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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百八話 空港火災

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2014-01-21 23:53:04 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:24521   閲覧ユーザー数:21311

 「ご馳走様。美味しい紅茶だったよエドガー君」

 

 「お口に合った様で何よりです」

 

 空いたティーカップをテーブルに置くと執事のエドガー君が片付けてくれる。

 

 「で、俺に何か頼みたい事があるんだよね?ヴィクター(・・・・・)

 

 「はい」

 

 俺がヴィクターと呼んだ少女…『ヴィクトーリア・ダールグリュン』は今日、俺に何か頼み事があるらしくこうして彼女の自宅である洋館に招かれていたのだ。

 この子との付き合いも今から2年近く前に病院で出会った時以来。何かあの時世話したお礼にと言われて食事に誘われ、その時に連絡先を教えてからは時々、メールでやり取りする程度だったから顔合わせをするのは久しぶりだったりする。

 

 「実は…勇紀様に探していただきたい人物がいるのです」

 

 俺の事を『様』付けで呼ぶヴィクター。

 『『様』付けに関しては止めてほしい』と何度も言ってたのだが、直りそうにないので俺の方が諦めた。

 

 「探してほしい人?知り合いとか?」

 

 「ええ。というよりも私の知り合いではなく、私の先祖と交流があった人物の子孫なんですけど」

 

 ……何だろうね?とてつもなくその人物に心当たりがある様な。

 具体的には黒髪ツインテールな関西弁で兄離れ出来ない子が。

 

 「その人は『エレミア』の名を持つ人物でして女の子らしいのです。エドガーにも調べて貰っているのですが、かつてその人物が住んでいたと思われる屋敷は既に廃墟となってましたし…彼女のご両親も行方を知らないそうでして」

 

 やっぱりジークの事でした。

 そりゃジークは今は俺の義妹だし、あの屋敷に住まず地球で暮らしてるからな。ジークを捨てた本当の両親の事はどうでもいい。実の子を捨てるなんてむしろ親として失格だ。

 しかしヴィクターはジークを探してたのか。なら俺が教えたら万事解決じゃん。

 

 「ヴィクター。お前が探してる『エレミア』の事なんだけどな…」

 

 俺はジークと出会った時の事について事細かに説明する。説明を聞き終えたヴィクターはポカーンとしていたが。

 

 「み…見付からない筈ですわね。勇紀様の義妹になって管理外世界に移住していたなんて」

 

 「何か悪いな。無駄に労力を割かせてたみたいで」

 

 「いえ!その子の所在が分かっただけでコチラの目的は達した様なものですから」

 

 「てか何で探してたのさ?」

 

 「私の先祖が交流を持っていた一族がどの様な者なのか興味があったのですわ」

 

 ほうほう。

 確かに原作でも君、結構ジークを気に掛けたりしてたもんね。

 …丁度良い。ヴィクターとジークを会わせるか。原作通りに仲良くなるのは悪くない事だし。てかこのままだと2人の出会う機会作れるか分からないし。

 

 「じゃあ今度会ってみるか?」

 

 「よろしいのですか!?」

 

 凄い喰い付きだな。

 

 「一応本人にも聞いておくし…問題はジークを連れて来るかヴィクターが地球に来るかだな」

 

 ジークを連れて来るにせよ、ヴィクターを地球に招くにせよ、管理世界と管理外世界の行き来には基本、次元航行の申請と許可を取らねばいかん。

 管理外世界出身の管理局員なら話は別だが。

 

 「ならば私の方から伺う事に致しますわ」

 

 「そうか?」

 

 「はい。別世界の文化にも興味はありますし、第97管理外世界と言えば高ランクの魔導師の方々の出身地という場合が多いですから」

 

 「地球自体に魔法文化は無いんだけどねー」

 

 少なくとも表向きは。裏の世界にはあるかもしれんし。

 

 「まあ、何時頃来るのか決まったら連絡くれる?」

 

 「分かりましたわ」

 

 何時来る事になるかは分からないが、俺も美味しいお茶菓子の準備をしておかないといけないな………。

 

 

 

 ダールグリュン邸を訪れた日から月日は流れ…。

 

 「4月29日…」

 

 この日が来てしまったか。

 そう……空港火災が起こる日が。

 

 「お?懐かしい顔がいるな」

 

 「お久しぶりです部隊長」

 

 俺は今、昔所属していた救助隊に顔を出していた。

 理由としては今日、現場での消火作業及び人命救助に尽力を注ぐ事になるであろう救助隊員の様子見だ。

 俺と澪が所属していた頃よりも練度が上がっているのか非常に気になったのでな。

 もっとも、それ以外にも理由はあるんだが。

 今日起こるであろう空港火災に連れて行くと言う理由がな。

 

 「暁はどうしたよ?お前等、常に一緒だったじゃねえか」

 

 「確かにコンビ組んでますけど四六時中一緒って訳じゃないですよ」

 

 そもそも最初に澪とコンビ組ませる様に指名したのはアンタなんだが。

 

 「今日は特に管理局で仕事って訳でもないですから、地球でのんびり過ごしてると思いますよ」

 

 そういやアイツも今日は空港火災の日だって事は知ってる筈なんだけど…。

 

 「(案外忘れてたりして…)」

 

 ……意外に有り得そうだ。

 後、亮太、椿姫は別の管理世界にある地上本部を査察するため、オーリスさんと共に行動している。なので今日の事件に関わる事は無いだろう。

 しばらくは部隊長と談笑した後昼食をとり、俺は部隊長と共に救助隊の午後の訓練を見学していた。

 一通り見終えた後は既に日も沈み始め、辺りは薄暗くなり始めていた。

 

 「で、どうよ?元救助隊から見たお前さんの感想は?」

 

 「俺が所属してた時より練度が上がってますね。安心しました」

 

 隊員1人1人が正確に作業をこなしていく様を見ながら答える。

 

 「当時、隊員だったお前さんと暁の練度に比べたらまだまだだろうがな」

 

 「澪は呑み込みが早かったですからねぇ…」

 

 当時は西条に魔力とレアスキルを奪われ、飛行魔法もままならなくなっていたけど、必死に自分を鍛えて力を蓄えてた姿を思い出す。

 なのはみたいに自分の身体に負担が掛かる程、無茶な訓練は行わなかったし行わせなかった。

 

 「当時のお前さん等の訓練や現場で活躍してた映像はウチの部隊にとって、良い教本になってるさ。皆、映像に映るお前さんや暁の姿に憧れ『追い付け、追い越せ』を目標にしているからな」

 

 「はは…それは頼もしいですね」

 

 何つーか…目標にされているという事実が小恥ずかしい。

 

 「で、だ。お前さん折角だからアイツ等に指導してやっちゃくれないか?」

 

 「今からですか?」

 

 夜間訓練の指導って事か。

 

 「おう。救助隊元エースのお前さんが指導してくれりゃいい経験にもなるだろうし」

 

 「…まあ、隊員達の実力の向上に繋がるのは望む所ですし……」

 

 ヴィーーーッ!!ヴィーーーッ!!

 

 訓練に参加しようとした所で警報が鳴り響く。

 

 『部隊長!!』

 

 突然俺と部隊長の前にディスプレイが浮かび、1人の局員の姿が映る。

 

 「どうした!?」

 

 『『ミッドチルダ臨海第8空港』にて大規模な火災事件が発生しました!!』

 

 「何っ!!?」

 

 来たか…。

 

 『『あまりにも規模が広く、火の勢いも止める事が困難である』と現場にもっとも近い地区の陸士部隊から通達を受けました。つきましては『至急救助隊及び局員の増援を!!』との事です!!』

 

 「地上本部の上層部への連絡は!?」

 

 『すでに終えております!しかし陸士部隊増援の承認を得るまでに時間が掛かっている様で』

 

 「おいおいマジか」

 

 「…仕方の無い事です。地上本部は本局と違って指揮系統がしっかりしてますから。中途半端で杜撰な指示を出す訳には行きませんからね」

 

 上が1つ1つ的確に出していかないと下が混乱する。けど承認が全て出終えるまで待っていたら余計に部隊が出遅れ、火災の被害が広がる。

 

 「……こういう時は救助隊だけでもさっさと連れて行きましょう」

 

 「は?いやでも…」

 

 俺は地上のトップに回線を繋ぐ。

 もう夜になる時間帯だけどまだいるよね?

 

 『こちらレジアスだ。何か用かね長谷川三等陸佐?』

 

 「突然の事で済みません中将。中将は臨海第8空港火災の件についてもう聞き及んでますか?」

 

 『ああ、今し方聞いた所だ』

 

 「そうですか。実は今昔お世話になっていた救助隊に顔を出していまして……救助隊が上からの出動要請待ちなんですが、このまま待っていたらより火災の被害が拡大すると予想されるんです」

 

 『ふむ』

 

 「コッチは現場まで少し距離があるので承認待ちだと余計に時間が掛かるんですよ。そこで中将には現場急行するための大規模転移魔法の使用許可を頂けたらと思いまして」

 

 コッチで消火に必要な人材と機材の準備が出来次第、即座に現場へ飛ぶつもりだ。

 準備を整える時間を考えると今から15~20分ってとこか。……首都から航空隊の主力が現地に到着するまでに先行し、ある程度の消化は出来るだろう。

 それまでの間は現場で指揮をしてるであろうはやてと救助活動に参加してるなのは、フェイト…後は応援で駆け付けるゲンさんの陸士108部隊に頑張って貰わないといけないが。

 

 『そういう事か。分かった、許可しよう。ついでに現場での指揮権は全て貴官に一任する。準備が出来次第すぐに現場に向かってくれたまえ』

 

 「了解です」

 

 敬礼して返事をし、通信を終える。

 

 「はあ~…お前さんがレジアス中将のお気に入りっていう噂は本当だったか」

 

 「お気に入りかどうかはともかく個人的に繋がりがありまして」

 

 「どうやったら地上のトップと繋がりを持てるのか非常に気にはなるんだがな」

 

 「あはは……」

 

 苦笑いで答えておく。

 

 「ま、今はそんな事より隊員達を集めねえとな」

 

 「お願いしますね」

 

 『おう』と短く返事をして部隊長が指示を出し始める。

 さてさて……俺も介入準備しますかね………。

 

 

 

 ~~はやて視点~~

 

 わたしは今、研修先である陸上警備隊104部隊の部隊員達に指示を出し、臨海第8空港でおきた火災の消火及び人命救助を行っていた。

 休暇を利用して遊びに来とったなのはちゃんとフェイトちゃん、アリシアちゃんにも人命救助の作業を手伝って貰ってる。

 正直、火の手が多過ぎて今の人数じゃロクに消化も人命救助も行えん。

 

 パアアアァァァァァッッ

 

 そんなわたしの背後に魔力反応が感じられ、振り向いてみると

 

 「現地到着……っと」

 

 大勢の隊員を引き連れた勇紀君の姿があった。

 

 「勇紀君!?え!?何で!?」

 

 「ん?はやてか?今、ここの部隊の指揮をしてるのはお前か?」

 

 「う、うん…そうやけど」

 

 「丁度良かった」

 

 そう言うと勇紀君は姿勢を正し

 

 「長谷川勇紀三等陸佐と救助隊員51名。これより火災の消火及び人命救助作業に尽力を尽くす!!」

 

 敬礼して答える。

 勇紀君の姿勢を見て後ろにいる救助隊員の人達もすぐさまわたしに向かって敬礼する。

 

 「で、だ。俺は現場での指揮権を正式にレジアス中将から貰ってるからこのまま指揮権を引き継ごうと思ってるんだけどどうする?」

 

 「『どうする』って?」

 

 「俺としてははやてから部隊の指揮権を委譲して貰って救助隊も含めた全部隊の指揮をしても良いし、逆に救助隊だけの指揮でも良いし、はやてが救助隊含めた全部隊の指揮をして貰っても良い」

 

 「ふえ!?わたしが全部隊を!?」

 

 驚くわたしに対し、勇紀君は首を静かに縦に振るだけ。

 

 「むむむ無理無理!!まだそこまで部隊指揮の経験積んでる訳やないし…」

 

 ただでさえ、今の臨時指揮だけでも不安があるのに。

 

 「じゃあ、どうする?俺が全部隊の指揮するか?」

 

 「…出来ればそうしてほしいかな?」

 

 それやったらわたしも空から消火作業手伝えるし。

 わたしは指揮を勇紀君に引き継ぐため、勇紀君が来る前の状況やなのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃんも救助活動に参加してる事を伝える。

 

 「勇紀君の補佐としてリイン預けとくから」

 

 「はいです!リイン頑張りますよ!」

 

 「あ、リインはそのままはやてと一緒に行動してもいいよ。ユニゾンした方が魔力制御もちゃんと出来るだろ?」

 

 「う…」

 

 勇紀君に言われて言葉が詰まる。

 確かにわたしだけやと魔力の制御が少し心許ない。リンスやリインとユニゾンする事でその問題は解決できるけど。

 

 「味方巻き込んだらシャレにならんだろ?」

 

 「……仰る通りです」

 

 「だからリインははやてを補佐してあげてくれ」

 

 「そうですか?じゃあ勇紀さんの指示に従いますぅ」

 

 「よし。じゃあA班!!」

 

 「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」

 

 勇紀君が救助隊の人達に振り向いて言葉を発すると17人の隊員が返事をする。

 それぞれ17人のグループに分かれているらしく『A』『B』『C』の3つの班で構成されている様だ。

 

 「A班は今すぐ屋外からの消火活動に従事!!」

 

 「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」

 

 「次!B班!!」

 

 「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」

 

 「B班は空港内に突入!!中に取り残されている要救助者の救助及び保護を担当!!」

 

 「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」

 

 「C班はこの場に待機!後に運ばれて来るであろう要救助者の簡易検査と応急手当。それと重傷者がいた場合、すぐに病院に搬送出来る様手続きを!!」

 

 「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」

 

 「よし」

 

 隊員達の元気良い返事を聞いた後、勇紀君の背後から何かが現れる。

 それは消火器や放水ホースに大量の水が入ったタンク。後は担架、組み立て式の簡易ベッド、持ち運び式の医療器具等、救助に必要な道具一式を出す。

 

 「(隊員の人達が何も持って無かった理由はコレやったんか)」

 

 勇紀君のレアスキルやったら荷物の量を際限なく持ち運び出来る。

 そう考えると宝物庫ってメッチャ救助隊向きやな。

 

 「よし!じゃあ『済みません!!』…どうかしましたか!?」

 

 勇紀君が救助隊の人達に号令を掛けようとした所に通信が入る。

 さっきまでわたしが指揮してた陸上警備隊の1人だ。

 

 『一部の区画で火の手が強く、救助に向かうのが非常に困難なのです!!一体どうすれば!?』

 

 「その区画は何処ですか!?」

 

 『ここです!!』

 

 空港のマップで火の手が強いらしい場所を指してくれる。

 ここって燃料タンクがすぐ側にあるやん!

 

 「そこに高ランク……Aランク以上の魔導師はいないのですか!?」

 

 『Cランク魔導師が2人。後は全員非魔導師です!』

 

 今この場にいる高ランク魔導師と言えばわたしとなのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、そして勇紀君や。

 なのはちゃん達が要救助活動を行っている区画は火の手が強い区画からは少し遠い。

 

 「勇紀君、わたしが行こか?」

 

 「……いや、はやては上空からの消火に専念してくれ。俺が直接向かうよ」

 

 「大丈夫なん?」

 

 「現場で動きながら指揮する事も慣れてるしな。……C班の副長!!」

 

 「はい!!」

 

 副長と呼ばれた1人の隊員が返事をする。

 

 「申し訳ありませんが俺も現場に赴く事になりました。通信回線は常に開いておくから何かあったら連絡を。それから後々応援で駆け付けて来る部隊の責任者達に現状の説明もお任せします!!」

 

 「了解!!」

 

 「よし!という訳だ。火の手の強い区画には俺が向かいますから皆さんは他の区画に回って救助活動を続行して下さい!!」

 

 『はい!!』

 

 『済みません!!要救助者を2名救助!!内1名は足を挫いて怪我をしています!!』

 

 「大丈夫!!既に応急手当や医療器具の準備は出来ています。そのまま要救助者をこちらにまで連れて来て下さい!!」

 

 『分かりました!!』

 

 『コチラ北東区画!!放水用の水が尽きました!!至急新しい水の手配を!!」

 

 「ソチラには上空から八神一尉の凍結魔法による消火作業を行います!!消火作業班は魔法に巻き込まれない様、ただちにその場から退避して下さい!!」

 

 『了解です!!これより退避させていただきます!!』

 

 次々と的確な指示を出していく勇紀君。

 

 「(凄いなぁ…)」

 

 その一言しか思い浮かばない。これが経験の差っちゅう事か。部隊を指揮するその姿には憧れを感じる。

 指示を出しながら先程連絡のあった現場へと向かう勇紀君の背中を見送って

 

 「(わたしも…わたしもいつかは勇紀君みたいな指揮官になりたい)」

 

 そう…思わずにはいられなかった………。

 

 

 

 ~~はやて視点~~

 

 ~~スバル視点~~

 

 「うっ…ぐすっ……」

 

 私は1人で今、空港内を歩いている。

 最初ははぐれたお姉ちゃんを探していただけだったのに、大きな音が聞こえたと思ったら周りが火に包まれていた。

 

 「お父さん…お姉ちゃん…」

 

 周りには誰もおらず、ただ宛ても無くお姉ちゃんを探して歩き続ける。

 

 ドオオオォォォォォンンンッッッッ!!!!

 

 「きゃあああぁぁぁぁぁっっっっ!!!」

 

 突然横の壁が爆発し、私は爆風で吹き飛ばされる。

 

 「う…痛いよ……暑いよ……こんなのヤだよ……帰りたいよ……」

 

 どうしてこんな目に遭わないといけないの?

 

 ミシミシ……

 

 「助けて……」

 

 ミシミシ……

 

 「誰か……助けてよ……」

 

 ミシミシ……バキッ!

 

 起き上がろうとした際に音が聞こえたので振り返ると

 

 「っ!!」

 

 広間に建っていた巨像が私に向かって倒れて来ていた。

 私は咄嗟に目を瞑り、『ここで死んじゃうんだ…』と思っていた。

 

 「………………???」

 

 しかし一向に痛みも何も感じないので、ゆっくり目を開けると

 

 「間に合った…」

 

 私の大好きなお兄ちゃんがそこにいた。

 お兄ちゃんは魔法で巨像が倒れてくるのを防いでくれていた。

 ゆっくりと私の傍に寄って来るお兄ちゃん。

 

 「スバル、大丈夫か?」

 

 「う…うう……お兄ちゃ~ん!」

 

 私は起き上がってたまらずお兄ちゃんにしがみつく。

 

 「1人で怖かったよな?けど、もう大丈夫だから」

 

 お兄ちゃんはそんな私の頭を優しく撫でてくれる。

 温かくて優しさを感じるお兄ちゃんの手。

 

 「あのねお兄ちゃん。私お姉ちゃんとはぐれたからお姉ちゃんを探してたの」

 

 「そっか。ギンガもこの空港に来ているんだな?」

 

 「うん」

 

 「じゃあギンガも探さないと」

 

 お兄ちゃんは私の頭を撫でるのを止めて言う。

 

 「そこの人、無事ですか!?」

 

 今度は別の人の声が聞こえてきた。

 

 「助けに来ました……って、勇紀君!!?」

 

 「なのはか。丁度良い」

 

 「丁度良い?いや、それより何で勇紀君がここにいるの!?」

 

 「救助隊を引き連れてやって来たからな」

 

 「そうなんだ」

 

 「ああ…で、なのは。この子を頼む。俺がお世話になった人の娘さんなんだ」

 

 「私も救助しに来たからその子を預かるのは良いんだけど、勇紀君はどうするの?」

 

 「この子…スバルのお姉さんのギンガを探しに行こうと思ってな。スバルを連れて探しには行けないから」

 

 お兄ちゃんと知らないお姉さんが話している様子を見る。

 あ、でもよく見たらあのお姉さん、テレビとかで見た事ある様な…。

 

 「スバル」

 

 思い出そうとしていたらお兄ちゃんに声を掛けられる。

 

 「これから俺はギンガを探しに行くから、このお姉さんに安全な場所まで運んで貰うんだよ」

 

 「うん」

 

 私は素直に頷く。

 お兄ちゃんならお姉ちゃんも見つけてきっと助けてくれる。そんな気がしたから。

 『じゃあ、後任せた』と言って別の場所へ行くお兄ちゃんの背中を見送る。

 

 「じゃあ私達も行こうか。もう大丈夫だからね。安全な場所まで一直線だから」

 

 お姉さんはデバイスの杖を上方に向け、足元に魔法陣を展開させる。

 

 「一撃で地上まで抜くよレイジングハート」

 

 「了解。上方の安全は確認済みです。カートリッジロード」

 

 デバイスから何かが2つ吐き出されると、デバイスの先端に魔力が集まる。

 

 「ディバイーーン…バスターーーー!!!」

 

 ドゴオオオオォォォォッッッッ!!!!!

 

 桃色の光線が真っ直ぐに伸び、天井を突き破る。

 

 「ふわぁ…」

 

 私はその桃色の光線に目を奪われる。

 光線が消えた後には穴が開いた天井の部分から夜空が見えていた。

 

 「これでよし…じゃあ「ひゃっはーーー!!」…この声って……」

 

 何だかまた別の人の声が聞こえて来たかと思うと、穴を開けたお姉さんの表情が変わっていた。

 どうしたのかな?

 

 「大丈夫かなのは?オリ主の俺様が助けに来たぜ!!」

 

 お姉さんが開けた穴から男の人がやって来た。

 

 「…何で西条君がここにいるのかな?」

 

 「たまたまこの辺をうろついてたら火の手が上がってるのが見えてな。救助活動の手伝いに来たって訳だ(原作知識で今日火災が起こるのは分かってたからな。朝からずっと張って待ってたって訳だ)」

 

 男の人の説明にお姉さんはどこか訝しげな表情をしている。

 するとお姉さんと話していた男の人がコチラを向く。

 

 「ふっ…(原作通りだ。あれはスバルだな)」(ニコッ)

 

 ゾクリ…

 

 「ひっ!」

 

 何だかあの人……怖い。

 

 「君は要救助者かな?俺様は西条貴志って言うんだ。俺様が来たからにはもう安心だぜ」

 

 男の人が手を伸ばしてくる。

 私の頭を撫でた瞬間、気味悪い感触が体中に走る。

 

 「いや!!」

 

 私はその手を振り払ってお姉さんの背に隠れる。

 この人…お兄ちゃんと違って何だか近付いてほしくない。

 

 「何だ?恥ずかしいのかい?(照れ屋なスバル…良いじゃねえか)」

 

 「西条君!この子、さっきまで怖い目に遭ってたんだから酷い事しないで!!」

 

 「酷い事?何言ってるんだなのは?俺様はその子の気を落ち着かせようとしたんだぜ?」

 

 「何処が!?この子、怯えてるじゃない!!」

 

 「怯える?んな訳ねーって(なのは…小さいスバル相手にも嫉妬するなんて……そこまで俺に惚れ込んでるって事だな。可愛い奴だぜ)」

 

 「(また何か勘違いしてる)もういいよ!!この子は私が連れて行くから西条君は他に取り残されてる人の救助に行きなよ!」

 

 「ん?そうだな。オリ主の俺様が助けに行ってやらないとな(スバルも俺の事を意識しただろうし、次はギンガだな)」

 

 何だかまたコッチを見てから別の場所に男の人が行く。

 

 「怖かったよね?もうあの人はいないから。それより早くここから出ようね」

 

 「……………………」(コクッ)

 

 こうして私はお姉さんに抱き抱えられ、救助隊の元にまで運ばれた。

 そして私もお兄ちゃんやこのお姉さんの様に『誰かを助けられるぐらい強くなる。もう泣いてるだけで何も出来ない自分を変えるんだ!』という想いを胸に秘めたのだった………。

 

 

 

 ~~スバル視点終了~~

 

 ~~ギンガ視点~~

 

 「スバルー!!スバル、どこー!?」

 

 ドオオオォォォォォンンンッッッッ!!!!

 

 「きゃああっっっ!!!」

 

 先程から色んな所で爆発する音が聞こえ、私の足元が振動で揺れる。

 立って歩くのが難しいので手すりをしっかり握りながらゆっくり前へと進む。

 

 「スバル…スバル、返事をして。お姉ちゃんが、すぐ助けに行くから」

 

 今頃、何処かで泣いているかもしれない妹の姿を私は探す。

 あの子は私の大切な妹だ!絶対に助けなきゃ!

 

 「そこの子!ジッとしてて!今助けに行くから!!」

 

 突如聞こえた誰かの声。振り向き、上の階の方を見るとバリアジャケットを纏った金髪の女性が私に呼び掛けていた。

 

 バキバキ…バキイッ!!!

 

 「ああっ!!?」

 

 だけど、その瞬間に足元が崩れ、私の身体は宙に投げ出される。

 

 「きゃあああぁぁぁぁぁっっっっ!!!」

 

 そのまま重力に引かれ、下の階に落ちていく。

 

 ズズズズズズンンン!!!

 

 崩れた足場は最下層に落ち、大きな粉塵を巻き起こす。

 私自身は……落ちていなかった。

 

 「危なかった…」

 

 私のすぐ側で聞こえる先程の人の声。

 いつの間にか私はその人に抱き抱えられていた。

 

 「ゴメンね…遅くなって。もう大丈夫だよ」

 

 「ぁ……」

 

 助かった…。私、助かったんだ。

 

 「この辺に反応が……って、フェイト!!ギンガ!!」

 

 「「え?」」

 

 咄嗟に自分の名前を呼ばれたので反応する。

 私とフェイトって呼ばれたお姉さんの向いた先には

 

 「良かった……無事だったか」

 

 「「勇紀さん!(勇紀!?)」」

 

 私達ナカジマ家と仲の良い知り合いの人の姿があった。

 

 「勇紀?え?どうしてここにいるの?」

 

 「落ち着けフェイト。救助隊の人達を連れて応援に駆け付けたんだよ。俺は現場で要救助者の捜索と救助を行ってるって訳だ」

 

 勇紀さんとこの人は知り合いなのかな?

 って…

 

 「勇紀さん!!スバルが!スバルがまだ空港の何処かにいるんです!!早く見つけてあげないと!!」

 

 私は勇紀さんに説明しようとする。

 今日はスバルと一緒にお父さんの部隊先に遊びに来ていた事、そして空港にいた際、スバルとはぐれた時にこの火災に巻き込まれた事を。

 

 「ギンガ、大丈夫だ。そのスバルだけどさっき助けた所だから」

 

 「え?」

 

 スバルはもう助かってるの?

 

 『こちら通信本部。『スバル・ナカジマ』、11歳の女の子。既に救出されています。救出者は長谷川三等陸佐と高町教導官です。大きな怪我はありません』

 

 「な?」

 

 通信先の局員さんがスバルの無事を知らせてくれる。

 

 「スバル…良かった……」

 

 私は安堵する。

 

 「勇紀さん、ありがとうございます」

 

 「いやいや、気にするな。……フェイト」

 

 「何?」

 

 「ギンガの事頼む。俺はまだ要救助者がいないか探すから」

 

 「分かったよ。勇紀も気を付けてね」

 

 「うい」

 

 小さく返事をし、勇紀さんが別のエリアへと向かう。

 

 「じゃあ、私達もここから出るよ。ギンガ…だったよね?」

 

 「あっ…はい。ギンガ…ギンガ・ナカジマ。陸士候補生13歳です」

 

 「候補生か。未来の同僚だ」

 

 「きょ…恐縮です」

 

 勇紀さんがさっき言ってたこの人の名前…『フェイト』と呼ばれていたのを聞いて思い出した。

 フェイト・テスタロッサ執務官。本局所属の高ランク魔導師……エースの1人だ。

 勇紀さん、そんな人と知り合いなんだ。

 

 「ひゃっはーーーー!!!!」

 

 「???」

 

 何だろう?

 何だかまた別の人の声が聞こえた様な?

 

 「……………………」

 

 フェイト執務官は何だか不機嫌そうなオーラを出している。

 

 「フェイト、オリ主の俺様が助けに来たぜ!!」

 

 「……何で西条がここにいるのかな?」

 

 「たまたま通りがかったんだよ。お前達嫁だけに苦労掛けさせるわけにはいかないだろ?(よし!ここも原作通りギンガがちゃんといるな)」

 

 「……………………」

 

 「その子はフェイトが助けたのか?大丈夫だったか?」(ニコッ)

 

 ゾクゾク…

 

 「ひっ!」

 

 私は小さく悲鳴を上げる。

 あの人がコッチを見て笑顔を浮かべた瞬間、私の全身に悪寒が走った。

 すぐさま、私は顔を背ける。

 

 「(ふっ、俺様と顔を合わせるのが恥ずかしいんだな。別に恥ずかしがらなくても良いんだけど、オリ主の俺様がカッコ良過ぎるから仕方ないか)」

 

 「……悪いけど、私はこの子を連れて脱出するから。西条も要救助者を探すなら別の場所に早く行きなよ」

 

 「ん?俺様がお前達をエスコートしてやるぜ?(アニメじゃこれ以降の描写無かったからもう救助する奴なんていねえだろ)」

 

 「別に必要無いよ」

 

 私もこの人と一緒にはいたくない。

 

 「早く救助者の捜索に向かってよ。コッチは私だけで大丈夫なんだから」

 

 「しょうがねえ。嫁がそう言うんならもうひと働きするか(適当に見回って時間潰してから戻ればいいか)」

 

 最後にまた笑顔を浮かべてどこかへ去って行く。

 

 「ゴメンね。不快な思いしなかった?」

 

 「……実はしちゃいました」

 

 私は正直に言う。

 うう……早く忘れよう。

 それからすぐに建物の中から脱出し、私はスバルと無事再会出来たのだった………。

 

 

 

 ~~ギンガ視点終了~~

 

 さてさて。

 アニメにも描写されてなかった区画にやってきた。

 ここにも1人の生命反応があったからだ。

 場所的には輸入品等を一時的に保管する倉庫が近くにある。

 こんな所にいるなんて避難してるうちに迷い込んだのかな?

 

 「ぇ~ん…ぇ~ん…」

 

 ん?

 今鳴き声が聞こえた。

 

 「うえ~ん…うえ~ん…」

 

 やっぱり聞き間違いじゃ無い。コッチか!!

 俺が泣き声のした方に駆けつけると大声で泣いている女の子の姿があった。

 

 「大丈夫?怪我はない?」

 

 「ふえ!?」

 

 突然声を掛けたので驚いたのかビクッと身を竦ませて泣き止む。

 周囲にはこの子以外の姿は見当たらない。

 

 「ここは危ないよ。お兄さんと一緒に避難しよう?」

 

 「うっ…ぐすっ…」

 

 よしよしと頭を撫で、早速運んで脱出しようとすると

 

 「っ!!ユウ君、新しい反応が!!向こうからコッチに来るよ!!!」

 

 っ!!?まだ要救助者が残ってたのか!?

 そう思い、ダイダロスの言う方向に顔を向けた瞬間足音が聞こえ、人影が姿を現す。

 

 「なっ!?」

 

 その人影を見て俺は思わず声を漏らす。

 何で……コイツが(・・・・)!?

 見覚えのあるその男は2メートルを超えているであろう大男だった。

 

 「時空管理局地上本部所属、長谷川勇紀三等陸佐…だな?」

 

 大男の声で俺はハッとし、少女を一端結界で保護しながら身構える。

 何故コイツがここにいるのかは分からないが倉庫のあった方から出て来た時点で何かしてたとしか思えない。

 

 「俺の事は知ってるのか…。自己紹介の手間が省けたな。ついでにその先の倉庫で何をしていたのか答えて貰おうか?」

 

 「その質問に答える義理は無い」

 

 「『答えられない事をしてたから答えたくない』の間違いじゃ無いのか?」

 

 「……………………」

 

 今度は沈黙。肯定せず否定せず…ね。

 

 「しかし怪しいのは事実だし。このまま任意同行してくれるとありがたいんだけど?」

 

 「拒否する」

 

 ま、そう言うわな。ていうか問答しても正直に答えてくれなさそうだし。

 

 「もう1つ聞いておく。今回の空港火災を引き起こしたのはお前か(・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 「……『そうだ』と言ったらどうする?」

 

 「決まってんだろ…」

 

 問答無用で逮捕するさ。

 

 ブワッ!!

 

 俺は魔力を解放する。

 大男は手に着けていた手袋を外し、静かに佇む。

 正直、目の前の相手に勝てるかどうかは分からないが、ここで逃がす訳にもいかない。

 さあ……闘り合おうか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バーソロミュー・くま(・・・・・・・・・・)!!

 

 「長谷川勇紀。旅行するなら何処へ行きたい?」

 

 ~~キャラクターステータス~~

 

 NO.0002

 

 シュテル・長谷川

 

 LV   81/ 999

 HP 7600/7600

 MP  660/ 660

 

 移動力     7   空  S

 運動性   135   陸  A

 装甲   1800   海  B

 照準値   155   宇  -

 移動タイプ  空・陸

 

 格闘 193 命中 199 技量 199

 射撃 211 回避 196 防御 210

 

 特殊スキル 援護攻撃L2

       ヒット&アウェイ

       気力+(ダメージ)

       ガンファイトL7

       連携攻撃

       集束攻撃

 

 ~~あとがき~~

 

 ある~日~、空港で~、(バーソロミュー)くまさ~んに~、出会~った~

 火災のげ~ん~ば~で~、(バーソロミュー)くまさ~んに~出~会~った~

 

 原曲『森のくまさん』より

 

 

 

 という訳で敵勢力に暴君・くまさんがログインしました。

 スカリエッティ及びナンバーズが味方勢力なのでくまさんにはStsの戦闘機人のポジションをこなして貰います。

 尚、原作通り6メートル超えの身長だと『リリカルなのは』の世界では大きすぎるので、約3分の1の2メートル超えに身長を縮めました。

 そしてくまさんが出るという事は当然、量産型くまさんであるパシフィスタも…。

 味方ばかりチートして『管理局側TUEEEEE!!!』にならない様にという配慮です。

 ……フォワード陣でくまさんは無理としてパシフィスタに勝てるかなぁ?

 


 
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