No.646018

真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第三十回 拠点フェイズ:魏延①・城下案内という名のデート(後編)

stsさん

みなさんどうもお久しぶりです!または初めまして!

今回は城下案内後半戦です!果たして一級フラグ建築士の実力やいかに、、、!


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2013-12-18 00:00:36 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:6241   閲覧ユーザー数:5071

 

 

奥様方が集まる所に井戸端会議あり。

 

現在、成都の奥様方の井戸端会議の議題で最もホットなものは、噂の新領主についてである。

 

ここ最近はずっと新領主がらみのネタで持ちきりであった。

 

 

 

奥様C「ねぇ聞きました?御遣い様、すごかったらしいですわね」

 

奥様A「もちろんよぉ張ちゃん!御身の危険も顧みずぅ、いいわねぇ、私、惚れちゃうわぁ♪」

 

奥様B「旦那いるくせにその発言は舐めすぎよ小娘。私にも出会いをよこ―――」

 

奥様A「孟ちゃんだって素敵な旦那さんがいるじゃなぁい♪えぇと、美魔女(笑)さん?そんなことより魏延様よぉ!」

 

奥様C「もう少しだったそうですわね」

 

 

奥様A「違うわよぉ!野次馬の中にぃ、触れていたのを見たって人がいたわぁ。たぶん、見ている位置によって見える人と見えない人が

 

いたのよぉ」

 

 

奥様B「本当なの法さん!?じゃあ既成事実できちゃったの!?他の妾と差作っちゃった!?」

 

奥様C「それが本当なら間違いないですわね。もう正妻の座も夢じゃないのではないかしら?」

 

 

奥様A「そうなのよぉ!しかもぉ、私は孝ちゃんを通じて魏延様と直接お話したことがあるのよぉ!もしかしたら侍女にでも取り立てて

 

もらえないかしらぁ!?」

 

 

 

噂とはこのような伝聞情報による誤解からねじ曲げられていくものである。

 

 

 

 

 

 

【益州、成都、城下町・食堂街】

 

 

魏延「ゲホッゲホッ――――――ッ!」

 

北郷「大丈夫か?よっぽどお腹が空いてたんだんな」

 

魏延「ち、ちが―――ッゲホゲホゲホッ!」

 

 

 

魏延は本格四川料理店 “麻婆伯伯” で、とある理由から激辛麻婆ラーメンをかき込んでしまい、致命的なダメージを受けていた。

 

 

 

北郷「おいおい、本当に大丈夫か?」

 

 

 

何だか心配になってきた北郷は、魏延の背中をさすってやった。

 

しかし・・・

 

 

 

魏延「んにゃぅっ!?ワ、ワタシにさわるなッ!」

 

 

 

魏延はそう叫ぶと、北郷の手を払いのけてしまった。

 

 

 

北郷(え?オレってそんなに嫌われてるのか・・・?)

 

 

 

そのようなことを思いながら、ガーンという効果音がいかにも似合いそうな表情を浮かべている北郷に気付いた魏延は、

 

あわてて弁解を始めた。

 

 

 

魏延「ぁ、いや、違うんだ。その、ワタシは肌が敏感で、お館でなくても触られるのが苦手なんだ。すまない、気遣ってくれて・・・」

 

 

 

魏延は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 

 

北郷(なんだ、そういうことか。よかったぁ、嫌われてたんじゃなくて・・・・・あれ?でも、確か陽平関でオレが焔耶を落ち着かせる

 

ためにギュッてしちゃった時は―――)

 

 

魏延「おい、今良からぬことを思い出していただろう?」

 

 

 

北郷の表情から心を読んだのか、魏延は先ほどまで申し訳なさそうにしていたのとは打って変わって、ギロリと北郷を睨みつけた。

 

 

 

北郷「へ?いや!別に何も―――あ、恋!あれ恋じゃないか!?おーい!」

 

 

 

場の空気が悪い流れになりかけていたのを察知した北郷は、

 

近くを歩いていた呂布を見つけると大げさに手を振って呼びかけ、何とか話題をそらせた。

 

 

 

呂布「・・・一刀」

 

 

 

北郷に気づいた呂布は、呼びかけに応じて二人に近寄ってきた。

 

 

 

北郷「やぁ恋、奇遇だね。こんな所でいったいどうしたん―――っていうか本当にどうしたんだその犬たち!?」

 

 

 

食堂街にいるのだから、当然食事をしに来たに決まっているのだが、とにかく北郷は話題を変えようと呂布に話しかけようとした。

 

しかし、よくよく見てみると、呂布の後ろにいた大量の犬たちに気づかされ、そのあまりの多さに北郷は驚いた。

 

 

 

呂布「・・・恋が街の整備をしてたら、見つけた・・・・みんな、住む場所がない・・・・だから、恋が飼う・・・これから、みんなで

 

お昼ご飯」

 

 

北郷「そっかー、でもそんなにたくさんの犬が入れる店とかってあるかなぁ焔耶?・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?焔耶?」

 

 

 

魏延から返事は返ってこなかった。

 

 

 

呂布「・・・・・・仲良し」

 

 

 

気づけば魏延は北郷の後ろに完全に隠れてしまっていた。

 

 

 

北郷「え、焔耶さん?」

 

魏延「しっ!しっ!」

 

 

 

どうやら魏延は犬が苦手のようであり、北郷の背後に隠れながら必死で追い払おうとしていた。

 

しかし、追い払っている手が逆においでおいでに見えたのか、大きな犬が魏延に寄ってきた。

 

 

 

犬「バウバウ!」

 

魏延「ひぃーーーっ」

 

 

 

終いには魏延は北郷にギュッと抱きつきながら震えはじめてしまった。

 

 

 

北郷(なっ・・・!?この昇天してしまいそうなほど柔らかい感触は・・・!ていうか焔耶のやつノーブ―――いかんいかん!!理性を

 

保て北郷一刀!!今はそんなことを考えてる場合じゃないぞ!!けどこの柔らかい感触と合わせてほどよい圧を俺の背中にかける二つの

 

―――ダメだダメだダメだ!!!心を無にするんだ北郷一刀!!!脳内会議なんてしてたら日が暮れるぞ・・・!)

 

 

 

北郷は背中に感じる柔らかい感触やら何やらから思い浮かぶなんやかんやについて議論を繰り広げる脳内会議を必死で閉廷させ、

 

とっさに魏延を守るように大きな犬の前に割って入った。

 

 

 

北郷「よしよし、いい子だ。恋のところにお戻り」

 

 

 

北郷は寄ってきた大きな犬を撫でてやる。

 

 

 

犬「バウーン!」

 

 

 

するとその大きな犬は北郷のことを素直に聞き、呂布の元へと帰って行った。

 

 

 

呂布「・・・コラ、嫌がってる人に、近づいちゃダメ」

 

犬「バウッ!」

 

 

 

そのまま呂布は北郷と魏延に別れを告げると、大量の犬を引き連れて食堂街の奥へと入っていった。

 

しかし、犬の姿が見えなくなっても、依然魏延は北郷にしがみついたまま震えていた。

 

そのような様子の魏延を見た北郷は、魏延を安心させるために両肩に手を添えてやった。

 

 

 

北郷「焔耶、もう大丈夫だよ」

 

魏延「す、すまない・・・どうもワタシは犬だけは苦手で――――――ってえぇええぇぇええぇぇええぇぇええぇぇええッッッ!!!」

 

 

 

魏延はささっとものすごい勢いで北郷と距離を取り、なぜかしぇーのポーズで固まっていた。

 

 

 

魏延「というのは冗談で本当は敵を欺くため普段から偽の弱点を設定しているだけで決して犬が苦手とかそういうことではなくてっ!!」

 

 

 

魏延は早口でいろいろとまくし立てていたが、その場しのぎの言い訳なのは明らかであった。

 

 

 

北郷「わかったわかった。あれ?ということは、敏感肌も偽の弱点だったのか?」

 

魏延「なっ・・・!?」

 

 

 

北郷は悪戯っぽくニヤッと笑った。

 

確かに、魏延は自ら北郷にしがみついたり、北郷に両肩に手を添えられたりしても特に反応は示していなかった。

 

もちろん、敏感肌の方は本当であり、先ほどは犬のせいでそれどころではなかったのだが、今更そんなこと説明できるわけもない。

 

さらに、北郷に指摘されてようやく北郷に抱きついてしまったことを思い出した魏延の顔が若干赤くなった。

 

 

 

北郷「まぁ、敵を欺くための偽の弱点設定ね。そういうことにしておきますか」

 

魏延「キ、キサマ信じていないなーッ!」

 

 

 

北郷は魏延に追いかけられながら食堂街をあとにした。

 

 

 

 

 

 

【益州、成都、城下町・大農場】

 

 

その後、魏延は少し機嫌を損ねていたようだが、おかげでお互い少し打ち解けたようで、

 

二人が歩く距離は微妙ではあるが縮まっていたようだが、どちらも気づいてはいない。

 

そして、最後に訪れたのは街の端に位置する大農場であった。

 

そこではライトグリーンの軍師装束に身を包んだ、ガラの悪そうな金髪の男が何やら兵士たちに指示を出しているようであった。

 

 

 

魏延「法正じゃないか。お前もやしのくせにこんな炎天下に外に出て大丈夫なのか?」

 

 

 

魏延は自他ともに認める不良軍師・法正の姿を確認するなり、小馬鹿にしたような表情で法正をからかった。

 

 

 

法正「あァ!?おい魏延、テメェもやっさん舐めてんじゃねぇよ!いいか、そもそももやしってのはだな―――」

 

魏延「いや、その話はまた今度聞いてやる。だが、お前ねねと城に籠って小難しい話をしていたんじゃないのか?」

 

 

 

法正が何やらもやしについて語り出しそうだったため、

 

(というよりも、魏延はこの後法正が延々ともやしについて語ることを経験で知っていた)

 

適当に話を流して、今度はまともな質問をした。

 

 

 

法正「おいおい、いくら何でも一日中城に籠って同じ議題について延々と議論を交し合ってるほど俺たちゃ暇じゃねぇだろ。少なくとも

 

一日で解決できるような問題でもねぇし、今日のところは切り上げたんだよ。こちとら仕事が山ほどあるんだからな。今は荒れた田畑を

 

調べてんだ。劉璋のくそガキがほったらかしにしてやがったからな。だが、ここの開発がすすめば街は潤うぜ」

 

 

 

確かに見渡すばかりの広大な土地は荒れ放題であり、逆にここをきちんと整備すれば、成都の懐にとって重要な場所となるだろう。

 

 

 

法正「それにしても張任殿に聞いたんだが、へへ、魏延もついに身を固める決心がついたってか?」

 

 

 

今度は先ほどの仕返しと言わんばかりに、法正が悪戯っぽくニヤッと笑いながら魏延をからかった。

 

 

 

北郷「ははは・・・」

魏延「・・・・・・」

 

 

 

しかし、今度の魏延は反論することも絶句の声を上げることもなかった。顔を赤くして口をもごもごさせている。

 

 

 

法正「おいおい、反応なしかよ。冗談だぜ。あ、まさか本―――」

 

魏延「うわあぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁあっっっ!!!」

 

 

 

ついに自身の心の余裕のキャパを超えた魏延は、奇声を上げながらどこからともなく鈍砕骨を取り出した。

 

 

 

北郷「ちょ、焔耶!?」

 

法正「お、おい!?わ、悪かった!謝るかギャァアアアアアアッッ!!」

 

 

 

魏延が振るった巨大な金棒によって、荒地がいい具合に耕された。

 

 

 

 

 

 

【益州、成都、城下町】

 

 

瀕死の法正に見送られ、今日予定していた案内場所を全て回りきった二人は、城へと帰っていたが、

 

その間中魏延はぶつぶつと何かを呟きながら考え事をしているようであった。

 

 

 

魏延(やはり―――いやでも―――いやしかし―――)

 

 

 

魏延の頭の中ではひたすら逆説が連鎖していた。

 

自分は北郷のことが好きなのかそうでないのか。もしそうならそれは主従の関係としてか?それとも男女の関係としてか?

 

例えば厳顔のことは好きであるが、それは主従として、或いは親を慕うような感覚に近い。

 

だが、北郷に対する感情はそのどちらにも当てはまらないような気もする。

 

陽平関で自我を失い、自ら命を絶とうとしたとき救ってくれた恩人に対する感情か?しかし、それも違う気がする。

 

では、あの時抱きしめられた時の温もりは?悩んでいる時、相談に乗ってくれた時の、あの笑顔を見た時に一瞬感じた胸の高鳴りは?

 

そのように思考を繰り返したところで、答えは見えているのにそれを認めようとしない自分がいるために、

 

魏延の思考のスパイラルは一向に出口にたどり着く気配がなかった。

 

 

 

北郷「―――!焔耶!」

 

 

 

そのように思考の沼にはまっていたせいで、北郷に何度も呼ばれているのに気付かなかった魏延は、ようやく北郷の呼びかけに気づいた。

 

 

 

魏延「いやだから好きとか嫌いとかそういう次元の問題―――!」

 

北郷「焔耶!大変だ!あれを!」

 

魏延「・・・・・・あれ?」

 

 

 

一体何をそんなに焦っているのかと、北郷が指差す先を見てみると、川で子犬が溺れそうになっていた。

 

川は以前降った豪雨により流れが激しくなっており、

 

子犬はかろうじて流されずに引っかかっている太い木の枝に乗っているといった状況であり、極めて危険な状況であった。

 

 

 

魏延「まずいな、このままでは流されてしまうぞ!」

 

北郷「くそっ、今助けてやるからな!」

 

 

 

そう言うと、北郷は激しい流れの川に入っていこうとしたので、急いで魏延は止める。

 

 

 

魏延「待て!危険すぎる!溺れるぞ!」

 

北郷「けど、このまま子犬が溺れるのを見ていろって言うのか!?」

 

 

 

確かに、この激しい流れの川の中を救命胴衣もなしに入っていくのは自殺行為に等しかったが、

 

それはつまり、あの子犬の生命の危機も時間の問題であることも意味していた。

 

 

 

魏延「ワタシが行く」

 

北郷「何言ってるんだよ!焔耶こそ危険だよ!それに焔耶は犬が苦手―――!」

 

魏延「いいかお館、お館はもう成都の領主なんだぞ!もうその命はお館一人のものじゃない!」

 

 

 

ただでさえ成都は領主が変わったばかりで現在新体制確立の真っ最中であるのに、そこで新領主の身が危険にさらされたとなると、

 

それだけで大事件であり、民衆の不安もあおり、対外的にもあまりいい印象は与えない。

 

北郷の立場は、それほど重い身分となってしまっていたのだった。

 

 

 

北郷「でも・・・!」

 

 

魏延「ワタシなら大丈夫だ。泳ぎには自信がある。まだ桔梗様と出会う前、小さい頃荊州にいたワタシは、よく長江を泳いだものだ。

 

それに、子犬ならまだマシだ」

 

 

北郷「焔耶・・・わかった、気をつけろよ」

 

 

 

そうまで言われてしまえば、立場上という問題もあり、それ以上北郷は反論することは出来なかった。

 

 

 

魏延「(すまない、心配してくれて)」

 

 

 

魏延はそうつぶやいて、荒れる川へと入っていった。

 

川の流れは非常に激しかったが、魏延はゆっくりと子犬との距離を縮めていた。

 

一歩、また一歩・・・

 

 

 

―――そして・・・。

 

 

 

北郷「よし!」

 

 

 

魏延は無事子犬の元にたどり着き、少々ためらいながらも意を決し、一気に抱え上げることに成功した。

 

あとは、岸に上がるだけである。

 

 

 

―――しかし・・・

 

 

 

北郷「焔耶危な―――ッ!!」

 

 

 

突然、上流から流されてきたらしい巨木が、両手のふさがった魏延を襲った。

 

 

 

魏延「ゴハッ!?」

 

北郷「焔耶!!!」

 

 

 

魏延は抱えた子犬を守るような体勢をとってしまったため、モロに巨木に激突し、

 

その影響でバランスを崩して川の激流にのまれてしまった。

 

 

 

 

 

 

川の岸辺にはたくさんの人だかりができていた。

 

ざわついている野次馬たちが注目しているのは、岸辺に横たわっている人物である。

 

そばには子犬と、もう一人別の人間がへたり込んでいる。

 

 

 

民衆A「こんな激しい流れの川の中に・・・なんて無茶を・・・」

 

民衆B「おい、この方ってまさか・・・!」

 

民衆C「ああ、こんな偉い人がどうして・・・」

 

民衆D「どうやら、魏延様と子犬を助けようと飛び込んだらしいのよ」

 

 

 

川岸に横たわっている人物の名は北郷一刀。

 

あの時、上流から流れてきた巨木の直撃を受けた魏延を、北郷は何のためらいもなく激流の川の中に飛び込み、

 

奇跡的に無事魏延と子犬を岸辺に運び出すことに成功したのだった。

 

しかし、奇跡は長続きせず、最後自身が岸辺に上がろうとしたその時、運悪く川の深みにはまり、溺れてしまったのであった。

 

その後騒ぎに気付いた民衆たちの手によってなんとか引き上げられ、現在に至る。

 

無事救い出された子犬は何も知らず無邪気に北郷の頬をぺろぺろと舐めていた。

 

 

 

魏延「お館ぁあああ!!ぐす、さっき、もうその命は、お館だけのものじゃないって、言ったばかりじゃないか・・・!」

 

 

 

魏延は北郷の側でへたり込み、目に涙を浮かべながら叫びかけていた。

 

しかし、北郷に反応する気配はない。

 

 

 

魏延「おやかたぁ・・・返事してくれよ・・・目を覚ましてくれよ・・・!」

 

老人「もし、そこの娘よ。あきらめるのはまだ早いですぞ?」

 

 

 

しかしその時、騒然とする野次馬の中から、とある一人の老人が魏延に語りかけてきた。

 

野次馬の中から出てきたその老人は、簡素な道士服に身を包み、白髪の長髪に、同じく白く長い立派なあごひげをたくわえ、

 

目元はこれまた立派な白い眉毛によって隠れてしまっているという、なんともステレオタイプな仙人風の人物であった。

 

 

 

魏延「ぐす、何だと?」

 

老人「人工呼吸をするのです」

 

魏延「なん・・・だと・・・?」

 

 

 

魏延の顔色が別の意味で青ざめた。

 

自身の自慢の髭をしごきながら、得意げに語る老人のトンデモ発言を聞いた野次馬のざわめきが一層強まったのは言うまでもない。

 

 

 

老人「古来より、溺れたものを救うには人工呼吸と相場が決まっているものですぞ?そう、これはこの世の真理なのです」

 

魏延「し、しかし、人工呼吸と言えば、その、口と、口で・・・」

 

 

 

そのように呟きながら、魏延の頬が徐々に朱に染まっていく。

 

瞬間、老人の目がくわっと光った(様な気がした)。

 

 

 

老人「恥ずかしがっている暇などありません、一刻の猶予もありませんぞ!」

 

魏延「くっ・・・!」

 

 

 

どこかセクハラ臭のする老人(本人はいたって真面目なのかもしれないが)の発言を受けて、

 

徐々にその場の空気もさっさとブチューっとやっちゃえよ的なものになっていた。

 

その刹那、魏延の思考が目まぐるしく駆け廻る。

 

 

 

魏延(落ち着け、落ち着くんだ魏文長!冷静になるんだ!人工呼吸と言っても、たかだか口と口の粘膜が接触するだけ!それに今は緊急

 

事態!恥ずかしがっている場合ではない!それにこれは数には入らないはず・・・いや、入れた方がいいのk―――わあぁああああああ

 

違う違うッ!!)

 

 

 

そして、魏延はチラッと北郷の顔を見た。

 

具体的には北郷の口元を。

 

その瞬間、魏延の顔が一気に真っ赤になった。

 

心臓がパンクしてしまうのではないかというくらいバクンバクン鼓動している。

 

 

 

魏延「ええい、ここで引いては武人の名折れ!この魏文長を舐めるなッ!」

 

 

 

そして、何十回と巡りに巡らせた思考をすべて放棄し、

 

意を決した魏延は涙をふき取りながらそう叫ぶと、じりじりと顔を北郷に近づけていく。

 

先ほどまでざわついていた野次馬たちが息をのんでその様子を見守り、

 

子犬までも空気を呼んで北郷を舐めるのをやめ二人から距離を置いた。

 

張りつめた静寂の中、魏延と北郷の距離は近づいていき、

 

あと30センチ、15センチ、そしてあと10センチと迫ったところで魏延は目を閉じた。

 

 

 

あと5センチ、

 

 

 

そして・・・

 

 

 

北郷「ぇ、焔耶・・・顔・・・近いよ・・・」

 

 

 

あと2,3センチというところで北郷が目覚めた。

 

その場の時が完全に停止した。

 

数秒間ほどの間が、魏延にとっては永遠にも感じられるほど長かった。

 

そのまま、魏延の顔が完全に真っ赤になり、湯気まで出てしまう始末である。

 

 

 

魏延「ど・・・どどどど・・・どうして・・・」

 

 

 

魏延は北郷との距離2,3センチを保ったまま固まっていた。

 

 

 

北郷「いや・・・飛び込んだまでは・・・良かったんだけど・・・流れてきた・・・別の木が・・・オレの頭にぶつかって・・・気を

 

失ってたんだ・・・」

 

 

 

この場の誰もがこう思った。

 

なぜ誰も北郷が呼吸をしているかどうか確認しなかったのか、と。

 

どうやら、幸運?にも、気を失った時の態勢があおむけだったため、大量の水を飲むことはなかったらしい。

 

つまるところ、北郷は別に溺れたわけではなく、ただ流木の襲撃を受けて気を失っていただけだったという訳であった。

 

そして気を失って川に浮かびながら流される北郷を見た民衆が、溺れていると誤解したといったところか。

 

 

 

北郷「ごめんな、焔耶・・・命を大切にしろって・・言われたばかりだったのに・・・けどオレ・・焔耶が溺れそうになったとき・・・

 

もう体が勝手に動いてたんだ・・・」

 

 

 

ははは、と北郷はいつもの優しい微笑みを魏延に向けた。

 

力ない微笑みであったが、命に別状はないことを伝えるには十分であった。

 

 

 

魏延「―――った」

 

北郷「・・・?」

 

 

 

魏延が何かを言ったようだが上手く聞き取れなかった北郷は不思議な顔をした。

 

そしてその時、北郷の顔に一粒のしずくが落ちた。

 

 

 

魏延「よかった・・・」

 

 

 

二粒三粒と、そのしずくは魏延の瞳から落ちてくる。

 

 

 

魏延「本当に・・・本当によかった・・・!ワタシはてっきり、お館の心臓が止まってしまったのかと・・・!!」

 

 

 

そうして、自身の体を支えきれなくなったのか、魏延は北郷の胸の上に崩れ落ちた。

 

北郷はまだ頭がクラクラする中、ここは男らしくと、魏延を安心されるために抱きしめんと腕を上げようとしたのだが、

 

悲しいかな、北郷の体は上手いこと言うことを聞かず、片腕しか上がらなかった。

 

そのため、そのまま北郷は何とか持ち上がった片手で魏延の頭を優しく撫でた。

 

 

 

北郷「本当に、ごめんな・・・」

 

 

 

魏延は北郷の胸で泣きながら北郷の掌の温もりを味わっていた。

 

そこまできて空気を呼んだのか、例の老人も含め、野次馬たちも後は若い者に、と散っていった。

 

心配そうに二人を見つめる子犬を余所に、魏延はこの日初めて認めることになった。

 

この人は、北郷一刀は、自分にとって死んでほしくない、失いたくない大切な人になってしまっていたのだと。

 

 

 

【第三十回 拠点フェイズ:魏延①・城下案内という名のデート(後編) 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

第三十回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

結局一級の称号はダテではなかったということでした。恋の連れていた犬にまで効果を発揮する一刀君の手まじぱねですね。

 

恐らく雌犬だったのでしょう。そうに違いありません。

 

また、この御遣い伝説では、焔耶は桃香さんと出会っていないので、原作のような百合っ気はない方向で話を進める予定です。

 

(別にstsが百合要素が守備範囲外だからというわけではなく話の流れ上必然なのです、なのです、、、)

 

 

最後に事務連絡です。今年もあとわずかとなったわけですが、

 

本来今年はあと一回(桔梗さんの拠点前編)投稿予定だったのですが、

 

そうするとお話が来年に跨いでしまい、個人的にそれはなんかモヤモヤするので、

 

今回で今年の御遣い伝説はシメにしようと考えております。

 

ですが、その代わりに新年一発目として、元旦に特別編を投稿予定です!

 

内容はお楽しみですが、現在進行形で絶賛鋭意制作中ですので、投稿するする詐欺にならないよう頑張りますのでご期待をば 汗

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

今回も例によっておまけがあります。久しぶりなので新規の方のために軽くご説明しますと、キャラ崩壊設定無視メタ発言何でもござれ

stsの自己満の世界が広がるやりたい放題なダークテリトリーでございます。中にはこのようなお話ともいえないお話に対して、不快に思われる方多々いらっしゃると思いますので、ぶっ飛んだ話ドンと来いという方だけ下へとお進みください、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ  第五回北郷軍女子会 ~魏延篇~

 

 

 

「さーやってまいりました!第五回呂布軍改め北郷軍女子会!本日の主役は勿論この人! “ドキッ、職権乱用でお館との初デート!?”

 

を無事終えていらした金棒娘!焔耶や!」

 

 

「・・・おい、殴っていいんだよな」

 

「まあまあ落ち着くです。この場は無礼講の異空間ですから。気にしたら負けですぞ?」

 

「そうですよ。霞は今回の拠点で唯一、主要メンバーで一回も出番がなかったから僻んでいるだけなのですから」

 

「ななやって最初の最初にチョロっとでできただけやろ!しかもセリフも『――――ッ!?』だけやし(笑)」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・今回は焔耶の拠点。出番がなくても、仕方ない」

 

「そういうことだ。とにかく早く乾杯しようではないか。酒がまずくなるぞ?」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「かんぱーーーーーーい!!!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「で、本日のお題なのですが、今回はいつもと少し趣向を変えてみようと思うのです」

 

「どういうことだ?ワタシはこの女子会というものは初めてなんだ。もっと分かるように説明してくれ」

 

 

「なんや、いつもはアンタ一刀とどうやったん?的なことをひたすら暴露するような内容やってんけど、そろそろ読者の納得いくような、

 

本編ともう少しからめた内容にせいって責任者が泣きついて来よってな」

 

 

「そうなのか?わしとしては、暴露話は暴露話で面白いと思うのだがなぁ」

 

「いえ、桔梗さま。それはなしの方向でいきましょう。その方が責任者とやらの立場上都合がよいはずです」

 

「・・・焔耶と一刀は、仲良しだった」

 

「なっ―――!?」

 

「ほほぅ」

 

 

「恋殿、ですから今回はそういう話はなしの方向です!桔梗も興味を持とうとしないでくださいです!その話はオフレコの時にでもして

 

くださいです!」

 

 

「それで、お題は結局何にしたのですか?」

 

「よくぞ聞いてくれましたぞなな!題して “あなたの通り名考えましょう!” のコーナー創設をここに高らかに宣言しますぞ!」

 

「通り名だと?どういことだ?」

 

 

「ええか、焔耶。例えば恋やったら “飛将軍” やの “人中の呂布” やのあるやろ?ななには “陷陣営” っちゅーのがあるし、ウチ

 

かて “泣く子も黙る張文遠”やの “遼來々”やのがあるらしい。ねねにも “主君を見る目がない軍師” やの “猪軍師” やの “残念

 

軍師” やの色々あるらしい。 つまりはそういうのを考えましょっちゅー企画や」

 

 

「霞、後で一緒に厠に行くです・・・」

 

「だが、通り名なんて持ったところで名が上がるわけでも―――」

 

 

「アッカァァァァァンッ!!!白蓮ディスったら絶対アカーンッ!!!アンタ責任者に出番消されるでェッ!!!あの人白蓮の隠れ信者

 

やねんからァッ!!!この前もあの人のネタ帳をこっそり覗いたら、白蓮はんをどーにか本編でいい感じに登場させようしてはった跡が

 

残っとったくらいやねんからァッ!!!死にかけた一刀を颯爽と救出!とか、五胡の軍勢を率いてまさかの第四勢力として登場!とか、

 

袁紹潰して官渡で曹操と雌雄を決す!とかそれはもう見てられんほどの痛々しい内容ばっかやってんからァッ!!!」

 

 

「霞は過剰に反応しすぎですよ」

 

 

「アホなことゆ―たらアカンでなな!!!全然過剰ちゃうっちゅーねん!!!ちゅーかもう遅いわ!!!もう焔耶はおまけ以外の出番は

 

第三章まで全削除確定やッ!!!」

 

 

「そんな馬鹿な・・・」

 

 

「そういえば、この前お館様にそれとなく天界でのわしらのことを聞いてみたことがあるのだが、焔耶はどうやら “反骨の魏延” だの

 

“ぶらっくじゃっく” だのと呼ばれておるらしいぞ?」

 

 

「ちょっと待ってください桔梗様。 “反骨の魏延” も色々とツッコみたいことは山ほどありますが、なんですかその “ぶらっくじゃく”

 

というのは?」

 

 

「確かに気になるな。桔梗はん、詳しく聞かせて―な」

 

「発音からして、天の言葉でしょうな」

 

「ふむ、ねねの予想通りだ。どうやら話によると、“ぶらっくじゃっく” とは天の国の医者の名前だそうだ」

 

「医者?では、焔耶というより、むしろ華佗様の方が相応しいのでは?」

 

「いや、医者という点は重要ではないらしい。そのような通り名がついたのは、どうやら髪が原因らしくてな」

 

「確かに、焔耶の髪色は独特ですな。どうすればそんなことになるですか?」

 

「いや、これは生まれつきで別になりたくてこうなったわけじゃないんだが・・・」

 

「けど “ぶらくじゃっく” か・・・どういう意味や?」

 

「さすがにそこまでは聞いておらん」

 

「・・・なるほど、わかりましたよ」

 

「ホンマか!?」

 

「武を楽しむ孔雀と書いて “武楽孔雀(ぶらくくじゃく)” 。間違いありません。とてもいい響きじゃありませんか」

 

「えー・・・なな、それはさすがに強引すぎです―――」

 

「武を楽しむ孔雀、か。確かに、通り名としては十分だな」

 

「・・・まぁ焔耶本人がよしとするなら・・・ですが、えー・・・」

 

「ふむ、では、決まりだな」

 

 

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

 

 

「ねね、どないすんねんこの空気。オチもなんもあらへんがな。まあ元々今までオチらしいオチなんてなかってんけど」

 

「なっ!?ねねのせいにするですか!?霞もノリノリで企画していたです!!」

 

「もういいんじゃないのか?ワタシのことはこれくらいにして、このままお開きにすれ―――」

 

「・・・焔耶は一刀とチューした?」

 

「なっ―――ッ!?」

 

「れ、恋殿!ずっと黙っていらしたかと思えば、やっぱりそっちの話の方がよかったですか!?」

 

「もうこうなったらこのままその流れでいこ!ワンパターンがなんや!責任は責任者が取ってくれる!なんたって責任者やねんからな!」

 

「おいおい!話がちが―――!」

 

「そういえば、随分一刀様と仲が宜しかったそうじゃないですか。張任様が得意げに言っていましたよ」

 

(チッ、アイツ絶対―――!)

 

「ほれ、観念せい焔耶よ。もう時間も良い頃合いだ。このまま二次会といこうではないか。なぁに安心せい。オ・フ・レ・コだ」

 

 

「き、桔梗様、少し飲みすぎでは・・・おい!お前たちもそのニヤニヤをやめ―――ちょっ!?そこは待て!ワタシは肌が弱―――いや

 

そうではなく―――わかったわかった!!話す!話すからめぇええええええええええええええええええええええええッッッ!!!!!!」

 

 

 

【第五回北郷軍女子会 ~魏延篇~ 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき2

 

 

 

人数が増えたことで書き分けが厳しくなっているわけですが、誰がしゃべっているかお分かりいただけましたでしょうか、、、?

 

さて、今回は恒例の暴露大会に変化を付けようと思ったけどグダグダになってしまい、

 

結局いつも通りという何がしたいのかよくわからないことになってしまい申し訳なかったです 汗

 

ちなみに、この “武楽孔雀” の通り名、実は本編で使えないかなとか少し模索してたりしているのですが、

 

現状その可能性はゼロですね 笑

 

 

それではおまけまでお読みいただきありがとうございました!

 

また来年お会いしましょう!皆さま良いお年を!

 

 

 

白蓮ちゃんはきっと本編で登場させてみせる、、、!!

 


 
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