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満月の夜、森の中である人が石の前で龍笛を吹いている。
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響き渡る龍笛の声は何処か淋しく儚い。
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だけど、それ以上に美しい。
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龍笛を奏でている『ある人』の名は『曹朋錬鳳』真名を『龍翠』と言い、
石には、『曹嵩』と刻まれていた。
一曲吹き終わったのか龍翠は龍笛を口から離し、懐にしまう。
「・・・久しぶり、父さん。『コレ』を吹いたのも、久しぶりだったけど大丈夫だったみたい。」
そう言って龍翠は、足元にある大徳利の栓を開けて石にかける。
「皮肉な話だけど、あの日の・・・父さんのお陰で僕は記憶を取り戻せたし、大切な人達も助ける事が出来たよ。・・・ありがとう。んぐっ。」
そう言って龍翠は大徳利の中に残った1/5程の酒を一気に呷る。
父の好んでいた酒はキツイが、旨い。
酒の余り強くない龍翠は其れだけで、顔が赤くなる。
「こく・・・こく・・・ふぅ・・・。じゃ、もう戻るよ。また来るから、一緒に飲もう父さん。」
そう言って龍翠は、自分の部屋に戻って行った。
~翌早朝~
龍翠は前に言ったように朝に弱い。
そんな龍翠の部屋に入る2人の女の子の姿。
二人そろって龍翠の床へ近づいていく。
誰かが来る気配に起き掛けるが、敵意がないから寝ぼけたまま。
勿論、そんな寝ぼけた龍翠の床行けば、
ガチッ
ズルッ
引きずり込まれるだけなのだが、その人物達は引きずり込まれて、
「んにゅぅぅ・・・・おやすみぃ~~。」
「ふみゅぅぅ・・・・おやすみなさいぃ。」
・・・そのまま龍翠に引っ付いて寝た。
その声を龍翠はまどろみの中で聞いた。
でも今は自分の眠りを優先させてそのまま眠った。
ある人物達が龍翠の部屋に侵入して一時後・・・。
「♪~~♪~♪。」
すこぶる機嫌が良い桂花が鼻歌を歌いながら龍翠の部屋に向かっていた。
龍翠を起こせと華琳に言われたから。
初めてコレができるという事で、桂花の機嫌は鰻上りだ。
「ふふふ、何時もは華琳様だけだったのにね。」
少し前では考えられない事に、嬉しさから桂花は笑みを浮かべる。
そして、龍翠の部屋の前まで行くと扉が少し開いていた。
「珍しい。龍翠様が、戸を閉め忘れるなんてっ!」
少し開いた戸から龍翠の部屋に入ると龍翠の寝ている床を見て固まった。
なぜなら其処には、
「すー・・・くー・・・・。」
「ん・・・にゅ・・・。」
「ん・・・みゅ・・・。」
気持ち良さそうに寝ている龍翠と、
季衣と流琉が龍翠に引っ付いて寝ているのだ。
「な、何やってるの貴女達はぁぁぁ!!!」
その姿を見て桂花は思わず叫んでしまった。
「・・・んにゅ?けいふぁさまぁ?おはようございまぁす。」
「・・・おはようございます桂花様ぁ。」
その叫び声に、季衣と流琉目を覚まし目を擦りながら床を出ようとしたが、
「「・・・・え///」」
龍翠に抱きしめられているため出る事が出来なかった。
その事実を知ると、二人は真っ赤になって動く事が出来なくなった。
「ううぅん・・・。騒々しいですねぇ・・・。」
桂花の叫び声に
「おや、季衣に流琉どうして僕の床に・・・若しかして部屋を間違えたんですか?」
「「ひゃ、ひゃわぁっ!///」」
どもりまくりの二人に桂花も部屋に居る状況を見て、
「なるほど・・・僕の寝相が出ましたか。」
そう言って、龍翠は二人を抱えたまま床から出て二人を床に降ろす。
「ほら、早く部屋に戻って着替えないと、色々とお咎めもらうかも知れませんよ?」
「「ひゃ、ひゃいっ!///」」
そう言って、二人は真っ赤なまま出て行った。
「ふぅ、全く。龍翠様、おはようございます。」
「クスクス。おはよう桂花。」
そう言って、龍翠は桂花の頭を撫でる。
桂花は、目を細めて嬉しそうにそれを受ける。
「では、僕は着替えるので。」
「・・・・お召しかえ、お手伝いしましょうか?」
「・・・・大丈夫です。桂花は先に行っていてください。(正直、自分が抑えれなかったら困るので。)」
そう言って龍翠は桂花を先に向かわせ部屋を出た。
玉座には既に主用となる人物達が集まっていた。
勿論、ちびっ子二人もである。
「「っ!?///」」
二人は龍翠の姿を確認すると紅くなって顔を伏せてしまった。
「・・・おはよう兄さん。兄さん二人にちょっかい出したの?」
「おはよう華琳。朝一番にそれはないでしょう。ただ、僕の寝相が出たと言う事です。」
「ああ、なるほど。」
妙に納得してしまった華琳。
「確かに起きて一番に、兄さんの綺麗な寝顔なんか見たら驚くわね。(私何か初めてされたとき、口付けしそうになったし。)」
ちなみに、一番最初の被害者が秋蘭だったりする。
「ま、兄さんの寝相のことはいいとして最近、黄布党が出ているのは兄さんも知っているでしょう?」
「ええ。」
張角を頂点とする者達の事だそうだ。
「その黄巾党の討伐命令が今日の明け方、都の軍部より届いたそうよ。」
何とも遅すぎる都の対応だと思う。
何せ、最低でも半年前には黄巾党の活動が活発なのは分かっていた事なのに。
「朝廷もその程度しか、今は力を持ちませんか・・・。」
龍翠の聞いた話によると5000もいる時もあったり、300程度しかいない時だってあるという。
しかも多くが、武器を出せば大人しく逃げる者ばかりだったそうだ。
はっきり言って、こちらを無闇に戦に出させているだけではなく、
何か裏が見え隠れしているように感じる。
「議会の途中失礼いたしますっ!」
「何事だっ!」
「はっ!近くの村に今までにないほどの黄巾党が現れているとの事っ!」
伝令の報告に龍翠と華琳が渋い顔をする。
「チッ!先手を打たれましたか。」
「・・・・一歩遅かったわね。」
華琳と龍翠は隠せないイライラした雰囲気で呟く。
「ふぅ・・・。愚痴っていても始まらないわ。春蘭、兵の準備は終わっているの?」
溜息一つ付いた後、頭を切り替えて兵の様子を聞く。
「申し訳ありません。現在は一部の者しか戦闘待機しておりません。数は約500といった所です。」
「間が悪いですね・・・。今までの報告を聞くに、この出現も偶然ではないはずです。今までのようには行きませんね。」
恐らく、指揮官またはそれに順ずる者が居るという事だ。
そう龍翠は考えていた。
「秋蘭と季衣に先行させる。ただし、季衣が指揮をして、秋蘭は補佐よ。」
「「御意っ!」」
「春蘭と軍師諸君は後発部隊の編成及び、兵糧の手配を夕刻までにお願いします。」
「「「御意っ!」」」
華琳の指揮の後、龍翠も軍師達に其々の指示を出す。
「今回の本隊は、私が率います。以上解散。」
そう華琳が言うと、皆慌ただしくこの場を出て行く。
「華琳、今回は馬上での休息となりうるでしょう。ですから、早く休んでおきなさい。」
「・・・兄さん。起きたばかりなのにまた寝るの?」
「いや、その場のノリです♪」
「はぁ・・・。」
何だか、兄が心配になってきた華琳であった。
「急げ急げ!先遣隊に早く合流するぞ!」
「春蘭、落ち着いてください。そのように、急かすだけでは戦う前に疲れてしまいます。」
遠くの村であるため、1日かかっている。
しかも春蘭は働き詰めで疲れているはずが、さらに気合がかかっていた。
先遣隊の二人が心配なのだろう。
「そうよ春蘭。それに、目と鼻の先だけなら隊を分けても良いのだけれどこの距離だから許可できないわ。」
華琳が春蘭が言うであろう事を先回りして言った。
「うぅぅ・・・。」
どうやら図星のようで、黙ってしまった。
「龍翠様、華琳様。秋蘭から報告の早馬が届きました。」
「報告なさい。」
報告によると、先遣隊は敵と遭遇し現在戦闘中。
張角らしき人物は特定できず。
組織化されており、並みの盗賊どものようには行かない。
などが書かれていた。
「それと、秋蘭から余力を持って当たってくれとのことよ春蘭。」
「うっ!」
流石妹と言った所だろう。
姉の性格を熟知している。
「村に付いたのが、夜間のため適の詳細な数は不明。唯、先遣隊より明らかに多いため、村の防衛に当たっているとの事です。」
「ふむ。流石秋蘭です。それにしても、張角の才覚・・・侮れませんね。」
それほどの者達を集めるなど、なかなか出来たものではない。
自分の妹を見て龍翠はそう思うのだった。
そしてその直ぐ後、
「曹朋様っ!曹操様っ!曹朋様と曹操様はいらっしゃいますかっ!」
「ん?」
先ほどとは違う兵が自分達の下に走ってやってきた。
「如何したのです。」
「先遣隊が敵と遭遇し戦闘に移行!篭城戦で防衛に徹し村での義勇兵も集まり800までにはなりましたが、敵軍は約1万の軍勢。お味方に不利とあり至急、援軍をともむとの事ですっ!」
秋蘭の事だから、不利な状況になると見て出したのだろう。
「・・・華琳。皆を率いて来て下さい。」
そう言って、龍翠は馬から下りて馬に引かせていた車の中から牙龍を取り出し
「先に行きますっ!」
そう言って、馬でも出ない速度で走って行った。
「ちょっ!もぅ!全軍、全速前進!全員追いついてきなさい!」
「全軍駆け足っ!駆け足ぃ!」
龍翠の先行により華琳たちは、全軍の進行速度を速めることになった。
果たして、女神の危機に龍は間に合うのだろうか?
続く...。
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