「少女の心と将の立場」
「PHANTOM DIVE !!」
政宗の一撃で数十人が一気に吹き飛ぶ、現在、政宗は暴徒鎮圧のために出撃していた。
「うわああああああッ!!人間じゃねぇ!?」
「だめだッ!!とても敵わねぇ!」
今の攻撃で恐れをなした賊共は武器を捨て一目散に逃げていく。
「やれやれ・・・。またか・・・」
こんなことがここ最近、何度もあった。いきなり現れては暴れるのだが、少しばかり小突くとすぐに逃げていく。流石の政宗も、これが続くと面倒になる。最近では軍を動かすのも億劫で、大体一人で出撃していた。
「政宗様、ご無事ですか?」
「Ah・・・No problemだ」
近くで同じく暴徒鎮圧を行っていた小十郎が現れ、手には何やら黄色い布を持っている。やはりかと、手に持たれた布を確認した政宗からため息が出る。
「どうやら、ここも同じの様ですな・・・」
「全くだ、この黄色い布・・・・どうやら歴史の大舞台に呼ばれているらしいな」
二人には、この布に意味があることが分かっていた。そろそろ、華琳達に知らせる頃合いかなと思いつつ城へと帰還するのだった。
ここは城の玉座の間、華琳を中心に皆がここ最近の暴徒鎮圧について報告していく。
「そう・・・やはり、黄色い布が・・・」
「こちらの暴徒共も、同じ布を持っていました」
秋蘭の言葉にそこにいた、政宗、小十郎、元親、春蘭、季衣、が皆、一様に頷き自分の所でも同じであったと報告する。
「桂花、そちらはどうだった?」
「はっ。面識のある諸侯に連絡を取ってみましたが、どこも、ここと同じく、黄色い布を身に着けた暴徒の対応に手を焼いてるようです」
文官である桂花は、現場で指揮を執り暴徒鎮圧は出来ずとも、その顔の広さで様々な情報を諸侯より受け取っていた。今は、暴徒が出没する地点を地図で示している。
「それから、この一団の首魁は張角と言うらしいのですが・・・。その正体は一切不明だそうです」
「正体不明?」
桂花の言葉に首を傾げる華琳。理由を聞くと、賊を捕え尋問をいくらしようとも誰一人として、話さなかったという。何やら気味の悪い奴らだと皆が思い始めた時である。
「・・・黄巾党・・か・・」
「知っているのか、伊達?」
ポツリと呟いた政宗を皆が見つめる。
「まぁ、名前だけはな・・」
「では、それ以上は言わなくて良いわ」
華琳の言葉で口を噤む
「貴方たちの知っている歴史が、その通りに、この世界で再現されている訳ではないのでしょう?だったらそれは占い師の予言と変わらない。安易な情報は判断を鈍らせるわ」
「別に聞かれねぇなら、こっちも言わねェよ・・・だが、名称くらいは良いんじゃねぇか?」
「そうね・・・ではその名前使わせてもらいましょう」
結局、未来のことは何も聞かないで、名称だけを拝借することとなった。皆も特に異論は無い様子だ
「それで、何か黄巾党の新しい情報を持っている者はいる?」
その言葉に皆は首を振り、特に情報がないことを伝える。
「そう・・・では、当面は情報収集ね。その張角の正体も確かめないと」
会議が終わり、緩んだ空気が場を包んだときであった。一人の兵士が慌てたように入ってきた。
「曹操様!ご報告が・・・」
「何事だッ?」
緩んだ空気は吹き飛び、一転して緊迫とした空気が場を支配する。その中で急かされるように兵士が報告する
「はっ、南西の村で、新たな暴徒が発生したとの報告が、また黄色い布です!」
「休む暇も無いわね・・・さて、早速、情報源が現れてくれたわけだけど、今度は誰が行ってくれるのかしら?」
華琳の言葉に即座に反応したのは季衣だった
「はいっ!ボクが行きます!」
「季衣ね・・・・」
いつもなら、即断即決の華琳が思案し、その隣の春蘭は季衣を、心配するように声を掛ける。
「・・・季衣。お前は最近、働き過ぎだぞ。ここしばらく、ろくに休んでないだろう?」
「だって春蘭様・・・せっかくボク、ボクの村みたいに困っている村を、たくさん助けられるようになったんですよ」
「そうだぜ、季衣よ・・・お前は働きすぎだな」
「チカ兄ちゃんまで・・・!ボク全然疲れてなんかないのに・・・」
二人の言葉に華琳が頷く
「そうね・・・今回の出撃から季衣は外しましょう。確かに、最近、季衣の出撃回数は多すぎるわ」
「華琳さま・・・!」
不服の色を隠そうともしない季衣を華琳が優しく諭す
「季衣。あなたのその心は、とても貴いものだけれど・・・無茶を頼んで体を壊したら元も子も無いわよ?」
「無茶なんかじゃ・・・!」
「いいえ、無茶よ」
「でも困っている人がいるのに・・・」
「そうね。今日の一つの無茶で、季衣の目の前にいる百人は助けられるかもしれない・・・けれど、それは、その先で助けられる何万の人を見殺しにすることに繋がるかもしれないのよ・・・分かるかしら?」
「だったら、目の前の百人は見殺しにするんですかッ!!」
「する訳無いでしょうッ!!」
なお不服の季衣はついに声を荒げるが華琳の大喝でビクッと身を震えさせる。
「季衣よ・・・お前が全てを抱え込む必要は無ぇんだ。お前の手の届かない百人は俺が救ってやる。逆に俺の手の届か無ぇ千人はお前が救うんだ・・・」
「・・・チカ兄ちゃん・・・」
震える季衣を撫でながら元親が続ける。
「良いか・・・?お前は一人じゃねぇ、俺もいるし、独眼竜や右目の兄さん。それに、華琳たちもいるんだ。それとも、俺たちは人一人助けられない程、弱くて信頼も出来無ぇか・・・?」
「そ、そんな・・・そんなことないよっ!」
元親の言葉に季衣は大きな声で否定する。そんな事はないと、皆を信頼していると。
「そうか・・・だったら、分かるよな? 今は仲間を信頼して待ってる時だと・・・明日の万民を助けるためにな」
「・・・うん・・分かったよ。華琳様・・・無茶を言ってすみませんでした・・・」
季衣は素直に納得すると無理を通して皆に心配をかけたことを詫びる。
「良いのよ、季衣。私もあなたを信頼しているわ。だからこそ今は我慢して貰いたいの・・・。いつか無茶をさせる時が来るはず、その時のためにね」
この一言で場は収まった。続いて誰が行くのか編成を決めなくてはならない、そこで華琳は桂花に声を掛け決めさせる。
「御意、では秋蘭と片倉。今回の件、あなたたちに行ってもらうわ」
この言葉に元親が異論を唱える。
「おいおい? 今のは流れ的に俺に来るんじゃねぇのかよ!」
桂花は、フンッと鼻を鳴らすと元親を睨みながら言う
「今回は情報収集が主な目的よ?あんたじゃ一人残らずやっちゃうじゃないのよ!」
「そんな事ぁねぇよ!俺だって・・・」
「うるさいわね、もう決定よ!決定!!」
元親の意見も聞かず強引に話を終わらせる桂花、ちなみにこの二人、元親が桂花の最初の活躍の場を奪い去ったことで、犬猿の仲である。尤も、そう考えているのは桂花だけだが・・・
「では、決まりね・・・秋蘭、小十郎、くれぐれも情報収集は怠らずにね」
「はっ、ではすぐに出立の用意を・・・」
「了解した・・・では、政宗様、小十郎しばし御身を離れます」
こうして、一悶着ありながらも、会議は幕を閉じたのであった。
ここは城の城壁の上、街を一望できるこの場所に政宗と元親、それと季衣がいた。眼下には出立していく兵士たちが見える。
「おい、西海の鬼さんよ・・・中々良い演説だったぜ・・?」
「勘弁してくれよ、独眼竜。今思うと、あんな小っ恥ずかしいセリフ、よくもまぁあんなにペラペラと出てきたもんだと思ってんだからよ・・・」
「そんな事無いよ。チカ兄ちゃんのおかげでボク、大切のものに気付いたんだから!」
元親を茶化す政宗に、それを庇う季衣、なんとも微笑ましい光景が繰り広げられていた。
「でも、本当にボク、全然疲れて無かったんだけどな・・・・」
「今はそうかもしれねぇがな、あいつらの心配はそうじゃねぇのさ・・」
「そうだぜ、季衣。今は良くても絶対に続かなくなる。だから休める時に休むんだ、今のお前はただの村娘じゃねぇ、一軍の将なんだぜ?立場で物を考えなきゃならねぇんだ」
「そうだね・・・」
二人の言葉に小さく頷き、城壁の上に登り、楽しげな歌を口ずさみだした。眼下の兵士も気が付いたのか、こちらに手を振っている。
「・・・いい歌じゃねぇか・・・なぁ独眼竜?」
「そうだな・・おい、季衣。そりゃなんて歌なんだ?」
「さぁ?ちょっと前に街であった旅芸人さんの歌なんだけど・・・確か名前は張角・・・」
「「なんだとッ!?」」
思わぬ所から張角の名前が出てきたことに驚く二人であったが、すぐに我に返り華琳への報告のため城内に向け走りだすのだった。
秋蘭と小十郎はその日の晩遅くには戻ってきた。しかし休む間もなく、報告会へと参加する。
「間違いないのね・・・」
重苦しい空気の中、華琳の声が響く。
「確かに今日行った村にも、三人組の女旅芸人が立ち寄っていたとの報告がありました。恐らく、季衣の見た張角と同一人物でしょう」
「はい、ボクが見た旅芸人さんも、女の子の三人組でした」
「季衣の報告を受けて黄巾の蜂起があった陳留周辺のいくつかの村にも、調査の兵士を向かわせましたが・・・・大半の村で同様の目撃例がありました」
どうやら、その旅芸人の張角がこの事件の首魁で間違いないらしい。しかし、張角がなぜこのような事をするのか、理由が分からなかった。
「大方、大した理由なんてもん、無いんだろうぜ・・・」
「そうだなぁ・・・・旅芸人だからな、歌で大陸を取るとか言ってたら、周りの巾着どもが勘違いして暴れてるだけかもな」
政宗と元親の適当な答えに皆呆れる。
「そんな訳ないじゃない・・・バカなの、この眼帯野郎共は?」
「もしそうだとしたら、余計性質が悪いじゃない・・・大陸制覇の野望を持ってるとかなら、こちらも遠慮なく叩き潰せるのに」
「か、華琳さま?叩き潰すんですか・・・旅芸人ですよ・・・?」
季衣は華琳の苛烈な対応に驚きを隠せない。しかし華琳としてもそうせざるを得ない事情があった。
「夕方、都より軍令が来たのよ。早急に黄巾の賊徒を平定せよ・・とね」
「おいおい、今頃かよ・・・?朝廷が弱ってるのは知ってはいたがここまでとはな・・・」
朝廷の力の無さに呆れる政宗、もはや、朝廷に国をまとめる力は無いのだろう。だが、朝廷の直々の命令ならどれだけ大軍を動かして文句は言われないだろう。丁度いい大義名分が出来た。
「華琳様、大変です。また黄巾の連中が・・・しかもこれまでに無い規模だそうです」
兵の準備をしていた春蘭が勢いよく部屋に駆け込んで来る。どうやら、先手を取られたようだ、華琳が歯噛みする。
「春蘭、兵の準備は出来ているの?」
「申し訳ありません。最後の物資搬入が明日の払暁になるそうで・・・すでに兵に休息を取らせています」
「間が悪かったわね・・・恐らく連中はいくつかの暴徒がより集まったのでしょう・・・これまでと同じ様にはならないわね」
「つまり、奴らの中に指揮官、あるいはそれに相当する者がいる、と言う事か・・」
小十郎の言葉に皆が頷く、厄介な事に時間も無い、悪いことは重なるものである。そんな時であった。
「華琳様ッ!ボクが出ます!!」
これまで、黙っていた季衣が声を上げる。
「季衣・・・!お前は休んでいろと言っただろう」
「でもっ!春蘭様・・・華琳様は言ってましたよね。無茶をする時がくれば使うと、百の民も見捨てないとッ!」
しばし、思案した華琳は告げる。
「その通りだわ・・・。春蘭、すぐに出せる部隊はある?」
「はっ、当直の部隊と、最終確認をさせている隊はまだ残っていますが・・」
「ならば、季衣、それらを率いて先発隊として出立しなさい、それから、補佐に秋蘭をつけるわ」
「え、秋蘭様が・・・」
驚く季衣に華琳は、秋蘭はここ数日で無理をさせているから季衣に指揮官を任せる事、ただし撤退の判断は秋蘭に従う事を伝える。
「ハイっ!よろしくお願いします秋蘭様!」
「ああ、こちらこそ頼んだぞ・・」
命令は下った、後は一刻も早く現場に向かわなくてはと言うときに元親が声を上げる
「俺も行くぜっ!!」
「チカ兄ちゃん・・・?」
「言ったろ・・?お前の届か無い所は俺がやるってな、今回がそれだ。早く助けてやろうぜ、目の前の百人って奴をな・・・!」
季衣は元親の言葉に頷く、そうだ、絶対に助けると、誰も見殺しにはしないと・・・。
「それでは、今度こそ決まりね・・・季衣、秋蘭、それと元親!本隊の到着まで、なんとしても持ちこたえるのよ。それから、桂花は後発部隊の編制を、春蘭と小十郎は明日に来る荷物を今すぐ取りに行き、払暁までには出立出来るようにしなさい!今回の本隊は私が率います、以上、解散ッ!!」
こうして皆、慌ただしく動きだし、残ったのは、華琳と政宗の二人だけだった。
「んじゃ、俺もPartyの前に一眠りするぜ・・・」
「賢明な判断ね、他の者は皆、夜を徹して作業することになるわ、恐らく馬上で休息を取ることになるから、その間に的確な指示が出来る者が必要になる・・・あなたには、期待しているわ」
「期待されんのは悪い気しねぇがな・・・」
「あら、私からの期待が嬉しくないの?それとも・・・もっと違うことを期待した?」
「HAッ!そういうことは全部終わってから、春蘭か秋蘭、桂花あたりにでも言ってやれよ。多分、死ぬほど喜ぶぜ・・・」
そんな冗談を言いながら部屋を出る政宗。明日はきっと忙しくなるだろうなと考えながら、少しばかりの休息を取るのだった。
はい、ここでは、アニキにちょいと気張ってもらいました。次がどうなるかお楽しみに・・・
では、ここまで読んでくださった方には、最大級の感謝を・・・
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ジャンジャンバリバリ投稿しちゃうよ~!どうもKGです。
ここ最近の鬱憤を晴らすように投稿・・・完成度は・・・すいません・・・ってことで一つ・・・