No.658040

機動戦士ガンダム異聞~旭日の旗の下に~第5話

この回から3ページ編成でいきます。尚、紺碧艦隊のモビルスーツは、後世転生者の記憶をベースに開発している設定です。

2014-01-27 09:00:14 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2003   閲覧ユーザー数:1966

これまでのあらすじ

 

 U.C.0079年1月3日。地球から最も遠い宇宙都市サイド3とサイド4はジオン公国、プラントを名乗り、地球連邦政府に対し独立戦争を挑んできた。開戦から僅か1ヶ月で両陣営は人類の総人口の約半数を死に至らしめた。そして、ジオンとザフトは地球降下作戦を発動させ、3月中に地球の3分の1を占領下に置き、膠着状態に移行した。

 

 この時、中立の立場をとった大日本帝国はMS開発計画である「V作戦」を発動、本土防衛の要として、MSを開発、量産、配備が進んだ。

 

 時同じくして、地球連邦軍もMS開発計画「G計画」と宇宙軍再編計画である「ビンソン計画」を発動、反撃の準備をしていた。

 

 U.C.0079年12月上旬。ヘリオポリス宙域にて試験航行をしていた紺碧艦隊は、ヘリオポリスに向かうザフト機動部隊を発見、警戒体勢に入っていたが、ザフトはジンを発艦させ、ヘリオポリスに向かわせた。

 

 今、戦争は新たな局面を迎えようとしていた。

 

 

第5話 ヘリオポリスの死闘

 

サイド7宙域 紺碧艦隊旗艦「イ601 富嶽号」艦橋

 

「全艦第1戦闘態勢!水雷長!魚雷発射用意!魚雷発射管開け!」

 

 前原の悪い予感は当たった。ザフトはヘリオポリスごとモビルスーツを破壊しようというのだ。そうなれば、多くの民間人が犠牲になる。前原の行動は早かった。

 

「水雷長!ジンは補足できたか!」

 

「だめです!司令!これではヘリオポリスにも被害が出る可能性があります!」

 

 水雷長の言葉は当たっていた。紺碧艦隊の標準装備である70式空間魚雷は、本来対艦戦闘を想定しており、威力も連邦のバーミンガム級を一撃で轟沈出来るほどに調整されていたため、コロニーの近くで撃てば、例えジンを破壊できたとしても、衝撃波によってヘリオポリスを損傷しかねないのだ。

 

「くっ・・・止むを得ん。魚雷発射管閉鎖!様子を見る!」

 

 これにより、紺碧艦隊は2隻のサラミスが撃沈するのを、ただ見ていることしか出来なかった。だが、前原はジンの行動に疑問を覚えた。まるで何かを待っているかのような仕草をしていたのである。

 

「司令!ヘリオポリス内で異常発生!」

 

「なんだと!」

 

 前原が半蔵から送られる中継映像を見ると、モルゲンレーテ社に5人のザフト兵が侵入、襲撃していたのである。

 

 この時、前原は敵の作戦を察した。モビルスーツ隊が周辺宙域の艦隊の目を向けさせている内に、特殊部隊をヘリオポリス内に侵入させ、連邦のモビルスーツを強奪させる。確かに良い作戦だが、彼らにとっての誤算は、その近くを紺碧艦隊が航行していたことであった。ならば、こちらも不測の事態に備えておく必要があるのである。

 

「通信長、格納庫の安室零少佐に繋いでくれ」

 

「了解!」

 

 

 

 安室零とは、3ヶ月前の大改修と同時に配備された紺碧艦隊モビルスーツ隊の隊長である。その正体は、前世において、最強のニュータイプと噂されたあのアムロ・レイであった。彼は、第2次ネオ・ジオン抗争の終盤に行方不明(後に戦死認定され2階級特進)になった際、帝国宇宙軍戦闘機部隊の隊長としてこの後世世界に転生したのである。その際、高野大臣との面会を経て紺碧会に合流、この後世で生まれ変わったガンダムのテストパイロットを経た後、アレックスと共に紺碧艦隊に配属されたのである。

 

 さて、そのアレックスだが、このモビルスーツは、前世においてアムロ専用機としてオーガスタで開発されたニュータイプ専用MSの生まれ変わりである。「ニュータイプ専用」と銘打っているが、前世連邦ではニュータイプの存在に懐疑的で、実際はサイコミュは搭載されておらず、その代わりに運動性の向上とマグネット・コーティングが施されており、当時のテストパイロットですらその敏感な機体に恐怖を得たという。前世ではアムロ・レイに届くことはなく、ジオン軍との戦闘で大破するが、後世世界において安室自らテストパイロットとなり、この機体に乗る事になり、後世において彼は自分の後継機に乗る事となったのである。

 

 

 

 格納庫の待機室には、安室少佐とジム・クゥエルのパイロットと思われる一人の女性がいた。

 

「零少佐!艦橋から電話が入りました!」

 

 格納庫の整備兵が伝令を告げ、待機室の受話器を取った。

 

「こちらパイロット待機室」

 

『零少佐か。すまないが、モビルスーツ隊をいつでも出れるようにしてくれ』

 

 通信相手は前原だった。

 

「モビルスーツ隊を?宇宙海賊でも現れたのか?」

 

『嫌、ザフトがサイド7に対し攻撃を行った。目的は恐らく連邦軍の新型モビルスーツと思われる。万が一の備えだ。頼む』

 

「了解した。直に準備する」

 

 安室は受話器を切ると、女性に目を向けた。

 

「篁大尉。出撃準備だ。いつでも出れるようにしてくれ」

 

「了解」

 

 女性=篁唯衣大尉は頷くと、ヘルメットをとって格納庫にある乗機のジム・クゥエルに向かった。

 

 

 

 ジム・クゥエルとは、ジム・カスタムをチューンナップした改良型である。前世ではティターンズが独自に開発したモビルスーツだったが、後世において正統なつくばシリーズとして開発された。通常のジム・カスタムとほぼ同じだが、肩の部分がアレックスと同じ形になっており、更に後にムーバブルフレームと呼ばれる機構の前身的機構を導入、重量の軽量化に成功している。前世では黒いティターンズカラーに塗装されていたが、後世では橙色に近い黄色に塗装が施されている。

 

 

 

富嶽号艦橋

 

 前原は潜望鏡でコロニーの外の様子を見ていた。ジンがコロニーの外壁を破壊し、その外壁から強奪されたと思われる4機のモビルスーツが離脱していた。やられたな…。前原は自分に言い聞かせた。その時だった。

 

「閣下!ヘリオポリスで異変が!」

 

 通信長の大声を聞いた前原は、半蔵からの映像に目を向けた。そこには、先程サラミスを沈めたジンが連邦のモビルスーツと戦闘していたのだ。連邦のモビルスーツはトリコロールカラーに塗装された機体だが、動きがぎこちないのだ。まるで素人の動きである。そのモビルスーツにジンは突撃機銃を撃つが、モビルスーツは弾丸をいとも容易く弾いてしまうのである。

 

「あれが噂のPS(フェイズシフト)装甲か…」

 

 

 

 PS装甲とは、連邦が開発した新技術で、一定の電圧の電流を流す事によって相転移する特殊金属を使った装甲である。このPS装甲の耐久性は帝国軍のルナ・チタニウム合金に勝ると言われている。だが、欠点として量産に向かない機能でもあり、PS装甲を使用した場合、バッテリー消費が増加するのである。ミノフスキー・イヨネスコ型核反応炉なら大丈夫かもしれないが、このPS装甲よりも、コスト面で優れたルナ・チタニウム合金の方が遥かにコストパフォーマンスが優れているのである。

 

 

 

「我々はもしかしたら、最初のMS戦を目撃しているかもしれんな…」

 

 前原は映像を観ながら呟いた。その時、突然連邦のモビルスーツの動きが変わった。先程のような鈍重な動きではなく、遥かに柔軟な動きであった。ジンは突然の変化に動揺したのか、一瞬の迷いが生じた。それがこの戦いの分け目だった。モビルスーツは脚部から固定武装と思われるナイフを取り出し、ジンの胸部を突き刺したのである。ジンのコックピットからパイロットが脱出し、MSが下がった途端、ジンが爆発したのである。そしてその瞬間、半蔵からの映像が途絶えた。

 

「閣下、半蔵からのシグナルが途絶えました」

 

 戦術長が報告すると、前原は行動に移った。

 

「格納庫に連絡、アレックスとジム・クゥエルを発艦させろ。ヘリオポリス内部の強行偵察を行う。他の艦艇には万が一に備え、MS隊の発信準備をさせろ」

 

「しかし閣下、それはあまりにも危険です。最悪、我が軍のモビルスーツが的に察知される可能性もあります」

 

参謀長の蔵田が進言するが、前原の考えは変わらなかった。

 

「ヘリオポリスにはまだ大勢の市民がいるかもしれん。それに、我々には知る権利がある。既にイ502には、沖田准将麾下の薩摩パトロール艦隊を経由して高野大臣の耳に伝わっている筈だ。命令に変更はない。アレックス、クゥエルは直ちに発艦!ヘリオポリス内部に向かえ!ザフトが攻撃した場合のみ交戦を許可する!」

 

今、ヘリオポリスで始まったこの局地戦は、新たな段階に進んでいた。

 

 

キャラ設定

 

大日本帝国

安室零

初出:機動戦士ガンダム

概要

 紺碧艦隊MS隊隊長。前世の名は言わずと知れた最強のニュータイプ、アムロ・レイ。

第2次ネオ・ジオン抗争のアクシズショックの影響で後世世界に転生する。紺碧会メンバー。

 

蔵田育之進

初出:紺碧の艦隊

概要

 紺碧艦隊参謀長兼富嶽号航海長。紺碧会メンバー。

 

篁唯衣

初出:マブラヴオルタナティブ トータル・イクリプス

概要

 紺碧艦隊MS隊の一人。隊長である安室の僚機を務める。紺碧会メンバー。余談だが皇紀2872年度ミス帝国軍優勝者で、帝国軍に非公式の親衛隊(ファンクラブ)があるらしい。紺碧艦隊MS隊での呼び名は唯衣姫。


 
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