No.660739

九番目の熾天使・外伝 ~ライダー戦国大合戦~

竜神丸さん

第14話

2014-02-05 16:00:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2160   閲覧ユーザー数:871

「無事で良かったです、美空さん」

 

「あ、えっと…」

 

ウォーロックに抱き上げられたウズメは、地面にゆっくり降ろして貰う。

 

「あ、あの、私は…」

 

「でも何故ここに? 美空さんはこなた達と一緒にいた気が…」

 

「あぁ、その事なんだがディアーリーズ! その娘は美空ちゃんじゃねぇぞ!」

 

「…へ?」

 

ペガサス・ゾディアーツと戦闘中だったバースに告げられ、ウォーロックは思わずウズメと顔を見合わせる。

 

「わ、私はウズメと言います。助けてくれて、ありがとうございます」

 

「え、あ、え……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? FalSigさん、これってどういう…!?」

 

「すまんが説明は後だ!! 先にこいつ等を、どうにかしないといけねぇ!!」

 

「ヌグォッ!?」

 

ペガサス・ゾディアーツの腹部にバースのドリルアームが炸裂し、ペガサス・ゾディアーツを大きく吹っ飛ばす。

 

「え、あれ? 何この状況?」

 

「あ、アキ。いや、実はそれが…」

 

「ウル兄ちゃーん!! アキちゃーん!!」

 

「へぶぅっ!?」

 

「え、咲良ちゃん!?」

 

アキが駆け付けたその時、咲良がタックルの勢いでウォーロックに抱きついて来た。ウォーロックはその衝撃で危うく倒れそうになったが、どうにか踏み止まる。

 

「あ、アキちゃん! はいこれ、他のコアメダル!」

 

「い、いや、それは嬉しいけど……まぁ良いわ。事情は後で他のメンバーに聞くから」

 

アキは咲良から受け取った三枚の青いコアメダルをドライバーに装填し、オースキャナーで一気にスキャンする。

 

「変身!!」

 

『シャチ・ウナギ・タコ! シャシャシャウタ・シャシャシャウタ!』

 

エフェクトに包まれ、アキはシャチ、ウナギ、タコの能力を活かせる水棲形態“シャウタコンボ”へとチェンジした。

 

「はぁっ!!」

 

「ニギャアッ!?」

 

オーズは両腕に装備されていた鞭“ウナギウィップ”を手に取り、それに電撃を纏わせてからシャムネコヤミーを攻撃する。

 

 

 

 

 

 

≪Clock over≫

 

「いよっと!」

 

「ギギィッ!?」

 

クロックアップで戦闘を行っていたのか、何も無い筈の場所から突然ダークカブトの攻撃を受けたジオフィリドワームが地面を転がってきた。そこにダークカブトも姿を現し、ダークカブトゼクターに手を伸ばす。

 

≪1≫

 

「そろそろ、決めましょっかね」

 

≪2≫

 

「ギギギギギギッ!!」

 

≪3≫

 

「…ライダーキック!!」

 

≪Rider Kick≫

 

立ち上がって飛び掛かったジオフィリドワームに、ダークカブトの右足による回し蹴りが炸裂。ジオフィリドワームは地面に落とされ、大爆発を引き起こす。

 

 

 

 

 

 

 

「なでしこロケットパーンチッ!!」

 

「グガァァァァァァッ!?」

 

「あれ、仮面ライダーなでしこ!? 何でこんな所に…!?」

 

「……」

 

ウォーロック達と共に駆け付けた騎神なでしこも、ロケットモジュール噴射の勢いを利用してスロースオルフェノクを殴り飛ばす。騎神なでしこを見たギルスは驚いた様子を見せるも、サイガは特に反応を示す事も無くサイガフォンの射撃をオルカロードに命中させる。

 

 

 

 

 

 

 

「ギニャッ!!」

 

「これで決める!!」

 

『スキャニングチャージ!』

 

「はぁっ!!」

 

「ギニャアッ!?」

 

オーズは両手のウナギウィップをシャムネコヤミーに巻きつけたまま高くジャンプし、両足のタコ足がドリル状に回転し始め、そのままシャムネコヤミーに向かっていく。

 

「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ニギャァァァァァァァァァァッ!?」

 

必殺技“オクトバニッシュ”が炸裂し、シャムネコヤミーは大爆発。着地したオーズの周りには何枚ものセルメダルが飛び散っていく。

 

 

 

 

 

 

 

「ギシャァァァァ…!!」

 

「では私も……決めさせて貰います!!」

 

≪FINAL VENT≫

 

『『『『『グルルルルルッ!!』』』』』

 

「グガ、ガ、アグァ…グァッ!?」

 

インペラーがカードを装填した直後、ガゼル型のモンスター“ギガゼール”を始め大量のガゼル型モンスターが出現。次々と突進攻撃を繰り出し、バズスティンガー・ホーネットにダメージを与える。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…たぁっ!!!」

 

「ギシャァァァァァッ!?」

 

最後にインペラーの繰り出した飛び膝蹴りが、バズスティンガー・ホーネットの顔面に炸裂。バズスティンガー・ホーネットは吹っ飛ばされて爆散する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪STRIKE VENT≫

 

「ふむ、変わった武器だな…っと」

 

ドラグクローを右手に装備した龍騎はそれでメ・ギノガ・デを思い切り殴り倒してから、自身の背後にドラグレッダーを呼び出す。

 

「ふぅぅぅぅぅぅぅ…!!」

 

龍騎は息を吐きながら姿勢を低くして構え、ドラグレッダーも口元に火が溜まっていき…

 

「―――はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『グォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

「ギ、ガァァァァァァァァッ!?」

 

龍騎がドラグクローを正面に突き出し、ドラグレッダーは口から強力な火炎弾を発射。メ・ギノガ・デを丸ごと焼き焦がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おりゃあっ!!」

 

「ヌグゥ!?」

 

バースのドリルアームによる攻撃で押されていたペガサス・ゾディアーツは高くジャンプし、木の上へと飛び乗る。

 

「仕方ない、撤退するしかあるまいか…!!」

 

「あ、おい待て!?」

 

勝ち目が無いと判断した途端、ペガサス・ゾディアーツはバースを無視して即座に木から木へジャンプしながら逃げて行ってしまった。

 

「覚えてやがれよ、ヒャッハーッ!!」

 

「あ、待て!!」

 

モールイマジンも結局は逃走してしまい、ウォーロックは追跡を諦めて変身を解除。ディアーリーズの姿へと戻る。

 

「逃げられたか…」

 

「ウ~ル~!!」

 

「のごふぁっ!? え、ちょ、こなたまで!?」

 

「あ、コラこなた!! どうせ抱き付くなら、私にも抱き付かせなさいよ!!」

 

「いやアキはさっきも抱き付いてグェアッ!?」

 

「…何このカオス」

 

「「「「さぁ?」」」」

 

アキ、こなた、咲良の三人に同時に抱き付かれてあたふたしているディアーリーズを見て残りのメンバーは頭にクエスチョンマークを浮かべる。

 

「うわぁ~…見て見てモトナリちゃん、ディア君とアキちゃんの仲間がいっぱいいるよ~!」

 

「えぇ。私にも見えていますよ」

 

ちなみに少し離れた位置で、騎神なでしこやモトナリ達なでしこ軍の一同がディアーリーズ達を微笑ましい目で見ていたのはここだけの話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夜。

 

アーク軍、ノブナガの城では…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁぁぁぁぁ……疲れた」

 

この日、二百式達は専用の個室で休む事になった。現在、蒼崎は欠伸をしつつベッドに寝転がって休んでおり、Blazはその横で椅子に座ったまま和菓子を食べている。

 

「やれやれ、明日で一気にリュウガ軍とオーガ軍を攻め落とすたぁ……あのおっさん、なかなかに野心がでけぇな。G4軍の領地も攻め落として、騎神を失ったばかりのポセイドン軍やソーサラー軍をも攻め落としてるってのに」

 

「だけどそれ、俺達には全く関係の無い事だよねぇ~…俺達は仲間さえ見つかれば、何の文句も無いって訳なんだしさぁ~」

 

「あぁ、それはそうなんだが……こんな所に縛り付けられる原因を作ったお前が言っても、説得力というものが微塵も無ぇんだよ!!」

 

「痛だぁっ!!?」

 

Blazの目潰しが蒼崎の目にドスッと炸裂し、蒼崎は「目がぁ、目がぁ~!!」と叫びながら床に転がって悶絶する。

 

「たく……にしても二百式の奴、あれから一体何処に行きやがったんだか。さっきもランマルさんに居場所を聞かれたしよぉ…」

 

「あぁ、俺の好意に気付いてくれないとか……俺なんかより二百式の方が良いってのか畜生~!!」

 

「だぁもう静かにしやがれ!! そもそも、誰これ構わず自分の嫁にしようとか考えてる時点でお前は色々間違ってんだよ!!」

 

蒼崎がベッドの枕を濡らすところにも、Blazは容赦なく突っ込みキックを炸裂させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、その二百式はというと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

城の外。教会“HONNOUJI”にて、彼は適当な席に座ってから読書をし続けていた。周囲には誰もいない、教会の鐘も鳴らない、実に静かで読書のしやすい環境だった。

 

(俺は果たして、元の次元世界に戻る事が出来るのか……それともずっと、この世界に残されたままになるのか…)

 

読書をしつつも脳内では元の世界に戻れるかどうか、そればかり考えるようになってしまっていた。その所為で読書もイマイチ続かず、集中力も段々切れてきている。

 

(はやて、俺は…)

 

自分がいつも、大事に思い続けている女。その女の笑顔が、脳裏に浮かび上がる。

 

「…チッ」

 

読書に集中出来なくなってきたのか、二百式は本を閉じて懐にしまう。

 

(やはり何としてでも、次元世界に戻るしかない。それ以外の道など俺には―――)

 

「あぁ、ここにいたのか」

 

「…!」

 

二百式の下に、ランマルがやって来た。先程までポニーテールだった彼女も現在は髪を下ろしており、長い赤髪が綺麗に靡いている。

 

「何か用か?」

 

「あぁ、実はその……お前達に、謝らなければならないと思ってな」

 

「謝る……何故お前が?」

 

「私がお前達を連れて来るような事が無ければ、今頃この城に縛り付けられる事も無かった。深く考えずに動かなかった、私の責任だ」

 

「何かと思えばそんな事か……あれに関しては別に、お前には何の非もありはしないだろう。むしろあの状況で、俺達の力をバラした蒼崎のバカを俺はぶん殴りたい」

 

「そ、そうか……いくつか、聞いても良いか?」

 

「何だ?」

 

「昼間にお前は、行方不明の仲間を探しにこの世界に来たと言ったな……あの二人以外にも、騎神の力を扱える仲間がいるのか?」

 

「あぁ、結構いるぞ。一つの組織として形成されるくらいにな……約一名、仲間じゃなかったら本気で殺しにかかりたい奴はいるが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっくしゅん!!」

 

その頃、団子屋にて一人の人物がまたクシャミをしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「組織を形成する程とは凄まじいな……ならお前は、その力を何の為に使う?」

 

「何の為に力を使うか、そんなのは最初から決まっている……大切な人を、この手で守る為だ」

 

「大切な人、を…」

 

「そうだ。そいつを守り抜く為なら、俺は相手が誰であろうと容赦なしない……たとえこの命が尽きようとも、そいつが無事ならそれで良い」

 

「そうか……少し、羨ましいな」

 

「何?」

 

ランマルは二百式の隣に座る。

 

「私はこれまでずっとノブナガ様に従って生きてきた。そしてこれからも、ずっとあの人に従い続けるつもりでいる……だけど私には、お前達や騎神アークのような騎神の力は無い。だからいつも、ノブナガ様の戦いを援護する事しか出来なかった」

 

「……」

 

「だから私は、騎神の力で戦えるお前達が羨ましいんだ。力さえあれば、ノブナガ様に勝利を捧げる事が出来る……この戦乱の世において、天下を治める事だって出来るかも知れないのだから」

 

「天下ねぇ……そんなものを取って、一体どうするつもりだ?」

 

「平和を取り戻したいんだ」

 

「…平和?」

 

「あぁ、平和だ」

 

ランマルは更に話を続ける。

 

「ここ最近、この土地には雨が全く降っていない」

 

「雨が…?」

 

「その所為で、水がまともに確保出来るような状況ではなくなってしまったんだ。底が尽きる寸前の資源を再び手に入れる為には……他の領地から、奪って手に入れるしかない」

 

「…確かに、シンプルかつ合理的だな」

 

「それが何時までも続いてしまえば、いずれ全てが破滅してしまう。戦を終わらせる為には、誰かが天下を治めるしかない」

 

「それでお前はノブナガに従っているという訳か……それだけで戦が終わるなんて、流石に考えが甘過ぎるんじゃないのか? たとえ天下を治めたとしても、いずれ資源が尽きれば再び争いは起きるぞ」

 

「…そうなのかも知れないな」

 

「何?」

 

ランマルは否定するどころか、二百式の言葉を肯定した。予想外の返事で二百式は眉を顰める。

 

「私も最近、ノブナガ様のやろうとしている事に疑問を感じるようになってきたんだ。このまま戦い続けて本当に戦が終わるのか、この世に平和を取り戻す事が出来るのかと…」

 

「なら、何故お前は奴に従っている?」

 

「…信じているからだ」

 

「信じているだと?」

 

「私が初めてノブナガ様に出会った時、ノブナガ様は言っていた…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺と一緒に来い。戦を終わらせるには、お前の力が必要だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…戦を終わらせる、か」

 

「あの時に私が見たノブナガ様の目は、本物の目をしていた。その時に私は感じたんだ。この人に付いて行けば、本当に戦を終わらせる事が出来るかも知れない……この人を心から信じてみたい、とな」

 

「……」

 

「すまない、話が長くなってしまった」

 

ランマルが立ち上がる。

 

「明日、リュウガ軍とオーガ軍の領地を攻め落としに向かう事になる。その時に、エターナル軍のヒデヨシ殿や歌舞鬼軍のミツナリ殿とも顔を合わせる事になるだろう」

 

(! 豊臣秀吉に、石田三成か…)

 

「また明日も暇な時間があれば、こうしてお前と話をしたいものだな…」

 

「俺は出来れば、一人で読書する方が良いんだがな」

 

「む、私と話をするのは嫌いだったか……すまない事をした」

 

「……」

 

「ではまた明日だ……お休み、二百式殿」

 

ランマルは悲しげな表情をするもすぐに笑顔に戻し、城に戻るべく二百式に背を向ける。

 

「…明日」

 

「え?」

 

二百式が目を閉じたまま口を開き、ランマルは立ち止まって彼に振り返る。

 

「読書も飽きてきた時は……少しなら、別に構いはしない」

 

「…!」

 

二百式の言葉にランマルは少しだけ目を見開き、そして思わず笑みが零れる。

 

「そうか、分かった。ありがとう」

 

「……」

 

今度こそランマルは城に戻るべく、教会を出て行った。この時、二百式の視界にはランマルの頬がほんの僅かに赤くなっているのが見えていた。

 

「…はぁ、俺はこんなキャラじゃないってのに」

 

二百式は寝転がり、先程まで読んでいた本を自分の顔に乗せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノブナガ城、武器庫…

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

ミツヒデは武器の整理をしながら、ある事をずっと考え続けていた。

 

(ノブナガ様はこの世の支配を望んでいらっしゃる……目的の為なら手段を選ばず、歯向かう者は軍の全勢力を率いて排除にかかる……そんな人に、この世を平和に出来るのだろうか…?)

 

武器の整理をしていた両手が止まる。

 

「違う……あの方では、この世に平和は取り戻せない…!! 全てを支配して、余計に死に行く人間が増えていくだけだ!!」

 

苛立ちのあまり整理したばかりの武器を自分の手でバラバラに散らしてしまい、ミツヒデは木箱の上に座って頭を抱える。

 

「あの方では駄目なんだ……民達に平和を齎すには、あの方では…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と、お悩みのようだねぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

ミツヒデが顔を上げた先には、武器庫の入り口で壁に背を預けたまま腕を組んでいる騎神ディバイドの姿があった。

 

「き、騎神ディバイド!? 何故貴様がここに…!!」

 

「まぁまぁ落ち着きたまえ。今回は君に、面白い話を聞かせに来たのだよ」

 

「面白い話だと…?貴様と私が話すような事など、何もありはしない!!」

 

ミツヒデは落ちていた槍を手に取り、騎神ディバイドに向かって突き立てようとする。

 

「全く……やれ」

 

「キシャシャアッ!!」

 

「な、うぐぁっ!?」

 

すかさず姿を現したホエール・ドーパントがミツヒデの槍を掴み、彼の腹部に蹴りを加えて思い切り壁に叩き付ける。そして地面に倒れたミツヒデの上にホエール・ドーパントが乗り、身動きを取れないようにする。

 

「ぐ、がは…!!」

 

「少しは頭を冷やせたかね? なぁに、別に君にとって悪い話じゃないんだ。聞いてくれるだけでも良いじゃないか」

 

騎神ディバイドはその場に座り込み、ホエール・ドーパントに押さえられているミツヒデに自身の顔を近付ける。

 

「例えばそうだねぇ……あの魔王(ロード)に下克上を仕掛ける話とか?」

 

「!? 下克上…!?」

 

「そう、下克上だ。君は一番それを望んでいる筈だ」

 

「ッ……だったら無駄な事だろう…!! いくら歯向かったところで、結局は返り討ちにされるのが目に見えている…!!」

 

「だが、成功させられるかも知れない方法がいくつかある……これを見たまえ」

 

騎神ディバイドは三枚のカードをミツヒデに見せつける。カードにはそれぞれサソード、ケタロス、そしてナイトの姿が映っていた。

 

「!? これは、二百式殿達の…」

 

「そう、異世界からやって来た騎神達だよ。実は今、いくつかの勢力がその異世界の騎神を何人か確保しつつある」

 

その三枚だけでなく、また更に六枚のカードを取り出す。それぞれグレイブ、歌舞鬼、ガオウ、アーク、エターナル、なでしこの姿が映っており、現在生き残っている騎神を指しているのだろう。

 

「現時点で残っている騎神はこの六人。しかし異世界の騎神達が新たに参戦した事で、また更に戦は激しくなっていく事だろう」

 

「ッ…」

 

「私が言いたい事はただ一つ……君の力を借りたいのだよ」

 

「!? 私の力を、だと…!!」

 

ミツヒデが顔を上げて騎神ディバイドを見据える。

 

「確かに君達からすれば、私は最も危険な存在だ。信用など到底出来ないだろう……しかしだね、現時点で必要なのは信用じゃない。物事を成し遂げようとする意思だ」

 

「成し遂げようとする、意思…」

 

「そうだ。普段はどれだけいがみ合っている者同士でも、状況によっては手を組む事だってある。たとえ相手がどれだけ嫌な存在であっても、目的を果たす為なら我慢する事が出来る。実に合理的だ」

 

騎神ディバイドはカードをライドブッカーに収める。

 

「君は私の事を信用してくれなくたって構わないさ。私と君では考え方も違うのだから……だが、君と私で利害を一致させる事くらいなら、可能性はあるのではないかね? 君だって、ノブナガがこのまま天下を治めいくのをただ、指を咥えて見ているつもりかね」

 

「ッ…!!」

 

「あとは私の問いかけに対する、君の返答次第だ」

 

騎神ディバイドが立ち上がり、ミツヒデを見下ろす。

 

「私と一緒に、あの魔王(ロード)を玉座から引き摺り下ろしてみないか?」

 

「ッ…私、は…!!」

 

騎神ディバイドの投げかけてきた提案、それはノブナガへの下克上。本来ならとても成功させられるような事ではない。下手をすれば、あっという間に叩き潰されて首を撥ねられるだけである。

 

「すまないが、そのチャンスにも時期というものがある。答えるなら早く答えてくれたまえ」

 

しかし騎神ディバイドが返答を促し、考える時間を与えない。更に「ノブナガが天下を取ってしまったらどうなるのか?」という可能性までもがミツヒデを焦らせ、冷静な考え方を出来なくさせる。

 

それ故に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何をすれば良い?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミツヒデは、誤った道を歩み出す事となってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…その台詞を待っていたのだよ」

 

 

 

 

 

 

「ククク」と低い声で笑う騎神ディバイド。その赤き複眼は、ミツヒデの決意したような目をしっかりと捉えてみせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界、暗闇にて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…では、任せてよろしいかね?」

 

「あぁ。アンタの言いたい事は、大体分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり俺も、その戦獄とやらに向かえば良いって事だろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の手には、プロトディケイドのと同じ形状のドライバーが掴まれていた。

 


 
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