No.626127

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第九十九話 文化祭、始まります(後編)

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-10-08 01:35:47 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:27512   閲覧ユーザー数:24258

 3組の催し物も堪能(?)し、校外に出ようとすると昇降口の側で何やら人だかりが出来ていた。

 

 「どうしたんですか?」

 

 すぐ近くにいた人に聞いてみる。

 

 「どうやら迷子の子がいるみたいなんだ」

 

 「???なら迷子の保護部屋に連れて行けばいいのでは?」

 

 確か空き教室の1つが迷子を保護する部屋だった筈。

 

 「それが『知らない人にはついて行かない』って言ってその場を動こうとしないんだよ」

 

 「はぁ…」

 

 確かにその迷子の言ってる事は正しいな。

 

 「ぐすっ…ママァ……」

 

 ん?この声…

 俺は人垣の中に割り込み、その迷子の子を確認する。

 

 「…ルー?」

 

 聞いた事がある声だと思ったらルーテシアだった。

 迷子って事はメガーヌさんとはぐれたのか。

 とりあえず身内である以上、放ってはおけないな。

 

 「ルー…」

 

 俺が声を掛けるとルーテシアは顔を上げて

 

 「おにーちゃん!!」

 

 俺に抱き着いて来た。

 

 「ふえぇ…おにーちゃん、ママが…ママがいないの」

 

 「あー、よしよし」

 

 優しく抱き上げてグズっているルーテシアの頭を撫でてあげる。

 

 「メガーヌさんとはぐれたんだな。けどすぐ連絡してあげるから泣き止もう、な?」

 

 「……ぅん……」

 

 コクリと頷くルーテシア。

 少ししてからルーテシアを地面に下ろし、携帯でメガーヌさんに連絡を入れる。

 コール音がなってすぐにメガーヌさんが出てくれた。

 

 「あっ、メガーヌさんですか?俺です」

 

 『勇紀君!?ゴメンなさい今大変なの!!ルーテシアが…』

 

 「知ってます。今そのルーを保護したんで隣にいますよ」

 

 『本当!?』

 

 俺は携帯をルーテシアに手渡す。

 

 「ママ?」

 

 『ルーテシア!!そこにいるのね!!』

 

 「うん。おにーちゃんといっしょにいるよ」

 

 『良かった…本当に良かった』

 

 電話越しに聞こえるメガーヌさんの声色から安堵している様子が分かる。

 俺は電話を返してもらう。

 

 「俺はこのままルーと一緒にいますから何処かで合流しませんか?」

 

 『ええ、そうしましょう。勇紀君とルーテシアは今どこに?』

 

 「ちょうど昇降口の側です」

 

 『分かったわ。私とジークちゃんは今3階にいるからすぐに下りるわね』

 

 「了解です」

 

 そう言って電話を切る。

 

 「…という事でこの子のお母さんが来るまで俺が付き添いますから皆さんは文化祭を楽しんでいって下さい」

 

 その言葉を聞いて人垣が崩れ、皆『良かったね』とルーテシアに言って去って行く。

 

 「いやぁ、良かったねぇ。勇紀もご苦労さんだよ」

 

 ただ1人残っている人がそう言った。

 ……何でアンタここにいんの?

 

 「お嬢ちゃんも良かったね。お母さんがすぐ来てくれる様になって」

 

 「???」

 

 ルーテシアは俺と手を繋いだまま首を傾げている。

 

 「《…神様、ここで何してるんですか?》」

 

 俺達を転生させてくれた神様が何故かこの世界にいた。

 

 「《息抜きだよ息抜き。たまには羽目を外さないと肩が凝って仕方ないからね》」

 

 「《息抜きって…》」

 

 「《それに神界から見てたけど文化祭、盛り上がって楽しそうだったんでね。私も参加したくなったんだ》」

 

 手にはスーパーボールやらお菓子やらの景品が……。

 メッチャ楽しんでますねアンタ。

 

 「おにーちゃん、あのひとだれー?」

 

 ルーテシアが神様を指差す。

 …何て言おう?

 

 「初めましてお嬢ちゃん。私は君の横にいるお兄ちゃんのご両親の知り合いなんだ」

 

 「おにーちゃんのパパとママのおしりあい?」

 

 「そうそう」

 

 俺がどう紹介しようか考えていたら勝手に父さんと母さんの知り合い扱いになっていた。

 

 「それにしてもお嬢ちゃんは随分勇紀に懐いてるね。勇紀の事が好きなのかい?」

 

 「うん!!おにーちゃんはやさしーからだいすきだよ!!」

 

 神様、ルーテシアにそんな事聞いて何がしたいのさ?

 

 「そーかそーか。そんなお兄ちゃん好きなお嬢ちゃんにはコレをあげよう」

 

 そう言って神様が取り出したのはバナナだ。

 何故にバナナ?

 俺が疑問に思っている間にバナナの皮を剥いてルーテシアに渡す。

 

 「いいの?」

 

 「良いよ良いよ。私はこんだけお菓子ゲットしたからね」

 

 「ありがとー。おにーちゃん、ばななもらっちゃった」

 

 「良かったな」

 

 「うん♪」

 

 嬉しそうに返事するルーテシアはバナナを食べ始める。

 

 「モグモグ…………きゅう~……」

 

 だがバナナを食べ終えると、突然ルーテシアがフラフラし出した。

 

 「ちょ!?ルー!!?」

 

 「あう~……あたまがぐらぐらするよぅ~……」

 

 俺は神様を睨む……が、いつの間にか神様はいなかった。

 ルーが目を回してる原因……どう考えてもさっきのバナナだろう。

 

 「(神様、アンタがルーに食べさせたのは本当にバナナなんだろうな?)」

 

 その後、メガーヌさん、ジークと合流した時にはルーテシアはいつも通りに戻っていたが俺は、後日神様に問い詰めてやろうと心に誓った………。

 

 

 

 メガーヌさんがルーテシアと再会…そしてジークを含め現在は4人で行動中。

 

 「…で、ルーやジークは何かしたい事ないのか?」

 

 校舎の外に並んである模擬店を色々見て回りながら2人に尋ねる。

 

 「んー…(ウチ)は何でもええんやけど」

 

 「あっ、わたしあれやりたい!!」

 

 ルーテシアが指差したのは射的だった。

 店を出しているのは当然『狙撃で撃ち抜いて快感を感じる部』だ。

 ルーテシアが走って店に近付き、ジークも後を追い掛ける。

 

 「メガーヌさん、行きましょうか」

 

 「……………………////」

 

 「メガーヌさん?」

 

 「えっ!?な、なな何かしら!!?//」

 

 「ルーとジークが射的の店に行ったんで俺達も追い掛けないと」

 

 「あっ、そ、そうね//」

 

 「…具合悪いんですか?ちょっと顔も赤い様ですけど…」

 

 俺はメガーヌさんの顔を覗き込む。

 …うん、やっぱ頬が少し赤い気がする。

 

 「いいえ、大丈夫よ。心配してくれてありがとう//」

 

 微笑むメガーヌさん。……やせ我慢って訳じゃないみたいだし、本当に大丈夫かな。

 

 「無理はしないで下さいね」

 

 「ええ(勇紀君の今の姿を見てると…何だか胸の鼓動が早くなるのよね)////」

 

 そう言ってから俺とメガーヌさんは追い掛ける。

 

 「いらっしゃい。1回500円だよー」

 

 ルーテシアとジークは射的用の銃を手に取り、俺とメガーヌさんが2人のゲーム代を支払う。

 

 「「せーの…」」

 

 2人は銃口を前に構えて引き金を引く。

 

 バンッ×2

 

 「「わわわ…」」

 

 撃った時の反動に耐え切れず、ルーテシアもジークも『ペタン』と尻を着く。撃った弾は見当外れの場所を撃ち抜いていた。

 

 「って、それ本物!!?」

 

 俺は思わず声を上げた。

 

 「おっ、よく気が付いたね。どうだい?この重量…撃った時の反動…やっぱり銃なら『トカちゃん』が最高だよね」

 

 店番の先輩は銃を頬擦りし始める。先輩が言う『トカちゃん』…ぶっちゃけ『トカレフ』は正真正銘本物の銃だった。

 

 「いやいや!!海中が治外法権だっていっても本物はやり過ぎだっての!!」

 

 警察に通報したいけどここは銃刀法違反が適用されない治外法権だし、管理局法に照らし合わせて『質量兵器使用の罪』で訴えようにも地球が管理外世界である以上、取り締まるのは不可能。

 

 「心配すんなって。銃は本物だが銃弾はホラ…ただのコルク栓だ」

 

 先輩が見せてくれるのは確かにコルク栓だった。

 

 「なら銃も本物なんて使わないで下さいよ」

 

 「文句は東郷先生に言ってくれ。銃は全部先生の私物なんだ」

 

 いや、部員のアンタも止めろよ。

 

 「これ、おもしろーい♪」

 

 「あはは…ちょいビックリしたけどなぁ」

 

 だがルーテシアとジークは気に入った様子。

 撃つ度に反動に耐えられず、地面に尻を着く。

 撃った弾は一度も的には当たらず景品はゲット出来なかった。まあ、本人達は楽しんでたみたいだから良いんだけど。

 その後もいくつかの模擬店を見て回り、ルーテシアとジークはそれなりに楽しんでいたので良かったと俺は思う………。

 

 

 

 あの後、メガーヌさん、ルーテシア、ジークと別れて1人で再び文化祭を見回っている俺。

 服装はバリアジャケットを解除し、制服姿に戻っている。

 …あの姿、一般人の気を引くのかやたらと視線が集まるんだよ。でも制服姿なら視線も集まらないので、休憩時間が終わるまでは制服でいようと思う。

 

 「うーん…」

 

 とはいえ、1人で回るのは失敗だったかもしれない。

 

 「やっぱ誰かと回った方が楽しいのかねぇ…」

 

 でも俺の顔見知りの連中は皆、仕事中である。何せ休憩する順番をクジ引きで決めたもんだから、誰とも被る事が無かった。

 

 「じゃあさ、私と一緒に回らない?」

 

 「はい?」

 

 突然背後から声を掛けられたので振り返ると1人の女性が立っていた。

 青色のロングヘアーにアクティブな服装。

 

 「Hello、勇紀♪元気してた?」

 

 「あ、アイリーンさん!?」

 

 まさかの人物だった。

 アイリーンさんはクリステラソングスクールの卒業生でフィー姉やゆうひ姉さん繋がりで知り合った人であり、実に数年ぶりの再会だ。

 

 「少し見ない間に大きくなったねぇ」

 

 「そりゃ、最後に会ってからかなり経ってますから。お久しぶりですね」

 

 「うん、久しぶり♪フィアッセだったら挨拶するよりも問答無用で襲い掛かりそうだね」

 

 ……否定出来ない。

 

 「それにしても何故ここに?それに有名人なのに変装しないんですね」

 

 「私の仕事の都合で先日、日本に来たんだよ。で、今日は仕事オフだから久しぶりに街をブラブラしてたらここで文化祭やってたし、面白そうだったからつい…ね。変装はしなくてもバレないわよ。世間のイメージがアレだからさ」

 

 「あー…成る程」

 

 世間的にはエレガントなイメージで売り出されてるけど、目の前の本人様はその事をあまり好いていないんだよね。

 

 「だから今みたいな服装だと変装するまでもないのよ」

 

 「アイリーンさん、『女物の服はヒラヒラしてて好きじゃない』って以前言ってましたもんね」

 

 「お?数年前の事なのによく覚えてるね」

 

 「記憶力は良い方ですから」

 

 ていうかこの人が女らしい私服姿着てるの見た事無いよ。

 

 「うんうん♪その記憶力の良さに免じて私と文化祭を回る権利を進呈しようじゃないか」

 

 「…1人で回りたくないだけなのでは?」

 

 「そうとも言う!」

 

 胸張って威張る事じゃないッスよ。

 

 「俺は別に良いですけどね」

 

 1人で回るのがイマイチだったから誰かと回るか、もう休憩切り上げて教室に戻るかの選択肢しか無かった訳だし。

 

 「よし!じゃあまずはここに行こう!」

 

 アイリーンさんがパンフレットを見て指差したのは

 

 『素人名人会IN海鳴中学文化祭』

 

 だった。

 ここは生徒や一般人が自分の得意なマジックや歌等を披露する自由参加型の催し物だ。

 

 「何か参加する気ですか?」

 

 アイリーンさんだったら歌で参加なんだろうけど素人ちゃうしなぁ。歌以外で何かするつもりか?

 

 「しないしない。ただ、面白そうな物が見れるかもしれないから見に行こうってだけ♪」

 

 「そうですか」

 

 まあ、その意見には賛成だ。

 場所は……体育館か。

 俺とアイリーンさんは体育館の中に入る。

 ステージの側には結構な数の生徒と一般人が並んでいる。アレ皆参加者か。

 適当に空いている席に座り、参加者が披露する芸を見る。

 マジック、漫才をやる人が多く、俺達のいる観客席からは『おーー!!』とか『わはははは』とか絶え間なく観客が反応している。

 

 「うーん…文化祭だとこれぐらいのレベルだよね」

 

 「学生に対してあまりにも高度な芸を求める方がどうかと思いますけど…」

 

 それにこのぐらいのレベルでも盛り上がってるから企画自体は成功と言えるだろう。

 しばらくはステージ上の芸を見ていたけど俺の休憩時間が残り10分程となっていた。

 

 「アイリーンさん、俺そろそろ休憩時間が終わるんで…」

 

 「あっ、そうなの?じゃあ次の芸を見てから出ようか?」

 

 「いや、別にアイリーンさんはここに残っても問題無いですよ?」

 

 「や、勇紀と回る前にも言ったけど1人で回っても仕方ないからね」

 

 「じゃあ、どうするんですか?」

 

 「勇紀の働く姿を見てようかな」

 

 「……別に面白いものじゃないですよ?」

 

 「良いの良いの♪」

 

 「……じゃあ、次の芸が終わったら教室に案内します」

 

 「ラジャー♪」

 

 そして次の芸だが、ステージの上に立った人が

 

 「……恭也さん?」

 

 まさかの高町家長男だった。

 あまりにも予想外過ぎる人の登場…。

 何するんだあの人?御神流で演武でもするのか?

 

 「(けど木刀も模造刀も持ってないし)」

 

 そんな時に恭也さんがポケットから取り出したのは1体の人形だった。

 人形を置き

 

 「…………むん!」

 

 何やら気合を入れると人形がピョコっと動き出した。

 人形は糸か何かで操っている訳じゃ無く、どうやって操っているのかは誰も分からない。

 

 「さあさあ!楽しい人形劇の始まりだよ!」

 

 「ちょ!!?」

 

 笑顔で人形を操作する恭也さん。しかし人形の方は見てるだけで力を削がれる様なよたれダンスを踊っている。

 

 「「「「「「「「「「うおおおおおおおーーーーーーーっっっっ!!!!」」」」」」」」」」

 

 だが観客たちは盛り上がり始める。

 …あのダンスで何で?

 

 「皆、俺の人形劇で大いに笑ってくれ」

 

 「「「「「「「「「「いやっほおおおおおおお!!!国崎最高ーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 「everybody day!!」

 

 「「「「「「「「「「国崎最高ーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 「love&peace!!」

 

 「「「「「「「「「「国崎最高ーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 「俺は『国崎』じゃないZE!!『高町』だZE!!」

 

 「「「「「「「「「「国崎最高ーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 「人の話聞いてるかい!!?」

 

 「「「「「「「「「「国崎最高ーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 「……………………」

 

 ノリノリの恭也さんが何か言う度に観客からは『国崎最高!!』コールが。

 ていうかこのノリ、ゲーム版じゃなくてアニメ版やんか。

 アニメ版の国崎は恭也さんの中の人じゃないでしょうが。貴方の中の人が演じてるのはゲーム版か劇場版ですよ。

 

 「ピコピコ♪」

 

 ……見えん。

 恭也さんの操る人形の横で『ピコピコ』と鳴く謎の生物なんて俺の目には見えんよ。

 観客の皆さんは沸きまくっている。

 恭也さんの人形劇が終わるまで体育館内の歓声は止む事が無かった。

 

 「恭也、お疲れ~♪」

 

 やがてステージから下りた恭也さんを出迎えるのは忍さん。

 せっかくだし挨拶しとくか。

 

 「恭也さん、ノリノリでしたね」

 

 「ん?……勇紀君か。どうしてここに?」

 

 「今、休憩中なんですよ。色々文化祭を見て回ってたもので」

 

 「そうか。恥ずかしい所を見られたな」

 

 照れてる恭也さん。

 

 「ていうか何であんなテンションになってたんですか?それにその人形は?」

 

 「この人形は模擬店の景品で当てたヤツなんだ。で、ここに来た瞬間何故か無性に人形劇をやらなきゃいけない気分になってな…」

 

 それ、明らかに国崎のせいですよね?

 

 「ねえ勇紀。私の事忘れてない?」

 

 いえいえ、忘れてないですよアイリーンさん。

 

 「何々?勇紀君、また新しい女の人引っ掛けたの~?♪」

 

 「引っ掛けたなんて人聞きの悪い事言わないで下さい」

 

 「またまた~……って、アレ?そちらの人どこかで見た事ある様な?」

 

 忍さんはアイリーンさんの顔を見て首を捻って唸る。

 

 「アイリーンさん、自己紹介したらどうです?」

 

 「そうね。初めまして、私は『アイリーン・ノア』って言うの。職業は歌手で勇紀とは彼のご両親…あと、フィアッセやゆうひを通じての知り合いってトコかな」

 

 ピシッ

 

 あ、忍さん固まった。

 

 「忍、どうした?」

 

 恭也さんが声を掛けるも忍さんは硬直中。

 忍さんの前で手をヒラヒラさせるが反応無し。

 

 「あ……」

 

 「あ?」

 

 やっと言葉を発したと思ったらこれはもしや…

 俺は忍さんの背後に回り込み

 

 「アイリー…むぐぐぐ」

 

 やっぱり。

 驚いて大声出そうとしてたので咄嗟に口を塞ぐ。

 

 「忍さん、大声出したい気持ちは分かりますけど先ずはここを出ましょう。他の人の迷惑になりますから。OK?]

 

 「むぐむぐ……」(コクコク)

 

 よし。

 俺はゆっくりと忍さんを解放してからアイリーンさん、恭也さんと共に体育館を出る。

 もっとも出てすぐに忍さんは口を開いたが。

 

 「あ、あああ、あの!!『アイリーン・ノア』さんってクリステラソングスクール卒業生の『アイリーン・ノア』さんですよね!?」

 

 「そうだよ~♪」

 

 「感激です!!まさか本物に会えるなんて!!!」

 

 テンションがUPUPな忍さん。

 

 「忍、この人知ってるのか?」

 

 「何言ってるの恭也!!『アイリーン・ノア』さんと言えばクリステラソングスクールの『若き天才』っていう通り名を持つ有名人じゃないの!!」

 

 「そ、そうなのか…」

 

 恭也さんが忍さんの剣幕に圧されている。

 

 「そうなのよ!!あ、でも今はクリステラソングスクールの講師だった筈じゃあ…」

 

 「よく知ってるわねー。勿論スクールで講師も務めてるけど歌手を止めた訳じゃないからね。今は日本で仕事があるから来日してるのよ」

 

 「そうなんですか!」

 

 物凄く嬉しそうな忍さん。この人、本当にクリステラソングスクールの歌手さんが好きだよね。

 

 「勇紀君、どうして教えてくれなかったの!!?私てっきりクリステラソングスクールの知り合いは椎名ゆうひさんだけだと思ってたのに!!」

 

 「いや、忍さんが好きなのはゆうひ姉さんだけだと思ってたんで…」

 

 「そんな事無いわよ!!私もすずかもクリステラソングスクールの歌手は大抵ファンなのよ!!」

 

 すずかもか。

 

 「うう…こんなところで会えるなんて思わなかったわ。サイン色紙持ってきたら良かった」

 

 若干落ち込んでしまった忍さん。

 けど普通文化祭で有名人になんて会えませんから。

 てかいつぞやのゆうひ姉さんの時みたいに何処からともなくサイン色紙出てきたりしないんだ今回は。

 

 「あはは…でも本当の『若き天才』なら勇紀に似合う言葉だと思うけど?」

 

 「え?」

 

 「勇紀の歌声だってプロと遜色無いレベルだし。ていうかゆうひやフィアッセを始めとした私達の世代は勇紀が歌うのを聞くの好きだよ」

 

 「それ、言い過ぎじゃないッスか?確かに歌うのは好きですけどプロって言う程じゃあ……それにここ数年は発声練習も何もしてませんし」

 

 むしろ練習や訓練と言えば魔法、レアスキルの強化と覇気、六式の習得ぐらいだ。未だにちゃんと習得していないけど。

 

 「そうなの?勿体無いなぁ」

 

 「あはは…すいません」

 

 ちょっと申し訳ないかな。

 

 「それよりお二人はこれからどうするんですか?」

 

 「そりゃ、まだ見てない場所を見て回るつもりだ。ついでになのはの仕事風景も!」

 

 ……後半の方が言葉に力入ってましたよ。

 

 「なら途中まで一緒に行きますか?先になのは達の教室まで行くって言うなら案内しますけど」

 

 「俺は構わんが忍はどうだ?」

 

 「全然OK!!]

 

 2人共異論は無い様なのでアイリーンさんを見ると笑顔で首を縦に振ってくれた。

 

 「じゃあコッチです」

 

 俺が先頭に立って案内する。

 周りの模擬店を見ながらも校舎の方へ近付いていくが途中で1つの看板が目に留まった忍さん。

 

 「どうしたんですか忍さん?」

 

 「ん?コレよコレ」

 

 忍さんが見ていた看板には

 

 『挑戦者求む。最強カラオケ大会。君はカラオケ部の部員より高得点を出せるかな?』

 

 と書かれていた。

 

 「何でカラオケで『最強』?」

 

 どんなカラオケ大会なんだよ。

 

 「…部員に勝てたら『焼肉食い放題無料チケット10人分』らしいぞ」

 

 「わ、しかもコレ駅前の焼肉屋ですね」

 

 レヴィ辺りが行きたがる事間違い無しの景品だな。

 

 「コレは『デュエット部門』の景品みたいだな」

 

 本当だ。『男子部門』『女子部門』『デュエット部門』の3つがあるみたいで『男子部門』『女子部門』は『焼肉食い放題無料チケット2人分』らしい。

 

 「勇紀、『デュエット部門』で出てみない?」

 

 「へ?」

 

 突然アイリーンさんがそんな事を言ってきた。

 

 「よく考えたら私、勇紀と一緒に歌った事ってないし、『コレは良い機会かな』と思ったんだけど、どう?無理強いはしないよ?」

 

 確かに……というかフィー姉やゆうひ姉さんとも一緒に歌った事は無いなぁ。

 アイリーンさんは何処か期待じみた目で見てくるし。

 

 チラッ

 

 時計を見ると残り7分程。もし順番待ちとか無かったら1曲ぐらいは歌えそうだ。

 

 「…順番待ち無しなら参加しても良いですよ」

 

 「「よしっ!!」」

 

 小さくガッツポーズするアイリーンさんと忍さん。

 忍さんが喜んでるのはアイリーンさんの歌声を生で聴けるからだろうな。

 で、カラオケ会場に行けば見事に順番待ちは無かった。

 ただし、歌を聴こうとする観客はメッチャいる。

 

 「いらっしゃいませ。『最強カラオケ大会』に参加ですか?」

 

 「はい。『デュエット部門』でお願いしたいんですけど…」

 

 「かしこまりました。では参加される方お二人はそのままステージ上へ上がって係の者に伝えて下さい」

 

 俺とアイリーンさんは受付担当の生徒に言われた通り、ステージ上に上がる。

 で、そこにいた係の生徒に参加する旨を伝えると

 

 「ではお二人が歌う曲を選曲して下さい」

 

 カラオケの選曲に用いる分厚い本を手渡された。

 俺が受け取り、アイリーンさんが俺の肩越しに覗く。

 

 「勇紀、何歌うの?」

 

 「そうですねぇ…」

 

 普段ならアニソンなんかを選曲するんだけどアイリーンさんと歌うなら…

 

 「コレ(・・)でどうですか?」

 

 俺は1つの曲名を指差す。

 

 「わ、それ(・・)選ぶんだ?」

 

 「せっかく2人で歌うんですから。これなら知ってて当然でしょ?」

 

 「ふふ、そうだね。良いよー、その曲でいこうか」

 

 アイリーンさんも賛同してくれたので係の人に選曲の番号を入力してもらう。

 ちなみにカラオケ大会の最高点は100点満点でデュエット部門の部員が歌ったスコアを見たが『96.558』点と表示されていた。

 

 「(結構な高得点だなぁ)」

 

 アイリーンさんの足を引っ張る事だけはしない様に頑張らないと。

 そして入力が終わり

 

 ~~♪~~♪

 

 メロディーが流れ始めると同時に後ろの巨大なスクリーンに曲名が表示される。その曲は…

 

 

 

 『See You~小さな永遠~』

 

 

 

 やっぱこの曲っしょ。アイリーンさんは『とらハ』キャラだし。

 俺とアイリーンさんはマイクを片手に握り

 

 「長い間なや~んだ~、さびし~さ~と~、ひ~と~のこ~ころ~…」

 

 「み~じかい詩を君におく~るよ~、胸~に~、かい~たこ~と~ばを~…」

 

 静かに歌い始める。

 久しぶりに歌う俺。今は精一杯楽しもうかな………。

 

 

 

 俺とアイリーンさんが歌い終え、メロディーも途切れると

 

 ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!

 

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!!!!!!!

 

 物凄い歓声と拍手が送られた。

 

 「あははー、どうもどうもー」

 

 手を振ってお礼を言うアイリーンさん。

 肝心の得点だが

 

 『99.998点』

 

 と表示された。

 ほぼ満点やん。

 

 「おめでとうございまーす!!カラオケ部の部員が出した得点を超えましたので景品である『焼肉食い放題無料チケット10人分』進呈でーす!!」

 

 係の人から無料チケットの入った封筒を受け取る。

 

 「「「「「「「「「「アンコール!!!アンコール!!!」」」」」」」」」」

 

 観客の人達はアンコール希望らしいが俺はもう休憩時間が…。

 

 「あー…すみません。俺はもう自分の教室でやってる催し物に戻らないといけないんで…」

 

 「「「「「「「「「「えーーーーーーー!!!!?」」」」」」」」」」

 

 いや、そんな不満そうにされても…ねぇ。

 観客の期待に応えられなくて悪いが俺はステージを下りる。当然アイリーンさんは着いて来る。

 

 「勇紀…本当に発声練習してないの?」

 

 「してませんよ」

 

 「それであの歌声…ブランク空いて下手になってるどころか、昔より綺麗な歌声になってるじゃない。自信無くすわよ私」

 

 「そんな事無いですって。本業のアイリーンさんの方がずっと透き通るような歌声でしたし」

 

 そう言いながら恭也さん、忍さんと再び合流。

 

 「うう…感動しましたアイリーンさん!!まさかクリステラソングスクールの校歌(・・)である『See You~小さな永遠~』が聴けるなんて」

 

 「ふふふ、ありがと忍♪」

 

 「勇紀君も上手かったじゃないか。それに歌詞を見ずに歌えてたし」

 

 「そりゃあ恭也さん、俺が作った曲(・・・・・・)なんですから歌えないってのは流石にマズいっしょ」

 

 「「は?」」

 

 俺の言葉を聞いて恭也さんと忍さんの目が点になる。

 

 「…ゴメンなさい勇紀君。今、私には『俺が作った』って聞こえたんだけど?」

 

 「はい、そう言いましたよ。この曲、俺が作った曲でティオレさんが気に入ったからクリステラソングスクールの校歌になったんですよ」

 

 実際には俺が作った訳じゃないけど。

 『涙の誓い』同様に『俺が歌いたいから作った』って理由なんだよね。

 『とらハ』関係の曲は他にもあるけどこの世界においては全て俺が作詞、作曲、編曲しちゃってまーす。

 

 「勇紀の作る曲はスクール内でも人気あるからねー♪」

 

 「ま、『涙の誓い』はフィー姉の持ち歌になってるし、ゆうひ姉さんにも曲作ってあげないといけないし」

 

 とりあえずゆうひ姉さんには『Nameless Melodies~だけど、きみにおくるうた~』をプレゼントしよう。

 

 「あ、良いなーゆうひ。勇紀、私にも専用曲作ってよ」

 

 「アイリーンさんもですか?」

 

 うーん…中の人を考えるとサウンドステージにある『Sweet Songs ever with You』なんだけど、この曲複数人で歌う歌だからなぁ。

 

 「(原作の曲なら『君よ優しい風になれ』かな。初めてアイリーンさんの立ち絵が出た『リリカルおもちゃ箱』のED曲だし)」

 

 「やっぱり難しい?」

 

 「…とりあえずは作ってみますけどあまり期待はしないで下さいね」

 

 「それは無理♪勇紀の作る曲なら期待通りか期待以上の曲しか出来ないだろうから♪」

 

 ハードル上げてくるなぁ。

 それから俺達は雑談をしながら校舎に入って行く。

 こうして海中の文化祭で楽しい思い出を作る事が出来た。

 ただ、初対面のアイリーンさんをシュテル達に紹介した時は何故か睨まれ、カラオケ大会での一件を忍さんが暴露すると凄い剣幕ですずかに詰め寄られ、怒られた。

 

 『どうして私を呼んでくれなかったの!!?』と。

 

 やっぱりすずかもファンだった。

 お詫びといっては何だが打ち上げで『アイリーンさんと一緒に焼肉食い放題に行く』という約束で手を打ってもらった。

 残りの7人分は当然家族であるシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、メガーヌさん、ルーテシア、ジークを対象にした。

 皆に払わせるのもアレだし。

 後、忍さんは当然としてなのは達原作組に亮太、椿姫、謙介、直博、誠悟、更に恭也さんといったメンバーは自腹払ってまで着いて来た。

 そんなに焼肉食いたかったのか?それとも皆アイリーンさんのファンなのか?

 その日は焼肉屋で終始盛り上がり、帰りはノエルさん、鮫島さんを呼んで車で家まで送って貰い1日を終えたのだった………。

 

 

 

 ~~神様視点~~

 

 私は今、頭を抱えている。

 …またやってしまった。

 今日私が文化祭で原作キャラのルーテシアにあげたバナナ。

 実はただのバナナではなく私がうっかりミスで死なせてしまった転生者にあげる筈だったアイテムだった。

 

 「神様、先日貴方が転生させた転生者が死にました」

 

 部下の天使Aが報告してくれる。

 

 「…私のせい…だよな?」

 

 「当然です。本来なら彼にあげるアイテム…『ヒエヒエの実』であったのに」

 

 そう…私が転生させた者は悪魔の実である『ヒエヒエの実』を願いに選び、『ワンピース』の世界に転生していった。

 もっとも『マズい悪魔の実は食いたくない』という事で生前、彼の好物だったバナナにしてあげたのだが……。

 クザンが存在してるから普通はヒエヒエの実の能力者は彼以外にいない筈だが、そこは原作ブレイクって事で何とかなる。

 

 「彼に渡したのが普通のバナナ(・・・・・・)でルーテシアにあげたのが『ヒエヒエの実』だったとは…」

 

 おかげで彼は転生してすぐ食ったバナナをヒエヒエの実と思い込み、山賊に出会った際、受け流せる攻撃を受け流せず、そのまま斬られて死んでしまった。

 

 「…済んだ事は仕方ないです。とりあえずこの前転生させた彼の魂をもう一度ここへ連れて来るので今度こそはうっかりしないで下さいよ」

 

 「……はい」

 

 部下の天使Aは私に怒った後、部屋を出て行く。

 多分、勇紀は怒るだろうね。私のせいでルーテシアが氷結人間になった事に。

 その予想通り、後日勇紀が理に頼んで私と連絡をつけた際に、ルーテシアに食べさせた『ヒエヒエの実』の事について言うと物凄い剣幕で私に迫って来た。

 モニター越しとはいえ、超恐かった。

 ゴメンなさい……駄目な神様で本当にゴメンなさい………。

 

 

 

 ~~神様視点終了~~

 

 ~~あとがき~~

 

 文化祭編も長くなったので前後編にしました。ついでに後編の方はタグが1つ追加されてます。(笑)

 それとコンプエースの最新号に連載されている『リリカルなのはINNOCENT』と『なのはViVid』4巻を読み返していたら誤字がありました。

 まず『リリカルなのはINNOCENT』ですが

 

 

 

 チームA:なのは&アリシア

 

 チームB:フェイト&アリシア&すずか

 

 

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 アリサは何処行った!!?

 『チームBの方はアリシアちゃいまっせ…てかアリシアが分裂してますやん!』と思わず突っ込んじゃいました。

 

 次に『なのはViVid』4巻ですが『Memory;20』の最後の方に書いてある

 

 

 

 『新暦89年度』

 

 

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 『79年度ちゃうの!?』と叫んじゃいました。

 89年度ならほとんどの人が年齢制限で…

 ま、この小説には関係無い事ですのでどうでも良い事なんですけど。

 


 
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