天の王』なんて単語使うなよ。ヴァ〇ガー〇に夢中っぽいから良いけどさ。

 

 「残念だったなディアーチェ」

 

 「うう……ユウキーー!!」

 

 ディアーチェが泣きついてきた。

 俺の胸元に顔を埋めてきたので、とりあえず抱きしめて『よしよし』と頭を撫でて慰めてやる。

 

 「…………(んふ~♪)////」

 

 フルフルと小刻みに震えているディアーチェ。

 余程悔しかったんだなぁ。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

 はっ!!?

 いつの間にかヴァ〇ガー〇に熱中してるアリシアと誠悟以外の面々がコチラを睨みつけている。

 

 「…サア、ツギノイッキョクウトカー」

 

 「トンバデマクッテヤルワ」

 

 「ウフ……ウフフフフフフフ」

 

 卓についているお三方のプレッシャーが半端無い。

 

 「ユーリ、任せた」

 

 「…ユウキガウテバイイジャナイデスカ」

 

 カタコトは止めよう。怖すぎるから、いやマジで。

 

 「打ちたいのは山々なんですけどね…」

 

 ディアーチェさんがいつの間にか俺の背中に手を回して抱き着いてるので打とうにも打てないんですよ。

 

 「(た、たまにはジークの代わりに我が抱き着いていても……良いであろう、うむ!)////」

 

 ディアーチェの抱き着く力が増す度に周囲からのプレッシャーも増していく。

 皆さん凄いですね。覇王色の覇気でも無いのに俺、意識をもっていかれそうだよ。

 

 ベリッ!!

 

 「ぬあっ!?」

 

 ディアーチェが強引に俺から引き剥がされる。剥がしたのは太鼓の達人をやってた筈のフェイトとリンディさん。

 

 「な、何をする!?」

 

 「何って…勇紀を解放してあげただけだよ」

 

 「いつまでもディアーチェさんがくっついていたら勇紀君、何も出来ないでしょ?」

 

 「だ、だが…」

 

 ポン

 

 ディアーチェの肩をユーリが静かに叩く。

 

 「少し……私と一緒にO☆SA☆N☆POしましょうか」

 

 「え…遠慮する。我はユウキの応援を……」

 

 「まあまあ……エンリョシナイデ」

 

 「は…離してくれユー……」

 

 バタン!

 

 ズルズルと引き摺られ、強制的にユーリの散歩に付き合わされたディアーチェ。

 ……無事に帰って来いよディアーチェ。

 

 「勇紀君、早ぅ座りや」

 

 「…ウッス」

 

 はやてに促され、俺は面子に入る。

 もう皆さん、いつも通りに戻ってらっしゃる。

 見るだけのつもりだったんだが、ユーリが出て行っちゃったから入らざるを得なくなった。

 …ま、いいか。久しぶりに麻雀するのも悪くは無い。

 

 「普通に勝負するんも面白ぅないからちょい趣向変えよか」

 

 「いきなりだな。何か賭けるとか?」

 

 「せやなぁ。この半荘からは…………脱衣麻雀(・・・・)でどうや?」

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 は?

 

 

 

 ~~一方、その頃~~

 

 「ううっ…ぐすっ…」

 

 「ジークちゃん、いい加減泣き止みなよ。このお菓子あげるから」

 

 「勇紀君達の修学旅行は二泊三日だから。すぐ帰ってくるから、ね?」

 

 長谷川家では勇紀がいないせいでガチ泣きするジークと、ジークを宥めるアルピーノ母娘の姿があった………。

 

 ~~キャラクターステータス~~

 

 NO.0005

 

 ユーリ・長谷川

 

 LV   82/ 999

 HP 9200/9200

 MP  930/ 930

 

 移動力     5   空  S

 運動性   115   陸  S

 装甲   2300   海  C

 照準値   140   宇  -

 移動タイプ  空・陸

 

 格闘 201 命中 188 技量 176

 射撃 204 回避 183 防御 221

 

 特殊スキル 強運

       援護攻撃L2

       援護防御L3

       ガード

       気力+(ダメージ)

       底力L4

 

 ~~あとがき~~

 

 『超ヒロイン戦記』にハマってるので更新速度が落ちます。

 


 
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