No.639211

ゆりいろモザイク2(シノとアリス)

初音軍さん

思いついたことをつらつら書いただけのもの。二人の愛の強さはこれくらいあるんだろうなとか。もう個人的には同じベッドで寝ちゃってるくらい進展してますww

2013-11-23 15:03:46 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:594   閲覧ユーザー数:594

 いつからだったろう。私がシノのことが特別な存在になったのは。

イギリスに来たホームステイのとき?

 でもあの頃はただ、異国から来た友人という認識しかなかったような気がする。

 

「アーリス。何をしているんですか?」

「シノ…!?」

 

 屋上で紙パックのジュースを飲みながら上から見える景色を堪能していた所に

シノが私の顔を覗き込んできた。

 

 思えば普段はずっとシノにくっつきっぱなしだからいつもとは違う行動をしていることに

今気づいた。

 

「んー、考え事?」

「私でよければ聞きますよ」

 

「ううん、大丈夫…教室に戻ろうか」

「はい」

 

 二人で手を繋いで階段を降りていく。手を繋いで・・・一つ一つの行動にドキドキしているのは

意識しはじめたからだろうか。私のこの気持ちをシノに伝えて受け入れてもらえるだろうか。

もしかしたらシノにとって私は友達以上には考えられない存在なんかも。

そんなことを考えると不安ばかりが過っていく。

 

 

【忍】

 

 休み時間になるといつもアリスが顔を出しにくるのに今日に限っては顔を出しに来なかった。

何かあったのだろうかと出入り口付近に視線を泳がせるが気配すら感じさせない。

私が動くきっかけになったのは陽子ちゃんの一言。

 

「あれ、アリス来ないな。どうしたんだろうな、珍しい」

「ですよね」

「あれかな、何か悩みでも抱えてたりするのかな」

 

 特に重いような意味ではなく、明るくしながら話す陽子ちゃん。

私は逆に何か胸がざわざわする感覚がした。

 

 友達にだったら、ちょっとジュースでも買ってるのだと思えるけれど

最近私はアリスに対して友達とは違う何かを感じていたのかもしれない。

それがよくわかってないから困るのだ。

 

 とにかく私は足を動かした。

早くアリスの顔を見て安心したいという気持ちから動かされた。

しかし歩けど歩けどアリスの姿は見当たらず、もしかしたらと

屋上前の自販機にいるかもしれないって階段を上っていく。

 

 やがて目的地に辿り着くもアリスの姿はない。

だけど、床にうっすら積もっていた埃が擦れた跡を見つけて

私は屋上へと出る扉を開けてみた。

 

 ドアから少し離れた場所のフェンスにアリスの姿があった。

どこか悩ましげな表情を浮かべるアリスは普段は子供っぽく見えるのに

妙に艶々しさを感じるのだ。

 

「アリス」

 

 私は思わず声をかけた。振り返り微笑むアリスの雰囲気もまたいつもとは違っていた。

陽子ちゃんが言うように悩みでも抱えてるのなら私が聞いてあげたい。

支えてあげたいと思えた。しかし、今思った気持ちは私の本心なのか、どこかに空洞があるように思えた。

 

「教室に戻ろう」

 

 にこやかに笑うアリスの手を取って私たちは教室へ向かってから、それぞれの教室の

前まで行くとそのまま別れた。

 

 私にとってアリスはとても大切な親友だ。ホームステイで仲良くなってからはそう思えた。

うちに留学してくるときもそう。いつから、私は彼女と触れるとドキドキしてしまうようになったのだろう。

今では親友という言葉が嘘くさく感じるようになっていた。

 

 自分に嘘をついて親友として接している。波風立たずに穏やかに過ごせればそれでよかった。

だが果たしてそうだろうか。私はアリスとどうありたいのだろうか。

 

 授業中、カレンの金髪を見ながらぼ~っとそればかりを考えていた。

 

 

【アリス】

 

「ねぇ、ヨーコ」

「ん、どうした?」

 

「ヨーコは綾とどうなりたいの?」

「ぶふぉぁ!どうしたいきなり」

 

 授業後の休み時間に喉が渇いたのか予め買っていたと思われる

ペットボトルの水を口に含んだときにこの話をしたからか驚いたヨーコは

吹き出しそうになって慌てて手で押さえるも、気管に入りかけそうになって

咳き込んでいた。

 

「そりゃ・・・友達・・・」

「本当?」

 

 やや俯き気味になっているヨーコの顔を覗き込むように聞いた。

 

「だって女子同士だからな・・・。でもまぁ、それ以上の関係になっても

私は嫌じゃないよ。何をするのか全く想像はできないけどな!」

 

「いいなぁ・・・」

 

 最後は吹っ切れたように言うヨーコに私は羨ましそうに溜息を吐く。

ヨーコのように素直なら私は今頃シノに言えただろうか・・・。

 

「いきなりそんな話をするということは。アリスは誰かにそんな気持ち抱いてるんだな」

「ギクッ」

 

「ずばり、シノのことか?」

「な、なんでわかるの~~?」

 

「や、わかりやすく顔に書いてある」

「うそおおお~」

 

 指刺されながら言われて私は両手を頬に当てて恥ずかしがるよう仕草をして

悶えるような動きになってしまう。そんな私を見て笑いながらヨーコは言う。

 

「いいんじゃない、二人はお似合いだよ」

「もう、からかって!」

 

「からかうわけないじゃん。アリスは私を信用して話を持ち出してきたんだ。

だから友人のことを想うのは必然。で、もう告白したのか?」

「できるわけないじゃん!」

 

私の言葉にきょとんとした顔をして聞いてくるヨーコ。

 

「どうして?」

「どうしてもなにも・・・私たち女の子同士だし・・・」

 

「問題でもあるのか?」

「え?」

 

「このまま言わなくても後悔はしないのか?」

 

 表情は明るいままだけど、目がとても真剣で私はどきっとさせられた。

確かにこのままモヤモヤを抱えたまま生活していくのは嫌だ。

いっそ振られて少しの間落ち込んでもスッキリ整理したほうがいいに違いない。

 

 シノは優しいから・・・きっと友達のままでいてくれるはず。

シノは天使のように素敵だから。

 

「うん・・・私がんばってみる」

「その意気だ。それに・・・私も色々考えるべきことができたよ」

 

「え、ヨーコ今なんて?」

 

 最後の方が聞き取れなくて、真剣な表情になっているヨーコに

声をかけると急いで笑い顔に戻して誤魔化されてしまった。

とにかく、私はシノに告白をしようと決めた。

しかし、タイミングがいつまで経っても見つからずに時間だけが過ぎていってしまう。

 

 

 一週間後。たまたま一人で歩いてくるシノに私は声をかけた。

一緒に住んでいるのに学校で話すときはこの間のことを思い出して

少しぎくしゃくする。

 

 そんな日々も今日でおしまい。

私は絶好のタイミングで一人になったシノの手を引いて屋上へと向かった。

屋上には誰もいなくて風も強くなく素晴らしい状況になっていた。

 

「シノ、私シノに伝えたいことがあるの・・・」

「何ですか?」

 

 いつものように神々しいくらいの眩しい笑顔を私に向けるシノ。

そんな彼女に向かうと途端に話しにくくなってしまう。

でもここが正念場。今を逃すと今後告白することが容易にできない

状況になってしまうかもしれないから。

 

 私は・・・。今まで生きてきた中で最大限の勇気を振り絞って声に出した。

 

「私は・・・シノが好き!」

「アリス・・・」

 

「私と付き合って・・・!ください!」

 

 シノも今の私の言い方がただの友達としてではなく恋の相手に対して言うものだと

感じたのか複雑な表情を見せて私を見つめていた。

 

 こんな表情をするということは、やっぱり私終わったのかな・・・。

1秒?1分?どれくらいの時間が経ったかわからないけど私にとってはひどく長く

息苦しい間に感じられた。

 

「アリス・・・」

「・・・ごめん。シノ・・・嫌だったら嫌って言って」

 

「違うんです!」

 

 あまりに苦しそうにしているシノに私の告白を取り消そうとしたらシノから

待ったをかけられた。

 

「私、考えていたんです。アリスの好きと私の好きが違ってたらどうしようって」

「シノ・・・」

 

「たぶんホームステイしてた頃からしばらくの間は共通して友達だったのは

わかるんです。問題はここ最近」

「うん」

 

「アリス・・・確認していいですか。今の告白は恋人としてって意味で捉えていいんですか?」

「その通りだよ!」

 

 私は目を瞑って叫ぶように言うとふわっとした感覚が体を包み込んでいた。

優しい暖かさと柔らかさの中私は恐る恐る目を開けてみた。

 

「私もです、アリス!」

 

 シノの言葉が現実が夢かわからなくて夢中で何度も確認をした。

こんなに幸せでいいんだろうか。気づけば目元に涙が込みあがってきた。

嬉しくて嬉しくてたまらない。

 

「シノ・・・」

「アリス・・・」

 

 一度少し離れて私たちは手を繋ぎながらキスをした。

味なんてわからない。だけど甘い感覚が脳を痺れさせて

顔がどんどん熱くなっていく。

 

 聞こえるのは相手の吐息だけ。

 

 まるで別世界にいるような感覚。私たち二人きりだけの世界。

 

 とろけるような気持ちにそのままずっとしていたいと思えるほどの

強い刺激。あぁ、恋ってこんなにも切なくて熱くて愛しいものなのだ。

 

「ぷはっ」

「んくっ・・・」

 

 変な声を出して口を離す私たち。初めてのキスはお互いの口を

強めに触れさせた内容だったけれど、これからはゆっくりと進めていけばいい。

 

 お互いの気持ちが認識できたことで緊張の糸が切れたみたいに

私たちはしばらくの間、ツボにハマッたように笑い続けた。

 

 いつまでも・・・いつまでも。

 

 

 放課後の教室でみんな集まって話していたのを恋人繋ぎに変えていた

私たちを見て仲間たちは快く迎えてくれた。

 

 私がヨーコに視線を移すと彼女も綾も雰囲気が少し違っていた。

今の私たちと同じように・・・。そう感じると自分のように嬉しく思えるようになった。

 

 恋って人の気持ちを大きく左右させるから不思議である。

好きって気持ちが大きければ大きいほど、その引力は変わっていく。

 

 未知の領域で怖がっていたのも悩ませていたのにも時間をかけてしまったが

今ではとてもいい思い出になっている。

 

 シノ。大好きだよ・・・。

 

 いつものようにみんなで楽しくおしゃべりしながら下校をする。

みんな気づいていてもそのことにはわざとは振らない。

好き同士でいることに自然だと思っているから。

 

この心地良い空間にずっと浸っていたい。

努力しながら前へと歩いていく。

 

 そんな気持ちに浸っているところでシノが誰にも聞こえないように私の耳に

囁いてきた。

 

「次は結婚ですね、アリス」

「!!」

 

 照れる私に笑いかけるシノ。本当にそうなれるように無理なく幸せに努力する。

そう心底想えるのだった。

 

おしまい


 
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