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恋姫†無双 関羽千里行 第4章 37話

Red-xさん

恋姫†無双の二次創作、関羽千里行の第4章、37話になります。この作品は、恋姫†無双の二次創作です。設定としては無印の関羽ルートクリア後となっています。第一話はこちらhttp://www.tinami.com/view/490920
本編もそうだけどタイトルで四苦八苦。
こんなんで大丈夫なのだろうか...
それではよろしくお願いします。

2013-11-04 20:25:09 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1767   閲覧ユーザー数:1517

第37話 -交錯する思惑-

 

思春「それでは、北郷隊戦闘訓練を開始する。」

 

兵士「はっ!」

 

 北郷軍の訓練が近くの森で行われていた。部隊によって得意分野は異なるが、このような場所での戦闘の可能性はどの隊にもある。そこで、こういった場所での戦闘になれた思春から一刀とその隊は指導を受けているところだった。

 

思春「一刀様、森林における戦闘において、まずはじめにしなければならないことは何だと思いますか?」

 

一刀「平地とかと違う特徴ってことだろ...隠れられる場所を探すとか?」

 

思春「ふむ。その解答では三十点といったところですね。」

 

一刀「てことは...周辺調査?」

 

思春「それでもまだ七十点程度でしょう。まず、こういった深い森において重要なことは森をみることです。」

 

一刀「森を見る?」

 

 思わず首を傾げる。思春はその様子にもにこやかに答える。

 

思春「はい。周辺調査といっても、それは広い森の中で人によりとりようがかなり変わってきます。森をみるとは、周辺調査だけはなく、すなわちここを形作る木、土、草、それらにも目を向けるということなのです。」

 

一刀「そんなに細かくみるの?」

 

思春「はい。例えば...」

 

 思春はおもむろに近くの木に手を触れる。

 

思春「この木。この木が森の大半の木を占めているわけですが、この木は幹も太く、葉の量も多い。そして枝もしっかりとしています。それこそ、人が登っても折れないほどに。」

 

一刀「てことは隠れるのに向いてるってことか。」

 

思春「流石のご慧眼。その通りです。森での戦闘は平地とは異なり立体的な側面があります。木に登った弓兵は、それこそ弓矢を持たない歩兵に負けることはありません。その他にも洞窟があればそこに敵を誘い込んだり、ぬかるんだ土壌や茂みがあればそこに身を隠すこともできます。もちろん、視界の確保できる位置を探すことも重要ですね。」

 

一刀「なんかもうサバイバル戦みたいだな...」

 

 その呟きに今度は思春が首を傾げる。

 

思春「鯖威張る...?」

 

一刀「サバイバル戦ってのは生き残るために、地形を利用したあらゆる方法を使って戦うみたいな感じかな。」

 

思春「なるほど。サバイバル戦、まさにその通りです。特に、森には視界を制限するという大きな特徴があります。これは少数であればあるほど有利となり、劣勢を覆す好機を作ることもできます。」

 

一刀「なるほどね。だから視界を確保出来る位置を探すっていうのも重要なのか。」

 

思春「はい。そしてもう一つ。森を行軍する際に重要なことがあるのですが、お分かりになりますか?」

 

一刀「視界を制限するのが森の特徴だって言うなら...敵にばれないようにすることなんじゃ?」

 

思春「お見事です。音を断てないといったことも重要ですが、特に夜の場合などは、月光に照らされた武具の光で敵に発見されることなども多い。剣の類などは鞘から出さない、また武具やしまうことのできない槍のような武器であれば、このように泥を塗っておくことなども有効です。」

 

 そう言って思春は一番前に立っていた兵士の持っていた槍を受け取ると、ぬかるんだ地面に布を当て泥を染みさせるとそれを塗ってみせる。丁寧に手入れされていたのか、先ほどまでは眩しいまでに輝いていたそれも今はくすんだ色をしている。

 

思春「よく手入れしているな。汚してすまん。」

 

兵士「いえ!お役に立てたなら光栄です!」

 

 槍を返しつつ兵士にそう言うと、兵士はハキハキとした口調でそう答えた。最近入隊した新兵である。

 

思春「よし、各自、自分でもやってみろ!誤って手を斬らぬよう気をつけろよ!」

 

兵士「応っ!」

 

 各自がガヤガヤと作業にとりかかるのを確認して思春はこちらに戻ってくる。

 

思春「一刀様のものであれば必要はありませんが、こちらに槍があるのでこれでお試しになってください。」

 

一刀「お、おう。でも泥を塗るだけなんて簡単なんじゃ...」

 

 そう言って早速同じように泥を掬って塗ってみようとするのだが、

 

一刀「あれ??」

 

 思春のやったようにうまくはいかない。直ぐに重力に負けてキラキラとした鉄の部分がむき出しになる。

 

思春「ふふっ。そうではありません。いいですか、先ほど言ったように土にも目を向けるのです。土にも種類というものがあります。粘性のあるこの泥は確かに付着しやすいですが、それだけではすぐに剥がれてしまいます。このように...」

 

 思春は近くの少し渇いた土を少し握るとそれを一刀の槍に塗ってみせる。なるほど、その部分だけ刃がくすんでいる。

 

一刀「なるほど、水分が多すぎたのか。」

 

思春「はい。陽光に反射しない程度で良いのです。あまりどっぷりとつけては意味がありませんので。それでもうまくいかない場合は、コレに関しては泥水を湿らせた布をそのまま刃の部分に巻きつけてしまっても構いません。」

 

一刀「なるほど...んー、こうか!」

 

思春「はい、上出来です。」

 

一刀「それにしても思春はなんでも知ってるなぁ。」

 

思春「っ!そ、そんなことはありませんっ!ですからそう頭を撫でるのは...」

 

一刀「あれ?思春から撫でて欲しいって...」

 

思春「と、ともかく!兵たちももう少し時間がかかるようですから、特別に食べられる木の実と、食べられない木の実の見分け方を教えて差し上げましょう。」

 

 そう言うと思春は少し離れたところに俺を手招きする。

 

思春「少々お待ちを。」

 

 そう言うと、思春は取り出した投擲用の小さな短剣を取り出すと、幹の思春の身長より少し高い部分に突き立てた。

 

思春「ふっ!」

 

一刀「おお!すごいすごい。」

 

 一番低い枝でも身長の三倍は高ところにあるというのに、思春は器用にするすると登ってしまった。一瞬、下から見ていた自分の目には白い何かが見えた気がするんですが...

 

思春「一刀様ー!良いですか~?受け取ってくださいー。」

 

一刀「へ?」

 

 そう言うと木の上から赤い小粒がぼたぼたと落ちてきた。なんとかそれをキャッチする。だがそちらに集中していた目の端を何かがすごい勢いで通って行ったような...

 

思春「木に寄生する草の一種で、その実は全て食べられ...ひゃぁっ!」

 

 思春には珍しく女の子らしい悲鳴のあと、

 

一刀「ま、まずい!」

 

 次に落ちてきたのは思春自身だった。一刀は思春が落ちる前に、なんとか思春と地面の間に身体を割りこませた。

 

 どっしーん!

 

思春「一刀様、申し訳ございません!お怪我はありませんか!?」

 

一刀「し、白いふんどs...」

 

思春「はっ?...ななな、何を見ておられるのです!」

 

 恥ずかしさのあまり俺のお腹に載ったまま前を隠すが時既に遅しである。脳内メモリにタグづけされて保存されている。

 

恋「...恋も、遊ぶ。」

 

一刀「これは別に遊んでいるわけじゃ...って恋!?」

 

 木から滑るようにして降りてきた恋が上から覗きこんでくる。

 

思春「私が近づかれるまで気づかなかっただと...しかし恋、どうしてここに。」

 

 俺から降りて俺と自分の服の汚れをぱぱっと払う思春。思春ってほんとよく気が回るよなぁ。

 

恋「...遊びに来た。」

 

思春「いや、そもそもどうやってここまで来た?」

 

恋「...歩いてきた。」

 

思春「いや、そうではなくてだな...」

 

一刀「そう言えば...」

 

 隊の皆はまだ知らされていないが、この後実践を想定して、今頃森を包囲した華雄の部隊との戦闘訓練に移行する予定だったのだ。つまり、この森に入るには華雄の部隊のいるところを通らないといけないわけで...

 

一刀「恋、華雄か、華雄の部隊の人と会わなかったか?」

 

恋「...見た。」

 

一刀「じゃあここには来ないよう止められなかったの?」

 

恋「...見たけど、会ってない。」

 

 どうやら包囲の薄いところを隙を見て抜けてきたようだ。記憶がなくてもこういう感ははたらくのかもしれない。そんなことを考えていると、一刀のある一点に恋の視線が集中しているのに気づく。

 

恋「.........」

 

一刀「んん?食べるか?」

 

恋「(コクコク)」

 

 受け取ったそれを口いっぱいに頬張っていた。

 

一刀「美味しい?」

 

恋「美味しい。」

 

一刀「それはよかった。」

 

思春「よくなどありません。この後の訓練に、流石に今の恋を巻き込むわけには...」

 

一刀「そっか...恋、来た時みたいに帰れるか?」

 

恋「............(フルフル)」

 

一刀「無理なのか?」

 

恋「...恋も、皆と遊ぶ。」

 

一刀「そ、そっちか...」

 

思春「遊びではないというに...仕方ありません。要人警護というのも織り込んで訓練すると致しましょう。そもそも、一刀様を敵兵の前に晒すわけにはいきませんから。恋、お前は一刀様と一緒にいろ。」

 

恋「...(コクコク)」

 

 そう頷くと恋は腕にがしっとしがみついてきた。これだと俺も身動きとれないんだけど...

 

思春「...」

 

一刀「あの、思春?」

 

思春「くっ...行きますよ!華雄など我らが蹴散らしてご覧に入れましょう!」

 

一刀「なんか怒ってる?」

 

思春「そんなことはありません。よしお前ら!これから実践を想定し華雄隊と戦闘だ!やつらを一匹たりとも生かして返すなよっ!」

 

一刀「...あはは。」

 

 生きて帰ってもらわないと困るんだが。

 

恋「~♪」

 

風「あとは食事による経費が跳ね上がったり、気づいたら後ろにいたりなんて報告がはいってますねぇ。」

 

 その後、城に戻った皆は恋の素行について議論していた。てか気づいたら後ろにいるとかホラーかよ!

 

思春「訓練の妨げになるのはどうにかしてもらいたいものだな。」

 

星「これは夫であるお前の監督不行き届きということにならんか?」

 

愛紗「なぜそうなる!そもそも私は恋を娶った覚えなど無いぞ!」

 

霞「まあどっちかーっていうと、嫁というよりは娘って言う方がしっくり来るなぁ。」

 

 件の恋はそんなことなど何処吹く風で、広間に迷いこんだ蝶々を目で追っている。その様子に、

 

霞「あぁ...愛紗には先にウチの子を産んで欲しかったのに!いや、まだや...恋をウチと愛紗の養子ということにすれば...!」

 

愛紗「だからなぜそうなる!」

 

 ちなみにここにいる皆には恋の事情を打ち明け真名も交換したのだが、あの呂布の変わり様に皆驚きは隠せなかった。翠のことも覚えてはおらず、結局行くアテもないのでそのまま保護していたのだが...

 

祭「ふむ...しかし、兵の間でもあの呂布が何故こんなとこにいるのか噂になり始めたようだぞ。何か対策をとったほうが良いのではないかの?」

 

雛里「それについては大丈夫かと。広まっている噂も都合の悪いものではありませんし。」

 

華雄「ちなみにどんな噂になっているのだ?」

 

 1.この前の集団気絶事件の原因は呂布の来訪

 2.呂布は北郷軍の主要な武将を倒したが、最後に北郷一刀に敗れる(二人の戦闘の凄まじさに一般兵は気絶)

 3.呂布は北郷一刀の武勇に魅せられ配下になることを申し出た

 4.北郷一刀は器の大きさを示しそれを受け入れたが、このような事件を起こしたためしばらく武を行使しないことを約束させた

 5.つまり北郷一刀って北郷軍で一番強いんじゃね?

 

一同「...」

 

一刀「いや、俺が一番戸惑ってるんだけど...」

 

 風のやつ、妙案があるとか言ってたけどまさかこのことか!?件の彼女はそんなことはおくびにも出さずに平然と言ってのける。

 

風「どうやらこの前の武道大会での成績がよかったことも影響しているみたいですね。まあ、別にお兄さんが強いという噂は悪いものではないので問題ないかと。」

 

武将一同「オオアリだ!」

 

霞「ウチが一刀より弱いって思われてるんやろ?一刀、死合や!ウチがここで一番強いってことを証明したる!」

 

一刀「違う!なんか字が違う!」

 

祭「儂も今度は本気で相手をしてやろうかの。今度はもちろん弓を使わせてもらうぞ。」

 

一刀「俺が本気の祭に勝てるわけ無いだろ!」

 

翠「この前はできなかったし、改めてやろうぜ。祭が弓使うってんならあたしも馬乗った方がいいかな。」

 

一刀「それはあれか?乗るのがやっとの俺に対するいやがらせか!」

 

星「まあ、主がボロ雑巾になるのは後にして、今は恋の話であろう。恋がふらふらしているのは、もしや記憶がないせいなのではないか?」

 

 殺られるのは確定かよ!なんだかツッコミ所が多すぎるうえに、ツッコんだところで全スルーされているのでもう黙っていることにした。なんでもツッコむと思うなよ!というのが既にツッコミである。

 

風「ふむ...そうだとすれば、恋ちゃんの記憶が戻れば愛紗ちゃんも文字通り枕を高くして寝られますし、もしかしたら武力も戻って皆万々歳に?」

 

愛紗「...なぜ、そこに私が出てくる?」

 

風「おや、朝起きたら恋ちゃんが布団に潜り込んでいたというのを聞いたのですが聞き間違いでしたか?」

 

愛紗「なな!」

 

 なんだ愛紗もかと思いつつ口には出さない。出したところでボロ雑巾よりひどい目にあうのは目に見えている。

 

思春「しかし、記憶など簡単に戻るものなのか?」

 

雛里「馴染んだ場所や人に会ったりするのがいいって華陀さんは言ってましたよね。ただ、記憶が戻らないままで生涯を終えることもあるって言ってましたけど。」

 

一刀「馴染んだ場所や人ね...洛陽は無理だし...あ。」

 

愛紗「ああっ!一刀様!」

 

一刀「その手ならいけるかも!雛里、確か今度雪蓮さんとこと約束があったよね?」

 

雛里「はぁ。同盟するかどうかの協議がありますが...それとこれと何の関係が?」

 

 曹操軍に南下の動きありということで、この頃呉と同盟を組んで曹操を倒そうという話がでてきたのであった。事務レベルで細かい調整は進んできていたのだが、やはり最後は代表同士の話し合いでというのがお互いの意見で、近々国境付近の街で会談を行うことになっていた。

 

一刀「洛陽で保護して呉の子が連れてった犬猫がいたんだけど、それ実は恋が飼ってたんだよ。」

 

雛里「そんなことがあったんですか。」

 

一刀「だからその機会に飼い主が見つかったってことで連れてきてもらえば...」

 

霞「それはええかもしれんけど、なんでそいつらが恋のだって知ってたん?」

 

一刀「えっ...」

 

星「そういえば、董卓の屋敷が燃えた時、あの一帯は調査したのでしたな。主たちが保護した犬猫のいたというのが恋の家だったのであろう。」

 

霞「なんや、そういうことやったんか。それやったら洛陽は無理やろなぁ。曹操に見つかったらどうなるかわからんし。」

 

 一瞬ひやっとしたが、星のおかげで助かった。他の皆にしてみれば、恋に記憶が無い以上俺たちが恋が犬猫を飼っていたなんてことはわかるはずがないからだ。

 

雛里「会談まではもう少し日にちがありますから、それまではどうにかしなければいけませんね。」

 

星「となるとやはり愛紗が...」

 

愛紗「おぉい!!」

 

雪蓮「冥琳~。冥琳ってば~。」

 

 執務室にいつものように遠慮無く入ってくる親友にため息をつく冥琳。国が拡大すればするほど、呉の大都督殿に集まる案件はともに増えていく。縦皺が増えていく気がする冥琳に対して変わらず雪蓮はなんと奔放なことだろうか。

 

冥琳「なんだ。私は忙しいのだが。」

 

雪蓮「忙しいって言っても書類仕事だけでしょ。そんなのあとあと。」

 

冥琳「...」

 

雪蓮「それでなんだけど、一刀のとことの会談なんだけどいつになりそう?」

 

 椅子に座る冥琳に、雪蓮は甘えるように後ろからもたれてくる。

 

冥琳「そうだな、先方も前向きになってくれているおかげで二週間以内には実現するだろう。」

 

雪蓮「そうなの?やった♪」

 

冥琳「ほう意外だな。北郷殿に会えるのがそんなに嬉しいのか?」

 

雪蓮「ん~、こう言っちゃなんだけど私が会いたいのは...」

 

冥琳「酒か。北郷殿が知れれば呆れられるな。」

 

雪蓮「一刀なら笑って許してくれそうだけどな~。」

 

冥琳「随分と人の良い御仁のようだからな。確かにそうかもしれん。だが、この乱世をこうして生き残ってきているのだ。一筋縄では行かないと思うぞ。」

 

雪蓮「そこはほら、私は女、一刀は男よ?」

 

 両腕の上においた胸を強調してお色気ポーズを演出してみせる。その様子に冥琳は額に手をやり深い溜息をつく。

 

雪蓮「なによ~、ちょっとくらい妬いてくれてもいいでしょ~。」

 

冥琳「はいはい、妬ける妬ける。」

 

雪蓮「そんな態度ばっかとってると、冥琳なんて捨てて一刀のところにお嫁に行っちゃうんだから!」

 

冥琳「それはいい。そうすれば労せずして北郷殿の領地が手に入るな。」

 

雪蓮「もう、ああ言えばこう言うんだから。」

 

冥琳「しかし、北郷殿と協力して曹操を破るのはよいが、その後はどうするのだ?」

 

雪蓮「...そこは、私がわざわざ言わなくてもわかってるんでしょ?」

 

七乃「お嬢様ー!お嬢様大変ですっ!」

 

美羽「これ、七乃。妾が蜂蜜水を堪能している時は邪魔するでないと言ったではないか。」

 

七乃「それはわかってますけど、そんな場合じゃないんですよ!曹操さんが領地を通る通行許可を出せって使者を送ってきたんですよ!もう軍隊が国境沿いまで来ちゃってます!」

 

美羽「なんじゃ、そんなことか。通るだけなんじゃろ?そんなものくれてやればよい。全く、そんなことでいちいち妾の至福の時を邪魔するなど...」

 

七乃「お嬢様、曹操さんがうち通って何処に行こうとしてるかわかってるんですか!?」

 

美羽「んん?どういうことじゃ?」

 

七乃「ここを通らなければいけないところ...曹操さんは、ここを通って孫策さんのところに行こうとしてるんですよ!」

 

美羽「なんじゃと!?」

 

 袁術と孫策は事実上同盟関係にあると言えた。曹操もそれは十分承知のはずである。にもかかわらず、同盟国に攻めに行くのに通行許可を求めようとはなんと大胆なことであろうか。しかしだからこそ、それに対する返答は決まっているはずだ。

 

美羽「そんなこと許すでない!断固拒否じゃ!」

 

七乃「でも、断ったら敵対するとみなして、そのままこちらを攻めてくると言ってるんですよ。お嬢様、曹操さんと戦うんですか?」

 

美羽「あったりまえじゃ。曹操なんぞケチョンケチョンにしてお尻ペンペンしてやるのじゃ!」

 

七乃「無理ですよぉ。細作の情報によれば曹操さんの軍隊は十万はくだらないと。こっちは今かき集められるだけかき集めても四万がいいとこです。その数じゃ曹操さんの精兵には勝てませんよ!」

 

美羽「うぅ...ならどうすればいいのじゃ!」

 

 涙目になりつつある彼女を見つめる七乃の心のなかでは、その可愛さに胸がときめいているのだが、状況が状況なだけにそんなことはおくびにも出さない。

 

七乃「...要求を飲みましょう。そうすれば流石に曹操さんも今回は手を出してきませんって。」

 

美羽「しかしそれでは雪蓮が...」

 

七乃「孫策さんはそりゃ鬼のように強いからきっと大丈夫ですよ。」

 

 いくら十万を超えると言っても、相手は遠征軍だ。あの小覇王と呼ばれた彼女がそうそう遅れをとることはないだろうと七乃は考えていた。それに呉に援軍を要請して戦うにしても、国境沿いまで来ている以上、援軍が到着するまでこちらはもたない可能性が高い。むしろ呉と開戦した後ならば、背後から曹操軍の補給線を断ち、挟撃することだってできる。七乃が自分の黒い策謀に考えを巡らせている一方、

 

美羽「いやじゃ...」

 

七乃「お嬢様?」

 

美羽「妾には雪蓮をいじめにいこうとする輩をみすみす素通りさせることなどできぬ!七乃、出陣の準備じゃ!」

 

七乃「負けたら蜂蜜水だって毎日飲めなくなっちゃうかもしれないんですよ?いいんですか?」

 

美羽「うぐっ...妾に二言はない!」

 

七乃「さっき最初は許可出すって言ってたじゃないですか。」

 

美羽「ふ、ふん!それとこれとは話が別じゃ!だいたい、妾は曹操のあのくるくる頭が誰かさんとそっくりで気に食わんのじゃ!じゃから曹操のやつに一泡吹かせて妾のすごさを思い知らせてやるのじゃ!」

 

 腕を組んで玉座から立ち上がり、威張ってみせる美羽。その拍子に彼女の伸びた後ろ髪の先の巻き目がプルプルと震えた。

 

七乃「(意地はっちゃって...うーん、お嬢様、ちょっといい子育ち過ぎちゃいましたかねぇ。もうちょっとおバカさんの方が私はよかったんですけれど。)」

 

美羽「何か言うたか?」

 

七乃「いえいえ~、何も~。じゃ、ちゃちゃっと全軍に号令かけちゃいますね~♪」

 

美羽「任せたぞ、七乃!あのくるくるを真っ直ぐにして戻らなくしてやるのじゃ!」

 

七乃「あらほらさっさ~♪(とりあえず逃げる用意はしておかないといけませんね。孫策さんのところにも早馬を出しておきましょう。それに...)」

 

 七乃はニヤリと黒い笑みを浮かべる。

 

七乃「(曹操さんにはお嬢様と私の面白おかしい生活を邪魔した対価くらいは払ってもらわないといけませんしね。)」

 

 大陸の情勢は大きく動き出そうとしていた。

 

-あとがき-

 

 読んでくださって有難うございます。最近一向に書くのがうまくなってないことに少々焦りを感じたり感じなかったりの今日このごろなれっどです。一話で一回でもクスリとなったりしていただいていれば幸いです。

 

 恋さんのところで章切ろうとも思っていたのですが、さすがに話数が短かったのでそのまま続けてしまいます。なのでこの章は少々長くなると思います。...なんでもないですよ?

 それでは、次回もおつき合いいただけるという方はよろしくお願いします。


 
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