side 零樹
ネギは結局英雄の子供と言うことを拒否した。自分はネギであり、英雄の子供ではないと。そしてオレと一緒に居たいと言った。オレはそれを受け入れる義務がある。完全なる世界は黄昏の巫女の情報を求め、オレはアスナおばさんの情報を売った。その後オレ達は旧世界に戻り、顔を変えてロンドンに拠点を置いた。心配しているであろうネカネに連絡を入れると自分もそちらに置いて欲しいと言われ許可した。ネギは魔力の大半を封印し、普通の学校に通った。学力的には大学にも入れるが目立ちたくは無かったし、普通の友達も作って欲しかったのでジュニアスクールに編入した。オレは海鳴市の時に経験している小さなレストランを開いて日々を過ごしていた。ネカネはその手伝いだ。そんな生活を初めて1年も経たないうちに魔法世界は消滅し、完全なる世界へと移行した。そしてその半年も経たないうちに魔法世界の基盤である火星に取り残された魔法使い対地球の非魔法使いの戦争が始まった。態々火星の魔法使い達は山奥などに拠点を置こうとせず、都市部への攻撃を繰り返してきた。一から作るより奪った方が良いと考えたのだろう。傲慢さが隠せても居ない。そんなことを繰り返す所為で魔女狩りが行なわれだした。中世時代よりはマシだが、少しでも不自然であれば拘束して自白剤などを使われて自供が取れれば嬲ってから処刑された。そして少し経験が出来ると法則性が見えてくる。麻帆良の様な魔法使い達が運営している施設の出身者達にそう言う傾向が多いということに。かなりの数の各施設に対して火星からの魔法使い達を一時無視してまで軍を差し向けて占拠し、その手に入れた情報から芋づる式に情報はバレ、魔法使いの隠れ里も荒らされていった。戦争は激化の一歩を辿り、遂には核を持ち出した。この時点でオレはこの世界を見限り、ネギとネカネを連れて別の世界に渡った。渡った世界は特に変わった事の無い普通の地球の普通の世界だった。まあ若干アイドルの活動が凄い位で、魔法もロボットも無い世界だった。そこでまたレストランを開いていたらミシュランに取り上げられ、いつの間にか三つ星まで貰ってしまった。やはりダイオラマ魔法球の牧場の素材を使ったのが原因だろうか?『トリコ』の世界みたいな牧場だからな。酒も数百年単位で熟成してる物ばかりだしな。ダイオラマ魔法球万歳。
ネギの方はアリカさんの様に綺麗に成長していき、男にもかなりモテていたのだがそれを全て振って、何をトチ狂ったのかオレに告白してきた。あの旅をする前からオレの事を意識し始めていたらしい。それで卒業試験に合格すれば告白するつもりだったらしい。だが、卒業試験の内容がアレでオレにあの旅をさせられて普通の暮らしをして成長するに連れて色々と考え直し、問題無い位まで成長、つまり成人するまでは胸に秘めておく事にしたそうだ。そして、ネカネまでオレに告白してきた。モテ期が到来しても嬉しく無い。オレはアリスに会いたいんだから。でもここで放っていくのは後味が悪いし、自分の子供を育てたいと言う欲望からついつい流されてしまい、結婚もしないままに二人を囲って暮らしていた。やはり、オレの所為なのか子供が出来難いのか10年経っても子供は出来なかった。そしてネカネが50手前にやっと妊娠して産まれた娘を見て、直感的に感じた。
この子、アリスだ。
三年程すると、ぽかんとした表情で周りを見渡している娘を見て確信した。オレの姿を見るともの凄く驚いて号泣しながら抱きつかれて、仕方なくダイオラマ魔法球に案内して事情を説明したら殴られた。三歳で完全に魔力を扱うどころか咸卦法まで使える所を見ると経験は完全に引き継いでいるみたいだ。投影も出来るみたいだけど、世界からの修正をモロに受けている為に2秒も持たない。相変わらず精霊に認識もされないから詠唱魔法も使えない。固有結界は毎回リセットされる。産まれて三年経つと記憶を取り戻すらしい。そしていつもいつもあのボケの妹として不遇の環境なのですぐに逃げ出して魔法世界で自由気ままに暮らし、稀に転生者が居たら邪魔なので殺したりしてたらしい。説明が終わってから、改めて再会を祝した。本当に長かった。あれから既に3000年以上経っている。こうしてちゃんと触れ合えて、話せるのがこんなに嬉しい事だったなんて。
そして時は流れ、ネカネとネギの最後を看取ってからアリスに不老不死を施す。本人の希望で真祖の吸血鬼への転生の儀式を行う事になった。用意する物は棺桶とチョークと供物の3つだ。まず最初にチョークで魔法陣を描く。円の中心に棺桶を設置し、中央から伸びる様に8本の線を書き、線と線の間にルーンを刻み込んでいく。内容は大雑把に言えば悪魔の様な神の様な存在に、『供物を捧げるから化け物にして下さい、出来ればこういう化け物で』という物だ。それが終われば隣にまた別の円を書き、中央に供物を置いて円の中に悪魔の様な神の様な存在を褒めた耐える言葉と『これが隣の儀式の供物です』と書く。後は魔法陣に魔力を流し込めばOKというわけだ。ちなみに供物は人の魂が望ましいと思われていたのだが、別に生物だったら何でも良いみたいだったので『牧場』から鶏っぽいのを三十羽程用意した。サイズは普通だけど、走る速さが異常で空も飛んだりするけど鶏だ。まあその鶏をノッキングした状態で供物用の陣の中央に置き、アリスには棺桶に入ってもらう。蓋を閉めたら後は魔力を陣に注ぎ込んで起動させる。5分程で儀式は終わり、アリスが棺桶から出てくる。
「ふぅ、これで私も人外ですか」
「そうだな。ああ、真祖の吸血鬼と言っても数年は吸血鬼の弱点がモロに出てるから。日光とか浴びるとかなり怠い。流水は痛いし、吸血衝動もある」
「分かります。というか、今にも血を吸いたい位ですから」
「いきなり新鮮な血を飲むと墜ちるから。あと、魔力が混じってるのも危険だから当分は輸血パックで我慢して。アルコールでも多少は誤摩化せるから」
アリスに輸血パックとストローを渡すとそれをすぐに飲み始める。
「詳しいんですね」
「オレも人間ベースから吸血鬼ベースに転生したから。メイサが死んだ時、オレの再生がもっと速ければ助けれたかも知れないと思って」
実際の所、メイサは即死だったから無駄なんだがな。
「むぅ、しばらくは大人しく修行をしておくしかありませんね。手伝って貰えますよね」
「無論だ」
その言葉と同時にオレ達は全力での戦闘を開始する。
「ようやく真祖の身体にも慣れましたね。もう三十年はかかるとおもっていましたが」
「多種多様な環境を用意したからな。それより『博覧会』の補充の方は良いのか?ほとんど無いんだろう」
「さすがに私と零樹の二人だけでは限界がありますから、先にリーネさん達と合流しましょう。色々な世界の知識の蒐集とかもしたいですし」
「分かった。では行こうか」
世界を渡る銀色のオーロラを潜る。姉さん達が通ったと思われる場所を辿って行き、辿り着いたのは綺麗な海に囲まれた水上都市だった。
「ヴェネツィアか?」
「いえ、ヴェネツィアにしては気温が高いですし、何よりあの空に浮かぶ島は?空を飛んでいるバイクらしき物もありますし」
「とにかく姉さん達に合流した方が良さそうだな」
魔力の気配を辿って街中を散策していると、奇妙な魔力を感じた。
「確認して見るか」
「そうですね」
細い路地を歩いて行くと、白い動物と桃色の髪の少女が一つだけ大きな石畳に飛び乗っていた。奇妙な魔力はこの辺りから漂っているのだが、それらしき物が見つからない。そしてそれは一瞬の事だった。少女の姿が消え、その場に帽子だけが取り残される。
「アリス!!」
「ええ!!」
少女を追う為に二人で大きな石畳を踏み、魔力を通してゲートを開く。繋がった先は魔力と思念に満たされた不思議な空間だった。そこには綺麗な蒼い星と、先程の少女、そして黒い大きな猫の姿をした大精霊の姿があった。
「なんなんだ、あの猫は!?」
「大精霊クラスとは言え、あそこまで実体を持っているなんて」
「どれだけの思いと魔力を使っているんだ。それよりも早く彼女をここから出さなければ、魔力酔いで人格が崩壊するぞ」
急いで駆け寄ろうとした所でこの空間に侵入する気配を三つ感じる。それは良く知る三人の気配だ。
「久しぶりね、零樹。それにアリスも」
「姉さん、お久しぶりです。ですが、今は」
「良いの。しばらくはあのままにさせてあげて。最後の別れなの」
「「最後?」」
「事情は後で説明するわ。だから、そっとしてあげて頂戴」
「分かったよ。色々と報告もしたいしね。それから」
オレの魔力を使ってあの少女を覆う。オレの魔力がこの空間の魔力を中和してくれるので少しはこの空間に居れる時間が増えるだろう。
「優しくなったのね」
「色々あったからね」
「それは興味深いね。一体何をしていたのやら」
事情を話したオレは現在、4対1でのハンティングに発展していた。オレのあまりの身勝手さ+子供を作っていた事に対する嫉妬など諸々の感情で襲われている。
「エターナルフォースブリザード」
「永遠の渇き」
「斬界剣」
「停止解凍、全投影連続層写」
色々な物が飛び交う荒野をひたすらに走り続ける。幾らオレでもまともに喰らえば死ぬ様な物ばかりだ。オレは全力で逃げ回っている。オレが悪いのは理解できるから反撃なんて出来ない。皆の気が済むまでオレは逃げ続ける。
二週間経った頃には魔力と気が無くなり地獄の鬼ごっこが終了する。
「相変わらず回避が上手いわね」
「二週間でクリーンヒットが7回。それも僅か数秒で全快されてしまうとはね。やはり石化や氷付けにして砕くしか無いのか」
「さすがにそこまでされると自分だけで再生出来るか不安だから止めてもらえると助かるんだが」
「ディオみたいに首だけにして持ち運んだ方が良いんじゃないですか、姉上」
「いや、それも出来れば勘弁して欲しい。首だけとかになったら仮死状態になるから」
「そのまま肉体を他の物に取り替えます?」
「本気でディオみたいじゃないかよ」
「冗談ですよ」
「まったく。それより姉さん、茶々丸の墓、案内してもらえますか。オレもアリスも、ブラザーズとシスターズも」
「ええ。魔力が回復したら行きましょう」
しばらく休憩した後に連れて行かれた場所は、あの少女と大精霊が居た空間に似た、綺麗な空と海が見えてたくさんの猫が暮らしている島だった。その島のちょっとした崖になっている所に墓石を背にして茶々丸が寝かされていた。
「茶々丸」
オレとアリスが代表として茶々丸が好きだった花で作った冠を被せてあげる。
「よく姉さんを守ってくれた。ありがとう。家族として誇りに思うよ」
「茶々丸さん、短い付き合いでしたが本当にお世話になりました。ゆっくりと休んで下さい」
『『『おやすみなさい、姉さん』』』
ブラザーズとシスターズの言葉の後に黙祷を捧げる。それが済めばこの島の主であるあの大精霊に会う。
「茶々丸の事をよろしく頼む」
目の前に居るこの大精霊は火星の魔力とモデルになったヴェネツィアに伝わる伝説の猫の精霊、ケット・シーがネオ・ヴェネツィアに住む人達の思いから産み出された存在だそうだ。大精霊としては若い存在だが、ネオ・ヴェネツィアに住む人達と同じく心優しい存在だ。
「これはオレとアリスからの贈り物だ。受け取って欲しい」
姉さんが言うにはあの少女はブログをよく更新しているらしいので色々と改造を行なったノートPCを、アリスは普通の人をケット・シーの住む空間の魔力から身を守る為の毛布を贈った。
「お前がどれだけの間この空間を維持出来るのかは分からないけど、出来るだけ長く生きてくれ」
合流したオレ達は半月程の休息を取った後に新たな世界に旅立つ事にした。いつまでも立ち止まっているわけにはいかない。オレ達は父さんに追い付く為に旅に出たのだから。
さあ、旅を続けよう。
次の世界を何処にするのかが決まらずに困っています。
なのでリクエストを受け付けようかと思います。
無双状態で走り続けるので何処に行こうと2、3話で次の世界へと渡って行きます。
なるべく戦闘が行なわれそうな作品のリクエストをお待ちしております。
あっ、ISだけは幾つかの世界を旅した後に行くのが確定しています。
そして、新たなるステージが開幕します。
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さあ、旅を続けよう。
by渡り人一同