~~ジークリンデ視点~~
「ふわああぁぁぁぁ…」
朝。
ベッドの上で寝ていた
「兄さん……おらん」
いつも一緒に寝ている兄さんの姿が無い。
「…って事は今日の朝ご飯作ってるの兄さんなんかな?」
「……着替えよ」
そして身体が動きやすいジャージ姿に着替えて下の階に下りる。
リビングに顔を出すとディアーチェさんが新聞を読んでいた。足音で気付いたのか新聞紙に向けていた顔を
「む?ジーク、起きたのか?」
「はい。おはようございます」
「ん。おはよう」
短く返事をし、すぐに視線を新聞紙に戻す。
兄さんの姿は……無いなぁ。キッチンの方にもおらんみたいやし。
「ユウキを探しておるのか?」
「はい。一応日課のランニングに行く前に声掛けとこう思ぅたんですけど…」
「ユウキなら『牛乳が切れてたからコンビニに買いに行く』と言って出て行ったから家にはおらんぞ」
「そうですか」
「入れ違いで帰ってきたら言っておいてやるから、早くランニングに行って来たらどうだ?」
「お願いします。30分程で戻ってきますんで」
「うむ」
ディアーチェさんにお願いして
理由としては
兄さんは『『エレミアの神髄』を発動させたくないなら『
「(もう…あの力に振り回されて何も壊しとぅないから)」
いつまでも『
「はっ…はっ…はっ…」
住宅街や商店街、公園、河原と街中を一通り走り回る。
時折、朝の散歩やウォーキングをしてる人達とすれ違う。
もう顔見知りになった人達なので
家に戻って来た時には程良く身体も温まっており、少し汗を掻いて小さく息切れする程度だった。
息を整え、玄関のドアを開けると兄さんの運動靴があった。もう帰って来てるんや。
「ただいまー」
「おかえりー」
返事が返ってきた。兄さんの声や。
靴を脱いでリビング…そしてキッチンに顔を出すと兄さんはエプロンを着けて朝食を作っていた。
「おはよう兄さん。今日のご飯何ー?」
「おはようジーク。朝食はフレンチトーストにスクランブルエッグ、あとコーンスープとサラダだぞ」
兄さんは調理しながらも
「ジーク、シャワー浴びて汗を流してきな。もうすぐ人数分出来るから。あと、レヴィも起こしといてくれない?」
「了解ー」
用意するのは学校の制服に替えの下着。
タンスから取り出して部屋を出る。
次に兄さんに頼まれた『レヴィさんを起こす』のを行うため、レヴィさんの部屋に前に立ち、ドアをノックする。
『はーい』
部屋の中から声が聞こえてきた。
レヴィさん、もう起きとるんや。
「レヴィさん、
『にゅ?ジーク、どったの?』
「兄さんにレヴィさんを起こして来てほしいって頼まれたんですけど」
『そうなんだ。でも今日の僕は早起きしたから起こす必要は無いよ』
「ですねー。じゃ、
『りょうかーい。僕も『後10分程したら下に下りる』ってユウに言っといてくれる?』
「わかりましたー」
レヴィさんの部屋前から移動して階段を下り、再びキッチンへ。
「兄さん、レヴィさんもう起きとったよ。『後10分ぐらいしたら下りてくる』って言っとった」
「ん?レヴィがこの時間帯に起きてるなんて珍しいな。まあ起こす手間が無いのは良い事だし、後10分だな。了解だ」
兄さんはお皿に料理を盛り付けている所やった。
「じゃあ
「ん」
兄さんの短い返事を聞いてから
汗を流して制服に着替えてご飯食べて……
「(今日も1日頑張るで)」
「「行ってきまーす」」
「行ってらっしゃい。2人共、気を付けてね」
兄さん達が中学校に登校するため、家を出てから少しして
兄さん以外で最初に仲良くなったんはルーちゃんやなぁ。
「~~♪~~♪」
「ルーちゃん、何やご機嫌やなぁ?」
「そう?」
何かええ事でもあったんかな?
「今日、お兄ちゃんが美味しいおやつ作ってくれるって言ってたから♪」
「ああー…兄さん、そんな事言っとったなぁ」
「お兄ちゃんの作るおやつは美味しいから今から楽しみー♪」
ルーちゃんと手を繋ぎながら学校へ行く。
学校に近付くにつれ、
「おはよう」
「「「「「「「「「「おはようございまーす」」」」」」」」」」
程無くして見えてきた学校の正門前には先生が立っており、登校してくる生徒達に挨拶しとった。
生徒達も先生に元気良く挨拶し、正門を潜って学校の中へ入って行く。
「おはよう」
「「おはようございまーす」」
門を潜って運動場を抜け、校舎に入った所で運動靴と上履きを履き替える。
「ほなルーちゃん、ここでお別れやね」
「うん、じゃあねジークちゃん」
ルーちゃんは元気良く手を振ってから、自分の教室の方へ走っていく。廊下は走ったらアカンよー。
ルーちゃんを見送ってから
自分の教室に入ると室内には半数近くのクラスメイトがもう登校して来とった。
「ジークちゃん、おはよう」
「おはよ、ジーク」
「姫ちゃん、杏ちゃん。おはようや」
挨拶してくれた2人の女の子に
『
2人とは
「ジーク!今日の体育はあたしと勝負よ!!」
「……杏ちゃん、毎回毎回よう飽きひんね」
理由は杏ちゃんが負けず嫌いな性格やから。
ランニングを始める前は体力の差もほとんど無く勝ったり負けたりで挑まれたりする事は無かったんやけど、ランニングを始めてからは徐々に体力に差が付き始めてきたし、短距離走や持久走で勝ち続けた結果、今の様な状態になったっちゅう訳や。
もう体育の授業内容が何であれ挑んでくるんよねぇ。
ちなみにテストの際は姫ちゃんに点数で勝負を挑んでいる杏ちゃん。けど、一度も勝った事無いらしい。
「杏璃ちゃん、たまには勝負挑まないで普通に楽しもうよ」
「嫌よ!今日こそあたしがジークに勝ってみせるんだから!!」
「別に勝負するんはええんやけど、今日の授業の内容って何すんの?」
「さあ?何だろうね?」
姫ちゃんに尋ねてみるけど、姫ちゃんも首を傾げるだけ。
「何だっていいのよ!!とにかく勝負するんだからね!!」
「あはは…お手柔らかになー」
「……で、
「
体育の授業。内容はドッヂボールやった。
あんなに
「何で
勝負をするどころか味方同士…同じチーム編成になってもうた。
「まあまあ杏璃ちゃん…」
激昂してる杏ちゃんを姫ちゃんが必死に宥めている。姫ちゃんも
「ジーク!!アンタ向こうのチームに入りなさいよ!!」
「無茶言わんといて杏ちゃん。これ先生が決めたんやから」
「~~~~っっ!!!先生っ!!!」
大声で先生を呼ぶ杏ちゃん。先生は杏ちゃんの気迫に圧され、『ビクッ!』と身を竦ませる。
「何であたしとジークが同じチームなんですか!?これじゃあジークと勝負が出来ません!!」
「何でって…チーム編成はクジ引きで決めたから」
「何でクジ引きで決めたんですか!?」
「だって公平だし」
「何で公平なんですか!?」
「完全な運次第だから…かな?」
「何で運次第なんですか!?」
「「ちょっ、杏ちゃん(杏璃ちゃん)落ち着こうや!!(落ち着いて!!)」」
物凄い剣幕で先生に問い詰める杏ちゃんを引き剥がす。
「むーーー!!!勝負出来ると思って楽しみにしてたのにーーー!!!」
地団駄を踏む杏ちゃん。
「ま、次の機会に持ち越しやね」
「仕方ないよ杏璃ちゃん。今日は諦めて普通に授業楽しもうよ」
しばらくは頬を膨らましたり『むー!』『むー!』って唸ってた杏ちゃんだが
「……しょうがないわね」
時間が経つにつれ、冷静になって来た様でようやく諦めてくれた。
「……もういいかしら?早く貴女達もドッヂボールに加わってくれない?」
先生の言葉で『ハッ』とし、辺りを見回す。
うう……皆に申し訳ない。
体育の授業も終わり、後は何か劇的な出来事がある訳でも無く時間が進み、今日の授業はすべて終わった。
「ねえジーク、今日の放課後予定ある?」
帰り支度をしていると杏ちゃんが
「うん?
「そうなんだ。…実は私と杏璃ちゃんで一緒に宿題をするつもりだったからジークちゃんもどうかなと思ったんだけど」
宿題なぁ…。提出は来週の水曜日やから土日の休日に片付けようと思っとったんやけど…
「
特に反対する必要無いしな。
「決まりね。場所は……図書館にでも行く?」
「あっ、宿題やるなら
「ジークちゃんの家に?」
「うん。今日は兄さんがおやつ作ってくれるんよ♪やから家に来たら兄さんの手作りおやつ食べられるんやけど?」
「「お邪魔させて頂きます!!」」
良い笑顔で即答する姫ちゃんと杏ちゃん。
この2人は家に何度も遊びに来た事あるし、兄さんの手作りおやつを食べた事も有る。
結果、兄さんの作るおやつにメロメロになっとる。
「じゃあ行こかー」
ランドセルに教科書やノートを全て入れ、背負う。
せや。兄さんにメール入れとかんと。
姫ちゃんや杏ちゃんが家に来る事を伝えないといけないため、携帯のメールで兄さんの携帯に送信する。
程無くして兄さんから返信メールが届いた。
兄さんは今日は部活に顔を出さず、もう家に帰ってるみたいで、おやつを作り始めてるとか。
これは
「コラー!!雄真ーー!!!!ハチーーーー!!!!」
「「「???」」」
隣のクラスから聞こえてくる大声と、同時に教室から飛び出す2人の男子。
「待ちなさいよーーー!!!!!」
遅れて飛び出て来たのは1人の子。
「「「
隣のクラスの知り合いの子やった。
サラサラで長い髪の毛に華奢な身体つきと、一見美少女と見紛う容姿をしている。姫ちゃんは『準さん』、杏ちゃんは『準ちゃん』って呼んどるけど目の前の子は『彼女』ではなく『彼』……
この事実を知った時は
初見で『『男』って見抜け』言われても無理やろ。見抜いたんは兄さんぐらいやで。
そう考えると初見で見抜いた兄さんは凄いなぁ。
「もう!!!」
そんな準君はプンプンと怒っている。一体どうしたんや?
「準さん、何かあったの?」
「今飛び出してったの雄真とハチよね?」
「あっ、春姫ちゃん杏璃ちゃんジークちゃん聞いてよ!雄真もハチも今日は掃除当番なのにサボって逃げたのよ!!」
姫ちゃんと杏ちゃんが声を掛け、
「あの2人、『今日は『聖帝様の集い』があるから掃除なんてアホらしい事やってられるかーっ!!』って言ってたの」
「「「聖帝様の集い……」」」
『聖帝様の集い』…。
今、海鳴市に住む少年達の一部が聖帝を称する1人の男の人に忠誠を誓い、海鳴市で色々とやらかしている。
行動理念としては『全ては海鳴市を治められてるお師さんのために』らしい。
「兄さん……また頭痛が起きるやろなぁ」
「勇紀さんが治めてる訳じゃ無いのにね」
「アイツ等、少しはその事に気付かないのかしら?」
けど、頭痛が起きる割にはサウザーさんがやっとる事黙認しとるみたいやし。
少年達の保護者も特に何かを言う事は無い。何でやろ?
「まあ、あの子等に関しては兄さんに任せよか」
「「勇紀さんに?」」
「兄さんやったら何とかしてくれるやろうから」
サウザーさんに命令出来んのは兄さんしかおらへんし。
「それはそうと姫ちゃん、杏ちゃん。早う家行くで」
「あ、良かったら準君も来るかー?」
「???」
いきなり誘って何が何だかといった様子の準君。
「今日、家で宿題するんよ」
「私のクラス、宿題なんてないんだけど」
「予習のつもりで勉強したらええとおもうよ。ちなみに今日家に来ると兄さんの手作りおやつがついてくるよ」
「すぐに帰る準備するから待ってて!!」
教室に急いで駆け込む準君。
準君も当然兄さんの手作りおやつは食べた事があり、姫ちゃん、杏ちゃん同様おやつの味と魅力にメロメロや。兄さんのおやつは人気あり過ぎや。
あ、兄さんに連絡入れとかんと。
こうして
「「「おやつ♪おやつ♪勇紀さんの手作りお・や・つ♪♪」」」
何や……よう分からん歌を歌いながら上機嫌で歩く姫ちゃん、杏ちゃん、準君の3人。
気持ちは分かるんやけど、宿題(準君は予習)するから家に来るって事忘れてへんやんな?
「何だとコラ!!もう一度言ってみろガキ!!!」
「「「「っ!!!?」」」」
突然怒声が
姫ちゃん、杏ちゃん、準君も謎の歌を歌うのを止めた。
声のした方向には怖そうなおじさん1人に数人の男の子グループが睨んでいた。
「あ!アレって雄真!?」
「ホンマや!」
数人の男の子達の中には先程教室を飛び出して行った子、『
小日向君は準君の幼馴染みで去年は
同じクラスになった当初はこういっちゃ何やけど、暗い子で周りから距離を取っとった。
けど、程無くしてサウザーさんが率いてる『海鳴聖帝軍』に入ってからは一転し、明るくなるどころかガキ大将みたいな子になってもうた。
今ではサウザーさんの忠実な部下になってしもうとる。
多分あそこにいる子は皆、海鳴聖帝軍なんやろな。
「おっさん耳が悪ぃのか?ならもう一度言ってやんよ。道端に吐いた唾を綺麗に拭き取れ」
小日向君は臆する事無く、怖そうなおじさんに命令口調で言う。
「そうだそうだ!!」
「ここはお師さんの住まわれている街だぞ!」
「さっさと拭き取れ!そしてお師さんに頭下げて謝って来い!」
他の子達も次々におじさんに向かって吼える。
怖そうなおじさんはこめかみに血管を浮かべている。
「テメエ等!!ガキだからって俺が手ぇ出さねえと思ってんじゃねえだろうな!!ああ゛!!?」
「「「「「「「うっせーバーカ!!!」」」」」」」
その一言でキレた様子のおじさん。
グループの先頭にいた小日向君に殴りかかる。
「「「「小日向君!?(雄真君!?)(雄真!?)」」」」
けど小日向君は簡単におじさんの攻撃を避けて反撃する。
「オラァ!!」
ドカッ!
おじさんの足に蹴りを入れて転倒させる。
「今だ!この街を汚すクズをやっちまえ!」
一斉に襲い掛かる他の子供達。
叩いたり蹴ったり……。
「「「「……………………」」」」
「ふん、ここか。お師さんの治められる街を汚したドブネズミがいるのは」
「はい。聖帝様」
そこへ少年を大勢引き連れた男性……サウザーさんが現れた。
するとおじさんを暴行していた小日向君や子供達は皆、暴行を止め姿勢を正す。
サウザーさんは小日向君達にやられていた男の前に立つ。
「貴様がこの街を汚していたネズミだな?」
「な…何だ……テメエは?このガキどもの……保護者か?」
言葉を途切れ途切れながらも話すおじさんの頭をサウザーさんは容赦なく踏み付ける。
「ぐえっ!!」
グリグリと踏みつけた後は首を掴み、片手で持ち上げる。
「偉大なるお師さんの街を汚すなど、殺されても文句は言えんなぁ」
首を掴む手に力を込めるサウザーさん。
「ぐ……が……かはっ……」
「だがお師さんには『むやみに人を殺すな』と命を受けているのでな……ぬうん!!」
ドゴッ!!
首から手を離した瞬間、空いているもう片方の手を強く握り、下からおじさんの顎を狙って振り上げた。
そのまま怖そうなおじさんは吹き飛ばされ、仰向けで倒れる。
「お前達、そのドブネズミを始末しておけ。他の者は俺に着いて来い。先にいつもの場所に行くぞ」
「「「「「「「はっ!」」」」」」」
サウザーさんは少年達を引き連れてこの場を後にする。
で、命令されてた小日向君達は地面で倒れているおじさんを近くのゴミ捨て場に放り投げ、サウザーさん達の後を追い掛ける。
「「「「……………………」」」」
……とりあえず兄さんに連絡しとこう………。
「ただいまー」
「「「お邪魔しまーす」」」
「おかえりー」
リビングの方から聞こえてくるのは兄さんの声。
靴を脱いで皆でリビングに向かう。
「おかえり、ジークちゃん」
そこには既に帰って来ていたルーちゃんと、もう1人の女の子がいた。
「ジークさん、こんにちは」
「んにゅ?すももちゃん、来てたんや?」
「はい。ルーちゃんに誘われまして。私達も今着いた所なんです」
『小日向すもも』ちゃん。
ルーちゃんのクラスメイトでさっきサウザーさんに着いて行った小日向君の妹さんやったりする。
けど小日向君とは血が繋がってないから義妹やって。
すももちゃんも良く遊びに来る子やから当然
「「「ルーちゃん、すももちゃんこんにちは」」」
姫ちゃん、杏ちゃん、準君も挨拶する。
3人は小日向君絡みですももちゃんとは顔見知りや。ルーちゃんとはこの家で出会った時からの付き合い。学年は違えど仲は良いんよ。
「皆もいらっしゃい。おやつ持ってくるから手を洗ってきなよ」
ヒョコッとキッチンの方から顔を出してきた兄さん。
戻って来た後はリビングに座り、今か今かと待っている。
「ほい、お待たせ」
「「「「「「キターーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」
歓喜の声がリビングに響く。
「今日はイチゴ味のロールケーキを作ってみました」
切り分けられたロールケーキの乗っている小皿が人数分リビングの机の上に置かれた。
キラキラキラキラキラ!!!
そのロールケーキを見ていち早く目を輝かせた人物が…
「ゴクリ…」
姫ちゃんやった。
喉を鳴らし、すぐにでも食らい尽くさんと言わんばかりの様子や。
…姫ちゃん、イチゴを使ったお菓子やスイーツには目がないからなぁ。
「どうぞ召し上がれ」
兄さんが言った瞬間、
「「「「「「いただきます!!」」」」」」
小皿の上のロールケーキを食べ始めた。そして一言
「「「「「美味しーーーーーーーーーーーーい!!!!!!」」」」」
素直な感想を口に漏らす。
「……………………」
姫ちゃんなんかあまりの美味しさに感動の涙をポロポロと零している。
「やっぱり勇紀さんの作るおやつは最高です!」
「ありがと杏璃ちゃん」
「ケーキの甘みとイチゴの僅かな酸味が良い感じに合わさって…とっても食べやすいです」
「そう言って貰えると作った甲斐があるよ」
杏璃ちゃん、準君の感想に兄さんは笑顔を浮かべながら返す。『美味しい』って言って貰えるんが嬉しいんやろなぁ。
「伊吹も来れたら良かったのにね」
「仕方ないですよルーちゃん。伊吹ちゃん、用事があるみたいですし」
ルーちゃんとすももちゃんの会話が耳に入ってくる。どうやら他に友達を誘っとったみたいやけど来れんかったみたいやね。
「はむはむ………はう~~~~~~♪♪♪」
姫ちゃんは幸せの絶頂に至ってるかの様に緩々な表情になりながらケーキを一口、また一口と口に運ぶ。
「まだおかわり出来るけ「食べます!!!」……他の皆は?」
「「「「「是非!!」」」」」
兄さんの言葉を遮り真っ先に挙手して叫ぶ姫ちゃん。
「勇紀さん、お願いがあるのですが…」
「ん?何?」
「このケーキ、お持ち帰り出来ないでしょうか?」
姫ちゃんはテイクアウトまで希望みたいや。
「出来るよ。シュテル達の分はちゃんと取り置いてるし」
その言葉を聞いてますます目を輝かせる姫ちゃん。
「お願いして良いですか!?」
「良いよ」
『帰りにケーキ渡すよ』と言って自分の部屋に戻る兄さんを見送る。
「アンタ…本当にイチゴ好きなのね」
杏ちゃんは呆れ顔や。
「イチゴは正義なんだよ杏璃ちゃん」
「いや、意味分からんし…」
「勇紀さんが作るお菓子が美味しいのは事実だけどねぇ」
「ルーちゃんやジークさんが羨ましいですよ。毎日こんなお菓子食べられるんですから」
「毎日お兄ちゃんがお菓子作ってくれる事は無いよ。あくまで時間に余裕あったり、お兄ちゃんが作りたくなった時だけだから」
そやなー。毎日作ってくれるんもええと思うんやけど
「…そんな事になったら体重が…」
「「「「「……そうだね。増えちゃうよね」」」」」
あんな美味しいおやつ見過ごすなんて出来ひんよ。
それからおかわりしたケーキも平らげた後は当初の予定通り、
時刻は夜。
夕方に帰った姫ちゃん達を見送ってから夕食を食べ、風呂から上がってリビングで寛いでいた時の事。
「兄さん、少し聞きたいんやけど…」
「んー?」
「何でサウザーさんのやってる事黙認してんの?」
思い出すのは学校帰りで見た光景の事やった。
あの後兄さんにメールで事の顛末を伝えると返信メールには
『とりあえずリスティさんに連絡しとくから』
の一文だけやった。
「一般人に暴力振るったら警察に捕まるとおもうんやけど」
そう言うと兄さんは溜め息を一度吐いて
「アイツが手を出した奴は皆、
「「「「「「「はい?」」」」」」」
その言葉に
「サウザーが狙ってやってるとは考えられないから完全に偶然なんだが、この街でアイツや『海鳴聖帝軍』がこれまで手を出した連中は全員架空請求詐欺の容疑だったり麻薬、覚せい剤の密売人だったりで警察が全国指名手配してる人物でな」
確かにサウザーさんが世のため人のためにするとは思えんなぁ。
「警察としてはそんな連中をことごとく叩き潰してるサウザーに好意的な印象持ってるんだよ。もっとも、やり過ぎて全員がブタ箱に放り込まれる事は無く警察病院直行なんだが」
今回吹き飛ばされた人は『黒龍会』っちゅう広域指定暴力団の一員であり、以前から警察も追ってた人らしい。
サウザーさんに顎の骨を砕かれ、喋る事が出来ひん様になったらしいけど。
「リスティさんはサウザーが行った事後処理が来る度徹夜で対処してるらしいし」
『今度何かしらお礼しとかないと』って呟く兄さん。
「…で、ユウキ。そのサウザーは何処に行ったのですか?」
「モンスターボールに戻してるの?」
ユーリさん、レヴィさんが兄さんに尋ねる。
「いや……モンスターボールには戻してない。まだ家にも戻って来てないし、何処で何してるのやら…」
どうやら兄さんも行方は知らんみたいや。
「とりあえずサウザーが帰って来たら色々言わなきゃいけないな。いい加減『聖帝軍』も解散してもらいたいし」
兄さんの悩みの種は当分治りそうになさそうやなぁ。
結局サウザーさんは今日帰って来る事は無かった。
次の日の朝のニュースで『黒龍会』が壊滅したっちゅう情報が流れとった。
何でも1人の男が殴り込んで全員を病院送りにしたとか。
まさか……なぁ………。
~~ジークリンデ視点終了~~
~~キャラクターステータス~~
NO.0004
ディアーチェ・長谷川
LV 81/ 999
HP 7000/7000
MP 710/ 710
移動力 6 空 A
運動性 120 陸 A
装甲 1200 海 B
照準値 150 宇 -
移動タイプ 空・陸
格闘 188 命中 200 技量 191
射撃 207 回避 200 防御 181
特殊スキル 援護攻撃L2
援護防御L2
指揮官L1
集中力
EXPアップ
ガンファイトL3
~~あとがき~~
勇紀の視点が最初から最後まで無かったのは今回が初めてです。たまにはこういうのも悪くは無い。
海鳴市の子供達の一部はもう既に手遅れになっています。サウザーと
後、ジーク、ルーテシアの地球の友達役として『はぴねす!』キャラを抜擢。すももや伊吹(今回未登場)はルーテシアの年齢に合わせたため、原作より1歳下にしています。
まだ出てない『はぴねす!』キャラはまたいずれ。
あと、アンケートの結果はシュテルになりましたー。
何時頃、勇紀を大人にしてやろうかなぁ…。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。