【張角達の処刑 外野の件】
〖何進大将軍大天幕にて〗
何進「……何? 董仲穎より、首謀者の処刑願いが出ているだと?」
武官「はっ! 何進大将軍閣下や軍勢の主な将の前で、公開処刑を行えば、董卓軍の真意を判断して戴けるので…との事です!」
何進(ふむ、何かしら大道芸でも見せて誤魔化すか、あの『天の御遣い』達による天の奇跡でも見せるのか…。 どうなるかは、誘いに乗ってから考えるとするか!)
何進「許可を許すと伝えよ! 場所、設置は全て董卓軍以外の者達で行う事も伝えよ! その方が信用も得やすいだろう!…とな」
武官「はっ!」
タッタッ…タッタッタッ…
何進「ふふっ、さ~て、どんな演目を見せてくれるか、面白そうだ~ フ───ッハッハッハッ!!!」
★★☆
華琳「張角達を処刑?!」
桂花「………どういう事でしょう?」
華琳「何進将軍の圧力に屈する小人物ではないのは、昨日でわかっている事。 どんな手を使うか、しっかり見極めさせてもらいましょうか……!」
桂花「はい!」
★☆☆
冥琳「雪蓮! 大将軍からの伝令が!」
雪蓮「え?! 董卓軍が処刑を開始するって…本気?!」
冥琳「…わからない。 だが、諸侯の目の前で行えば、確実性は増し、追及の手は伸びないだろう。 しかし、どう誤魔化すのか? 」
雪蓮「…何進大将軍の伝令と言う事は、正式に決まった事。反論も許されないか…。 兎に角、行きましょう! 明命には、処刑場で様子を探るように伝えてちょうだい!」
??「策殿、いかがなされた!」
冥琳「祭殿、丁度良い所に! 今、呼びに行かせようと思っていたので。今から我らと共に、張角達の公開処刑に出席して頂きたい!」
祭「ふむ、董卓軍の董仲穎の昨日の話、天の御遣い達の活躍は聞き及んでいますからな! ぜひ、拝見させて貰うため、御供しますぞ!」
雪蓮「流石、祭ね! 詳しい話は歩きながらするから」
冥琳「誰かある! 我らは、何進大将軍の命により出向する事になった! 我が軍は、指示があるまで待機せよと副官に伝えよ!!」
★★★
一刀「俺達もいいのか?」
凪「はい! 何進大将軍の意向と伺っております。 旧劉備軍の将も連れてくるようにとの事です!」
一刀「承知した。 準備をしてすぐに向かわせてもらうと、曹孟徳様にお伝えを!」
凪「はっ! では、お待ちしています!」
ーーーーーーーーー
凪「張角達を処刑する…か。 あの『天城様』が……」
沙和「凪ちゃん! 何を黄昏ているの!?」
真桜「それは、アレや。 愛しの『天城颯馬』様やろ? なっ!?」
凪「ば、馬鹿な事を言うな!! ただ、あの方の武が………」
沙和「そのわりには、お顔が真っ赤なのーーー!」
真桜「そーやそーや! あの堅物な凪を誑すとは、流石が天の世界の軍師だけあるわ! 」
凪「…お・ま・え・た・ち・は!!」
真桜「うわぁ! 凪、許してや!」
沙和「凪ちゃん、ごめんなさい!」
凪「許さん! 猛虎蹴撃!」
ーーーーーーーーーーーーーーー
桃香「酷い、酷すぎるよ!」
愛紗「…ですが、桃香様。 確かに張角達は、直接指示は出していませんし、悪事に手を染めていません。 ですが、悪事で稼いだ物を口にして、貰っています。 これは、正に罪となります」
一刀「……うん、愛紗の言い分もわかるし、桃香の言い分も分かる」
桃香、愛紗「「 ご主人様!! 」」
一刀「だが、今回の件は愛紗に分がある。 幾ら自分達が軟禁状態に陥っていたとはいえ、指導者としての立場で命令できたのに…。それに部下任せで、組織内の情報を無視していたそうじゃないか!」
星「…………それに、張三姉妹の末妹が後に気付き、上の二人に意見したが聞き入れられなかったと、話しておりましたな」
愛紗「星! お主は何時その話を聞いたのだ!? それに、朱里の話では、張角達の部屋に進入したら、既に孫策軍の将と共闘していたというではないか!? 」
星「………話せば、知るも涙、聞くも涙の物語!」
愛紗「手短に話せ!」
星「…前略、中略、以下省略!」
愛紗「省略し過ぎて意味がわからん!!!」
朱里、雛理「「 皆さん、待っていますから、お早く! 」」
鈴々「鈴々も待ちくたびれのだ!」
桃香「……………………………………………」
一刀「俺達は、今は曹孟徳の将。 曹孟徳の意見が俺達の総意。だから、不満足でも出席しなくては…………桃香」
☆☆★
麗羽「……何進大将軍からの張角達の公開処刑の伝令ですって!?」
斗詩「はい、姫や私達も出席してするようにとの事です!」
猪々子「…姫、さっさと見物して帰りましょう! ここの陣中食は味があんまり美味しくなくて…………」
斗詩「その割には、兵の三人分食べているじゃない!」
猪々子「不味くても空腹よりは、マシだから………」
麗羽「不本意ですが、猪々子さんの考えに賛成ですわ! 貰う物もいただきましたし、用を果たして帰還しましょう!」
◆◇◆
【張角達の処刑 内野の件】
〖董卓軍陣営〗
俺は、地図を見ながら修正箇所を直していた。
袁本初が『平原』を取り込み、曹孟徳が陳留の州牧になる。
また、袁公路が汝南を手に入れた………と。
そして、劉備軍は……今回のさまざまな軍事違反を犯したため、大将軍何進に曹孟徳預りとされた。
後に、洛陽に住む清流派の学者から『投劉任曹の計』と名付けられ、〔面倒な奴を優秀な者に再教育させる〕との意味合いで、広く知られる事になった。 懲罰的な意味合いで………。
そこまで直し終えてから、皆の下へ歩いて行く。
董卓軍の玉座がある席に月様達が集まる。
颯馬「張角達の処刑の許可を得る事が出来ましたか?」
月「はい。 …ですが、本当に宜しいのですか?」
月様は、不安そうな顔で、俺を見つめる……。
信玄殿の提案が『果心居士』殿の力を借りるという、他人任せと言えば正にその通りの策だが、信頼のおける者の助言もあり頼む事にした。 ……他に策も思い浮かばないし……。
颯馬「果心居士殿の力は本物ですから、そちらは問題ないんです…」
月様に心中を打ち明ける。
この優しき君主に、負担を掛けさせたくないために。
「ただ、印象に残る処刑の仕方をしないと、董卓軍の印象が薄れ敵対心を起こす輩がいるかもしれません。 なるべく不思議な印象を残したいのです。 しかも、何進大将軍からの申し出で……」
月様は、ホンワリと笑顔になられた。
月「それは大丈夫ですよ。 何進大将軍は娯楽に飢えている様子、そして天城様達は天の御遣いを標榜する方々。 必ず奇抜な方法でと頼まれると思いますよ! 」
果心居士殿に顔を向けると、いつも無表情な顔が少し笑顔が入る。
因みに、ここに着いたのは、少し前。 果心居士殿も管理者だと聞いていたので、すぐに来てくれるかなと思っていたら、処刑時刻一刻(約二時間)前に到着。
なんでも、援軍呼びに日の本へ行って来た帰りだと話された。
……って、また人数増えるの!!
恐る恐る月様見ると、何時もと同じ笑顔の状態。
月「天城様の関係者の方なら、一角の人物ですので喜んでお迎えしますよ。 ………ただ、相手は女性の方ですか!?」
果心居士殿は、月様に詰め寄られても、相変わらず『ふすふす』と、独特の笑いを上げて答えない……。
果心「この事が終わった後に紹介しますよ……ふすふす」
そう言われて、そのまま黙り込まれた………。
そして、今に至る。
タッタッタッタッ! ビシィ!
兵「失礼します! 董仲穎様、準備は宜しいでしょうか!!」
月「はい! 今、参ります!」
月様達は、処刑場所に向かう。
張角達の命を救うために………………!!!
◆◇◆
【張角達の処刑 実行の件】
何進「おぉ、来たか! 待っていたぞ!」
月「お待たせ致しました。 臣、董仲穎、只今参上致しました!」
颯馬「同じく、軍師天城颯馬、参上致しました!」
そこは、張角達を処刑するために、急遽造営された処刑場所。
四方は十丈(約23㍍)の四角形平面の土地、しかも、四方に何進大将軍、袁紹軍、曹操軍、孫策軍が睨みを利かす!
張角達は、処刑場所の中央に座らされ、刻が来るのを待つばかり。
張角は『お姉ちゃん、死にたくない~!』と泣き叫び、張宝は、『私を殺したら、絶対祟ってやる!』と喚き散らした。
張粱だけは、目を閉じジッとしていた。
処刑開始刻限前に、月様が果心殿を紹介していく。
月「この者も天の御遣いの一人、不思議な術を使う者です!」
果心「『果心居士』と申す、ふすふす」ペコ
何進「ほう? この若い少女がか? ……この場所に居ると言う事は天の国の処刑役人とでも、言うつもりか!?」
果心「ふすふす、そう思っていただいても結構ですよ。 大将軍閣下…」
何進「…………では、果心と申す者のやり方で処刑を願う!」
月、果心「「 御意! 」」
★☆☆
華琳「天の御遣いの力? この目で見なくては信用出来ないわ!」
桂花「何か仕掛けがある筈です!」
凪「また、天の恐るべき技が………ドキドキ」
真桜「どんな事を見せてくれはるのかやな!」
沙和「沙和は、痛いのは見たくないの…………!」
★★☆
一刀「……………まさか」
桃香「ご主人様、知ってるの!?」
愛紗「……………………ブルブル」
鈴々「にゃははは!」
朱里「天の世界の処刑方法…………ゴクッ」
雛里「しゅ、朱里ちゃん……………」
星「さて…………どのようなモノか、拝見させていただこう
」
★★★
雪蓮「なんか物凄い事が起こりそう…………」
冥琳「興味深いな……」
祭「ふむ……」
★☆★
麗羽「この私を驚かせる事が出来ればですけど!」
猪々子「こりゃ、見物だな! 斗詩、怖くなったらアタイに抱きつきな! 」
斗詩「そんな怖い物じゃ…ないはず……ですよね?」
◇◆◇
颯馬「それでは、何進大将軍閣下のお許しが出ましたので、天の国独自の処刑を執行致します!」
俺は、そう語ると手を上げる。
ガラガラ、ガラガラ、ガラガラ
仕事着を着た程遠志が現れる。
荷馬車を引きつつだが、その周りに何進大将軍閣下の兵が警戒して周りを固める。
俺は、荷馬車より一個の『瓜』を取り出し、果心殿に渡す。
颯馬「皆様もご存知でしょうが、本日は晴天、しかも日差しが強く暑い中をおいでです。 ですから、喉も渇いているご様子ですので、董仲穎より遅刻の詫びとしまして、皆様に瓜を進呈したいと思います」
武官「その心意気は誉めたいが、処刑を早く行った方が手間暇かけずにすむのではないか? それに、処刑をする時に瓜など手を出す事ができようか! 第一、毒味役さえもいないこの場所でだぞ!」
颯馬「これは、異な事を仰せられる。 大将軍何進閣下の武官ともあろう者が作法は知らぬはずはないのだが……。
処刑と言っても必ず死んだかの確認、罪状の配布等、一刻以上掛かる事もあるのに、簡単に終わるものですか?
それに、我々は常在戦場の身の上、人の屍の上で飯を食べる事ありきのはずだが、瓜一つ食えぬとは…………」
武官「ぐっ!!」
俺は、ワザと悪態を突きつつ、果心殿に顔を向ける。
颯馬「だが、確かに毒味役の議は承った。 この献上されている物に毒があると考えて当然。 だが、御安心あれ、ここに居る果心居士殿が、毒味をして尚且つその瓜の種から、皆様の瓜を生やしてご覧にいれさせよう!」
言うが早く、果心殿は瓜を二つに割り、一つにむしゃぶり突く。
そして、種を取り出すと、近くに落ちていた棒を拾い、足元を簡単に耕して、その種を蒔く。
今度は、懐から扇子を取り出し、先程撒いた種の上で、扇子を仰いだ……………!
一仰(ひとあお)ぎすれば芽が生え、二仰ぎすれば成長、三仰ぎすれば花が咲き、四仰ぎすれば食べ頃の瓜が多数実る!
俺は、果心殿に許しを得て瓜をもぎ取り、一つずつ何進大将軍閣下や諸侯の将達に渡していく。
全員、渡し終わったときに、月様が大将軍閣下に声を掛ける。
月「何進大将軍閣下! それでは罪状を読み上げます!」
何進大将軍が頷き、月様が指示を出し読み上げさせる。
民達を害した事! 民を扇動した事!
諸侯に対して多大な迷惑を掛けた事!
漢王朝そのモノを破壊しようとした事!
その間、何進大将軍閣下は旨そうに瓜を喰らいつつ、張三姉妹を見ている。 曹孟徳、雪蓮、冥琳殿他多数も、どうなることかと張三姉妹を凝視している。
当の張三姉妹は……諦めたのか既に声も出さず、ジッとしている。
颯馬「判決は、死刑! ……執行!!」
果心殿は、持っていた扇子を開き、まだ鈴なりに成っている特に大きな瓜三つを切り落とした!
ゴトッ! ゴトッ!! ゴトッ!!!
……同時に響く、三つの首が落ちる音。崩れる体。
……………………………………
一瞬の静寂が続いた後、驚嘆の叫びが響く!!!
★☆★
麗羽「今のは! 今のは? なんですの!!」
猪々子「…………………何?」
斗詩「……………えっ?」
★☆☆
雪蓮「………………」
冥琳「面妖な……。 直ぐに検分をして教えて貰いたい!」
祭「……長生きはしてみるもんだの。……ククク」
☆☆★
凪「………………(゜o゜;)」
真桜「ど、どういう原理や、今んのは!」
沙和「こ、怖いの~~!」
☆★☆
桂花「………な、な、なによ! なんなの! どういう事!?」
華琳「誰かある! すぐ、あの死体を確認する者に混じり、判別した事を至急私に伝えるように!!」
春蘭「ほう! 面白い出し物だったな!」
秋蘭「姉者…。 華琳様の前でそれを言うな、頼むから…」
★★★
桃香「…す、凄い! アレ? あ、あ、愛紗ちゃん…? 愛紗ちゃん!? しっかりしてぇぇぇぇ!!」
愛紗「……………………キュウ(気絶)」
鈴々「おぉ…………凄いのだ!!」
朱里「え?、えぇぇぇぇぇ━━━━━━━━」
雛里「あわ、わわわわわわわわ!」
一刀「やっぱり!(『花の○次』の演出!?)」
星「おぉ!(あの演出、華蝶仮面の時に使えないだろうか?!)」
◆◇◆
何進「………なんだ…と! これは! どういう理屈で?」
月「え、えーと、こ、こ、これは………」
月様に理由を聞く大将軍閣下だが、月様も俺も実は知らない。
知っているのは、果心殿だけだ。
そんな会話の途中に、当の果心殿が来られ話をする。
果心「申し訳ありません。 この『種』は、明かす訳にはいきませんので…。 明かせば、処罰される事になります故、ふすふす……」
何進「………確かに、大道芸のこれらに『種』は必要だ。 此度のこの『種』は、二度と『芽』は出ないと約束出来るか?」
果心「私としては何とも。 颯馬殿、月様? この答えは貴方方次第ですよ………ふすふす」
俺は、そう言われて考えた。
颯馬「何進大将軍閣下、もし三個の『種』が『芽』を出す事は二度とないように、董卓軍が防いで見せます!」
月様はびっくりされていたが、三つの種で思い出した様子。
月「はい! どうぞお任せ下さい!」
何進大将軍閣下はニヤリと笑うが、再度果心殿に大道芸の種を教えてくれと言い出した…………?!
何進「た、頼む! アレはどうやれば出来るのだ? あの種を教えて貰わないと、気になって夜も眠れねぇんだよ!!」
……大将軍閣下、口調が肉屋のオヤジに戻りつつありますよ。
この後、同意見多数が現れ、果心殿が揉みくちゃになった……。
例えば、『曹の大剣さん』とか『はわわ、あわわさん』とか『どこぞの当主様達』とか……。
皆さん、これは公開処刑であって、大道芸の公演じゃないですよぉ…と、小声で注意しつつ、程遠志に荷馬車を動かすよう────合図を出した。
ーーーーーーーーーーーーーー
その間、遺体の検分を行えば、間違いなく『女性の遺体』、服装も同じと判断され、火葬にされた。
…本来なら、確認と言うことで首を洛陽まで持っていくだけど、少し遠いし腐敗の関係もある。 それに、大将軍閣下が自ら検分したから大丈夫という判断もあったから、この方法で。
他の軍勢の中に納得いかない人達が、少数ながら居るのは分かっていたが、張角達は幾ら探しても、見つからないから心配はしていない。
それに、大将軍が『張角達を処刑した』と認めれば、これが漢王朝の正式な記録になるから異義を唱えるには、確実な資料と膨大な資金が要りようになる。
だから、自分達に害なければ、何も言わないじゃないかなと計算もしているし、他に仕事も増えて、それどころかじゃないだろうしね。
…………こうして、張角達の処刑も終わり、黄巾賊の大元の乱が終わりを告げた。
◇◆◇
【張角の処刑 その後の件】
〖何進大将軍の大天幕にて〗
何進大将軍閣下は、最後に董卓軍の将に会いたいと、伝令が来たため皆で謁見をするため、大天幕に向かう。
何進「おおぅ! すまんな、呼び出して!」
平伏しようとした俺達を制して、何進大将軍閣下は笑いながら頼む。
『今回は、肉屋のオヤジと言うことで接してくれや! 賊討伐も無事終了したし、俺の役割も無事終わったしな!』
何進大将軍…いや、何進殿は、果心殿に礼を言っていた。
あの揉みくちゃの時に、最後まで種を教えてくれと粘ったのは、実は何進殿。 なんでも、宮廷に閉じこもって教育されている二人の皇女様に大道芸を見せてやりたいのだそうだ。
何進「あんな凄い物を魅せられて、俺だけ楽しむなんて出来ないのだよ。 あの子達にも、外の世界に、こんな素晴らしい物がある事を教えたくてな………!」
頭を掻きながら、照れる何進殿。
…………ちなみに二つ聞きます。
行うのは、あの『瓜』の芸ですか?
何進「…………そうだが?」
…もしかして、『瓜』は十個、切るつもりですか?
何進「 ♩────♬─♪~( ̄ε ̄)」
横を向いて、下手な口笛吹いて誤魔化すな!!
…ったく。 だから、果心殿が、簡単な大道芸を教えてあげたのか。
どのみち、あんな技は直ぐに出来る訳ないけど………。
何進「ウグッ、早く鋭いツッコミ! 正に……神速だ!」
いや、その賞賛は師の張文遠にでも付けてあげて下さい! 俺には不要ですから。
月様達や仲間達が、声をたてて笑い出す!
俺も何進殿も一瞬驚き、双方向かい合うと、大声で笑った!
こんな風に皆に囲まれ大笑い出来るなんて、とても久し振りだと、俺が言い出すと何進殿も何度も頷き、軍議の笑いは数には入れん、素の何進じゃないからと曰う。
何進「……何にしても、ありがとう! 世の民と漢王朝の代表として礼を言わせてくれや。 正直、心配していたんだ……俺が鎮圧出来るかどうか……」
元肉屋のオヤジが、兵法をすぐ使えたら軍師なんか入りません! 適所適材ですと伝えるが、俺には軍師なんか居なかったから……と呟いていた。
何進「……これから、戻れば十常侍達の争いが待つ。 出来れば天城のような気が合う軍師がいてくれればな……」
俺の方をチラ見する何進殿。 小太りのオッサンにそんな事されても嬉しくありません。 それに、俺の上着の裾を持つ人が二人…。
月「へ………………………ぅ」
小太郎「うぅ…………………」
捨てられた子犬のような目をしないで! 心が痛むから!!
他の姫武将も、俺を見たり何進殿を見たりを繰り返し。
華雄殿だけ目を閉じ、腕を組んで思案顔。
何進「……やはり無理か。 天城のような男を放っておく無能の輩であれば、今頃、劉備軍のようになったのかも知れないな………」
寂しそうに笑いながら、何進殿は何進大将軍閣下に戻られ、宮廷へと帰っていった。 『俺も軍師を探して、雇ってみる事にするから』と言い残して………。
その後、俺達も天水に向かう。 途中で別働隊と合流する事になっている……。
で、またそこで『日の本の将』達に出会う事になった………。
◆◇◆
【程遠志の報告の件】
〖合流地点にて〗
程遠志達も無事に到着してくれたが、色々あったと疲労困憊の中、報告をしてくれた……………………。
〖程遠志の報告〗
程遠志「もう少し先だ、急ぐぞッス!!」
オイラは、兄貴達に従い天和ちゃん達の処刑場に向かう。
親衛隊の中から、『兄貴が裏切った!』とか『俺達が突入して天和ちゃんを助けよう!』とか声が挙がったッス。
実の所、オイラも信じられない部分は合ったが、実際、兄貴達は天和ちゃん達を救うために動いてくれた…。 自分達の仲間と兵達に危険を冒しながら。 たがら、親衛隊全員に頼みこみんで、もし俺達の考えと違う場合は、俺達で独自に動く事に決めたんッス。
だから、命じられた荷馬車の中に、大量の瓜を入れて向かった。
そして、一部始終を見ていたオイラ達は、唖然としている。
果心居士様が、口でムニャムニャ呪文を唱えながら、天和ちゃん達のところを左右にうろついている。
そして、処刑場の横から一組の男女が現れ、天和ちゃん達の縄を解き、オイラ達の方に連れてきた。
??「お前が程遠志って言う奴か? 果心殿に頼まれたおなごを預けるぞ! ね、姉さん! 服が汚れるから縄解くだけでいいから!」
??「こらっ! 『??』! 初対面の方に不躾だろう! それに果心殿の術が効いているとは言え、術の効き目が浅い者もいるかもしれん。大きな声を出すんじゃない。 汚れなど…これくらい些事な事だ」
程遠志「えーと、貴方方は…? あっ、オイラが程遠志ッス!」
一存「俺は『十河一存』、通称『鬼十河』っていうんだ! 宜しく頼むな! 颯馬の親友であり、家族みたいなもんだよ!」
長慶「私は『三好長慶』と申す。この一存の実の姉になる。まずは
挨拶だけさしていただき、策の実行に移すぞ!」
程遠志「りょ、了解ッス!」
その後、天和ちゃんと入れ替わりで、座っていた場所に置かれたのは、天和ちゃん達と………そっくりに髪型や衣服を着せた………おっさん!?達。
術を掛ける時は大丈夫だけど、その後の遺体確認とか物理的証拠のため用意したという話ッスですが……。 黄巾賊の中に盗賊がいて、董卓軍で捉えた者を利用したというんだけど……………不安で仕方ないッスよ!?
そんな、オイラの感情を無視して、張三姉妹似のおっさん達が、一人ずつ並ばされていくッスよ。 どうも、催眠術か何ッスかね?
抵抗なく全部終わらせちゃたようッスが…。
それにしても、あの際どい衣装を…………髭だらけなおっさんが着ているなんて……………耐えきれないッスよ……。
なんというか………心や大事な物が壊れて消えていくような……。
それから………仕掛けを終わらせた後、オイラ達は兄貴に瓜を渡し、一存様が偽天和ちゃん達の後ろに立ち、果心居士様の合図を待ったッス……。
あんな……あらかさまな状態なのに……周りの連中が気が付かないって……すげえッスよ! 最高ッスよ!!
そして、懐から扇子を取り出す時に、一存様が腰の得物を一閃して場所を去り、果心居士様が空を凪ぐと首が転がったんッスよ………!
後は、凄かったッスね……。
果心居士様が……別の所でフスフス笑っているのに、何故か………一本の木に向かって、将の方々が押し掛け話掛けているッスし…………。
別のとこでは……検死の役人がだらしない顔で、偽天和ちゃん達の遺体の服を脱がして、鼻の下伸ばしていたりしていたッス!!
あぁ~誰が服脱がすのか……喧嘩になってるッス!
他人の振り見て我が身を直せ………ッスか。
………………………気を付けるッスよ!
その後、兄貴の合図で出発して、合流場所に向かったんッスが……………一人の将に阻まれちゃいましたッス!
明命「………その中身、拝見させてもらえませんか?」
程遠志「えっ? 賊ッスか? 夜盗ッスか? 誰であろうと見せる訳にはいかないッスよ!」
明命「うぅぅぅぅ、やはり名乗りを上げないと賊と間違えられてしまいますうぅぅぅ! わ、私は孫伯符様配下の周幼平と申します! 貴方方の奇妙な行動は、別の遠い場所より見ていました! な、中身を教えていただくだけでも、い、良いんですが……………!?」
程遠志「アンタが本当に、孫伯符様配下としての証拠が考えるけど誰だか判らない奴に、見せる気なんて…………って、あれ?」
よ~くみてみれば、趙子竜様と一緒に天和ちゃんを守ってくれた周幼平様じゃないッスか!!
程遠志「周幼平様、俺ですよ! 張角の部屋に居た董卓軍の指揮下に居た程遠志ッスよ! ご無事で良かったッス!!」
オイラは、再開を喜びつつ、この現状に悩んだんッス!
兄貴に約束に従うか、命の恩人に従うか難しい所ッスね……。
そう難しい顔して腕を組んでいましたら、周幼平様がニッコリ笑いながら仰いました!
明命「程遠志さん、もう、良いですよ…。 友達の為に強敵に立ち向かう貴方が、これほど悩む荷物です。 実際、中身を入れる所は見てしまったので、確認だけさせて貰おうかなと思っていたんですよ!」
そんな貴方が悩むのであれば、私の答えは確信しました!
そう言って、姿を消した周幼平様…。
オイラは、その姿が消えた方向に向かい、手を合わさずにいられなかった……………。
◇◆◇
【新たな日の本の将、ご招待の件】
〖合流場所にて〗
程遠志達より報告を受け、荷台を確認する。
張角達がスヤスヤと眠っていた。 早朝より殺す死刑だの言われ続けて、この状態だから仕方無し。
だけど、このまま助ける訳には行かない。それなりに罪滅ぼしをして貰わなくてはならない。
……で、どうするかと言うと………。
果心「颯馬殿、『出雲阿国』殿には許可を得ました。…無論、義昭殿にも………ふすふす」
義昭様が治める『日の本』に送り込んで、阿国に指導をお願いしようと思う。 …見知らぬ国、見知らぬ言語、見知らぬ風俗、そんな所で数年過ごさせれば、修業にもなるだろう。
ザッザッザッ……
一存「相変わらず甘いな颯馬! まっ、そんなところも気に入ってるんだけどな!」
長慶「…うむ。 久しいな颯馬! 息災だったか?」
えっ? 一存に長慶殿? 貴方達が此方に来られたんですか!?
一存「いや、あと二人来ているんだが…おぉ!? 帰ってきたようだな! まだ到着が遅かったら、探しに行こうかと思っていたが… 」
ズドオオォォォォ!!!
……そ……う…ーーそぅまぁどぉのぉ━━颯馬殿!!
一存「ヤ、ヤバい! 姉さん、颯馬! 早く横に避けろ!!」
一存の見ている方角を見ると砂煙が見えるが…………!
え? え! えぇぇぇ!!! 俺に向かってきている!
??「こらぁぁぁ!! 忠勝!! 止まれ! 止まるんだ!!」
??「いっ、痛いでござる! 痛いでござるよ!! 左近殿!!」
キュッキュッキュッキュッ!! ザッ!!
俺の目の前に止まる巨大な槍!! 夕日に照らされ刃先が煌めく。
綺麗と言えば綺麗だが、命あっての物種だ…………。
左近「馬鹿野郎! 颯馬に怪我をさせてみろ! 私や忠勝が袋叩きにされるぞ! それに家康殿も悲しむぞ!」
忠勝「!!! も、申し訳ないでござる! 颯馬殿! お怪我は無いでござるか…………? 」
えーと、『島左近』殿と『本多忠勝』殿もこちらに………?
左近「あぁ! 義輝様の要請で松永、筒井関係者をこちらに来てもらいたいと、竹簡を持った果心居士殿が参ったんだ! 」
忠勝「そんな訳で、果心殿にお願いして、参上した次第でござる!」
だけど、忠勝殿、徳川家の臣だから関係無いんじゃ……?
長慶「それは、私から説明しさせてもらおうか」
他の姫武将と話をしていた長慶殿が、説明をしてくれた。
長慶「私達は、義昭様から話を伺い、此方に送ってもらったんだ。 だが、忠勝殿は………この話を聞いて、徳川殿に直談して付いて来られたのだ。 颯馬の危機が見過ごせ無い!っと申してな…」
そうか。 心配してくれて、わざわざ来てくれたんだ……。
主君である家康殿に直談するなんて、普段の忠勝殿なら絶対やらない行い。 それを行うとは、申し訳ない気持ちで一杯だ………。
月「天城様? …宜しければ、ご紹介をお願いしたいと……」
ああ! 申し訳ありません!!
一向(ひたすら)謝り続ける俺を、笑顔で許してもらい紹介する。
俺の友人にして良き家族、『十河一存』(そごう かずまさ)、『三好長慶』姉弟、『鬼左近』と言われる武力と智略を誇る島左近、日の本最強を誇る優しき武人『本多忠勝』の四名。
月「私は、姓が『董』、名が『卓』、字が『仲穎』と申します!」
長慶「まっ、まさか! 『董仲穎』殿……!?」
左近「なっ!」
二人とも文学の教養があるから、わかったんだろうな。
一存「なんで驚いてるんだ? あぁ、このおなごが物凄く可愛いからか! ……ん、もしかして颯馬の恋人か? この女誑しが! 」
忠勝「なんと! 愛する方でござる…………か」
長慶、左近「「えっ!?」」
月「へ、へう━━━━━━━━!!」
おい! 一存! 俺の現主君に恐れ多い事を申すんじゃない! 俺みたいな奴、好まれる訳ないだろう!
見ろ! また、ジト目で睨まれてしまったじゃないか!
と、一存を叱りつける!
一存「だかな……あんな可愛い子、俺の妻に欲しいぞ!」
颯馬「だから、御世話になる太守様だと言ってるだろう!!」
前から居る姫武将達は、俺達を呆れた顔で眺めていた。
◆◇◆
【彼の人への思いの件】
〖合流場所地内〗
私は、少し機嫌が悪いのです!!!
プゥゥゥゥ! 天城様は! 天城様は!!
ホン~~ト、鈍感なんですから! いくら私でも怒っちゃいますよ!
ザッザッザッ
長慶「此方においででしたか。 董仲穎様」
そんな怒っている私の傍に、三人の女性が来てくれました。
長慶「先程は失礼しました。 私は『三好長慶』。 あそこで口喧嘩してます愚弟達の姉です。 ですが、颯馬は実の弟ではなく、弟のように接しているだけですので、お気にされませんように……」
優雅な動作で、私に挨拶される! お、大人の女性です!
左近「…私も申し訳ない。董仲穎と聞いて我が国で伝わる人物と余りに違うものだから。 申し遅れた…『島 左近』と申します!」
綺麗な方だけど、何だか野性的な方。 頼りになるお姉さんかな?
忠勝「先程は大変失礼を! 三河の徳川家康の臣、『本多忠勝』と申す者でござる! どうぞ、よろしくでござるよ!!」
うわぁ……! 大きな槍! それに感じが恋さんを思い浮かばせてくれる人柄、好感がもてますね。
私は急いで身なりを整え、挨拶を返す。
月「はい! 不束な太守ですが、よろしくお願いします!」
私の返事を聞いた三人は、笑顔で『こちらこそ、御世話になります!』と応えていただき、仕事についてもらいました。
…………天城様は、あんなに綺麗な方達より、好意を持たれているのを全く気付いていないなんて………。
直に言わないと、好意って伝わらないものなんだな………………。
先程、怒っていた事も忘れて、考えてしまいました。
『………いつか、いつか、私も伝えてみせるんだ! 太守としてではなく、一人の女性として、天城様に伝えよう…………』
そう、心に決めて皆の元に戻りました。
まだ、口喧嘩している二人を呼んで軽くお説教してから、天水の城へ帰城しました。
そういえば………天の世界の『私』って、どんな方なんでしょうか?
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あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回の話は、果心居士+加藤段蔵+中国の民話を合わせて、作成しました。 原作は十数年前に読んだ物ですから、些か勘違いもあるかもしれませんが…………。
ようやく、黄巾賊の戦いが終わりました。
次回は、諸国の状況と黄巾賊の後処理を投稿する予定です。
naku様 いただいた策名称は、作品にこんな具合で載せました。
必要な時に、適宜だそうと思います。 桃香ファンの方に申し訳ないですが……。
雪風様 ご要望通り出してみました! 忠勝は作者の友人が忠勝ファン(史実の方)だから出してみました。(作者は馬場信春)
招待客が始めより三倍近く増えましので、一人一人の出番は少なくなりますが、なんとか出演してもらおうと、思っています。
次回こそは、投稿遅くなる予定なんですが、結局早くあげちゃうですよね……。 読み専のときの待っているつらさは知ってますし、皆さんの応援のおかげで………。
また、宜しければ読んでください。
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義輝記の続編です。 またよろしければ読んで下さい。