夜半過ぎ、北郷一刀の部屋の近くに動く二つの影。
「ふうう、寒いです」
「我慢しろ、明命」
あたりは寝静まっているが、北郷一刀の部屋には未だ明かりが灯っていた。
「一刀様は何をなさっているんでしょう?」
「それを調べるのが私たちの今の仕事だ」
そう、この前冥琳が言ったことで二人の今の仕事は、なぜか夜間の一刀の監視だけであった。
「あ・・・・一刀様が厠・・・・ですかね?」
「・・・・・・・・今が好機、行くぞ明命」
一刀が完全に見えなくなってから、2人は音も立てず部屋に侵入する。
侵入してすぐにその眼に映ったのは、何かが描かれている紙でそれは全部で9枚あった。
「・・・・・・・戻るぞ、それと、私たちは今日何も見なかった、そうだろう?明命」
「は、はい!それでは一刀様が戻ってくる前に、撤退・・・・」
「窓から行くぞ」
すでに一刀の気配を感じているのか、二人は来たときのように音もなく窓から出て行った。
「ふぅ~大体できたから、今日はこれくらいにして寝ようかな・・・・・皆に迷惑をかけるわけにもいけないし」
2人は昨晩の報告に雪蓮の部屋を訪れていた。
「報告は?」
「すみません、昨日は北郷は部屋から出ることはなく、部屋に侵入することができませんでした」
「そうか・・・・・これで振り出しに戻ったわけだが・・・・・」
「冥琳、もうこうなったら無理矢理今侵入しちゃえば・・・・・・・」
「侵入はできるだろうな、しかし、北郷が何をしているかの確証は得られまい、それにあいつのことだ隠しているに違いない」
雪蓮は不機嫌そうに頬を膨らませると、そのまま寝台に倒れる。
「私たちがばれんたいんでーの時にしたように、北郷にも考えがあるんだろう」
「でもー」
「この話は終わりだ、今日は祭殿と一刀が訓練しているらしいぞ」
「えぇ!祭ずるい」
置いてあった南海覇王を握るとそのまま部屋を出て行った。
「雪蓮が入るとなると・・・・私も行かないと北郷が死んでしまうな・・・・・せっかくだ、二人とも一緒に見に行くか?」
「はい、ご一緒いたします」
「なぜ、私が北郷の訓練を・・・・・」
「来たくないなら来なくてもいいのよ、思春」
「・・・・・・・・・・・・行きます」
三人が部屋を出たのと一刀が三人の目の前で地面に着弾したのはほぼ同時だった。
「・・・・・・はっ!北郷!大丈夫か!北郷!」
目の前でぐったりとしている一刀を見て2人は気が動転している。
「思春、明命、衛生兵だ」
「は、ハイ!」
「わ、分かりました!」
二人とも、慌てたようにそのまま走って行った。
「雪蓮!祭殿!二人とも直りなさい!」
珍しく冥琳が語気を荒げている、しかも長く連れ添っている二人が初めて見るほどの剣幕で、である。
「どちらが北郷をここまで飛ばしたんですか?」
彼女らが居た場所から、部屋の前まではゆうに7m以上はある。
「そ、それは・・・・・」
「の、のう冥琳よそこまで・・・・・」
「どちらが飛ばされたんですか?」
顔は笑っているが、こめかみには青筋が浮かび上がっている。
「策殿が・・・・」
「なに、祭だって!」
「いや、あれは策殿の一撃でした」
「そうですか、つまりは二人の同時の一撃だったと」
振り向いた冥琳は鬼のような顔をしていた。
「ひっ!」
振り向いただけで猛将である2人を後退させた。
「う・・・・・んん」
その空気を打開するかのように、一刀が呻く。
「北郷?大丈夫か?」
「ん・・・・・・・ここは?どこ?あなたたちは誰?」
「ほ、本当に分からないのか?」
「そんなこと言っても、何も思い出せない・・・・・」
その後すぐに衛生兵を連れてきた2人が戻ってきた、傷の手当を行うとすぐに医者のもとへと連れて行かれた。
「ふむぅ、激しい衝撃による一時的な記憶喪失じゃな・・・まぁ、そのうち治るじゃろうて」
「他に何か異常はなかったのか?」
「話を聞けば、大怪我してもおかしくはないのじゃが、なぜか大けがはしてはおらんかったのが幸いというべきじゃろう」
話を聞きながら時々首をかしげている一刀を全員が見つめ、全員が同じことを閃き、一刀に気づかれないように牽制を始める。
偶然は重なり、風により燃え上がった焔は燃えあがり猛火となり、大地を焼き焦がす、風はさらに燃えろと、強く強く吹き付け焔を天へと巻き上げる、はたして大地はどうなるのであろうか
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今回、全く予想外の展開にしてみました、はたして一刀の運命やいかに!