No.655242

義輝記 別伝 その壱

いたさん

義輝記の続編です。 今回の物語は、劉備陣営を吸収した曹操陣営の話になります。そのため、天城達はお休みです。 また、よろしければ読んで下さい。
1/17 一部修正しました。
2/21 一部加筆修正しました。

2014-01-17 01:05:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2383   閲覧ユーザー数:2117

【やっぱり一刀だった…の件】

 

〖陳留城内演習場にて〗

 

一刀「チェェェェーーーイィィィ!!」 

 

ガシュ! ガシュ!

 

自然に生えている立木に向かい、木刀を振る俺………。

 

『朝に三千、夕に八千』と言われているこの練習だか、今の俺にはまだまだそこまで出来ない…………。 怪我の為とかじゃなくて、ただの練習不足…。

 

あの『立花宗茂』との再戦に備え、早朝や仕事が早く片付いた時に、自顕流の稽古をしている。 今度は勝って、問い質すため………。

 

 ダッダッダッダッ!! 

 

春蘭「おぉぉーー! 一刀か! 今朝も早くから訓練を開始しているとは、熱心だな!」

 

一刀「夏侯元譲殿! おはようございます!」

 

春蘭「おいおい、敬語なんて使わなくていいぞ? お前は『天の御遣い』であり、華琳様に認められた男だからな!」  バン! バン!

 

一刀「い、痛い、痛い! 止めてくれ! 『春蘭』!」

 

春蘭「最初からそう言え。 預けた真名が腐ってしまう…」

 

一刀「??……腐る……??」

 

     ザッザッザッ        

 

秋蘭「………フッ。 姉者は、預けた真名で呼んでくれないと、寂しいと言っているのだよ。 一刀」

 

………俺達が、『曹孟徳』の下に入り二週間経った。

 

何故か、俺だけ華琳や配下の将より『真名』を預かる事になったんだ。

 

◇◆◇

 

【 旧劉備軍の活躍?の件 】

 

〖 約二週間前 陳留城内玉座にて 〗

 

華琳「本日より、元劉備軍の将が我らの下に編入する事になった!」

 

金髪のクルクル髪の女の子、覇王『曹孟徳』様より正式な通達、自己紹介、務める部署、その上司を紹介される。

 

因みに真名は、それぞれが認めれば交換しあえば良いと、寛容な応対。

 

それに、1ヶ月位は兵卒扱い、それから徐々に将軍としていく方針。

 

だからと言っても敬称は付けなければならないと、朱里達と相談して曹孟徳様とも話し合い、将軍位は略し『殿』付けにする事に決まった。

 

愛紗、鈴々、星は軍部、上司は夏侯元譲殿、夏侯妙才殿。

 

朱里、雛里は政務部、上司は荀文若殿。

 

桃香は、警備隊。上司は楽文謙殿、李曼成殿、于文則殿。

 

俺は、基本相談役だから、忙しい所に手伝いに行く何でも屋。

 

上司は覇王様だ………………。 

 

 

そんな訳で、俺達の仕事が決まり、ここでの生活が始まった!

 

★★☆

 

愛紗は、真面目だから何でもよく働く。 兵卒になったといっても、兵の皆と同じ練習をこなし、同じ食事をして、同じ宿舎で休む。 

 

星も大半真面目だが、稀に長い時間、軍務を離脱する事があるため、そんな事したら、酒とメンマを禁止するよう伝えておいた。

  

鈴々は、自由気儘な所があるため、そのたびに夏侯元譲殿が、追い掛けて連れ戻していたが…………。

 

★☆☆

 

朱里も雛里も、最初こそカミカミ発言で大変だった。 

 

今は、上司の荀文若殿が、返答に困るほどの発言をするため、部署の皆が喜んでいた。 だって、荀文若殿は、一言喋ると十倍の悪口で返って来る程の毒舌だから。

 

俺が、用あって朱里や雛里に会いに来たら、罵倒が70 %、人格不定が20% 、男だからで30%で形成された毒舌を喰らった。 

 

……100%を越えているのは、『話』から『罵声の羅列』に変化したから。

 

★★★

 

……………………で、一番問題がある部署に『堕ちてしまった』警備隊………。

 

桃香より話を聞くと、楽文謙殿は、三人の中で一番真面目な将で、桃香を面倒みてくれるのだが…。

 

『猫に木天蓼(マタタビ)、子供に劉備』の格言が出来そうな程、子供達が付きまとう。 勿論、一緒にいる楽文謙殿も巻き込まれ…。

 

桃香「ご、御免ね、皆! 今日は仕事中で………きゃ!?」

 

子供1「やだ! この前遊んでくれる約束だったのに、全然来てくれなかったじゃないか…………! お姉ちゃんの嘘吐き……」

 

桃香「あ、あの時は、急なお仕事が入って……ちょ! だ、誰!? お尻触った子は…………!! って、またぁぁぁぁぁ~~!!!」

 

凪「こらっ! お前達、警邏ちゅ…ヒャッ!!」

 

子供2「このお姉ちゃんの尻は固いぞ! 男みたいだぁ~!」

 

凪「─────── (゚◇゚)ガーン」

 

子供3「……お姉ちゃん、傷だらけで……………怖い…」

 

凪「─────── (≧Д≦)」

 

  トボトボ…………… ストン  ……イジイジ

 

桃香「楽文謙~殿! 道の隅で座ってないで、早く助けて~ぇ~!!」

 

てな、具合で警邏が捗らず(はかどらず)、他の二人が懸命に頑張るが、不手際の申告が後を絶たなかったと聞いている。

 

◇◆◇

 

【 桂花の暴走の件 】

 

〖曹孟徳の私室にて〗

 

華琳「…………ふぅ。 どうにかならないかしらねぇ、桂花?」

 

あぁぁ……… 愛しの華琳様の憂い顔、ため息をつく姿勢、どこをとっても華琳様以上に素晴らしい女性は居ないわぁ!!

 

華琳「………桂花、桂花? 桂花!!」

 

桂花「はい!! すいません! 華琳様!!」

 

華琳「……貴女に相談しても、何も意見はなさそうね。 仕方ないわ、『一刀』を呼んできてくれるかしら…。 ……ん? どうしたの桂花? 」

 

か、かかか、華琳様! 何故あのようなブ男を、『男と言う獣の皮』を被った男を華琳様のお側に!? それに、どうしてアイツの名前を呼ぶんですか!!

 

華琳「別に…。 北郷一刀の名前を教えてもらった時に、名の所は『天の国』では真名に当たると聞いたのよ。 だから、真名を交換して…」

 

ええぇぇ! 私でさえ甘美で危険なやり取りの末に、真名を交換したのに…。

 

あのブ男で男臭くて人の顔見てニヤニヤ笑う最低最悪男が!!

 

華琳「……桂花…」

 

私は、思いつく限りの悪態を呟いていると、華琳様の声が………!

 

『 はいっ! 』

 

────今度は直ぐに返事を返す! 

 

同じ失態を繰り返すなど軍師として失格だ!

 

華琳様は、私を一瞥すると、端正なお顔を歪めて鋭く言い放った!

 

華琳「早く、一刀を呼んできなさい!!!」

 

は、はいっっ! 只今!! 

 

私は、脱兎の如く華琳様の座る部屋より飛び出し、あのブ男を探しに行く。

 

おのれぇぇーー、北郷! アンタのせいで! アンタのせいで!!

 

この恨み、はらさでおくべきか!!!

 

 

 

華琳「 ……『男の皮を被った男』って、なんなのかしらね…… 」

 

 

◆◇◆

 

【 曹孟徳の頼み事の件 】

 

〖陳留城内の渡り廊下にて〗

 

俺は…………早くも疲れきっていた。まだ、朝ご飯食べていないのに……。

 

桂花「ほら! サッサッと歩く! 華琳様がわざわざアンタみたいな奴を御前に呼んで戴いたのだから、もっと喜びを体で表現しなさい!!」

 

無茶言うなよ……。 

 

早朝の稽古が終わり、飯でもと思っていたら……………荀文若殿が足早にやって来られた。 赤鬼みたいな怖い顔で…………。

 

なんの用だと思えば、まず罵声、次に曹孟徳様を持ち上げたと思えば、人格不定のコンボ技。 

 

………話が終わった後は、ボロボロさ…………。

 

結局、用件は『曹孟徳様が、お呼びだから付いて来い!』……だ。

 

仕方無しに、トボトボと後へ付いて向かう俺………。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

華琳「あら、案外早かったのね、桂花 」

 

着いたのは、曹孟徳様の部屋の中。 

 

実務的な整理整頓がされた、私的な場所と言うより仕事部屋。

 

未処理と処理済みの竹簡が綺麗に分けられている。

 

華琳「一刀、貴方に聞きたい…って、桂花? 何故、貴女がこのまま部屋に居るのかしら。 貴女の用は済んだ筈よ? 」

 

俺の横には、何故か荀文若殿が立っている。 

 

桂花「…華琳様が心配で……」

 

華琳「…桂花、貴女の腕で護衛が務まるか、わからない訳じゃないわよね…」

 

曹孟徳様の声が低く冷たくなっていく……。

 

桂花「ですが……」

 

華琳「不定も疑問も出さない! 曹孟徳の言葉を信じないなら… 」

 

  ガタガタガタ  ガタガタガタ

 

桂花「失礼しましたーーーーー!!」

 

荀文若殿が震えてだし、曹孟徳様に非礼を詫びて退出していった。

 

華琳「全く………。 甘えるのは閨か二人だけの時にして貰わないと…」

 

公私を混合し過ぎるわ……と、呟く覇王様。

 

唖然とする俺に意見を求めるのは、今の警邏の改善策。

 

旧劉備軍が曹操軍に取り込まれて、皆それぞれ馴染んでいくが、街の警邏が大混乱で困っていると言う。 

 

原因は桃香にあるのは、本人から聞いて承知済みだし…。 

はぁ~。

 

一刀「原因は判明してますから、俺を警邏隊に勤めさせて貰いたいのです!」

 

原因は桃香と楽文謙殿の接し方によるもの。 ここを解消し、更に昇華すれば不満も出なくなる筈だ。 

 

ただ、俺は警邏の仕事自体がよく分からない。 実際に体験しないと改善策も浮かばないので、曹孟徳様にお願いをする。

 

華琳「それでは、明日より一刀には警邏を命じ、改善を試みる事。 期限は七日、その間に結果が出なければ…分かっているでしょう?」

 

………いやな笑いをしやがる。

 

必ず結果を出すと約束をして、俺は部屋を後にした。

 

◇◆◇

 

【 凪と桃香と北郷との件 】

 

凪「お待ちしておりました! 北郷殿! 」

 

真桜「御遣いの兄ちゃん! ここや、ここや!」

 

沙和「待ちくたびれたのーー!!」

 

桃香「ご主人様!」

 

桃香! ここは曹操軍内だから『ご主人様』は駄目! 『北郷』か『一刀』で呼んで貰わなければ。 

 

楽文謙殿、李曼成殿、于文則殿、お待たせして申し訳ありません!

 

『北郷一刀』と申します! 『北郷』でも『一刀』でもどちらでも構いませんので、宜しく御指導お願いします!!

 

三人には、とても不思議そうな顔をしている。

 

凪「あの……貴方は天城様達と同じ『天の御遣い様』ですよね?」

 

大まかに言えば、そうですね…と答える。 時代も背景も違うけど。

 

凪「貴方も『神の拳』を使えるのですか?」

 

はっ? 何です? その中二病みたいな設定……。

 

桃香「ご主人……じゃなくって、一刀さん! 天水で聞いた噂の…」

 

ああぁっ、あの北○神拳の噂か! 内部破壊を得意とするって…アレ!?

 

凪「天城様は、『陣内流』と名乗っていたのですが…………」

 

天城様がねぇ…陣内流…陣…! もしかして、こんな姿で構える武術の事?

 

凪「あぁっ! それです! その構えです!!」

 

嬉しそうに笑う楽文謙殿。 

 

だが、申し訳ない! この武術はちょっとしか知らない。 

 

俺が薬丸自顕流北郷派を学んだ時に、悩む事があって、参考にした武術がこの『柳生心眼流』だった。 後、似たような格闘技も。

 

それを聞いた楽文謙殿は、『それでもいいから教えて欲しい』と強く懇願されて、俺が行っている早朝の練習時に、教授する事になった。

 

真桜「凪! 気ぃ済んだか? ほな、仕事にはよ入ろうか!? 」

 

沙和「沙和もこれ以上、怒られたくないのー! 」

 

俺、楽文謙殿、桃香で東を回り、李曼成殿、于文則殿で西を回る。

 

楽文謙殿より仕事内容を聞きながら歩くと、例の子供達が出てきた。

 

子供1「お姉ちゃん! 遊んでよ!」

 

子供2「このお兄ちゃんは誰? お姉ちゃんの恋人?」

 

子供3「傷だらけのお姉ちゃん、怖い…………」

 

うん、二人とも顔が真っ青だな…。 俺は二人を待たせ、子供達に話をする。

 

まず、手招きをして子供達を集める。 そして、腰を落として、子供達の目線に合わせ話を行った。  

 

一刀「こんにちは! 俺は『北郷一刀』と言うんだ! 宜しくね!」

 

子供「「「 うん! 宜しく お兄ちゃん!! 」」」

 

一刀「皆、元気があって大変よろしい!」 

 

俺は、子供達を誉める。 始めは、仕事の邪魔をしていた事を薄々分かっていた子供達が、怒られるのではないかと、体を固くしていた。 

 

だけど、逆に誉められたので、笑顔に変化する。

 

それから、俺は子供達と話をした。 

 

他愛のない話が多かったが、子供達が桃香に寄ってくる理由や街の人達の不満を教えてくれる。

 

俺も代わりに、天の国の童話、昔話を御礼に聞かせたり、皆で遊ぶ方法を教えてあげた。 子供達と接するなんて今までなかったけど、こんな経験も悪くない。

 

子供達は、目を輝かせ話の内容に一喜一憂したり、遊び方を熱心に学んだ。

 

子供達と仲良くなった時に、楽文謙殿を呼び寄せる。

 

楽文謙殿は、怖々と此方に来てくれたので、俺が子供達に説明する。

 

一刀「皆の中で、このお姉ちゃんを怖がっていると聞いたけど、どうしてかな? このお姉ちゃんは、とても強くて、カッコ良くて、可愛いんだぞ!」

 

凪「なっ、なっ、なにを!!!」

 

子供3「……でも、お姉ちゃん傷だらけ…」

 

一刀「うん、そうだね。 だけど、この可愛いお姉ちゃんが傷だらけになったのは理由があるんだよ。 君達を襲おうとしている、悪い人達と戦っている内に傷ついちゃたんだ…。 君達や君達の家族を守る為に……」

 

子供1「へぇーー、凄いや!」 

 

子供2「僕も守ってくれたの?」 

 

一刀「勿論!」

 

子供3「…………ゴ、ゴメンナサイ。 ごめんなさい! お姉ちゃん!」

 

凪「  ・゜゜(p>д<q)゜゜・  」

 

一刀「だから、皆で応援してあげてね! 」

 

子供達「「「  うん!!! 」」」

 

一刀「それとね……このお姉ちゃんは、強くなるために、いっぱい練習しているから、余分なお肉が付いていないんだよ!」

 

俺は、楽文謙殿が桃香よりも、女の子らしい柔らかさがないと、子供達に言われた事を思い出し、フォローを入れた。

 

子供2「じゃあ、もう一人のお姉ちゃんは、贅肉付いてるからプニプニなんだ! だから、あんなに柔らかいだね! 」

 

あ、あれ? 何かとんでもない方向に向いちゃた?

 

桃香「 (゚◇゚)ガーン 」

 

トボトボ…………… ストン  ……イジイジ

 

と、桃香! すまん! そんなつもりは!!

 

桃香は、道の隅で座って地面に『の』の字を書く、いや、『の』の字に似たような物を書く…。 俺が悪い訳じゃないけど、ごめん! 

 

『髀肉之嘆』…後世に伝わる有名なこの言葉は、この逸話を元になるのか!?

 

一刀「…それは当然「当然じゃない!!」……と、桃香?」

 

桃香「これじゃ、私、駄目駄目だよ! もっと警邏のお仕事頑張るもん!!」

 

で、楽文謙の様子はと言うと……………。

 

子供1「お姉ちゃん、かっこいい! 」

 

子供「 これからも、頑張って!!」

 

子供3「私もお姉ちゃんみたいになる! 戦いかた教えて下ちゃい!」

 

子供達に囲まれる中、涙をダバーと流す楽文謙殿。

 

凪「 ( T ^ T ) ………我が人生に悔い無し!! 」

 

だめぇー! 拳を天に突かないでぇー! 

 

別世界の覇者みたいに、天へ帰ちゃだめぇぇぇぇぇ!!!

 

………こんなやり取りがあって、子供達は楽文謙殿を慕い、その事を伝え聞いた大人達は敬い『陳留に楽文謙あり』と曰われる程になる。

 

桃香は桃香で、奮起しつつ才能を発揮し、街の人達と親愛の情を深めた。

 

その結果、警邏隊にも『親愛の情』が引き継がれ、陳留の警邏は中原一チィィィと言われる程になったよ。   

誰だよ、言い始めた奴は…………………?

 

後は、俺の現代の知識を元に、アルバイトの改変した短時間の労働勤務制、警邏待機場所の増設、半鐘なる音の呼び掛けを、曹孟徳様に認められて…………。

 

やっと、七日目には改善の効果が見え始めた。 正直……ホッとしたよ。

 

そうそう、子供達には俺から御礼で、『竹トンボ』や『水鉄砲』等玩具を作って渡したら、『天の遊具』という事で大層な人気だったと、警邏隊から報告を受けたんだ。  

 

◇◆◇

 

【 一刀、『将』に昇格の件 】

 

今日も今日で、陳留の街を良くするために、口論、激論が続く政務部。

 

桂花「アンタ達! もう少し考えてモノを言いなさいよぉぉ!!」

 

朱里「も、勿論、考えていまちゅ!!」

 

雛里「そうでしゅ! これは、絶対必要事項なんでちゅよ!」

 

1対2の口論でも負けない、引かない、諦めないの荀文若殿? 

 

桂花「……うっさいわねぇぇ! なんのよぉぉよぉ?!」

 

また、般若顔で振り向く荀文若殿。 

 

だけど、後ろに居た人物は……………。

 

華琳「………主に向かい良い度胸ね! お仕置きが必要かしら!!」

 

桂花「な、なんでぇ! なんでなのぉぉ!!!」

 

  キャアアアアアアアア━━━━━

 

 

だから、曹孟徳様がいらっしゃると言おうとしたのに。

 

『小さな親切、大きな御世話』の格言を思い出し……俺、北郷一刀は溜め息を吐く。

 

朱里「………一刀さん! お知恵を貸して下さい!!」

 

雛里「私達で考えらる事は、全部考えました!!!」

 

俺をみた旧劉備軍の軍師二人は、困りきった顔を俺に向けた。

 

陳留は洛陽と比べて、人口も規模も桁違いに小さいが、活気だけは遥かに凌ぐと聞いている。 流石、曹孟徳様達が頑張った街だけある。 

 

そんなこの街を、もっともっと良くしようと頑張る軍師二人に、俺は撫でながら御礼を言う。 …いつの間にか気に入ったのさ、この街が…………。

 

頭を撫でられ、気持ち良さそうにしていた二人に、俺はこんなのはどうかなと提案する。 駄目なら駄目で断ってくれれば、それでいい。

 

壱、《 立ち食い食事処 》

 

朱里「忙しい方に便利ですね。 えっ? 調理方法も簡単で、材料費も抑えた安価な料理を提供! それは、凄いでしゅっ!」

 

弐、《 手荷物お預かり処 》(コインロッカー)

 

雛里「それはいいです! 大量の荷物を持っていては仕事が捗らないし、だからと言って大事な荷物を置くのも、困りましゅっ!!」

 

参、《 乗合馬車(バス)、人力車(タクシー) 》

 

朱里「えぇぇぇーーー! 多数の人を一つの馬車に乗せて往復するんでしゅか? 軍部の演習と併せて考えれば、画期的です!」

 

雛里「人が人を運ぶ?!  それも構図や使用法まで記載が………!」

 

俺の案を竹簡に書いて渡したら、二人は大騒ぎ!! 

 

騒ぎを聞きつけた他の文官、荀文若殿…………と覇王様。

 

桂花「━━━━━━━━━━━!!」

 

華琳「━━━━! これは、とんだ拾い『者』をしたようね…!」

 

荀文若殿は、竹簡を見たまま固まり、曹孟徳様は嬉しそうに笑顔になる!

 

華琳「……そう言えば、一刀も『天の御遣い』か。 忘れていたわ…」

 

次の瞬間、急に『覇王 曹孟徳』になり、俺に申し渡す!

 

華琳「『天の御遣い』北郷一刀よ! 数々の陳留への貢献、問題解決、更なる期待により、お前を我が配下として『将』として、正式に認める!!」

 

へっ? 僅か十日も経ってないのに、いいんですか?

 

華琳「貴方が最初に『将』として、認められたのだから、もっと自信を持ちなさい。 それと、私が認めたのだから、全員の将から真名を預かる事になるはず。 ちゃんと呼んであげるのよ!」

 

一刀「ですが………」

 

華琳「その敬語も不要。 将達は同輩だから良いけど、私が君主であるから敬う事は忘れない事。 後、忠誠を誓い更なる精進をしてくれれば、細かい事は言わないわ! 分かったわね、一刀?」

 

一刀「はい………いや、了解。 こんな具合でいいのか?」

 

華琳「そう、それでいいわ。 これからも、頑張ってもらいましょう!!」

 

◆◇◆

 

【 愛紗の忠誠?の件 】

 

〖陳留城内の演習場にて〗

 

春蘭「秋蘭!! 私がいつ、どこで、誰に、寂しいと言ったのだ!?」

 

秋蘭「…ところで一刀? この稽古は?」

 

春蘭「おぉい! 私を無視するな!?」

 

秋蘭「…いや、姉者があんなに難しい事を言うので、つい視線を……!」

 

 タッタッタッタッタッタッ シュッタン!

 

愛紗「ご主人様! 本日も早朝よりお疲れ様です!!」

 

愛紗が、にこやかに声を掛けてくれる。 それはいいのだか………。

 

春蘭「関雲長! 何度言えば分かるのだ!」

 

愛紗「『ご主人様』に『ご主人様』とお声を掛けて何が拙い!」

 

そう、愛紗は俺の事をまだ『主』と考えてくれている。 嬉しいんだが…。

 

秋蘭「姉者……何度も言っているだろう。 いい加減覚えてくれ…」

 

秋蘭は、溜め息をつきながら言い添える。

 

 

《 関雲長の『ご主人様』という呼び名は、華琳様が許可しているのだ 》

 

 

春蘭「だから、尚更許せんではないか! 一刀達は我々曹操軍に入った。 なのに、関雲長は一刀を前のようにご主人様と忠誠を誓う。 これでは……」

 

《 主を二人持つ『不忠者』になる、と言う事 》 

 

星「……その通り。 愛紗は頑固でな、私や桃香殿がいくら説いても主旨替えしないのだ。 私みたいに言葉で言っても、心の中の『主』は、桃香殿と一刀殿だからな…………フフフ」

 

星、ありがとう………。 でも、なんで愛紗だけ許可降りているんだ?

 

秋蘭「一刀、お前が知らないのか? …知っているとばかり思っていたが…」

 

春蘭「どういう事だ! 秋蘭! 私も全然知らん!!」

 

秋蘭「姉者には、私から何度説明したか…」 

 

星「ならば、私が説明しよう!」

 

星がニヤニヤしながら、話だした。

 

星「理由は二つ有り。 まず…曹孟徳様は愛紗に甘い」

 

それは、言えるな。三国志の曹孟徳もそうだった。

 

星「もう一つは、一刀殿、愛紗に一刀殿の名前で呼ぶように命令を…」

 

命令なんか嫌だから、お願いにするよ。 愛紗は大事な仲間なんだから。

 

星「……ぐっ、何か物凄い敗北感が…………」 

 

愛紗「……ご主人様………」 ギュッ

 

一刀「愛紗、俺の名前を呼んでくれないか?」

 

星の横から嬉しそうにしている愛紗にお願いしてみた。

 

愛紗「はっ? はいっ? ご、ごっごっご主人様…の名前……」

 

一刀「うん、俺の名前『一刀』を。 そう言えば、まだ呼んでもらってないよね? 愛紗から呼んで貰いたいのだけど、駄目かい?」

 

愛紗「 (//∇//) か、かかかかか、かかか」

 

顔を真っ赤にしながら、名前を言おうと試みるが…………。

 

一刀(三国志にアシュラマンが…………)

 

愛紗「か、かかかかか、かず、かず、かぁぁぁ 」

 

春蘭「ふむふむ、面白いな。 華琳様が喜ぶのがよく分かる…」

 

秋蘭「そういう事だ」

 

愛紗「わ、私を笑い者に、「そんな事ないよ! 愛紗は可愛いから」 え!」

 

顔を真っ赤にして、怒る予定だった愛紗を止めた俺の手。 些か罪悪感もあったので、頑張ってくれた御礼に頭をゆっくり撫でる。 愛紗、ご苦労様!

 

愛紗「はいっっ! ありがとうございます! ご主人様!!」

 

あっ、そう言えば鈴々は?

 

星「何やら、また脱走したようですぞ! 私は止めたのですが…」

 

春蘭が怒鳴り声を上げて追いかけ、俺は星に問う。

 

『止めたのに、なんで逃げられたんだ!?』

 

星の淡々と語った理由に呆れて、周囲より人が居なくなった。

 

『 何故か、鈴々の傍にメンマ壺が落ちていたので、そちらの救援を優先したまでの事。 

 

別に誉められる事は……、誉めていない? それは心外。

 

買収? 

 

………何の事でしょう? 

 

メンマ?

 

ご安心下さい! 

 

────私のお腹の中に避難させました!』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

最後まで読んでいただき、ありがとうごさいます!

 

今回は、天城達はお休みです。

 

曹操の陣営に入った劉備達は、どう動くのか?

 

愛紗の貞操は守られるのか? 

 

作者も知りません。 

 

次回は………まだ、決まっていません。

 

張三姉妹、孫呉のその後の話か、次の洛陽での暗躍の話か、他の拠点の話になるか………。 状況次第ですね。

 

それから、禁玉⇒金球様! 『数え花魁姉妹』の名前を使わせていただきたいので、御許可を下さい! よろしくお願いします! 

 

今度こそは、遅くなると思いますが…戦国恋姫が進まないので。

 

また、宜しければ読んで下さい。

 

 

 

 

 

 


 
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