No.650500

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百六話 一件落着

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2014-01-01 01:11:04 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:28709   閲覧ユーザー数:25126

 ~~チンク視点~~

 

 「さて……これで周りの連中は片付いたな」

 

 最後の1体を蹴散らし、コイツ等に指示を出していた男を見詰めながら言う。

 

 「ふぅー…手間掛けさせやがって」

 

 「……………………」

 

 男の後方にいる味方の2人もこの人形共を片付け、男に相対する。

 

 「く……くくく……」

 

 「「「???」」」

 

 「ははははははははは!!」

 

 私と勇紀の知り合いである味方の2人も突然笑い出す男に怪訝な表情を浮かべる。

 

 「まさか中古品と家畜共のくせに自動人形達を倒すとはな。少しばかり予想外だったよ」

 

 相変わらず人を見下す言い方をする奴だな。

 

 「良いだろう。光栄に思うがいい。夜の一族で最も優れた存在である僕が直々に相手をしてやろう」

 

 バサッと男は上着を脱ぎ捨てる。

 

 「見るが良い。これがブラドさんのおかげで得た僕の…」

 

 ゴオオオオオォォォォォッッッ!!!!

 

 「「「「「「……………………」」」」」」

 

 その言葉は最後まで続かなかった。

 突如、床下から突き出て来た砲撃に男が飲み込まれ、その様子を見た私に姿を消しているクアットロ、勇紀の知り合いの男女に、その背後にいた女性2人も言葉を失っていた。

 

 「(相変わらず大した威力だな)」

 

 床下から天井を突き抜ける砲撃魔法を見てそう思う。

 

 「……………………」

 

 やがて砲撃が止むと、砲撃魔法によってできた穴に落ちていく男。

 私達はただ、その様子を黙って見ていたが。

 

 「うわ!?何か落ちてきた!?……って、氷村じゃん」

 

 穴から声が聞こえてきた。

 この声は聞き違えるはずも無い。

 声の主は床の穴からゆっくりと飛行魔法を使って抜け出してくる。

 

 「何でコイツが落ちてくるんだ?まさかさっきの砲撃に巻き込まれたのか?…まあ潰す手間が省けたから良いか」

 

 敵の男をバインドで縛りながら浮遊魔法で浮かせている勇紀が私達の前に降り立った。ただ…

 

 「「……………………////」」

 

 2人の女を両脇に抱えている。

 抱えられてる女達はどちらも頬を赤らめている。

 

 「(…羨ましい)」

 

 あんな風に抱えられてるのは格好悪いが勇紀と密着できるのは役得ではないか。

 

 「(というよりもあの頬の赤らめ方と表情から察するにあの女達も勇紀に惚れているのか?)」

 

 むぅ……。

 

 「…チンク?何か不機嫌そうだな?」

 

 「そんな事は無いぞ」

 

 「いや…頬膨らましながら言われても…」

 

 「そんな事は無いと言っている。それよりその女達は誰だ?」

 

 ゆっくり2人の女を放す勇紀。

 2人も自分の足で立つが勇紀の隣から離れようとしない。

 

 「…………(また女堕としたのかい)」

 

 「むぅ~~……(美由希さんまで…それにアッチの人は誰?)」

 

 先程まで共に戦っていた女は呆れた表情を浮かべ、その女と男に守られていた2人の女の内の1人も不機嫌そうに唸って勇紀を睨んでいる。

 …あの女もか?

 

 「クアットロは?まだ姿消してんのか?」

 

 その視線に気付かない勇紀。

 

 「私はここですよぉ~」

 

 スッ

 

 「「「「「っ!!?」」」」」

 

 シルバーケープのステルス機能を解いた事によってクアットロの姿が視認出来る様にする。

 いきなり姿を見せた事で勇紀と私、それに先程まで共に戦っていた男以外が驚く。

 

 「???恭也さんは驚かないんですね?」

 

 勇紀がその男、恭也と呼ばれた者に尋ねている。

 

 「姿は見えなくとも気配は感じていたからな」

 

 ステルス中のクアットロの気配を感じていたとは…。

 

 「(只者では無いな)」

 

 トーレ辺りなら模擬戦の相手として喜びそうなものだ。

 と、そんな事は今はいい。

 

 「勇紀、私の質問に答えてないぞ」

 

 「え?ああ、そうだったそうだった」

 

 勇紀が2人の女に促し、軽く自己紹介する。

 あの美由希というのは恭也の妹らしい。もっとも、正確には従妹の関係だとか。

 で、もう1人の女、理子というのは今回共に仕事をしている武偵という連中の知り合いだとか。

 

 「勇紀、アタシ達はソイツ等の存在について何も聞かされちゃいないんだけど?」

 

 「そりゃ言わなかったからな。イレインが知らないのも無理はない」

 

 「何でさ?」

 

 「内通者がいるみたいなんでな」

 

 勇紀は『内通者がいるかもしれない』という可能性を考慮して、私達の事は最初から誰にも言わず伏せていたらしい。

 流石だな。常にいろんな可能性を想定して戦術、戦略を組み立てる勇紀の頭脳はウーノ以上かもしれない。

 もっとも、『内通者がいる事ぐらいは誰でも想像出来る事』だと勇紀は言っていたが。

 

 「ねえ、勇紀君?」

 

 「何ですか?忍さん」

 

 「私とすずかがこの空間内に残されているのは何故なのかしら?」

 

 「ああ…その事ですか」

 

 「正直、戦闘面に関しては私もすずかも何も出来ないわよ」

 

 忍…そしてすずかと言う女はどうやら魔導師ではなく、武に心得がある訳でもないらしい。

 勇紀は何故この2人を残したのか?確かに気になるな。

 

 「正直言うと分かりません」

 

 「「「「「「「「へ?」」」」」」」」

 

 この場にいた全員が間抜けな声を上げる。

 

 「2人にリンカーコアが無いのは確実なんですが、何故か結界を展開した際、2人ともこの空間に残ったんですよねぇ」

 

 「じゃ、じゃあ私とすずかがここにいるのは意図的ではないという事!?」

 

 「はい」

 

 『理由は本当に分からない』との事だ。

 

 「ま、忍さんにすずかは勿論、ここにいるメンバーは今から外に出しますから」

 

 「「「「「「え!?」」」」」」

 

 勇紀の発言に反応する私達。

 当の本人は結界の外に出す理由を説明してくれる。

 結界内にいる敵は大体片付いてきているらしいので結界の外で皆を護ってほしいとの事だ。

 

 「成る程…そういう事なら引き受けよう」

 

 「お願いします。チンクとクアットロも頼むよ」

 

 「任せておけ」

 

 「頑張らせて貰いますわ」

 

 「勇紀君、遊の身柄は私の方で預かるわ」

 

 「良いんですか?」

 

 「ええ。私の一族間の問題みたいなものだし」

 

 一族?何の事だろうか?

 

 「じゃ、暴れられない様にもっとキツく縛り付けておきますね」

 

 更にバインドを用いて、雁字搦めに拘束する勇紀。

 そして男を引き渡した後、すぐに私達は結界の外に転移させられる。

 引き続き、勇紀に頼まれた依頼を続行するとしようか………。

 

 

 

 ~~チンク視点終了~~

 

 「じゃあ、上に行きますから」

 

 「う、うん。急ごうか////」

 

 「オルメス達を助けてあげないとね////」

 

 再び両脇に抱えようとしたら、今度は美由希さんと理子さんに腕を組まれた。

 

 「何故に腕を?」

 

 「だ、だってさっきの姿勢凄く格好悪かったし」

 

 「見られて結構恥ずかしかったよ」

 

 「あー…スンマセン」

 

 恥ずかしい思いをさせてたか。

 

 「「でもこうやってれば恥ずかしくないし////」」

 

 そう言う割には顔赤くないですか?

 俺は首を傾げたが、本人達が『問題無い』って言ってるから気にしない事にした。

 で、俺達は天井に開けた穴を潜ってキンジさん達とブラドがいるフロアにやって来た訳だが、ブラドは立っていた。

 意識もちゃんとあるみたいだし、今もキンジさん達と戦っている。

 俺の砲撃は直撃した筈だが耐え切ったというのか?だとしたら少しはやるな。ただ…

 

 「さっさと倒れて逮捕されなさいよ!!」

 

 パララララララッッ!!!

 

 「グハハハハ!無駄だ無駄」

 

 パラララ……カチッカチッ

 

 「チッ、弾切れじゃない。鬼畜(キンジ)、アンタもっと強力な武器無いの!?」

 

 「俺は鬼畜じゃねぇ!!!」

 

 「遠山鬼畜よ。そんなチャチな銃では俺に通用せんぞ?」

 

 「だから鬼畜じゃねえって言ってんだろが!!!」

 

 ガアンッ!ガアンッ!

 

 「今度はコレを食らいなさい!!!」

 

 ズダダダダダダダッッ!!!!!

 

 「「「……………………」」」

 

 何つーか……声を出す事が出来ず、ポカーンと現状を見詰めていた俺と美由希さん、理子さん。

 

 「「あ、勇紀(勇紀君)」」

 

 そんな俺達3人の背後から声を掛けられた。

 セインとディエチだ。

 

 「チーッス。2人は何してんだ?戦わないのか?」

 

 「今はイノーメスカノンのエネルギー充填中なのよ」

 

 「私はその間、ディエチの護衛だよ」

 

 「成る程、理解した」

 

 2人の状況については。

 

 「じゃあアレは?」

 

 俺はブラドと戦っているキンジさん、アリアさんを指す。

 キンジさんは何故か『鬼畜』と呼ばれ、アリアさんはマシンガンやガトリングガンを使ってブラドに撃ちまくっている。

 てか、何処から調達したんだ?

 

 「皆、テンションが上がってるのよ」

 

 「いやディエチ。それ答えになってないだろ」

 

 テンション上がってガトリングガン乱射するなんて、もう逮捕された方がいい。

 そして『鬼畜』と呼ばれるなんてイジメとしか言い様がない。

 

 「オルメス…」

 

 理子さんなんか残念そうな人を見る様な目でアリアさんに視線を向けていた。

 

 「グハハハ……ん?おお、出来損ないの四世じゃねえか」

 

 「っ!!」

 

 ブラドに気付かれた理子さんが俺の背に隠れる。

 面と向かうのは無理…か。

 

 「ん?何でテメエは歩いてんだ?確かに骨を折った筈だろう?」

 

 「こ…答える義理は無い」

 

 「……犬の分際で言うじゃねえか。まだ躾けてやらんといかんようだな」

 

 理子さんが俺の背後で震える。

 

 「まあ、理子さんを躾ける事は出来ないと思うけどな」

 

 「誰だテメエ?」

 

 「どうも。とある女性に『助けて』とお願いされ、吸血鬼を叩き潰しにやって来た中学生、長谷川勇紀です」

 

 一応頭を下げ、自己紹介しておく。

 

 「ほう…テメエがあの長谷川泰造の息子か」

 

 興味深そうに見てくるブラド。あんなヤツに見られても嬉しくも何とも無い。

 

 「中々面白ぇ事言うじゃねえか。俺様を叩き潰すだと?テメエがどんな能力(チカラ)持ってんのかは知らねえが、所詮は人間だろうが。長谷川泰造程の実力者でもあるまいし、笑えない冗談は言うモンじゃないぜ」

 

 ブラドは獰猛な笑みを浮かべながら言う。

 

 「笑わせるつもりはないし。お前のせいで理子さん辛い思いしてるからな。さっさとぶっ潰して監獄に送り込んでやるよ」

 

 理子さんと出会ってそれ程時間経ってないけど、キンジさん達の知り合いだし、もう友達みたいなもんだし。

 

 「勇君…////」

 

 「「「……………………」」」

 

 どことなくプレッシャーが向けられてる様な気がする。

 

 「いい加減倒れなさいよ!!!」

 

 ズダダダダダダダダダダダダッ!!!!!

 

 俺とブラドが会話してる最中もアリアさんはブラドの背中にガトリングガンの銃弾を撃ち込み

 

 「……鬼畜扱いされた挙句、今度は無視……もう泣いていいよな?」

 

 キンジさんは哀愁を漂わせ、廊下の隅で体育座りし始めた。

 

 ズダダダ……カチッカチッ

 

 そしてアリアさんのガトリングガンも弾切れになる。

 

 「ふん!威勢は良いな」

 

 余裕ぶってるのも今の内だ。

 俺はゆっくりとブラドに近付き、手に持っていた黄色い槍を構える。

 

 「獲物は槍を使うのか。精々楽しませろよ」

 

 「…ていうか勇紀って何時の間にあの槍出したんだろ?」

 

 「それに普通の槍より短いわね」

 

 セインとディエチの声が聞こえるが、俺はブラドに集中する。

 しばらくはお互い微動だにせず、俺が睨み、ブラドは笑みを浮かべているだけだったが

 

 「………疾っ!!!!」

 

 俺は身体強化を施し、一気にブラドとの間合いを詰めた。

 そして奴の弱点の1ヶ所である右脇腹を突く。

 

 ドスッ!!

 

 突いた後はすぐに離れ、距離を取る。

 ブラドの右脇腹からは血が流れ出す。

 

 「グフフフ…それだけか?この程度の傷すぐに………っ!!?」

 

 笑いながら答えるブラドだが、その表情はすぐに驚愕のモノに変わる。

 理由は単純…

 

 「馬鹿な!?何故再生しねえんだ(・・・・・・・)!!?」

 

 そう…俺が正確に突いた右脇腹の魔臓が再生しないからだ。

 

 「どうした?余裕の表情が崩れてるぞ?」

 

 俺が言葉を発するとブラドは笑みなんか浮かべず、俺を睨みつけてきた。

 

 「一体何をしやがった!!?何故再生出来ねえ!!?」

 

 「さあね?」

 

 ブラドには分からないだろうな。この黄色い短槍が忠義に重んじる槍兵の英霊(ディルムッド・オディナ)の所有する宝具『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』だとは。

 

 『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)

 

 ディルムッドが妖精王マナマーン・マック・リールより贈られた黄槍ゲイ・ボウ。

彼が持つ黄の短槍。通常のディスペルは不可能で、この槍で付けられた傷は槍を破壊するか、ディルムッド本人が死なない限り癒えることがない。

いかなる治癒や再生でも回復できない仕組みはこの槍が与えるダメージはゲーム風に例えるなら『最大HP上限そのものを削減』するため。それ故に回復や再生をしても『傷を負った状態』が全快状態であるためそれ以上治らない。

短期決戦であるとただの槍だが、同一の相手と長期に渡って複数回戦うことを前提に考えると、じわじわと、しかし確実に効いてくるボディブローのようなもの。

対象がサーヴァントでなければ、時間経過による出血死などのより致命的な効果が期待できる。

非常に使い勝手のいい宝具。なお、使い手本人はこの槍で傷つくことはない。

 

 ちなみにこの必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)…宝物庫から取り出したのと同時に非殺傷設定を解除した(・・・・・・・・・・)。解除しないと怪我を負わせられず、『再生出来ない』という現実を理解させられないからな。

 俺を一層警戒するブラドだが

 

 「禁猟区域(インポッシブルゲート)

 

 ブラドの眼前に転移し、目を見開くブラドの右肩にまた一突き入れる。

 

 「があああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

 これで2つ目の魔臓を破壊。

 残るは左肩と奴の長い舌の部分にある2ヶ所。

 再び距離を取る。

 

 「ぬがああああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!クソガキが舐めやがってええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっ!!!!!!!!!!」

 

 ボゴッ!!

 

 ブラドはすぐ側にあったホテルの壁を破壊し、巨大なコンクリートの破片を投げつけてきた。

 避けるのは簡単だが、俺の後ろには現在体育座りでイジけてるキンジさんと何かを準備してるっぽいアリアさんがいるからなぁ。

 

 「イージス」

 

 障壁を展開し、俺とキンジさん、アリアさんに破片が飛ばない様にする。

 コンクリートの破片はイージスにぶつかり、それ以上コチラ側に届く事は無かった。

 

 「何だその壁は!!?」

 

 おーおー。イージスを見て驚いてるよ。

 

 「お前に答える義理はない」

 

 知りたきゃ自分で調べな。

 

 「ガキンチョ!!下がりなさい!!」

 

 背後から声を掛けられ、振り向くとブラドに照準を合わせ、ロケットランチャーを構えているアリアさんの姿が。

 

 「……って、ロケランーーーーーーーーー!!!!?」

 

 「ブラド!!今度こそ風穴開けてやるわ!!」

 

 迷う事無く、ロケットランチャーを発射させるアリアさん。俺は身を屈めて砲弾を避ける。

 だから何処から出した!?てかそんなモン使うな!!アンタの戦い方はバーリ・トゥードだろが!!

 ロケランなんか使ったら風穴どころじゃ済まんわ。ブラドなら再生するだろうけど。

 

 ドオオオォォォォォォンンンンッッッッッ!!!!!

 

 ロケットランチャーの砲弾がブラドの顔面に直撃する。

 即座に立ち上がって煙で視界が塞がれているであろうブラドに接近し、必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)で左肩の魔臓を貫く。

 3つ……。

 煙が晴れると必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)によって傷を付けられた場所以外は再生済みのブラド。

 

 「ぐううぅぅぅぅぅっっっっっ!!」

 

 だがブラドは苦悶の表情を浮かべている。

 必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)の傷口から感じる痛みが治まらないのだろう。

 

 「どうしたブラド?優秀な遺伝子を取り込んで生きてきた吸血鬼の実力はこんなもんじゃないだろう?」

 

 一歩前に出るとブラドは一歩後退する。

 

 「……………………」

 

 また俺が一歩進むとブラドは一歩下がる。

 

 「(ブラドの奴、俺に恐怖を感じてるな)」

 

 ブラドの表情は少しだが青褪めている。

 まあ、ご自慢の再生能力が一切働かないもんな。

 これで最後の魔臓潰されたら吸血鬼の弱点が有効化されるし、傷が再生出来ない理由も未だに分からないんだろうし。

 

 「な…何なんだお前は!!?その槍は!!?銃弾や砲弾の傷は確かに治る以上、俺の再生機能はちゃんと働いている!!だが、その槍の傷だけは治せねぇ!!!本当に何だというんだ!!?」

 

 「自己紹介なら先程しただろう」

 

 物覚えの悪い奴だな(笑)。

 

 「顔色悪いぞブラド。早くその傷塞がないと出血多量で死ぬかもな」

 

 「ぐううぅぅぅぅぅっっっっ………」

 

 唸りながら睨むブラドだが、殺気より恐怖心の方が上回っているのか凄みが全然ない。

 

 「《勇紀君、充填完了だよ》」

 

 お?

 ディエチからの念話が届く。どうやらカノンの発射準備が整った様だ。

 

 「《じゃあ、キンジさんとアリアさんをソッチに転移させるからブラドと俺に向かってデカいの一発ブチかましてくれ》」

 

 俺はブラドに攻撃を避けられない様、注意を引いておこうと思う。

 

 「《勇紀君も!?》」

 

 「《心配すんなって。ちゃんと防御出来る手段はあるから》」

 

 「《本当に大丈夫なの?》」

 

 「《ダイジョブダイジョブ♪》」

 

 心配性なディエチに軽く返事して答える。手段が無い様ならキンジさんやアリアさんと一緒に転移して避難してますって。

 

 「《じゃあ……信じるよ》」

 

 「《おう》」

 

 俺はアリアさんとキンジさんをすかさずディエチ達のいる方へ転移させた。

 

 「!!?アイツ等をどこへやった!!?」

 

 「さあな。もうチェックメイトを掛けられたお前が知る必要の無い事だ」

 

 「何っ!!?」

 

 「次に目が覚めた時は多分監獄の中だ。ゆっくり療養してこい(笑)」

 

 俺の言葉と同時にイノーメスカノンが放たれる。

 巨大なエネルギー砲に飲み込まれる直前

 

 「鋼鉄乙女(アイアンメイデン)

 

 俺は超防御のレアスキルを発動させる。

 ブラドはこの一撃で完全に意識を持っていかれるだろう。

 迫り来るエネルギー砲を見詰めながら俺は今後の行動方針を考えていた………。

 

 

 

 「ブラド確保……っと」

 

 イノーメスカノンの一撃で、完全に意識を持っていかれ、気絶してるブラドをバインドで縛り上げる。

 

 「ブラドも大した事無かったわね」

 

 「……………………」

 

 アンタ、ただ銃や砲弾をぶっ放してただけじゃないか。致命傷を負わせた訳でも無いし。

 スカッとした表情を浮かべているアリアさんに俺は心の中でツッコんでおく。

 

 「結局、私着いて来た意味無かったなぁ」

 

 美由希さんもボソリと呟く。

 

 「俺は……俺は……」

 

 で、次はあそこでブツブツ呟いているキンジさんのケアをしないと。

 そもそも何でキンジさんがここまで精神にダメージを負っているのか?先程『鬼畜』と呼ばれていた理由は何故なのか?

 そこら辺の事も含めてディエチから事情聴取する。

 

 「……という訳なのよ」

 

 「……とりあえず、お前の一言が発端だってのは理解した」

 

 キンジさん……アンタも苦労人属性背負ってそうですね。

 ディエチにはとりあえず謝らせよう。

 

 「それはそうと理子さん…コレで約束は果たしましたよ」

 

 雁字搦めに拘束したブラドの姿を見ている理子さんに声を掛ける。

 

 「……………………」

 

 「聞いてます?」

 

 「う…うん。けどこんなにアッサリ倒すなんて思ってなかったから」

 

 どうやらもっと苦戦するものだと思っていたみたいだ。

 

 「父さんなら衝撃波一発で倒せるんですけどねぇ…」

 

 おそらく一発の衝撃波で魔臓4つを同時に潰す事なんて父さんにとっては簡単にやってのけるだろう。転生者でも無いくせにホント、チート過ぎるぜ。

 

 「ま、後はコイツ監獄にぶち込んどけば理子さんも安心でしょ?」

 

 ま、『緋弾のアリア』原作通り長野県にある拘置所にぶち込まれるだろう。

 

 「そうだね……あたしはこれで自由になれるんだね」

 

 「少なくとも理子さんが生きてる間は外に出てこれんでしょ」

 

 そこまで軽い刑では済まされない筈だ。

 

 「っていうか理子!!アンタも風穴開けてやるからそこに直りなさい!!」

 

 何言ってんのこの武偵!?

 先程までならともかく今の理子さんは敵じゃないんだよ!?

 

 「勇君、オルメスから私を護って~」

 

 「ガキンチョ!!そこ退きなさい!!」

 

 俺の背後に回る理子さんと、コチラに銃口を向けるアリアさん。

 てかいい加減『ガキンチョ』と呼ぶのは止めて貰いたい。

 

 「今はそんな事してるヒマ無いでしょアリアさん。キンジさん元に戻さないと」

 

 もう見ていられません。哀愁漂うキンジさんの背中は。

 

 「(…もうアレだ。美由希さんに続いてキンジさんもフィリスさんに任せた方が良いか?)」

 

 それか良き相談役のクロノ、ユーノ、ザフィーラを紹介するか?

 

 「(何つーか…ここで立ち直って貰わないとキンジさんの今後が激しく心配になるんだよな)」

 

 この調子だと、この世界で『緋弾のアリア』関連のイベントが起こった時、生き残れなさそうな………。

 

 

 

 「じゃあ、俺は地下に行きますんで」

 

 キンジさんを何とか復帰させる事に成功した。後、ディエチにもちゃんと謝らせた。

 とりあえず精神の安定には成功したので、当面は大丈夫だろう。

 今後酷くなる様なら絶対にフィリスさんに診てもらおう。もしくはクロノ、ユーノ、ザフィーラに会わせよう。

 まあ、それよりも今は地下に向かう事だな。ファンを追い詰めないと。

 

 「また道を作るの?床をぶち抜いて」

 

 「いやいや美由希さん。今回はそんな荒業でいかなくともコイツ(・・・)がいますから」

 

 ポンポンとセインの肩を軽く叩く。

 

 「私!?」

 

 「セインのIS使えば楽に行けるじゃん」

 

 『ディープダイバー』なら床をぶち抜かなくても楽に下りられる。階段使う必要も無いし。

 

 「まあ私は別に良いけど」

 

 地下までのタクシー役ゲットだぜ。

 

 「つー事で皆さんは結界の外に出しますんで。恭也さん達同様に外の護衛に加わって下さい」

 

 「え!?着いて行かなくて良いのか!?」

 

 「もう地下にはエリスさんにタエさんと設子さん、それにトーレさんも向かってますからファン1人を相手にするのにこれ以上増員する必要無いですよ」

 

 キンジさんからの言葉に答える。

 もっとも、4人がファンに追い付く頃には終わってるかもしれない。最後の戦力の手によって(・・・・・・・・・・・)

 

 「(所詮ファンは一般人だしな)」

 

 純粋な身体能力であの人(・・・)に劣っている事は確実だ。

 

 「勇君、私も連れてってー」

 

 「へ?いや…理子さんも外に出しますよ。もうブラドは潰しましたし」

 

 「でもアレ…」

 

 理子さんが指差す先には『ガルルルル…』と唸っているアリアさんの姿が。

 

 「このままだとりこりんはオルメスに風穴開けられちゃう」

 

 いや、アンタの方が実力上だから簡単に対処出来るでしょ?

 

 「とりあえずアリアさんにはコレ(・・)進呈しますから、その怒りを鎮めて下さい」

 

 宝物庫から取り出したのは…

 

 「も…ももももももも、桃マン!!!!?」

 

 目の前の武偵さんにとって大好物である桃マンだった。

 

 「理子さんと敵対しないのならこの桃マンを進呈しますよ」

 

 「ば、ばばばばば馬っ鹿じゃないの!!!?桃マン程度でと、取り引きしようだなんて馬っ鹿じゃないの!!!!?」

 

 そう言いつつメッチャ動揺してる所を見ると、心の天秤はかなり揺れているのだろう。

 

 「あ、でも理子さんとやり合うっていうならコレは俺が…」

 

 『あ~ん』と口を開いて桃マンを持っていこうとすると

 

 パンッ

 

 乾いた音が響くのと同時に、俺の頬を何かが掠めていった。

 

 「両手を頭の後ろで組んで伏せなさい!!さもないと風穴開けるわよ」

 

 「てか撃つなよ!!!これぐらいの事で発砲するなよ!!!!」

 

 間髪入れず、しかも躊躇いも無く発砲した事に俺は恐怖するよ!!!

 

 「おいアリア!!勇紀は味方なんだぞ!!」

 

 「五月蠅いわね。アイツがあたしの桃マンを食おうとしたのがいけないのよ!!!」

 

 オイ!!

 まだ取り引きもしてない以上、アンタの桃マンじゃねえよ!!俺のだよ!!

 

 「馬鹿!!それ以前に発砲するな!!!」

 

 「うっさいわね!!きち……モガッ!!!?」

 

 言わせねえ!それ以上は言わせねえよ!!!

 せっかく精神安定したのに『鬼畜』なんて単語出たらキンジさん、また心が引き篭もっちゃうよ!!

 俺は手に持っていた桃マンをアリアさんの口に当てて、言葉が出るのを防ぐ。

 

 「モガ……モグモグ♪」

 

 アリアさんはそのまま口に押し当てられている桃マンを食べ始める。表情も緩々になり、怒気も収まっていく。 

 

 「(とりあえず今の内にセインを除く全員を結界の外に出そう)」

 

 即座に全員を転移させる。

 

 「……うし。じゃあ地下に行くかセイン」

 

 「うん。けど良かったの?全員の了承無しに外に出しちゃって」

 

 「いや、ホントにこれ以上皆が結界内に留まる理由ないし」

 

 「……まあ、良いけどね。それより早く私に捕まって。地下に行くよ」

 

 「よろしくー」

 

 俺はセインの手を握る。

 

 「////」

 

 「???セイン?」

 

 「(ビクッ!)ななな、何かな!!?」

 

 「いや…早く潜ってくれないと」

 

 下に行けないじゃないか。

 

 「あははは…そ、そうだね//」

 

 そう言って俺の腕に自分の腕を絡ませて来るセイン。

 手を繋いでるのに絡ませる必要あんの?

 

 「ほ、ほら!ダイバー中に私と離れると大変な事になるから…ね//」

 

 ダイバー中に離れたらどうなるんだろう?

 ……ちょっと怖いから想像するのは止めとこう。

 

 「了解。じゃ、早く地下に」

 

 「う、うん。ディープダイバー!!」

 

 セインがISを起動し、俺と共にそのまま床をすり抜けていく。

 

 「(後はファンを捕まえたら終わりだ)」

 

 やっと今回の件も終焉が見えてきたなぁ………。

 

 

 

 ~~ファン視点~~

 

 「……どういう事だコレは?」

 

 私は今、激しく混乱していた。

 地下の駐車場に辿り着き、フィアッセを車に乗せて運転し始めたのはいい。

 私達を追って来たエリス・マクガーレンも振り切る事が出来たしな。

 これで私はフィアッセを手に入れる事が出来、この上ない満足感と充足感を感じていた。

 後はココから出るだけだったのだが…

 

 「何故外に出られない(・・・・・・・)!?」

 

 車が駐車場の出口を抜けようとした瞬間、見えない何かにぶつかり停止してしまったのだ。おかげで車の前方部分は大きくヘコんでしまった。

 

 「周囲の色が消えた不思議な現象と何か関係があるのか?」

 

 車から降りて出口の前に立ってみると、ソコからは確かに外の景色が見えていた。

 だが出られない。手を出してみると感触がある。壁の様な硬いモノの感触が。

 しかし私の目には何も視えない。

 

 「どうしたものか…」

 

 折角、私の本命であるフィアッセを手に入れる事が出来たというのに…。

 いつまでもここに立ち往生していてはエリス・マクガーレンを含む護衛の連中が私に追い付いてくるかもしれない。

 何としてもこの不可解な現象の謎を解かねば。

 

 ガチャッ

 

 不意に助手席のドアが開く音がする。

 車の中からフィアッセが出て来たのだ。

 

 「ミス・フィアッセ。車の中で大人しく待っていてくれないか」

 

 このまま逃げられるかもしれない。

 私としては君を撃つ様な真似はしたくないのだよ。

 だが私の杞憂は無駄に終わった。彼女はその場に立っているだけで逃げる素振りは一切見せない。

 

 「(しかし…妙だな)」

 

 何故彼女は逃げたり抵抗したりする素振りを見せないのだろうか?

 

 「(それほどまでにあのエリス・マクガーレンや護衛の連中が助けに来ると信頼出来る程の人材だという事か…)」

 

 …気に食わんな。私以外の者に心を許し、信頼しているという事実が。

 

 「(君が心を許していいのは私だけなのだよ、ミス・フィアッセ)」

 

 ここで連中を待ち構えて殺してやってもいいが、如何せん相手の人数が多過ぎる。

 後日改めて1人ずつ確実に葬ってやる事にしよう。

 

 「さて…今はどうやって逃げるか…」

 

 「無理よ」

 

 そこへ背後から声を掛けられる。

 声の主は言うまでも無くミス・フィアッセだ。

 

 「何が無理なのかな?ミス・フィアッセ」

 

 「逃げるのは無理。だって貴方は…」

 

 ドンッ!!

 

 私の首筋に鈍い衝撃が走る。

 

 「もう詰んでいるもの」

 

 その言葉を最後に聞き届け、私は意識を手放した………。

 

 

 

 ~~ファン視点終了~~

 

 俺達が駐車場に着いた時、エリスさん、タエさん、設子さん、トーレさんが合流しており、今まさにファンを追い掛けようとする所だった。

 

 「っ!!?…何だ、勇紀にセインか」

 

 最初に俺達に気付いたのはトーレさんだ。

 一瞬警戒心を出したエリスさん、タエさん、設子さんだが俺が来たんだと分かるとすぐに警戒心を収めてくれる。

 

 「ども。援軍に来ましたけど」

 

 「援軍って…ブラドはいいの?」

 

 「大丈夫ッス。もう潰してきましたから」

 

 「「「え!!?」」」

 

 俺の言葉に驚くエリスさん、タエさん、設子さん。

 

 「あのブラドを?本当に?」

 

 「信じられないわ」

 

 「でも嘘を吐いてる訳でもなさそうですし」

 

 皆さん結構動揺してるなぁ。

 

 「ふむ。そのブラドという奴がどんな奴かは知らないが勇紀にとっては苦も無く倒せる相手だという事だろう?」

 

 「普通の人なら超苦戦しますけどね」

 

 必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)の効果がブラドにとっては相性最悪だっただけの事だ。

 必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)使わなくても勝てる手段はいくつもあったけど、コレがシンプルかつ手っ取り早い手段だったからな。

 

 「「「(流石は長谷川泰造の息子)」」」

 

 「……所で勇紀とセインは何故腕を組んでいるのだ?」

 

 やや目を鋭くしたトーレさんが尋ねてくる。

 

 「セインのディープダイバーで地下に下りてくるためですよ。ダイバー中に離れたら大変な事になるらしいので」

 

 「ふむ…ならいつまでそうしているつもりだ?もう目的地には来れたのだから離れてもいいだろう?(帰ったらみっちりシゴいてやるぞセイン)」

 

 「それもそうですね。セイン、ありがとう」

 

 「あ…どういたしまして(うぅ…もっと組んでいたかったのに……トーレ姉ぇ余計な事を)」

 

 腕を離すと何か寂しそうな表情浮かべたり、頬膨らましてトーレさん見たり…。

 相変わらず表情豊かな奴。

 

 「それはそうとファンを追い掛けるんですよね?」

 

 「ああ…だが向こうは車で逃げた。正直どうやって追い付いたものか…」

 

 いやいや、歩いてでも追い掛けられますよ。この結界から脱出する方法なんて一般人のファンからすりゃ無い様なもんですし。

 まあ、それ以前に……

 

 「エリスさん、追い掛ける必要は無いですよ」

 

 「どういう事だ?」

 

 「向こうも終わったみたいですから(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 コッ…コッ…コッ…

 

 静かな駐車場に誰かが歩いてくる足音が聞こえる。

 皆身構えるが、近付いて来たのが俺達の護衛対象だと分かるとすぐに構えを解く。

 ただ…

 

 「ふぃ、フィアッセさん?その手に掴んでいるのは?」

 

 タエさんが声を出す。

 ズルズルと首根っこ掴まれながら引き摺られているのは何処からどう見てもファンである。

 皆、現状に混乱してる中、俺は一歩前に出て

 

 「犯人逮捕のご協力ありがとうございます。お疲れ様でした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドゥーエさん(・・・・・・)

 

 最後の協力者の名を呼ぶ(・・・・・・・・・・・)

 

 「気にしないで。そこまで苦労する程の事でも無かったから」

 

 ニッコリと笑顔を浮かべ、フィー姉の容姿が徐々に変わっていき、数秒で彼女…ドゥーエさんは自分自身の姿を皆の前に晒したのだった………。

 

 

 

 「勇紀、大丈夫!?怪我してない!?無理してない!?お姉ちゃんと一緒にお風呂入ろう!!」

 

 「風呂は全く関係無いよね!!?」

 

 結界を解き、ホテルの一室に戻って来た俺達を出迎えてくれたフィー姉の最初の言葉がソレだった。

 今はホテルの個室では無く、披露宴やパーティーに使われる様なホールに俺達はいる。

 

 「ドゥーエ姉様も来てらしたんですね」

 

 「ええ。彼に頼まれて彼女の変わり身役をね」

 

 「ドゥーエの事を私達にも知らせないとは…勇紀は本当に情報漏洩の防止や護衛の身の安全を徹底していたのだな」

 

 クアットロ、ドゥーエさん、チンクの会話が耳に入る。

 そう…最初から結界内にいたのはフィー姉では無く、フィー姉の姿に変装していたドゥーエさんだった。

 わざわざ地上本部から呼び寄せ、今朝からずっとフィー姉として振舞って貰ってた。

 護衛のターゲットを前線に晒す様な馬鹿な真似はしない。

 ドゥーエさんにはファンを捕えるための一手として俺が配置しておいたのだ。

 もっとも、車で連れ去られるまでにファンを捕える事が出来たならそれはそれで良いし。

 

 「ゆうくーん、お疲れ様やー」

 

 「ゆうひ姉さんもご無事で何よりです」

 

 俺の背後からムギューっと抱き着いてるフィー姉は放っといて正面のゆうひ姉さんと会話する。

 

 「外側(コッチ)に被害は出てませんでしたか?」

 

 「そやねー。ゆう君の知り合いっちゅー2人が護ってくれたし」

 

 「ふっ、お師さんの命を遂行できずして何が聖帝か」

 

 ホールに響く男の声。

 

 「所詮は一般人だもの。あの程度の連中に後れを取るなんて万が一どころか億に一も有り得ないわね」

 

 続いて女性の声。

 

 「サウザー、レスティア。2人もお疲れ」

 

やってきたのは俺が所有する2体のユニゾンデバイスであり、武力最強のサウザーと魔力最強のレスティアだ。

 …レスティアにはサウザーの見張りも任せてるけど。

 

 「お師さん。裏切り者のネズミ共の処分はどうしますか?」

 

 「何人居たんだ?内通者は」

 

 「全部で13人よ」

 

 「そっか…」

 

 もう少しいるとは予想していたが。

 ついでに結界内で戦った連中も全員その部屋に閉じ込めてある。

 

 「とりあえずは全員拘束してるけど、どうするの?」

 

 「………サウザー」

 

 「は」

 

 「今回に限りアイツ等に対する処遇はお前に一任する。二度と牙を剥くなんて思わない様にしてやれ。ただし殺すなよ」

 

 「分かりました。ネズミ共の身に叩き込んでやりましょう」

 

 一礼してホールから出るサウザー。

 

 「…なあゆう君。あの人何なん?正直、テロリストの人なんかより怖いんやけど?」

 

 「知り合いです」

 

 「この子も?」

 

 レスティアを指すゆうひ姉さんの問いに俺は頷く。

 

 「でも勇紀、本当にあんな指示をして良かったの?あの男、間違い無く手加減なんてしないわよ」

 

 「今後スクールの皆に対する危険を減らすための措置だし、『殺すな』って言ったから大丈夫だ」

 

 少なくとも肉体的にはな。精神的には死ぬだろうが。

 

 「レスティアもサウザーに付いて行って結界張っといてくれ」

 

 ホテルの損壊だけは防いでおかないと。

 

 「分かったわ」

 

 レスティアもホールから退室する。

 

 「……で、フィー姉。そろそろ離れてくれない?」

 

 「やだ」

 

 より強く抱き締められ、密着感が増す。おかげでフィー姉の大きくて柔らかな双丘が背中に当たって…。

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 はっ!!?何か凄い殺気の籠もった視線が!!?

 

 「フィー姉、マジで離れて」

 

 「えー…」

 

 言っても離れそうにないので強引にフィー姉を引き剥がす。

 

 「にゃ!?私の癒しが!!?」

 

 知らんがな。

 

 「じゃ、俺はちょっと席を外しますね」

 

 「「何処行くの?(何処行くん?)」」

 

 「お手洗いに」

 

 フィー姉とゆうひ姉さんに同時に尋ねられたので短く答える。

 

 「「じゃあお手伝いに…」」

 

 「来なくていいからね!!?」

 

 変態がここに2人います。

 俺は軽く戦慄を覚えながらホールを飛び出した………。

 

 

 

 俺はトイレに向かわず、認識阻害を使ってホテルの屋上から飛び出し、1つのビルの屋上に降り立つ。

 

 「あら?よくここにいるのが分かったわね」

 

 認識阻害を使ってるのにも関わらず、声を掛けられた。

 『俺の事は視えているのか』と思い、認識阻害を解く。

 

 「妖気…ですかね?ソレを感じとったもので。ていうか来ないと思ってたんですけど」

 

 「ふふ…そうね。けど貴方の実力を見ておきたくてね」

 

 「…来たんだったら手伝ってくれても罰は当たらないッスよ」

 

 「私が来たのは貴方の実力を見るためだけであって歌姫さんの護衛に興味は無くってよ」

 

 「……はあ~……」

 

 軽く溜め息を吐く。

 そうだね。こういう人だってのは分かってた事だし。

 いや…『人』じゃないか。

 

 「で、俺に対する評価はどうだったんですか?」

 

 「正直言うとあの異能力と武器は魅力的ね。ただ、使い手である貴方自身の実力はまだ弱い。私やあの男に比べると…ね」

 

 「き、厳しい評価ッスね」

 

 俺は『ははは…』と乾いた笑い声を小さく漏らす。

 

 「だから私が言う事はただ1つ。強くなりなさい。今よりも遥かに」

 

 「えっと…強くなるのに反対は無いんですけど、もし拒否した場合は?」

 

 「貴方の家族や知り合いにバラすわよ。『転生者』だという事を」

 

 「っ!!?」

 

 俺は目を見開いてしまう。

 何故その事を!!?

 

 「さっきも言ったでしょう。ここに来たのは『貴方の実力を見るため』だと。結界内で行われた戦闘中の会話も例外なく聞かせて貰ったわ」

 

 …あのイレギュラー転生者と戦った時か。

 ていうかあの時は見られてる事にすら気付かなかった。

 

 「別に悪い交渉でも無いと思うのだけど?私はただ貴方に強くなって貰いたい。そしていずれ来る『あの男』との戦いに手を貸して貰いたいだけ」

 

 「……………………」

 

 確かに悪い条件とは思わない。俺だって強くなりたいとは思ってる訳だし。ただ…

 

 「(別に『転生者』って事をシュテル達にバラされてもなぁ…)」

 

 正直言うと『バレてもいいか』と少し思ってる。ただ説明するのが超面倒臭いけど。

 

 「(どうしよう?)」

 

 うーん……。

 しばらく悩んだ末に俺は、交渉の条件を呑む事にした。やっぱ説明すんの面倒臭いし。

 

 「ま、そちらの条件を呑むとして……先程から気になっていたんですが……」

 

 「何かしら?」

 

 「貴女の足元にあるその人は…貴方が殺したんですか(・・・・・・・・・・)?」

 

 「…ああ」

 

 今思い出したかの様な仕草。

 

 「彼ね…このビルの屋上から貴方達護衛の連中…しかも腕の立つ者達をここから狙撃して殺そうとしていたのよ」

 

 狙撃兵(スナイパー)か。

 

 「もっとも、貴方がホテルに結界を張った時点で狙撃の対象は皆消えてしまったけどね」

 

 「はは…」

 

 「で、ここが丁度見晴らしのいい場所だったし、私に銃を向けて来たからつい恐怖を感じてしまって…ね」

 

 そうは言うけどクスクスと笑いながら言われても説得力無いし、何より貴女がこんな銃ぐらいで死ぬ筈無いし恐怖なんて微塵も感じないだろうに。

 

 「けど駄目ね。全然美味しくなかったわ(・・・・・・・・・)

 

 「(喰ったんだ…)」

 

 「けど貴方は美味しそうよね♪」

 

 その言葉に俺は顔を顰めて言う。

 

 「…俺を喰うつもりなら全力で抵抗させて貰いますけど?」

 

 「冗談よ。あの男と戦う前に貴方を喰う様な事はしないわ」

 

 ……その後は?決着をつけた後は喰われるのか?

 まあ、簡単に喰われてやるつもりは無いが。

 

 「さて…見るものは見た事だしここいらでお暇させて貰うわ。いずれまた会いましょう」

 

 「次に会う時は貴女に力を貸す時…ですかね?」

 

 「そうね。……行くわよ奏子」

 

 「はい。……それではまたお会いしましょう長谷川勇紀君」

 

 「はい。ではまた…『比良坂初音』さん、『深山奏子』さん」

 

 こうして彼女達…『蜘蛛の妖』と彼女に付き従う『元高校生』は去って行く。

 いずれ来る戦い……ね。

 こうして俺は強くなるための理由が1つ増えたのだった………。

 

 

 

 翌日…。

 ブラドを始めとする襲撃犯一同は氷村を除いて引き渡され、安心してコンサートは決行される事となった。

 理子さんは元々ブラドに脅されていたも同然なので今回の件に関しては不問で済んだ。

 ちなみにブラドの傷は必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を折って破壊する事によって効果を無効化した。修正天使(アップデイト)使えば壊れた宝具も直せるし。

 

 「…昨日の事は大体聞いたが勇紀は本当に規格外だな。ボクも最初は信じられなかったぞ」

 

 「はは…」

 

 コンサート会場周辺の警備を担当する警察官の指揮を執るリスティさんと俺は話していた。

 

 「勇紀、将来は刑事になれ。で、ボクとパートナーを組もう」

 

 「気が向いたらそうしますよ」

 

 もう管理局員になってるからそんな機会は来ないかもしれないが。

 

 「それより向こうの警官さんが指示を待ってるみたいですよ」

 

 「む?そうか。無粋な奴だな。姉と弟の時間を割こうとするとは」

 

 やれやれといった感じでリスティさんが離れていく。

 

 「俺も会場に戻るかな」

 

 ここにいても仕方ないので、踵を返してホテルの中に戻る事にした。

 

 「あー!!いたいた勇紀何処行ってたの!?お姉ちゃん心配したんだよ!!」

 

 ロビーで大声を上げるフィー姉。

 

 「ちょっと外に出てただけだよフィー姉」

 

 「だったら一声掛けてよね」

 

 頬を膨らますフィー姉。

 

 「それよりもコンサートの準備は出来てるの?」

 

 「もうすぐ本番前の最後のリハーサルやるよ」

 

 「じゃあ、ここにいないでコンサート会場に向かいなよ」

 

 会場っつってもホテル(ここ)の地下だけど。

 

 「じゃあ勇紀も!勇紀も一緒に行こう!!」

 

 「はいはい」

 

 腕を絡まれたのでどうせ逃げる事出来んし。

 フィー姉と2人でコンサート会場にやってくると準備に追われるスタッフの人達とステージの側で控えている歌姫及びスクールの生徒一同。

 で、護衛の皆さん。

 ……忍さんやすずかが昨日に引き続きここにいる事は誰も気にしてない様子。

 

 「ほら、フィー姉も向こう行きなさい」

 

 「やだ」

 

 「『やだ』じゃない。アンタ一応、歌姫でスクールの教師なんだから」

 

 腕にしがみついてくるフィー姉と話しているとアイリーンさんが近付いて来た。

 

 「勇紀…相変わらずフィアッセにベッタリされてるね」

 

 「この愚姉を引き離して貰えません?」

 

 「そうだね…フィアッセ、いい加減離れてコッチ来なさい」

 

 「嫌だよアイリーン。私は勇紀と一緒にいる時間を取る方が大事なの!」

 

 「あのね…貴女が最初にステージの上に立つんだから」

 

 「むぅ…声の確認ぐらい後で出来るもん」

 

 「い・い・か・ら!!コッチに来なさい!!」

 

 ガシッ!

 

 「ああっ!!?放してアイリーン!!」

 

 ズル…ズル…

 

 「ゆ、勇紀いいぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!!!!」

 

 …アイリーンさんに引っ張られていくフィー姉を見送る。

 

 「まったく…フィアッセの姉馬鹿ぶりにも困ったもんや」

 

 「…そう言う自分はどうなんですか?ゆうひ姉さん」

 

 フィー姉と入れ替わる様に背後から抱き着いてくるゆうひ姉さん。

 

 「ゆうひ姉さんは向こう行かなくていいんですか?」

 

 「うちはもうやる事やったもん。ここからはゆう君とスーパーイチャイチャタイムや♪」

 

 「…ハア~……」

 

 上機嫌なゆうひ姉さんに好きにさせていると

 

 「「「「「「「「……………………」」」」」」」」

 

 またも視線(殺気込み)を感じる。

 ゆうひ姉さんはそんな視線に気付かず、顎を俺の肩に乗せ、頬同士をくっつけながら頬擦りしてくるし。

 フィー姉同様にでっかいオムネサマの感触が背中に…。

 

 「んん~♪…ゆう君はホンマ抱き心地ええな~」

 

 「…そりゃどーも」

 

 「ええ匂いもするし」

 

 そうか?自分じゃよく分からん。

 

 「ん~♪♪」

 

 スリスリ

 

 しばらくはされるがままになっていた俺だが、ゆうひ姉さんがイリアさんに引っ張られていった事で解放された。

 ようやく皆の方へ近付ける。

 

 「随分と好かれてるんだねぇ」

 

 「……セイン、何か言葉に棘が無いか?」

 

 「気のせいじゃない?」

 

 「……そっか」

 

 どう考えても気のせいではないと思うんだが…。

 

 「てか皆ここにいてジェイルの奴大丈夫なのか?」

 

 ナンバーズの皆は昨日帰らずホテルで一泊した(宿泊費はスクール持ち)。

 で、俺はスキンヘッディの事を『ジェイル』と呼んでいる。やっぱ仲の良い奴の事は苗字で呼ぶより名前で呼ぶべきだろう。

 

 「ウーノ姉様がいるから大丈夫よ~」

 

 「家事は私達姉妹の中で一番上手だから」

 

 「というよりウーノ以外に家事をまともに出来る奴がいないのだ」

 

 クアットロ、ドゥーエさん、トーレさんが順に喋る。

 つまりジェイルとナンバーズ全員の家事を引き受けてるという事か。ウーノさんの負担大変そうだな。

 

 「なあ勇紀」

 

 「何ですかキンジさん?」

 

 「お前…やたらと女性の知り合い多いよな」

 

 「…まあ、そうですね」

 

 別に意図して女性の知り合いばっか増やしてる訳じゃないけどな。

 『リリカルなのは』の世界なんだから必然的に女性キャラの割合が多くなるのは仕方ない。

 

 「あー…なんだ。将来刺されない様に気を付けろよ」

 

 「怖い事言いますね!?」

 

 俺が刺される理由が皆目見当つかないんですけど!?

 

 「まあ、アイギスに依頼してくれたら護れる範囲で護ってあげるわよ」

 

 だったら今日からお願いしていいですかタエさん?

 

 「大丈夫だよ勇君。今度はりこりんが勇君を護ってあげるのだー」

 

 理子さんも護ってくれるらしい。この人の実力も申し分無いし信頼出来る。

 

 「ガキンチョ。桃マン寄越しなさい」

 

 「…キンジさん。あの人潰して良いですか?」

 

 「済まんがその怒りを何とか抑えてくれ」

 

 ていうか桃マンぐらい自分で買えよツンデレ武偵。

 ステージの側ではそんな和気藹々(?)とした会話が繰り広げられていたのだった………。

 

 

 

 そして遂にコンサートの本番が始まった。

 ティオレさんの挨拶に始まりフィー姉、ゆうひ姉さん、アイリーンさんといったスクールOBの歌姫達にスクール在籍中の生徒達で選ばれた何人かがステージで華々しいデビューを飾っていた。

 歌っている最中のフィー姉達は、それはもう生き生きとした表情で歌い、スタッフや観客の人達を惹き付け、誰もが見惚れているだろう。

 

 「《無事に開催出来て良かったねユウ君》」

 

 「《全くだ》」

 

 ステージの方を眺めながらダイダロスと念話で会話する。

 ファンやグリフだけでなくブラドに氷村、イレギュラーなクズ転生者等『とらハ3OVA』には登場しない連中が来たが、無事に逮捕出来たし。

 ただ、クズ転生者は殺してしまったし、氷村に関しては忍さんが昨日の内にさくらさんを呼んで身柄を引き渡してた。

 で、内通者の連中はサウザーの手によって処刑を敢行させた結果、全員の精神が壊れ、二度とまともな生活は送れないだろう。

 危機は去った。

 

 「(海外にいる『龍』『イ・ウー』の残党も父さん達が全員捕まえたらしいし)」

 

 先程携帯に父さんから連絡があったのだ。『ワシともう1人の隊長、あとゼスト、クイントに部下達を引き連れてあっという間にお縄にしてやったわ』だとさ。

 もう1人の隊長…原作通りなら美由希さんの実母である『御神美沙斗』さんの事だろう。今では『警防第4部隊長』の地位に就いていた筈だし。

 それとゼストさんとクイントさんは父さんの部下になったみたいで、以前は『さん』付けだったのに今は呼び捨てで名前を呼ばれている様だ。

 ゼストさんとクイントさんも元気そうで何よりだ。父さんにしごかれて、とんでもない人外と化してないかやや心配だが。

 ただ、完全に『イ・ウー』が潰れたとなればこれまで静観していた数々の組織、勢力が行動を開始するだろうけど。

 

 「(ソッチはアリアさんとキンジさんに何とかして貰おう)」

 

 もう『緋弾のアリア』原作には関わりたくないからなぁ……。

 

 「(けど今回みたいに他作品の原作に混じってた場合は……)」

 

 特に『リリカルなのは』関連の原作に混じったりしたら……。

 

 「(…考えるのは止めよう)」

 

 ていうか今から未来の事考えても仕方無いしな。

 理論回路(ロジカルダッシュ)で未来を視ても、必ずしもその未来に辿り着くとは限らないし。

 

 「(ま、俺の家族や友人、知り合いが巻き込まれそうになるなら嫌だと思っていても介入するけど)」

 

 身内が危険な目に遭うのだけは見過ごせないからな。どんな事をしてでも守るつもりだ。

 

 「(例え、相手の命を奪う結果になって…でもな)」

 

 そう…相手が今回のクズ転生者みたいな外道じゃなかったとしても。

 俺は歌姫達の歌を聴きながら静かに拳を握り締め、自分自身に誓うのだった………。

 

 ~あとがき~~

 

 当作品を読んで下さっている読者の皆様、新年あけましておめでとうございます。本年も『魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~』をよろしくお願いします。

 いや~、始まりましたね2014年。今年はどんな年になるのやら。

 本来なら大晦日に完成した今回の話をすぐ投稿しようか迷ったんですけど『新年最初の投稿の方が縁起良いかも?』なんて何の根拠も無いのに自分で納得して年明けに投稿する事にしました。

 これが良いスタートになってくれるのを祈るばかりです。

 これからも自分の体調に気を付けつつ、読者の皆様に良い評価を頂けるような作品を執筆していける様頑張りますので、どうぞ温かい目で当作品を見守ってやって下さい。

 

 ………理子といえばまだヒルダのイベント残ってるんだけど、どうしたもんかねぇ………。

 


 
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