「…ん」
「…?どうか致しましたか、兄上?」
朝食の最中、何かを感じ取ったのか、兄上が箸を止めました。
「こちらに、二万人程、曹魏の軍勢が近づいているのだが…妙だな。」
「…?曹魏の軍勢なら妥当な数だと思いますが?」
何が引っ掛かるのでしょうか?
「数ではない。そのようなもの、元より眼中に無い。」
…兄上は『戦は数』という言葉をご存知でないのでしょうか?
「ハァ…では、一体何が妙なのです?」
僕が若干呆れながら尋ねると、
「いや、敵将の一人から、なにやら御主と同じような『気』を感じたのでな…」
その言葉に、僕は手を止めた。
「僕と同じというと…仙術ですか?」
僕の問いに、兄上は首を横に振った。
「いや、仙術とは異なる。ただ、常人が使いこなせるような代物ではないな。」
「ふむ…気になりますね。」
そんなことを話していた時でした。
「…ん、んぅ?」
おや、賈駆殿が御目覚めの様ですね。
「すみません。起こしてしまいましたか?」
「ん、大丈夫よ…それより何かあったの?」
「曹魏の軍勢が二万程攻めて来ただけだ。」
…兄上?普通の人にとってその様な事態はまったくもって、『だけ』ではないんですよ?
「ちょっ?!大変じゃない!すぐにみんなをたたき起こして対策を――「その必要は無い。」――…え?」
賈駆殿の発言を遮る様に、兄上が断言しました。
「たかが曹魏の雑兵共に一々策を使う必要など無かろう。」
おや、さすが兄上。三国時代…今がそれなのですが、その時最もと言える程の兵力を持つ曹魏の軍勢を、雑兵呼ばわりとは…
「ちょっ、アンタ正気?!二万の軍勢に対してこっちは五百人程度しか居ないのよ?」
「五百だと?」
「賈駆殿。もしやとは思いますが、軍を動かすおつもりですか?」
僕の問いに、賈駆殿は呆れながら答えました。
「はぁ?当たり前じゃない。ボク達はアンタ達に投降したのよ?ならばアンタ達に力を貸すのは常道でしょ?」
いや、まぁおっしゃる通りなんですが…
「…あぁ、賈駆殿?お気持ちは有り難いのですが、そのような考えは不要ですよ?それに、僕らは二人だけで大丈夫ですので。」
僕の言葉に、賈駆殿は「なるほど」といった感じの眼差しで見てきましたが、直後不安げに兄上の方を見ました。
「ん?」
その視線に兄上も気づいたのか、何事かといった顔で賈駆殿を見ています。
「こいつの力量が解り兼ねるのよね…」
…あぁ。そういえば賈駆殿は兄上の戦い振りを御覧になったことが無かったんですよね。
「心配は無用だ。」
「兄上のおっしゃる通り。僕らは曹魏の兵に殺られる程弱くはありませんよ。」
「…わかった。でもこれだけは約束して。」
賈駆殿がそこまで懇願することとは…
一体何なのでしょう?
「なんだ?」
…兄上、もう少し愛想よくできませんか?
「「絶対に…絶対に生きて帰って来て(下さい)。」」
ん?今、賈駆殿とは別の声が…
「ゆ、月?!いつから起きてたのよ!」
「えっと、鋼牙さんが、「その必要は無い」って言ってたところかなぁ。」
…かなり前から起きていらっしゃったのですね。…っと、
「にしても詠がそないなこと言うなんてなぁ〜♪」
「まったくだな。」
「…クスッ。」
おや、皆さん起きていらっしゃったのですか。
「なっ!ぼ、ボクはそういう意味でいった訳じゃ…///」
「だったら何でそない照れとるんや?」
「うっ…」
クスッ。微笑ましい光景ですね。
「大河。そろそろ…」
…もう時間ですか。
「では、僕達は行きますので…」
「…(コクッ)」
「うむ。」
「油断して足元すくわれんようになぁ」
「気をつけてくださいね。」
「むぅ…///」
それぞれに応援(?)して頂き、僕達は戦場へと向かいました。
――所変わって――
ザッザッザッ…
そこには二万を越える兵と、それを束ねている三人の少女達が居た。
「ふぅ…」
その内の一人の銀髪の少女が溜息をついた。
彼女の名は、楽進。曹魏の猛将にして、『退かずの楽進』と呼ばれる『魏の三羽烏』の一人である。
「ん?どうかしたんか凪?」
楽進の真名を呼ぶ薄い紫色の髪をしたこの少女。
彼女は『魏の三羽烏』の一人、李典。
その特徴といえば、彼女の話す関西弁とその…何というか……ふくらみ?
「なぁ、凪?」
「?なんだ真桜?」
真桜は李典の真名である。
「いや、今ウチに対して失礼なモノローグが…」
…何故、彼女は『モノローグ』という言葉を知っているのだろうか?
「…なんだ?その、『ものろぉぐ』というのは?」
「ん?あぁ、それはそのうち話すわ。」
「…??そうか?」
楽進は、どこか納得してない風だった。
と、
「凪ちゃ〜ん!真桜ちゃ〜ん!大変なの〜!」
二人の真名を叫びながら、茶髪の眼鏡をかけた少女が近づいてきた。
「沙和?どうしたんや?」
「何かあったのか?」
沙和と呼ばれたその少女の名は、于禁という。
「それが、斥候の話だと、敵がたった二人でこっちに突撃して来ているの!」
「なに?」
「アホちゃうんそいつら?」
李典がそういって、ケラケラ笑いはじめた。その時――――
「阿保とは酷い言いようですね。」
「曹魏の軍勢ごとき我らだけで充分だ。」
「「「――ッ!」」」三人は敵の存在に、まったく気づかなかった。
「にしても…また女か。つまらんな。」
「いいじゃないですか、可愛らしい人ばかりで…」
…こいつら、本当に強いのだろうか?
三人がそう思った時だった。
「曹魏よ…悪いがここで朽ち果てろ!」
「すみませんが、時間が惜しいので…」
こうして、三羽烏と東堂兄弟の戦いが始まった。
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三羽烏との戦い
文章が稚拙
視点が変わる
キャラ崩壊の可能性あり
三羽烏の性格が想像