No.633842

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百一話 護衛の依頼

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-11-03 18:32:06 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:31515   閲覧ユーザー数:27747

 季節は冬に突入。

 コッ…コッ…コッ…。

 俺は今海鳴市にある『ホテル・ベイシティ』内の廊下を歩き、とある一室に向かっている。

 突然の連絡が俺の携帯に届き、呼び出されたからだ。

 

 「(……にしても)」

 

 ホテル内の空気は若干ピリピリとしている。

 それもその筈。今このホテルには世界的な有名人達が宿泊に使用されているからだ。

 その都合上、ホテルを警護しているSPの人達の緊張感が肌越しに感じられる。

 

 「(けど俺にまで警戒の視線を向けられても…ちゃんと俺が来るっていう連絡はついてる筈なんだけど…)」

 

 いや、一流のSPなら警戒して当然か。敵が変装して護衛対象に近付く可能性もある訳だしな。

 

 「んーっと……あ、ここだここだ」

 

 目的の部屋の前に辿り着く。

 

 「スゥ~…ハァ~…スゥ~…ハァ~…」

 

 軽く深呼吸して気を落ち着かせる。

 何せ久しぶりの対面だし、ちょっとばかり緊張する。

 

 「…………よし!」

 

 俺は意を決し、扉をノックする。

 

 コンコン…

 

 「どちら様ですか?」

 

 部屋の中から声が聞こえる。

 

 「ここに呼び出された長谷川勇紀ですが?」

 

 「ああ、勇紀君ですか。どうぞ、入って下さい」

 

 『入って下さい』って……鍵開いてんの?

 

 ガチャ……ギイイィィ……

 

 ノブを回すと扉は開き

 

 ダダダダダッ…

 

 「勇紀~♪久しぶ…」

 

 バタン!

 

 思わず俺は開けた扉を勢いよく閉め直した。

 

 グシャッ

 

 「へぶっ!?」

 

 扉の向こう側では近寄ってきた誰かがぶつかった様だ。

 

 「ふぅ…危ない危ない」

 

 扉を閉じなきゃ俺は怪我をしていたかもしれない。ナイス判断だったと自画自賛する。

 改めてゆっくり扉を開けると、部屋の玄関前で扉にダイブしたと思われる人物が倒れていた。

 茶髪でポニーテールの髪形をしている女性が。

 

 「フィー姉。いきなり飛び掛かってきたら危ないぞ?」

 

 玄関で寝そべっている懐かしきブラコンお姉様に俺は声を掛けるのだった。

 すると勢いよくガバッと身を起こしたフィー姉。

 

 「酷いよ勇紀!!久しぶりのお姉ちゃんとの再会なんだよ!?思いきりハグされるのが普通だよ!!」

 

 「だって、あの勢いで来られたら俺の身が危うかったし」

 

 「大丈夫だよ。お姉ちゃんに対する海よりも深い愛情で受け止めたらダメージなんてないよ」

 

 「それ、どんな理論と根拠があって言ってんの?」

 

 「私理論!!という訳で…えいっ!!」

 

 即座に立ち上がって抱き着いてくるフィー姉。今度は勢いも弱めなので受け止める。

 

 「ん~~~~♪久しぶりの勇紀成分補給~~~~♪♪」

 

 フィー姉はギューっと力強く抱き締め、俺の頬に自分の頬を合わせ、摺り寄せてくる。

 俺成分って…。

 

 「フィー姉、さっさと離れて。俺、こんな事するために呼ばれた訳じゃないでしょ?」

 

 「嫌。勇紀に私の匂いを染み込ませないといけないもん」

 

 「何でそんな事するのさ?」

 

 匂いを染み込ませるって…。

 

 「勇紀から女の子の匂いがする。しかも相手は7歳ぐらい年下で毎日一緒に寝てるっぽいし」

 

 そんな事を言われて心当たりのある人物が1人…

 

 「って、匂いだけでそこまで分かるの!?」

 

 ジークと一緒に寝てる事はおろか、年齢差まで正確に見抜くなんて。

 

 「やっぱり一緒に寝てるんだね。一体どんな子なの?」

 

 フィー姉は頬を放して俺の目をジッと見ながら尋ねてくる。

 

 「あー…ちょい事情があって俺の義妹になった子だよ」

 

 と、言うと大きく目を見開くフィー姉。

 

 「義妹!!?エロゲーだとお姉ちゃんキャラの対抗馬になる厄介な存在がいるの!!?」

 

 エロゲー言うな。アンタ『世界の歌姫』でしょうが。

 世間のイメージ一気に崩れるよ?

 

 「むむむ、ヤバいよ、このままだと勇紀を寝取られちゃうよ」

 

 「いや…寝取られるって……」

 

 「こうなったら今日から勇紀はお姉ちゃんと一緒に寝る事!!分かった?」

 

 「勝手に決めんな!」

 

 俺はフィー姉の額にチョップをかます。

 

 「ひゃうっ!」

 

 「それよりもいい加減奥に入れてくれない?いつまで玄関にいさせるつもりさ?」

 

 「そうですよフィアッセ。早く彼をコチラに案内なさい」

 

 部屋の奥から新たな人物…イリアさんがやって来た。これでやっと話が進むな。

 

 「でもイリア…」

 

 「『でも』じゃないです。皆を待たせていては悪いでしょう?早くリビングにいきますよ!」

 

 ガシッと首根っこを引っ掴んでフィー姉を引っ張るイリアさん。腕力あるなぁ。

 

 「ああ…ゆ、勇紀ぃ~……」

 

 いや、部屋の奥に入るだけなんだからさ。

 俺は呆れた表情を浮かべながらもイリアさんと、引き摺られていくフィー姉を追う様にしてついていく。

 奥のリビングにはイリアさんと引き摺られたフィー姉に、俺を呼び出した張本人でありフィー姉の母親であるティオレさん。

 イギリスの上院議員でありフィー姉の父親のアルバートさん。それに…

 

 「き、キンジさんにタエさん!?何でここに!?」

 

 懐かしい顔ぶれがソファーに腰掛けていた。

 キンジさんの側にはツンデレ武偵のアリアさんが、タエさんの側には薄紫色のロングヘアーの女性が座っていた。

 後、金髪ポニーテールで目つきの鋭い女性が壁に寄り掛かっている。

 …あれって『とらハ3OVA』の『エリス・マクガーレン』じゃね?

 

 「そりゃコッチの台詞だぞ!!何で勇紀がここに来てんだ!?」

 

 「勇紀君久しぶりー……って、言いたいんだけど…ねぇ」

 

 皆驚いたり苦笑いを浮かべたりと反応は様々だが。

 俺、この場にいるのは場違いなんじゃあ…。

 

 「これで全員揃いましたね」

 

 ティオレさんが口を開く。

 俺も適当な場所に座るとイリアさんから解放されたフィー姉が隣にやって来て腰を下ろす。

 いい加減に弟離れしなさい。

 

 「まずはお集まりいただきありがとうございます。クリステラソングスクールの校長としてお礼を言わせていただきます」

 

 ペコリと頭を下げるティオレさん。

 

 「今回は皆さんのお力を借りたいと思い、ここに来て貰いました」

 

 力?

 

 「実は…これを見て貰いたいのです」

 

 ティオレさんが俺達の前に差し出したのは一通の手紙だった。

 手紙の文字は英文で、新聞紙や雑誌の文字を切り抜かれた物で貼られており、誰が書いたのか特定するのは不可能と言える。

 

 「手紙にはこう書かれています。『我々はティオレ・クリステラの『最後の遺産』の所在を突き止めている。その『鍵』をコチラに渡してほしい。相応の対価を支払う用意が当方には有る。連絡を請う。要求に応じないのであれば当方も対応を変えざるを得ない。早急な対応を求む』と」

 

 「要求に応じるも何も校長がお亡くなりになられた後の遺産整理の準備は滞りなく行われていますから。細かな遺産はいくつもありますが、脅迫状を送る程の遺産等というものは…」

 

 ティオレさんが手紙を読み上げ、イリアさんが言葉を続ける。

 

 「無い…と?」

 

 タエさんが聞き返した言葉にティオレさんは頷く。

 

 「当方としても新聞の伝言欄等を使ってその旨を伝えたのだがね…」

 

 アルバートさんも『ハア』と軽く溜め息を吐いて答える。

 

 「最後の文にはこうあります。『この最後通告を受け入れないのであれば、貴女の娘に不幸と危険が訪れるかもしれない』と」

 

 この手紙に書かれてる『貴女の娘』っていうのは言うまでも無くフィー姉だよなぁ。

 

 「(ていうかまだティオレさん生きてるのに遺産も何もないと思うんだが…)」

 

 そうまでして遺産が欲しいのかねぇ?

 

 「娘…そちらにいらっしゃるフィアッセ・クリステラさんの事ですよね?」

 

 キンジさんの言葉に皆の視線がフィー姉に集まる。

 

 「ええ…実はイギリスのスクールではすでに何度か校内の噴水や窓ガラスが爆発する様な出来事に見舞われているのです」

 

 イリアさんが言うには他にもピアノには真っ赤な薔薇が置かれ、血を連想させる様な赤い液体が流されている等、フィー姉の身を脅かす事を暗示する様な出来事が起きているらしい。

 

 「1週間後には毎年恒例の当校のコンサートツアーが開催されます」

 

 「ん?フィー姉フィー姉。コンサートツアーって、毎年春に行われてたよね?」

 

 イリアさんの言葉に疑問を感じた。

 俺の記憶が確かなら春先に行われており、12月…しかも、もうじきクリスマスというこの時期には一度も行われた事は無かった筈だけど…。

 

 「勇紀の言う通りだよ。けど本当はコンサートツアーの決行に季節や日時は特に決まってないの。今までは春だったけど『たまには他の季節に行っても良いんじゃないか?』っていう意見が出てね。それで『今年は冬で行おう』って事に決まったのよ」

 

 「へー。後さ、あの金髪のお姉さんって誰?」

 

 「彼女は『エリス・マクガーレン』って言って私の幼馴染みだよ」

 

 やっぱりか。

 『とらハ』の原作知識で知ってたけど一応確認しておいた。

 フィー姉は親切に教えてくれる。

 

 「コンサートツアーの途中でそこにいるフィアッセはおろか、校長や他の生徒、更にはコンサートツアーに参加するスクール卒業生の身に万が一の事があっては困るという事で貴方達に依頼したと言う訳です」

 

 成る程ね。

 警備会社アイギスに所属してるタエさんがここに呼ばれた理由にも納得だ。

 それにエリスさんもお父さんのセキュリティ会社を継いで警備専門の仕事をやってるからここにいて当然だし。

 じゃ何で武偵のキンジさん達がいるんだ?

 

 「ちょっと質問良い?」

 

 そこへ割り込む様に口を挟んだのはアリアさん。

 

 「どうぞ」

 

 「私達武偵やソッチの警備会社の連中は良いわ。けどソッチのガキンチョは何?」

 

 俺を指差してガキンチョ呼ばわり…。

 失礼なツンデレだ。俺より身長低いのに。

 というよりも覚えてないのかよ。『くぎみー』キャラが集合してた縁日の日に俺もいたというのに。

 

 「あら、その子はそう見えても申し分ない実力があるわよ」

 

 「そうだよ。何せ勇紀はまど……むぐっ!?」

 

 フィー姉が『魔導師』と言い掛けてたので慌てて口を押さえる。

 

 「こらこらフィー姉。勝手に俺の事言うな」

 

 「むぐむぐ…」

 

 「自分で言う事はちゃんと自分で言うから。OK?]

 

 「むぐ」(コクリ)

 

 素直に頷いてくれたので塞いでいた口を解放してあげる。

 

 「ふぅ…。あ、ティオレさんが言った様に俺も戦闘経験はあるんで微力ながらお力添えは出来ますよ」

 

 皆の視線が集まっていたので一言申しておく。

 

 「ホントにぃ~?胡散臭いんだけど?」

 

 疑り深いツンデレだな。

 

 「私も彼女と同意見だ。体格から見ても普通の子供にしか思えないんですが」

 

 エリスさんも壁に背を預けながら鋭い視線を俺に向けて言う。

 

 「いえ、私はそうは思いませんわ」

 

 そこへタエさんの横に座っている女性が口を開く。

 この人、『恋する乙女と守護の楯』のヒロインの1人である『真田設子』やん。

 本来なら敵対する筈のこの人がここにいるって事はタエさんは設子ルートを通ったって事か?

 

 「もし彼が何の力も持たない一般人ならこの場に呼び寄せる必要がありませんもの」

 

 至極もっともなご意見どうもです。

 

 「まあ、そう言われたらそうよね。で、どうなの勇紀君?」

 

 「勇紀、お前も何か特別な力でも持ってるのか?」

 

 タエさんとキンジさんが俺に聞いてくる。

 

 「まあ、多少異質な力が使えるっちゃあ使えますね」

 

 「どんな力なんだ?」

 

 「それは企業秘密です♪」

 

 ていうか迂闊に言えませんよ。

 

 「でもよく考えたら私もママも勇紀の実力をこの目で見た事無いのよね」

 

 おいフィー姉!!ここでそれを言うか!?

 

 「「「「「……………………」」」」」

 

 見ろ。武偵や警備会社の方達の視線が『ホントに大丈夫なのか?』って言ってるじゃないか。

 

 「大丈夫ですよ。勇紀は長谷川泰造の血を継ぐ一人息子なんですから」

 

 「「「「「………………は?」」」」」

 

 「そうそう。それに今回泰造にも連絡はちゃんとしたよ。『あんな馬鹿息子でも多少は使える』って言ってたし今回の件だって二つ返事でOKくれたよ」

 

 「待て待て。父さんに許可って……俺は何にも知らんのだが?」

 

 フィー姉の言葉からすると、父さんは俺に『フィー姉達を護れ』って言ってるんだろうけど、その当人に連絡が無いってのはどうなのよ?

 

 「ちょちょちょ、ちょっと待って!!何!?このガキンチョがあの長谷川泰造の子供だというの!?」

 

 「確かに苗字は同じ長谷川だけど…」

 

 皆さん困惑してらっしゃいますよ。

 

 「おい勇紀、お前もまさか衝撃波が使えるのか?」

 

 「いやいやキンジさん。俺は父さんみたいに衝撃波は使えないッスよ」

 

 …小さい頃、使ってみたいと思った事はあったけどね。

 

 「泰造本人からのお墨付きです。心配はいりませんよ」

 

 「ティオレさん。いくら父親が裏の世界で最強クラスの人物でも、それだけで息子も強いとは限らないのですが?」

 

 エリスさん、正論ごもっともです。

 

 「大丈夫だよ!勇紀は強いってお姉ちゃんである私が保証します!」

 

 いや、アンタさっき俺の実力見た事無いって言ったばかりじゃんか。

 

 「勇紀、どうかお願い出来ますか?」

 

 「まあ、流石に知り合いが危険な目に遭うかもしれないのは見過ごせないからいいですけど…」

 

 「そうですか。では今日からコンサートツアー終了まで早速お願いしますね。日本にいる間はこのホテルに泊まり込みで」

 

 「は?いや、俺学校あるんですけど?」

 

 「私が学校の先生に直接交渉しましょう。学力に関しても勇紀なら問題無いのでは?」

 

 そりゃ中学の授業内容なんて復習してる様なものだし。

 

 「義務教育だから卒業は出来ても内申に影響出るんですが?」

 

 「その辺についてもちゃんと交渉します」

 

 「私からもお願いする。力を貸してくれんかね?」

 

 アルバートさんも頭を下げる。

 

 「…まあ、お二人には小さい頃お世話になってますからね。別に良いですよ」

 

 今回の件で恩返しにはなるかな。

 

 「私も!私もお世話したよ!!」

 

 「はいはい」

 

 むしろ俺の方が世話した様な気がするんだが…。

 

 「あ、けど俺はツアーにまるまる着いて行くのは勘弁してほしいです。日本にいる間だけでお願いします。海外での護衛は他の皆さんにお願いします」

 

 年末年始は基本、シュテル達家族と一緒に過ごすのがもうお約束になってるし、観たいテレビ番組も結構あるし。

 その後、細かい内容を詰めて行き、俺は一旦家に着替えや荷物を取りに行く事にした。

 この前、宝物庫から取り出した際に新しい着替えを入れ忘れてたからな………。

 

 

 

 「…っつー事で今日から俺、ホテルで寝泊まりするんで家の事は皆にお任せします」

 

 「随分といきなりですね」

 

 「まあな」

 

 家に帰って来てホテル・ベイシティでのやり取りを皆に言う。

 幸いにも長谷川家に住む面々はレヴィ、ルーテシア、ジークを除き、全員家事が出来る。食生活に関しては心配する必要が無い。ただね…

 

 「あうううぅぅぅぅぅ~~~……」

 

 この話をしたら義妹(ジーク)がしがみついて離れてくれなくなったんだよ。

 ソファーに座っていた俺の正面から抱き着いて来て、さっきから俺の胸元に顔を埋めたまま『あううう~~』としか言ってくれないのだ。

 

 「ジーク…俺は仕事で出かけないといけないから離れてほしいんだけど?」

 

 「あうううぅぅぅぅぅ~~~……」(フルフル)

 

 「別に長期間離れる訳じゃないんだし。何かあれば帰って来るから」

 

 「あうううぅぅぅぅぅ~~~……」(フルフル)

 

 「……ジークよ、俺に『行くな』と言いたいのか?」

 

 「……………………」(コクコク)

 

 やっと顔を向けてくれたと思ったら凄い勢いで首を縦に振られたよ。

 

 「ユウキよ。ホテルなどに泊まらずとも自宅から通えば良かろう(話しを聞いている限り、そのフィアッセというのも、ゆうひと同類だというではないか)」

 

 「そうだよ。他にも護衛する人いるんなら学校にもちゃんと通おうよ(また僕達のライバルが増えちゃったよ)」

 

 「勉強に遅れが出ますよ(ユウキが襲われないか心配です)」

 

 ディアーチェ、レヴィ、ユーリも言葉と雰囲気から察するに反対みたいです。

 シュテルは言葉には出さないもののジト目で睨んでくる。

 

 「メガーヌさんはどう思います?」

 

 「私は別に反対はしないわよ。ただ、無茶だけしないって約束してくれればね」

 

 『無茶をしないで』という条件付きの賛成が出た。

 

 「おしごとがんばってねおにーちゃん」

 

 ルーテシアは普通に応援してくれる。

 …という事でシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、ジークをどう説得したもんかな?

 

 「ていうか何故にそこまで反対するの?理由を聞きたいんだが…」

 

 「「「「別に…」」」」

 

 『別に』って何だよオイ。

 

 「(ウチ)は兄さんと一緒じゃないと寝られへん」

 

 「うん。じゃあこれを機に1人で寝れる練習をしようか」

 

 「あうううぅぅぅぅぅ~~~……」(フルフル)

 

 いや、1人で寝れる様にならないと。

 まさか君は今後もずっと俺と一緒に寝るつもりかね?

 

 「あう…」(コクコク)

 

 ……ハア~。

 これが未来のインターミドル世界チャンピオンと誰が想像出来ようか?

 このまま魔法関係に関わらせず地球でのんびり過ごすのも良いっちゃー良いんだけどね。

 多分無理だろうなぁ。エレミアの記憶と経験がソッチ関係に引っ張っていきそうだし。

 

 「ジーク…もし俺が長期の任務とかでいなくなった時、どうすんの?」

 

 「に…兄さんは(ウチ)を見捨てんの!?」

 

 何でそうなる!!?

 今にも泣きそうな顔で見上げてくるジークに対して心の中で突っ込む。

 

 「いや、可能性としてはあるんだから。救助隊は基本昼夜問わずに人命救助を優先する部隊なんだからさ」

 

 「でもぉ…」

 

 「1人が無理ならせめて他の誰かと寝られる様になりなさい」

 

 「あうぅ…」

 

 チラリとジークは皆の方に振り返る。

 皆はジーッとジークに視線を集める。

 頑張れジーク……いずれは1人で寝る事が出来る様に………。

 

 

 

 「再びホテルに到着…っと」

 

 大きめのボストンバッグに着替えやタオル等、宿泊に必要そうな物を入れてホテルに戻って来た。

 

 「お帰り勇紀~♪遅かったね?」

 

 「…何で1人で部屋から出てるのさフィー姉?」

 

 アンタ狙われてるんだよ?

 

 「大丈夫だよ。警備会社の皆さんがそこかしこにいるんだから」

 

 確かに物陰からコッチ見てるけど…

 

 「警備されてるから絶対安心とは言い切れないでしょうが」

 

 「そうだけど…勇紀を出迎えたかったんだよ」

 

 「気持ちは嬉しいけど、今後は勝手に出歩くなよフィー姉」

 

 「はーーい!!………でさ、勇紀」

 

 「何だ?」

 

 「その子(・・・)、誰?」

 

 フィー姉は俺の後ろに隠れている子に視線を向ける。

 

 「俺の義妹」

 

 「その子が噂の!?」

 

 噂される程知られてねーだろ。

 

 「ジーク…挨拶は?」

 

 「あぅ…初めまして。じ…ジークリンデ・E・長谷川です//」

 

 「よく出来ました」

 

 ナデナデ

 

 「ふにゃぁ…//」

 

 ちゃんと自己紹介出来た義妹の頭を撫でてあげると表情を綻ばせ、くすぐったそうに身をよじらせる。

 結局ジークは誰の元にも行かず、俺について来ちゃった。

 ま、ティオレさん達に紹介するのには丁度良いか。

 午前、午後は学校だし、夜は一旦家に帰り、寝る時だけ連れてくりゃいい訳だし。

 で、フィアッセお姉様。何故に貴女は目を見開いているのですか?

 

 「ナデナデ…私もまだして貰った事無いのに…勇紀にナデナデ…ナデナデ…」

 

 『むぅ』と頬を膨らませ始めるフィー姉。

 

 「フィー姉も自己紹介しなよ」

 

 「フィアッセ・クリステラだよー。よろしくねー」

 

 ズビシッ!

 

 「痛っ!」

 

 フィー姉にチョップする。

 

 「こんな小さい子にガン飛ばしながら自己紹介すな!」

 

 見ろ。ジークがプルプル震えて怯えてるじゃないか。

 

 「だってその子は私のライバルだよ。舐められない様に上下関係はハッキリさせておかないと…」

 

 「自己紹介もロクに出来ないなら俺、コンサートツアー中はフィー姉と口聞かないからな」

 

 「私はフィアッセ・クリステラだよ。ジークリンデだったよね?これからよろしくねー」

 

 スゲエ変わり身の早さだなオイ!?

 世の男性陣を虜にする様な満面の笑顔を浮かべての挨拶……。

 そんなに俺に無視されるのが嫌なのかこのお姉様は。

 

 「あ…あぅ…あぅ……」

 

 ジークも突然のフィー姉の変化に戸惑っている。

 

 「フィアッセさん!勝手に出歩かないで下さいよ!」

 

 っと、向こうから駆けてくるのはキンジさんだ。

 

 「あ、キンジ」

 

 「『あ、キンジ』じゃないですよもう…。貴女は護衛対象なんですから」

 

 「仕方ないよ。勇紀がホテルに戻って来たんだからお姉ちゃんが出迎えてあげないと」

 

 「ん?ああ、勇紀か。荷物はそれだけか?(何で部屋にいたのに勇紀が帰って来たって分かったんだこの人は?)」

 

 「はい。俺がいない間に何か変わった事はありませんでしたか?」

 

 「ああ、特に問題は無かったさ。それでその子は?」

 

 キンジさんの視線がジークに向く。

 

 「俺の義理の妹です」

 

 「……何で荷物取りに行くだけで義妹連れてきてんだ?」

 

 「そこはまあ…ちょっと事情がありまして…」

 

 「そうか。なら後でその事情を聞かせて貰うとしてまずはフィアッセさんを部屋まで送るぞ」

 

 「ういッス」

 

 こうして俺はキンジさん先導の元、フィー姉、ジークと共にホテルの一室に向かうのだった。

 歩く際に右手はジークと繋いでいたのだが、それを見たフィー姉は左腕に自分の腕を絡めてきた。

 6歳の子供相手にライバル心高過ぎだ愚姉。

 

 「《それにしても脅迫文送ってくる犯人ってどんな人なんだろうねユウ君?》」

 

 「《ん?犯人か?名前は『ファン』っていう男で『スナッチ・アーティスト』『クレイジー・ボマー』といった通り名を持ってる奴だぞ》」

 

 ダイダロスが念話で話し掛けて来たので俺は即答で返す。

 『とらハ』では士郎さんが死亡した爆破テロの犯人でもある。この『リリカルなのは』の世界では一命を取り留めているけど。

 

 「《……何でユウ君、そんな事知ってるの?》」

 

 「《だってこの現状って『とらハ3OVA』の内容とほぼ一致してるからな》」

 

 エリスさんがいる時点で何となく予感はしてたんだよ。

 ティオレさん生存に限らず、コンサートツアーが行われる時期や、『緋弾のアリア』『恋する乙女と守護の楯』キャラである人達が護衛に加わっている等、原作との差異はかなりあるけど。

 あ、そうだ。

 

 「キンジさんはどうして今回の護衛に加わってるんですか?」

 

 俺は疑問に思っていた事をキンジさんに聞いてみた。

 武偵は確かに『何でも屋』っていう側面が強いからこういう護衛依頼もあるっちゃああるらしいんだけど。

 もしかして単位がヤバくて形振り構ってられない状況なんだろうか?

 

 「…俺というよりこの依頼を受けたのはアリアなんだよ」

 

 「はあ…」

 

 「アイツが理子…ああ、理子っていうのは同じクラスの武偵(元イ・ウー)の奴なんだが、ソイツに『今回の依頼には『イ・ウー』の残党が絡むかも~』なんて吹き込まれたみたいでな」

 

 「『イ・ウー』ねぇ…父さん達が壊滅させたあの犯罪組織ッスか?」

 

 「ああ、お前の親父さんと警防の隊長陣が滅ぼした組織だ。もっとも、完全に壊滅した訳じゃ無く、幹部の連中も逃げ延びた奴がいるんだが」

 

 その残党が『とらハ3OVA』に関わってくんのかよ。面倒だなぁ。

 

 「後は白雪の占いにも今回の事が示唆されててな。何でも『キンちゃんは近い内、歌姫達の集う場にて狼と鬼に出会う』だってさ」

 

 「成る程、『歌姫達の集う場』ってのはホテル・ベイシティ(ここ)を指す訳ですね?」

 

 「そういうこった」

 

 それに加えて『狼』と『鬼』かぁ。

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 「ブラドかよ!!?」

 

 「「「わっ!?(きゃっ!?)(ひうっ!?)」」」

 

 俺が突然大声を上げた事でキンジさん、フィー姉、ジークがビックリする。

 

 「ど、どうしたの勇紀?」

 

 「…いや、何でも…」

 

 「……勇紀、お前何かに気付いたな?」

 

 うっ…鋭い。

 流石は武偵のキンジさん。俺が叫んだ事に何かピンと来たな。

 

 「えっとですね。その占いが間違い無く『イ・ウー』について示唆してるものだと気付きまして…」

 

 「何?どういう事だ?何でお前が気付いたのか、『イ・ウー』だと確信出来たのか詳しく教えてくれ」

 

 「良いですよ。部屋についてからお話します」

 

 と言っても『原作知識だ』なんて言えないから『昔、裏の世界について父さんに教えて貰っていた事を覚えていた』って事にしよう。

 にしてもブラドフラグとか…。

 アイツと遭遇するのは『紅鳴館』だろ?何でココなんだよ……。

 俺としては今回の一件に一抹の不安を感じずにはいられなかった。

 

 

 

 ていうかアリア原作の白雪の占いには『幽霊(カナ)』の事も示唆してた筈なのに。

 今回は出てこないのかねぇ………。

 

 

 

 ~~第三者視点~~

 

 英国(イギリス)…ロンドンのとある屋敷にて。

 

 「手筈は順次整っている。遺産の鍵は必ず手に入れるさ…」

 

 薄暗い部屋の中、1人の男が受話器越しに会話をしていた。

 

 「後、何人殺してもいいんだよな?」

 

 『鍵さえ手に入れてくれればな』

 

 「鍵は必ず手に入れる。そう…『フィアッセ・クリステラ』から秘密を洗いざらい吐かせてみせるさ」

 

 男の部屋には今話題に出ていた『フィアッセ・クリステラ』の大量の盗撮写真や猥褻なコラージュ写真が壁に貼り付けられていた。

 

 「私からの要求は2つだけだ」

 

 『2つ?何だ?』

 

 「1つ…必要経費は惜しまない事…」

 

 『ふむ…承知した』

 

 「2つ…コトが済んだら彼女…『フィアッセ・クリステラ』は自分が貰う事」

 

 『欲深い男だな』

 

 「欲望?違うね、愛しているのさ」

 

 男は机の上にある2枚の写真…その内の1枚に写っている『フィアッセ・クリステラ』を愛おしそうに指で撫で

 

 「もし邪魔なモノがあるなら…」

 

 そしてもう1枚の写真に写っている女性…『エリス・マクガーレン』に対しては

 

 「消えてもらうだけだ」

 

 心臓にあたる左胸の部分にナイフを突き刺した。

 

 『…期待させて貰うよ。『クレイジー・ボマー』』

 

 そう言って相手は通話を切る。

 

 「……愛おしき姫君(フィアッセ)。間もなくお迎えに上がりますよ」

 

 男は卑下た笑みを浮かべる。

 丁度その時、部屋の扉が『ギイィ…』と音を立てて開く。

 そこに4人の男が入ってくる。もっとも、その内の1人は人間とは思えない容姿をしているが。

 

 「話はついたのか?」

 

 「ええ、丁度ね。貴方方にも期待はさせてもらうよ」

 

 「任せておけ。出来損ないの『リュパン四世』を連れ戻す良い機会だ」

 

 「僕もあの忌まわしき下等種である『長谷川泰造』とその家族がいるであろう日本に復讐しに行こうと思っていた所だ。ついでに『月村』にも用があるしね」

 

 「俺は『御神』と戦えればそれでいい」

 

 「任せておけ!!『フィアッセ・クリステラ』以外の歌姫は全員俺の女にしてやるぜ。オリ主にして最強の俺の女にな。ガハハハハ(ついでに他の『とらハ』キャラもな)」

 

 薄暗い一室にて各々の目的を持った男達は全員が残忍な笑みや冷酷な笑み、卑下た笑みを浮かべて答える。

 遺産の鍵を狙う魔の手は着実に忍び寄っているのだった………。

 

 

 

 ~~第三者視点終了~~

 

 ~~あとがき~~

 

 本編内で『緋弾のアリア』については完全に原作ブッ壊れてますので設定やら何かが可笑しくても『気にしたら負け』の方向でお願いします。

 


 
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