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恋姫†無双 関羽千里行 第4章 38話

Red-xさん

恋姫†無双の二次創作、関羽千里行の第4章、38話になります。この作品は、恋姫†無双の二次創作です。設定としては無印の関羽ルートクリア後となっています。第一話はこちらhttp://www.tinami.com/view/490920
深夜の更新失礼します。
毎度毎度、決まった日に更新できなくて申し訳ありません。
1回書きためたほうがいいのかなぁと思ったり思わなかったりですが、当分はこのまま行こうと思います。
それではよろしくお願いします。

2013-11-12 01:06:43 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1778   閲覧ユーザー数:1576

第38話 -一刀の思惑-

 

冥琳「それで、結局曹操からは逃げてきたというわけか。」

 

七乃「だって、私たちだけで曹操に勝つなんて無理に決まってるじゃないですかぁ。せいぜい、適当に理由をつけて領内に入るのを遅らせるくらいしかできなかったんですってば。」

 

 呉の城の一角で、冥琳は領地から逃げてきた七乃に話を聞いていた。来た時にはどちらも慌ただしかったため荷物もそのままだったのか、木箱やらなんやらが部屋には雑多に置かれていた。にも関わらず、亡国の軍師はそんな木箱の一つに腰掛けて、暢気に小刀で木片を削っていた。

 

冥琳「確かにな。それに関してはこちらもすまないと思っている。もうちょっとこちらで情報を早く仕入れることができていればよかったのだが...」

 

七乃「それに関しては今更言ってもしょうがありませんよ。第一、国境を接してるこっちでも接近されるまで気づかなかったわけですし。ホント、あのおちびさんってばよく頭が回るというか強かというか。」

 

冥琳「だが、お前のご主人様は怒っているのではないか?」

 

七乃「そうですねぇ、曹操さんをぎゃふんと言わせてやるーって息巻いてましたからねぇ。あと一日くらいは口聞いてもらえなそうですよ。」

 

冥琳「その割にはお前は楽しそうだが?」

 

七乃「私がいなくてそのうち寂しくなってお嬢様の方から来ますから。その時の泣き顔のためなら、一日くらいあえてこちらも突き放していた方が後の楽しみが増えていいじゃないですか。」

 

冥琳「(歪んでるな...)」

 

 彼女の主君への愛は歪んでいると言わざるを得ない。それでも、これまで美羽が国主としてやってきたのは彼女によるところが大きいだろう。もしかしたら七乃に対する見解を改めなければならないかもしれないと、冥琳は考えていたのだが、

 

七乃「ところで、ここのこの部分なんですけど、冥琳さんはどう思います?もっと細かく彫った方がいいですかね?」

 

 どうやらその必要はなさそうだった。あまりの能天気ぶりにため息が漏れる。

 

冥琳「...お前を見ていると、とても一国の軍師が国を追われたとは思えんな。」

 

七乃「私は国っていう仕組み自体には興味ありませんからねぇ。お嬢様がいればそれで十分ですので。それよりここ!ここですよ!」

 

冥琳「ん...そうか。そうだな、そのままでいいかもしれんな。」

 

七乃「ん~、そうですかねぇ。」

 

冥琳「そういえば、曹操軍の規模や隊の構成など、なにか情報は掴んでいないか?こちらも間諜を出しているのだが、そちらの領地を通っている以上我らよりも何か有益な情報を得ているかもしれん。」

 

七乃「ああ~、そのことでしたら、資料は作っておいたんですよねぇ。ええと、どこにあったかな~。あ、これちょっと持っててくださいね。」

 

 と言って手にしていた美羽そっくりの木彫の人形を預けると、ガチャガチャと木箱の山をひっくり返し始めた。

 

七乃「ん~、あれでもないしこれでもないし。おっかしいな~、確か美羽様が昔書いた何書いたんだかよくわからない絵と一緒にしまっておいたはずなんですけど...」

 

冥琳「(相変わらず器用なものだな。これだけうまいのなら、今度雪蓮の人形も作ってもらおうか...)」

 

 七乃の気にアテられて冥琳も少し思考が緩みかけたが、

 

七乃「あ、ありましたよ~...ってどうしたんですか?それ、欲しいんですか?」

 

冥琳「え?ああ、いや、違う違う。それより、そっちを見せてくれないか?」

 

七乃「別にいっぱいあるからいいんですけど...まあそれも作りかけですし今度作ってあげますよ。」

 

 互いに持っているものを交換する。冥琳はすぐに渡されたそれに目を通していき、七乃は再び人形彫りにとりかかる。冥琳がしばらく読み進めたところで、冥琳は七乃に尋ねた。

 

冥琳「七乃、これは本当にお前が書いたのか?」

 

 それに七乃は手を止めずに事も無げに答える。

 

七乃「そうですよ?もしかして読めない字でもありました?私あんまり字は自信ないんですよねぇ。」

 

冥琳「いや、それは問題ない。しかし...ここに書かれているのは曹操軍のほぼ全容だぞ?どうやってこれだけの情報を手に入れた?」

 

 七乃が書いたというそれには、冥琳が調べてもわからなかった曹操軍の細かい情報がびっしりと記載されていた。その詳細さは、下手をすれば曹操軍の文官たちが把握している情報と同等か、或いはそれ以上のことが書かれているかもしれないとさえ思えた。

 

七乃「はい?ちょちょーっと調べただけですけど...それに、全容なんてとんでもないですよ。この先どういう陣形を組むかとか、武官や文官の人の頭の中までは覗けないんですから。」

冥琳「それはそうだが...もしやお前...」

 

 驚愕する冥琳に七乃は恥ずかしそうに笑みを作った。

 

七乃「あれ、わかっちゃいました?そうなんですよ、最初は曹操さんにちょ~っと痛い目見てもらおうと思って、そこら辺で買ったお腹が痛くなるっていう薬でもご飯に盛ろうと思ったんですけど、曹操さんって結構そこら辺は用心深いみたいでめんどくさそうだったんですよね。仕方無いので、そっちはすぱっと諦めてこっち頑張っちゃいました。」

 

 この時、冥琳は曹操が用心深くてよかったと思っていた。一度の腹痛とこの情報とではいくら重しを載せても吊り合わない。というか、一服盛ろうとすれば面倒なだけでやればできてしまうのかということに、冥琳は感服を通り越して再び呆れてしまった。

 

七乃「う~ん、それにしてもここはどうしましょう。たまには違う下着にした方がいいですかねぇ。」

 

 件の七乃はというと、傍からすれば至極どうでもいいことに真剣に頭を悩ませていた。

 

冥琳「(全く、そこの知れんヤツだな。)」

 

七乃「冥琳さんはどう思います?ここは意表をついてちょっと大人っぽいのとか...いや、ここはあえて穿いてないという選択肢も!」

 

冥琳「しかし弱ったな...」

 

一刀「石亭って意外と遠かったんだなぁ。」

 

雛里「そうですね、実際のところ成都まで行くのとそれほど違いはないと思いますよ?」

 

一刀「うへぇ、そんなに遠かったのか...」

 

 一刀たちは雪蓮たちとの会合のため、一路呉の石亭へと向かっていた。いつもより少しゆったりとした雰囲気で兵がぞろぞろと続くその様子はさながら日本史の教科書で見た大名行列を連想させる。

 

 当初は互いの国境付近のどこか適当な街でということになっていたのだが、北郷の拠点である京が呉領にかなり寄っていたこと、そしてそのため雪蓮たちが来ようと思うと結構手間がかかってしまうということもあり、それならばお互いの中間ぐらいの場所でということになったのだった。それについては、一国の王が戦時下において自国を離れるのはどうかという問題や、王が他国の王と会うためとは言え、その相手の国まで出向くというのは対外的に軽く見られてしまうのではないかなど様々な問題が持ち上がったのだが、それを言い出して場所を決めるのに手間取ってしまえばその間に曹操が来てしまうということで、最後は一刀の鶴の一声で石亭に決まったのだった。もちろん、他国に対しては一刀がこんなところにいるという情報は最大限の努力をもって隠匿されている。

 

愛紗「ですが、今回は敵の伏兵を警戒したりといったことがない分、早くつけることには違いないでしょう。」

 

華雄「ふん、考えようによっては周りは伏兵だらけだがな。山賊程度ならまだしも、街一つ敵に回すだけでも中々にやっかいだぞ。」

 

 華雄の言うとおり、皆がいるからと言って今大軍に襲われればひとたまりもないのは明らかだ。同盟締結のために赴く以上、誠意を見せるためにも兵は護衛のための最低限しか連れていけない。五胡や曹操の進行の備えて将軍全員を連れて行くわけにも行かない。しかし内容が内容なだけに重要な地位にある人間は一刀自身以外にも連れていかなければならない...そう考えて色々考慮した挙句、選び出されたのが古参メンバー+呉とのパイプ役と頭脳担当というこの面子であった。それについでのプラスアルファである。

 

祭「言ってくれるではないか。高潔な魂を持つ呉の民は、そのような小賢しい真似はせんぞ。」

 

華雄「ふん、どうだかな。」

 

 華雄は呉に来てからというもの、どこかずっと不機嫌な様子であった。そんな一方で、

 

霞「ちゃうちゃう!ええか?キレが大事なんや!こんな感じで...なんでやねん!」

 

恋「.....................なんでやねん。」

 

霞「あっかーんっ!タメが長い!てか長すぎる!それに腕ももっとこうビシーッと!」

 

恋「...??」

 

霞「せやからな...」

 

一刀「おい、霞。恋にあんまり変なコト教えるなよ。」

 

 何故か漫才の特訓を始めていた二人に割って入る。先ほどに加えてのプラスアルファは呉に用のある恋だ。

 

霞「変やて?キレのいいツッコミの重要性がわかっとらんようやな、一刀。大体、恋は存在自体がボケ倒しや。今は記憶ものうなってるんやし、ちーっとくらいツッコミちゅうもんを理解してもらわんとこの先やっていけへんで!」

 

 いや、別にツッコミ覚えなくても...というツッコミをいれて欲しいのか、霞がワクワクした目でこっちを見ている。

 

一刀「霞ってやけに恋に構いたがるよなぁ。お世辞にも共通の話題とかあるとは思えないんだけど。」

 

霞「ボケ殺しかいな...なんやろな。恋がぼけーっとしてんのとか見ると、な~んか絡みたくなるっちゅうかすとーんとツッコミいれたくなるっちゅうか...」

 

一刀「まあボケとツッコミって言われればしっくりはくるなぁ。」

 

 霞は恋の手を取り上目遣いで恋を見る。そして芝居がかった口調で言った。

 

霞「恋、ウチが一刀に捨てられても、恋はウチのこと捨てんたって、な?」

 

恋「.........?」

 

霞「アカン...やっぱりウチがボケても不毛や...」

 

 そして見事に自爆していた。しかし恋もしつこく絡んでくる霞の相手をちゃんと?しているところを見ていると、呂布と張遼はやっぱり引き合うのだろうかなどと思ってしまう。そんなことを考えていると、愛紗がこちらに寄ってきた。

 

愛紗「一刀様、少々お話が。」

 

一刀「ん?なんだい?」

 

愛紗「一刀様、この同盟...本当にここまでして結ぶ必要があるのでしょうか?」

 

 今までとは打って変わって重そうな話題が降ってきた。

 

一刀「...それについてはさんざん話し合ってきたじゃないか。確かに国を離れてって言うのは不安だけど、今の俺たちじゃ曹操に確実に勝てるとは言いづらい。それは雪蓮さんだってきっと同じだよ。だからこそちゃんとそこを話し合ってすりあわせしないと、お互いギクシャクしたままで同盟組んでもいいように付け込まれちゃうだろ?」

 

愛紗「それはわかっています。しかし、我らの悲願は天下を一つに束ね、その元で民に安寧をもたらすこと。つまり、今同盟を結んだところでいずれは呉と戦わなければならないということになるのではないのですか?」

 

 今回の同盟は反董卓連合軍の時のように、ただ共通の敵と戦うために寄り集まるという枠組みには収まらない。なぜなら、魏を下してしまえば実地大陸に残る大勢力は二つになる。そして、天下を束ねるということは最終的に二つの国が存在しているということはあり得ない。だからこそ、いつかその関係を破棄し互いに争わなければならなくなる。愛紗には一度お互いに手を取り合ったもの同士にも関わらず、この先自分からそれを裏切るような不義理な真似はしたくない、ということだろう。ましてや、最初から手を切るとわかっていて手を結ぶというところにも思うところがあるのは間違いない。

 

一刀「そうか、そういうことか...愛紗はひとつ勘違いをしてるよ。」

 

愛紗「とおっしゃいますと?」

 

一刀「俺はできれば呉とは仲良くやっていきたいんだ。前は行き違いがあって互いに戦うことになっちゃったけどさ...あれが無ければ、余計な殺し合いなんてしないで平和になったと思うんだ。過去のことを言ってあれがなければとか、ああすればって言ったところで本来意味が無いのはわかってるけど、幸い、俺たちはやり直せる機会を手に入れたんだ。」

 

愛紗「しかし、その時は良かったとしても、戴くものが違えばいつかそれは争いに発展しかねません。」

 

一刀「ああ、だから可能なら俺はそれを一つに...呉とこの国を一つにしたいと思ってる。」

 

愛紗「...!」

 

 愛紗が息を呑む。

 

一刀「ホントは曹操とも...袁紹や公孫賛もかな。ただ、少なくとも曹操は口で言ったところで聞くような人間じゃない。自分の理想を押し付けたいなら、まずは力で示してみせろって言うと思うよ。だからこそ、曹操とは戦う。戦って勝った上で、俺たちに協力してくれって頼むんだ。雪蓮さんはまだ底が知れないけど...祭の話しなんか聞いてるだけでも、雪蓮さんにとって呉の民が大事だって言うのだけはわかる。だったら、彼女のところとはうまくやっていけると思うんだ。彼女が呉の民だけじゃなく、大陸の民にもおんなじ気持ちになってくれたらってさ。...でも、俺が大陸を平和にしたいって思うのも、元はといえば愛紗の受け売りなんだけどな。」

 

愛紗「もしかしますと、今回直接会って話したいというのも?」

 

一刀「確かに今の同盟も大事だけど、これから先のことも話せたらって思ってる。」

 

愛紗「...」

 

一刀「愛紗は、やっぱり無理だって思うかい?」

 

愛紗「私は...いえ、ただ貴方の言うとおり、何事も無くそうなればと思っただけです。」

 

一刀「そっか。」

 

 愛紗の言にはどこか含みがあるように感じられた。それはどこか言いようのない不安を押し殺しているようにも見えた。

 

-あとがき-

 

 読んでくださって有難うございます。タイトルの割に軍師同士のやりとりの方が長い...むむむ。

 

 話の展開やらなんやかんやで連れて行く面子が多くなってしまいました。残った方々は本土防衛です。一応捕捉しておきますと、時間軸的に一刀君たちが出発したのは、美羽さんのところに曹操軍がやってくる前ということになります。東京から京都に向かう某剣客然り、昔の旅は時間がかかるのですよ、うんうん。そして相変わらず凄いのか凄くないのかよくわからない七乃さん。それに果たして恋さんは至高のツッコミを会得できるのか...ておいおい。

 

 それでは次回もお付き合いただけるという方はよろしくお願いします。

 


 
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