No.617653

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第九十四話 運動会、始まります(中学1年生・後編)

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-09-09 12:27:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:23493   閲覧ユーザー数:20851

 「うまうま~♪お昼ご飯うま~♪」

 

 午前中の競技が終了し、現在は昼休み。

 応援に来てくれていたメガーヌさん、ルーテシア、ジーク、テスタロッサ家の使い魔お二方、守護騎士一同、月村家といった家族、保護者一同と合流し皆仲良く昼食タイム。

 高町家は翠屋、バニングス夫妻は仕事で多忙のため今日は来ていない。

 ちなみに現在メガーヌさんはルーテシアを連れてお手洗いへ行ったため、席を外している。

 

 「何ていうか…物凄いルールだな。『何やっても良い』だなんてよ」

 

 「中学校の運動会って物騒ですぅ。リインは狙撃なんかされたらひとたまりもないですぅ」

 

 「聖祥の運動会ってもっと平和だったわよね?」

 

 ヴィータはおかずをつまみながらもやや呆れた感じで言い、リインは小動物の様にプルプル震え、忍さんはやや苦笑混じりに言う。

 

 「海小の場合でもここまでは無かったですからねぇ」

 

 「ていうかユーリは何の競技にも出ないのか?」

 

 午前中でユーリは何1つとして出場していない。

 まあ、全競技に参加せず見学に徹するのも良いらしいけどね。

 

 「…出たいのは山々なんですが皆が止めるんですよ」

 

 理由は聞かずとも分かるけどな。

 

 「ていうか勇紀。アンタの後ろにいるチビッ子は誰なのさ?」

 

 アルフさんの一言で視線が俺……の背に隠れているジークに集中する。

 リンディさん以外の面子に紹介するのは今日が初めてだ。

 てか今まで顔合わせさせる機会が無かったんだよね。皆の都合が合わなかったせいで。

 非魔導師のアリサやすずかでさえ、習い事や家庭の事情で無理だった。

 

 「以前から紹介しようと思っていた義妹です」

 

 自己紹介させようとジークに促す。

 

 「じ…ジークリンデ・E・長谷川です//」

 

 「「「「エレミア?」」」」

 

 ジークの名前に反応したのは守護騎士のヴィータ、シグナムさん、シャマルさん、リンスの4人。ザフィーラは狼形態のため、周囲の視線を警戒してるのか言葉は発さない。人間の姿で来たら良かったのに。

 

 「なんや皆?どうかしたん?」

 

 「いや…何つーか」

 

 「その『エレミア』という単語に何か聞き覚えがある様な気がして…」

 

 「思い出せそうで思い出せないんですよねー」

 

 ヴィータ、シグナムさん、シャマルさんは首を捻って思い出そうとしている。

 

 「……おそらく『彼』の事だろうな」

 

 そんな中、ポツリとリンスは呟く。

 

 「お姉様、何か知ってるですかぁ~?」

 

 「古代ベルカ時代、当時の夜天…いや闇の書の主が『エレミア』と名乗った人物と相対した事があった」

 

 成る程。だから守護騎士の皆は聞き覚えがあるっぽいのか。

 古代ベルカ時代だったら歴代のエレミアの内の誰かと戦場で会っていても可笑しくないだろうし。

 

 「『彼』は強かったな。666ページ分蒐集し、主の命が尽きるまでの間、当時の私と互角に戦えるだけの実力と技術があった」

 

 何それ?公式チートキャラか?

 全ページ埋まった状態のリンスと戦えるとか…。

 俺だったらレアスキル無かったら確実にお陀仏だな。

 

 「???私の記憶にはそんな人物の事なんて微塵も残っていないんですけど?」

 

 ユーリは首を傾げる。闇の書の奥深くで眠りながらも外の様子を把握していたっぽい彼女。

 

 「むぅ…ユーリの記憶には無いというのか。ならそんな男など存在しないのでは?」

 

 「ですがリンスが嘘を吐いてるとも思えませんし、嘘を吐く理由も無いですし…」

 

 「不思議だねー」

 

 我が家のメンバーは不思議に思ってるけどお前等、肝心な事忘れてないか?

 

 「お前等、そもそも平行世界から流れてきた存在だろうが」

 

 「「「「…………あ」」」」

 

 俺が言って思い出した様子の4人。それだけこの世界に馴染んでいるって事だから良い事なんだけどさ。

 つまりはコイツ等の元いた世界とこの世界のベルカ時代の歴史は微妙に違うって事だな。

 

 「そう言えばそうだったね」

 

 「あまりにも自然にいるからすっかり忘れてたよ」

 

 なのはとすずかが口にし、他のメンバーも『うんうん』と頷く。

 ……つまり皆忘れてたのね。

 

 「???」

 

 ジークは頭の上に疑問符を浮かべ、首を傾げている。

 そういやシュテル達が平行世界から来た事を伝えていなかったっけ。後で言っておくか………。

 

 

 

 「よしテメー等、昼食と休息は充分に取ったな?」

 

 「「「「「「「「「「ウッス!!!」」」」」」」」」」

 

 昼休み終了。

 午後の競技が開催される。

 

 「さて、午後の最初の競技は……」

 

 全員が電光掲示板に注目する。

 

 『くす玉割り競争』

 

 グラウンド内で先生達がテキパキと競技の準備をしている。

 グラウンドの中央に大きなくす玉が吊り上げられ、くす玉の真下に棒が2本設置される。

 

 「ルールは簡単だ。あの棒をよじ登り、下からくす玉を殴って割ればいい。くす玉を割ったチームの勝ちだ」

 

 「棒が2本しかないのですが?」

 

 「当然他のチームの連中は棒をよじ登る奴を妨害して良い。下から引き摺り下ろしたり棒の周囲から物を投げつけて落下させたりな」

 

 確かに、先生達は棒の周囲に投げつけられる様な物を置いている。

 

 「ちなみに今回のゲームに関しては参加メンバーは1試合につき各チーム2人での出場だ」

 

 タッグパートナーを選んでの参加か。なら1人が棒をよじ登り、もう1人が支援する形になるな。くす玉を割るのに集中出来る様に他チームのメンバーを1人で相手取らないといけないが。

 

 「それにこのくす玉割りは参加メンバー以外の介入は認められていない」

 

 つまり400メートルハードル走の時の狙撃なんかをしてはいけないって事か。『勝つためなら何でもアリ』って言ってた割りには随分優しい事で…。

 

 「もし援護でもしようものなら……」

 

 「「「「「「「「「「しようものなら?」」」」」」」」」」

 

 「2学期の間はマグロ漁船行きだ」

 

 「「「「「「「「「「マグロ漁船!!?」」」」」」」」」」

 

 「しかもそこで働かされ、稼いだ金は全て校長の懐に入ってしまう」

 

 な、何て理不尽な…。

 完全にタダ働きも同然じゃないか。

 

 「故に校長は嬉々として外部の乱入を望んでいる。ちなみに去年はミシェルがマグロ漁船に乗せられた」

 

 ナンテコッタイ。凄腕のスナイパーさんが犠牲になっていたなんて。

 

 「だから決して応援してる奴等は横槍を入れようとするなよ。まあマグロ漁船に乗りたいなら止めはせんが」

 

 そこまで言われて実行しようとする奴は余程の馬鹿ぐらいでしょう。

 

 「まあ、今は選手の選抜をしないとな。誰か参加したい奴は?」

 

 「はいはいはーい!!僕出たい!!」

 

 真っ先に立候補するのはレヴィ。何気にコイツ、今日は全種目出場している。

 

 「もう1人は?レヴィ嬢とパートナー組みたい奴いないのか?」

 

 「「「「「「「「「「その役目!!是非私目に!!!」」」」」」」」」」

 

 一斉に挙手して立候補する男子生徒達。理由は言わずもがな。レヴィにカッコイイ所を見せて自分をアピールするためだろう。

 しかし候補があまりにも多過ぎるため、ジャンケンで決める事になった。

 

 「いよっしゃああああぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!」

 

 ……どうやら決まった様だな。

 

 「クソッ!!せっかくのチャンスが!!」

 

 「何故俺はあそこでチョキを出さなかったんだ!!」

 

 敗者となった連中は両手両膝を地に付け、俯いてジャンケンの結果を悔いている。

 逆に勝者の彼は満面の笑顔でテンションMAX状態。今にでも小躍りしそうな勢いだ。

 

 「???ユウは出ないの?」

 

 「最初は様子見」

 

 「むー…一緒に出れたら僕、嬉しかったのに」

 

 むくれるなむくれるな。それより早くグラウンドに行きなさい。

 

 「さてさて…相手は誰が出て来るかなぁ?」

 

 不満そうにしながらもゆっくりとグラウンドへ向かうレヴィの後ろ姿を見送りつつ、対戦相手である白組と青組の選手を見る。

 白組は男子生徒2人、青組は男子生徒と女子生徒のペア。

 

 「それではくす玉割り……スタート!!」

 

 ピーーーーーーッ

 

 主審役の先生が笛を吹き、同時に棒を登ろうとする生徒と、周囲に落ちている物を使って相手を妨害しようとする生徒に別れ、ゲームが始まった。

 

 「うーん…どれにしようかなぁ」

 

 レヴィは落ちている物を見て、どれを拾うかで悩んでいる。

 落ちている物と言えばバスケットボールや卓球のラケット、カラーコーン等、スポーツで使用する物ばかりだ。

 

 「……決めた!!これだ!!」

 

 そう言ってレヴィが手に取ったのは剣道の竹刀だ。

 

 「周りの連中は僕が牽制するから君は棒を登ってくす玉を割るのに集中する様に」

 

 「サー!!」

 

 そう言って赤組の男子生徒は棒を登っている白組の男子生徒にボールをぶつける。

 

 「うわ!!」

 

 ボールをぶつけられ、バランスを崩した男子生徒はそのまま落下する。

 ……背中から地面に落ちたぞ?痛いだろうなぁ。

 それでも反則は取られない。

 白組の男子生徒を落とした後は空いた棒を登っていき、棒の先端部分の近くからくす玉の下の部分を殴り始める。

 

 「さあ来い!!」

 

 ブンッと竹刀を振って棒の下で陣取るのはレヴィ。あれで棒に近付く連中を撃退するみたいだな。

 

 「おい、大丈夫か?」

 

 「痛ててて…あの野郎、よくもやってくれたな!」

 

 白組は先程落ちた男子生徒と合流。

 相当怒っている。

 

 「ねえ、早くしないと赤組に負けるわよ?」

 

 「分かってるって。けど…」

 

 青組の男女ペアはレヴィをチラリと盗み見る。レヴィをどうにかしないと棒には登れないからな。

 

 ドカッ!ドカッ!

 

 そんな事をしている間にもくす玉を攻撃している赤組の男子生徒。

 

 「クソが!!死ねええええぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!」

 

 白組の男子生徒が落ちているテニスボールをくす玉攻撃中の赤組男子生徒に殺意を込めて全力で投げる。

 

 「ぶべらっ!!?」

 

 見事テニスボールは男子生徒の頬に直撃し、そのまま身体が傾いて棒から落ちていく。

 

 「えっ!?……にゃーーーーっ!!」

 

 ビュンッ!!

 

 自分の真上から人が落ちてきたレヴィは即座に『剃』を使って棒の下から離れる。レヴィが消えた様に動いた事に対して誰も突っ込まないのは海中だからだろうか?

 まあ去年海小の運動会でユーリが『剃』使った時も『可愛いから許される』の一言で済んだぐらいだ。深く気にしたら負けという事だろう。

 

 「ぐはっ!!」

 

 そのまま地面に直撃した男子生徒。やっぱり痛そうだな。

 

 「よっしゃ!!」

 

 やり返す事が出来た白組の男子生徒はガッツポーズ。

 それを機にもう一人の白組男子生徒と青組の男子生徒が棒をよじ登り、くす玉を攻撃し始める。

 

 「お前も落ちろ!!」

 

 「させないわよ!!」

 

 白組の男子生徒は再びテニスボールを拾って投げようとするが、青組の女子生徒はそれを阻止するため、先に硬球を投げて牽制する。

 …今更だけど硬球とかラケット、木製とはいえバットなんて投げたら危ないよな?

 病院に担ぎ込まれる様な事態にはならないでほしいもんだ。

 俺も怪我したらどうしよう?皆に迷惑掛けるよなぁ。

 

 「何なら俺が保健室で介護してやるぜ。それはもうじっくりと……な」

 

 阿部先生が笑みを浮かべながら言う。

 

 ゾクリ

 

 ……何だこの悪寒?

 阿部先生が介護すると大事な何かを奪われそうな…。

 

 「(やっぱあの阿部さんで確定だよな)」

 

 俺は絶対に怪我しない様にしよう。いざとなれば人目の無い所で治療魔法使って治せばいいし、最悪修正天使(アップデイト)使おう。うん。

 ていうか心を読まれた事にもうビックリしない自分がいる。

 だって海鳴にいる人の大抵がこのスキル、デフォルトで持ってるもん。おちおち隠し事も出来やしない。

 あと、阿部先生。ちゃんと保険の先生いますから彼の仕事を奪わないでやって下さい。

 

 「ぐう…ま、負けてたまるか(れ、レヴィさんに俺の勇姿を見せてアピールするんだ)」

 

 む?赤組の男子生徒がゆっくりと身体を起こし始める。

 けどかなりダメージを受けているみたいだ。中々起き上がれない。

 

 「むー…こうなれば僕が一気に決めるしかないよね」(ボソッ)

 

 白組と青組の競り合いを見ているレヴィが何か小声でつぶやいていた。

 何かする気か?

 レヴィは未だに手に握り続けている竹刀を見て『うしっ!』と軽く気合を入れて男子生徒に近付く。

 

 「ねえ君、四つん這いになってくれない?」

 

 「は?」

 

 「だから今四つん這いになってほしいんだよ。僕の作戦通りならそれで勝てるから」

 

 「は、はあ…」

 

 理解は出来ないが言われた通りに四つん這いになる男子生徒。その様子を見てレヴィは満足気に頷く。

 

 「うん!そのままの格好を保ってね」

 

そう言ってレヴィは徐々に離れて行く。

 

 「レヴィさん…何をするつもりかしら?」

 

 「何となく予想はつきますけど…」

 

 「彼、可哀相ね。まだ身体にダメージ残っているでしょうに…」

 

 リンディさんは頭に疑問符を浮かべているが俺とテレサはレヴィの行動に察しがついた。

 

 「たああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!」

 

 ダダダダダダッ……ダンッ!!

 

 一気に四つん這いしている男子生徒の方へ駆け出し、そのまま男子生徒の背中を踏んで飛ぶ。

 

 「お、俺を踏み台にしたああぁぁぁっ!!?それと背中痛てえええぇぇぇぇぇっっ!!!」

 

 男子生徒はその場でベシャッと倒れ込み、レヴィはドッヂボールの時同様に空高く舞う。

 ……助走も踏み台役の男子生徒も必要無いだろお前。

 

 「いっくぞーーーっ!!!」

 

 レヴィの身体が落下し始めると共に、大きく竹刀を振り被る。

 

 「ちょ!?おい、レヴィさん撃ち落とせ」

 

 「馬鹿言うな!!天使に怪我をさせたら大変だろうが!!」

 

 「なあ、レヴィさんを何とか止めてくれ」

 

 「分かってる!!でも手頃な物が近くに落ちていないのよ」

 

 白組、青組共に徐々に落ちてくるレヴィを止める手段が無い。

 

 「うりゃあああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!」

 

 そしてそのまま誰にも妨害される事無くレヴィは竹刀を振り下ろし

 

 ボゴンッ!!

 

 くす玉は見事に割れた……下からではなく上からだが。

 

 ピーーーーーーッ

 

 「勝者、赤組!!」

 

 主審役の先生の声が高らかに響く。

 

 「いえーーーい!!僕の大・勝・利ーーーーーっっっ!!!」

 

 俺達に向かって笑顔を浮かべ、ピースサインを向けるレヴィ。

 赤組の皆は歓声を上げる。

 男子生徒を放置したままコチラへ戻ってくる。

 

 「あの男子生徒、誰か回収してこい」

 

 先輩が言うが誰1人として行こうとしない。

 確かにあのまま放置してたら次の参加メンバーの邪魔になる。

 ……しょうがない。俺が……

 

 「なら俺が彼を救護テントへ連れて行こう」

 

 立候補したのは阿部先生。

 

 「…ついでに俺が介抱してやれば問題無いだろう」

 

 阿部さんの目は餌を見付けた猛獣の様な輝きを放っている。

 

 「……………………」

 

 倒れている男子生徒を回収するため、阿部先生はグラウンド内に進入していく。

 

 「(流石に人目が付く場所で食われはしないだろ)」

 

 とはいえ、あの阿部さんだからな。人目が付く場所でのプレイも平気でやりそうな気がする。

 

 「(どうか無事に帰って来いよ)」

 

 阿部先生に担がれた男子生徒に対し俺が出来る事は祈る事だけ。

 視線を皆の方に戻すと次のメンバーを決めている最中だった。

 ていうか男子は再びジャンケン中だ。

 

 「次は誰が出るか決まったのか?」

 

 俺は近くにいた謙介に様子を聞く。

 

 「リンディさんが立候補したんだよ」

 

 成る程…。男子が再びジャンケンで決めようと争う訳だ。

 当の本人は……あれ?コッチに近付いてくる。

 

 「勇紀君、良かったら一緒に出場しない?」

 

 「「「「「「「「「「何いいいいぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ!!!!?」」」」」」」」」」

 

 まさかのオファーが来ちゃった。

 ジャンケンをしていた男子生徒達も声を上げ、コチラに注目する。

 

 「(どうしよう?)」

 

 先輩の方に向くと黙って首を振る。自分で決めろって事か?

 

 「ユウ…僕とは出なかったのにリンディさんとは出るんだ」

 

 「私も勇紀と出たいと思ってたんだけどなぁ」

 

 「「「「「「「「「長谷川テメエコラ。ここで首を縦に振ったらどうなるか分かってんだろうなぁ?」」」」」」」」」」

 

 レヴィとフェイトはジト目で睨みながら、男子生徒達は殺意の籠もった低い声で言葉を発する。

 …マジでどうしよう?どんな競技かは一試合目見学したので理解は出来ている。それに外部からの妨害も本当に無かったし。

 体力も余裕あるから別に出ても良いんだけど…。

 

 「どうしても駄目かしら?」(ウルウル)

 

 瞳を潤ませて聞いてくるリンディさん。

 破壊力はあるけど元は良い歳した人がこんな事を……

 

 ギュウッ!!

 

 「…ひはいでふ」(痛いです)」

 

 リンディさんに頬を抓られた。

 

 「今、失礼な事を考えなかった?」

 

 「ひへ…はひほ」(いえ…何も)

 

 す、鋭いなホント。

 

 「…まあ良いわ。それで、どうかしら?」

 

 頬を抓っていた手を放してくれる。

 ニコニコ笑顔を浮かべているけど背後に見える黒いオーラが立ち上っているのは、俺が失礼な事を思ったからか。

 ここで断ったら俺の身が危うい気がする。

 

 「……参加させていただきます」

 

 俺は折れた。

 その瞬間黒いオーラは収まり、笑顔だけが残るリンディさん。

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 頼むからその無言のプレッシャーを俺に向けるな。特にレヴィとフェイト、お前等だよ。

 

 「じゃあ行きましょう!!」

 

 俺の腕に自分の腕を絡めて引っ張っていく。

 意外に力あるんですねリンディさん。

 そしてグラウンドに出ると白組、青組のメンバーも出て来た。

 白組は前回同様男子生徒が2人、青組からは男子生徒とユーリが。

 

 「…ユウキも参加ですか(リンディさん、ズルいです)」

 

 …何でそんなに不満気なんだコイツは?

 

 「まあな。ていうかお前、マジでコレに出て良かったの?」

 

 「失礼な。私だったら棒に登ってくす玉を割るくらい出来ます。なのはみたいにいつまでも運動音痴じゃないんです」

 

 なのは本人に言ったら迷わず怒りそうな台詞だな。けど否定し切れないのが何とも…。

 それから先生が

 

 ピーーーーーーッ

 

 笛を吹いた事でくす玉割りが始まった。

 くす玉を割るのはリンディさんに任せて俺は相手の妨害に集中する。

 棒を登っていくリンディさん。隣の棒には

 

 「うんしょ…うんしょ…」

 

 ユーリがゆっくり登っていた。

 本当に大丈夫かねぇ?

 まあ、いいや。俺は他の連中を妨害しないと。

 で、俺は足元に落ちているバスケットボールを拾う。

 けど競技に参加している白組と青組の男子達は争っておらず、静かに上を見上げている。

 お互い妨害しようという気が全く感じられない。ていうか鼻の下伸びてる。

 

 「…あの、戦わないんですか?」

 

 疑問に思った俺は聞いてみた。

 

 「ふっ…今この場において争いなど不要なのだよ」

 

 「その通り。争う事よりももっと大事な瞬間が今ここにあるんだ!」

 

 連中は上を向いたまま答える。

 俺も釣られて上を見ると棒を登って必死にくす玉を攻撃してるリンディさんとユーリの姿があった。

 

 「えい!」

 

 チラ

 

 「えいえい!!」

 

 チラチラ

 

 「えいえいえい!!」

 

 チラチラチラ

 

 「……………………」

 

 うん……理解したよ。そりゃ見る方に専念するわ。

 現在必死にくす玉を割ろうと頑張ってるユーリ。その当人が動く度に服の裾が捲れ、ユーリのお腹が直に見えるのだ。

 更にユーリの動き次第ではその上部……やや膨らんでいる胸を覆うブラジャーも見える。

 ユーリはくす玉に意識がいっているため、下から見られている事には全く気付いていない。

 …ユーリよ。服の裾はちゃんとジャージの中に入れておけ。

 

 「くう~~~~~っ!!絶景かな絶景かな////」

 

 「今俺達は聖域に足を踏み入れ、至高の宝を拝んでいる気分だよ////」

 

 「り…リンディさんは肌が見えないけど胸の間にある棒が……お、俺の妄想力を掻き立てていくぜ!////」

 

 …どうやらユーリだけじゃないみたいだ。

 リンディさんの豊満な胸が棒に当たって形を変えたり、胸の間に挟まったりする様を見て興奮している奴もいる。

 リンディさんもユーリ同様に見られているのには気付いていない。

 

 「(これ……2人に言った方が良いよな)」

 

 俺が声を掛けようとすると

 

 「えーーいっ!!」

 

 ポカッ!!

 

 ユーリの懇親(?)の一撃がくす玉に命中し

 

 パカッ

 

 見事にくす玉が割れた。

 

 「やった!!割れました!!」

 

  ピーーーーーーッ

 

 「勝者、青組!!」

 

 競技終了の笛が鳴る。

 リンディさんとユーリはゆっくりと棒の上から下りてくる。それぞれ残念そうな顔、満面の笑顔と表情は対照的だ。

 それに伴い棒の真下にいた男子生徒達も少し離れる。

 

 「どうですかユウキ私だってやれば出来るんですよ?」

 

 「うん、おめでとう。けどお前、くす玉割る事に集中し過ぎていたせいで覗かれていた事には気付いていなかったろ?//」

 

 「ほえ?何がです?」

 

 可愛らしく首を傾げるユーリに俺は事の顛末を話す。

 それを聞いたユーリは徐々に顔を赤くさせていく。

 

 「つつつ、つまりわわ、私のお腹がののの、覗かれていたと!?////////」

 

 「……後、胸も若干……//」

 

 「~~~~~~~~~~~っっっ!!!////////」

 

 ユーリがプルプル震えている。

 あ、何だか嫌な予感……。

 

 「き…………」

 

 「き?」

 

 「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!////////」

 

 「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!?さ…天目反射(サードアイ)!!!」

 

 突如ユーリがその辺に落ちている物を拾い上げ、未だに鼻の下を伸ばしてだらしない顔をしている男子生徒達の後頭部へ向かって投げ始めた。

 

 「「「えへへへへへ………ぶべらっ!!!?」」」

 

 投げられた物は吸い込まれる様に高等部へ直撃し、男子生徒達はノックアウトされる。

 何ていう正確無比なコントロールだ。

 俺は咄嗟に天目反射(サードアイ)を発動させたのでユーリの正面に立っていたのにも関わらず回避する事に成功した。

 

 「ううううううう………//////」

 

 そして唸っているユーリが俺の胸に顔を埋めてきた。

 

 「あの…ユーリさん?」

 

 「ううう……恥ずかしいです。私のお腹を見られました////」

 

 「あー……災難でしたね」

 

 「もう…もうお嫁にいけません」

 

 そこまでショックがデカいのか?

 『犬に噛まれたと思って諦めろ』と言える様な雰囲気じゃないな。

 しばらくは『ううう…』と唸っているユーリの頭を撫でつつ、俺はユーリを宥めるのに必死だった………。

 

 

 

 「さて……いよいよ最後の競技だ。皆、気を引き締めろよ。ここが正念場だ」

 

 「「「「「「「「「「ウッス!!!」」」」」」」」」」

 

 気合を入れ直す俺達赤組一同。

 逆に俺は疲れ切っていた。

 理由はさっきの『ユーリに抱き着かれていた件』だ。

 俺から抱き着いた訳じゃ無いのに、赤組に戻ってくると嫉妬に塗れた男子生徒達の拳が飛んできた。

 更にはシュテル達も追い打ちを掛ける様に赤組へやって来てプレッシャー浴びせてくるし。

 マジで拒絶観測(キャットボックス)使って逃げたかったね。

 もう最後の競技は出ずに見学と応援に徹しようそうしよう。

 

 「最後の競技……その名も『海鳴町クロスカントリー』!!!」

 

 そう言って先輩は競技について説明してくれる。

 どうやらこの海中がスタート地点らしく、海鳴町の設定されたコースを走り、この海中に戻って来る事でゴールになるというものだ。

 コースはこれから運営本部の側にある大型テレビに紹介されるという。

 …だからいつ用意したんだ?

 

 『それでは、海鳴町クロスカントリーのコースを紹介しまーす』

 

 そう言ってテレビに映る画面がゆっくり動き始める。

 

 『まずは海鳴中学を出て住宅街をひたすら走ってもらいます』

 

 おー、見慣れた街の映像が画面に映る。

 住宅街を走りながらコースの説明が続く。

 

 『ここで次はこの民家の中を通りまーす』

 

 ……おいおい。

 民家の中をコースにするなんて不法侵入に引っかかるだろ。

 

 「てか、わたしの家やん!!」

 

 そう叫んだのははやてだった。

 道理でどっかで見た事ある家だった訳だ。

 

 『このまま家の中を通り、リビングから中庭に出てもらいまーす』

 

 「やめてーや!!!土足で上がられたら床が汚れるやん!!!誰が掃除すると思ってんねん!!!」

 

 八神家の主人は憤怒しております。

 

 「これもこのクロスカントリーの醍醐味の1つだな。毎年ランダムで誰か生徒の家がコース上に設定される」

 

 先輩が言うが傍迷惑な事だ。はやてが叫んでいた通り掃除が大変だぞ。運動会…もとい戦争が終わったら掃除の手伝いに行ってやるか。

 

 『中庭を出たら塀をよじ登ってそのまま民家の屋根の上を走って下さーい』

 

 あんなバランスの悪い所をよくコース上に設定するよな。

 

 『そしてこの民家の屋根から下りて再び住宅街を走ってもらいまーす』

 

 時折、画面に通行人も映る。皆『何事か?』って感じで顔を向けてるね。

 

 『次はこの神社の石段を上がり…』

 

 あ、八束神社だ。

 那美さんと久遠いるかな?

 そんな期待があったが上がり切った境内には誰も映っていなかった。

 

 『この賽銭箱を回って石段を下りてもらいまーす』

 

 境内から石段…そして下りてきた所で更に走り、今度は小さな公園に入って行く。ルーテシアがよく遊びに行く公園だ。

 

 『この公園内を突っ切って反対側の出口から出て貰いまーす。時々、怖いおじさんが子供に拳法みたいなのを教えている姿が窺えますがそのおじさんに捕まったら『DEAD END』確定なので注意して下さーい』

 

 ……その拳法を教えているおじさんとやらに凄く心当たりがあるんだが気にしないでおこう。今日はモンスターボールの中で待機させてるし。

 

 『で、後は学校まで帰ってきてゴールテープを切ればゴールでーす』

 

 そう言いながらコース紹介をしていた生徒が正門から帰って来てグラウンド内のゴール地点に到着する。

 

 「では皆さん、張り切っていきましょう」

 

 声高々に宣言してコース紹介は終わった。ちなみに選手が走ってる映像は街中に設置した監視カメラによって大型テレビに中継されるらしい。

 

 「……という事だ。ここで一気に得点稼いで優勝を狙うぞ」

 

 先輩の一言に皆頷く。

 

 「優勝特典は是が非でも欲しい所だからな」

 

 「……優勝したら何か貰えるんですか?」

 

 フェイトが先輩に質問する。

 

 「冬休みの宿題が免除される。受験を控えている俺達3年生にとっては受験勉強に専念できる分、嬉しい報酬だ」

 

 「聞いたよね皆!!?絶対に優勝は僕達が掻っ攫うぞーーーー!!!」

 

 「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっ!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 レヴィの言葉に力強く拳を握り、天に掲げて応える赤組一同。

 確かに魔導師の俺達にとっても宿題免除は有り難い報酬だねぇ。

 特に救助隊は緊急出動とか掛かって現地に赴く事も珍しくない。で、帰って来た後の宿題の処理とかのせいで徹夜になった事も何度かある。

 ……まあ、俺は応援に徹するので皆に頑張って貰いましょうか。

 

 「最初の走者だが…誰が行く?」

 

 「僕行きたい!!僕僕僕!!!」

 

 手を大きく上げてレヴィが立候補。コイツ朝から実は全競技に参加してるのだ。ホント元気だね。

 

 「私も参加してみたいわね」

 

 そして静かに手を上げるのはテレサ。

 

 「じゃあローウェル嬢で」

 

 「ええーーーーー!!?」

 

 「レヴィ嬢、たまには1番手を譲ってやれ。元気があるのは結構なんだが少しは身体を休めるのも大事な事だ」

 

 「ぶうーーー。ボク疲れてないのに」

 

 ぶーたれるレヴィ。しかし決定は覆らずテレサが赤組の1番手になった。

 スタートラインに向かうテレサ。既に白組、青組の選手はスタートラインで立っており、白組は3年生女子の先輩、青組はアリサだ。

 

 「ふーん。テレサが相手なのね」

 

 「お手柔らかにねアリサ」

 

 『上等!』とでも言わんばかりにアリサの瞳に闘志が宿る。

 

 「位置について…よーい……」

 

 パアンッ

 

 スタートの合図と同時に一斉に学校の正門から飛び出していく。

 序盤から3年生の先輩を引き離し、互角の勝負を繰り広げているアリサとテレサ。

 住宅街を走り、通行人をスイスイ躱しながら八神家へ到着。

 玄関の扉を開けて中に入って行く。

 ……今更だが、八神家の玄関の鍵開けたのって誰だ?

 玄関に入った所でテレサは立ち止まり、靴を脱ぐ。

 

 『テレサ、何してるのよ?』

 

 『靴を履いたままだと家の中が汚れるし、はやてが後々大変じゃない』

 

 『…成る程ね』

 

 ……至極もっともな意見だ。靴を脱いで手に持ってから再び先へ進むテレサとアリサ。

 

 「うう…2人共ええ子や」

 

 はやては感動している。さっきのコース紹介の際は普通に土足で上がってたからなぁ。

 そのままリビングを抜け、中庭に出る所で靴を履き、塀を軽々登って行く。

 屋根の上も難なく走っていく2人。あんな足場のバランスが悪いとこをよくもまあ、速度を落とさずに走れるなぁ。

 

 『『ていっ!!』』

 

 2人共、そのまま梯子を使わず、道路に飛び下りた。

 華麗に着地した後は神社に向かって駆け出す。

 

 『ハア…ハア…や、やるじゃないテレサ』

 

 『参加した以上は…負けられないもの…ハア…ハア…』

 

 画面の向こうではお互いに一歩も退かず、前を譲らずで差が開かない。全くの互角だ。

 

 「2人共凄いねー」

 

 「うん!どっちも『負けない!』っていう強い気持ちが画面越しから伝わって来るよ」

 

 「若いって良いわねー」

 

 レヴィ、フェイト、リンディさんも応援しながら口にする。

 それとリンディさん。貴女も今は俺達と同年代でその『若い』部類に入りますからね。

 神社の石段を登り、賽銭箱を回って石段を下りてくる2人は徐々に息を切らしながらも公園を通り、後は学校に戻って来るだけとなった………。

 

 

 

 「これにて全ての競技は終了だ。皆、よく頑張った」

 

 長かった戦争(うんどうかい)もようやく終わった。

 

 「後は個人賞の発表だ。ここで加算された点数と今までの競技で稼いだ合計得点が各チームの総合点数になる」

 

 個人賞……それによっては逆転する事もされる事も有り得るのか。

 思い返せばハチャメチャな運動会だった。

 特に最後のクロスカントリー…アレは白熱してたのは第1レースだけだった。

 結果は僅差でテレサが負けた。本当に惜しかった。

 本人は多少落ち込んでいたが俺達は惜しみない拍手と嘘偽りない称賛の言葉で彼女を迎えた。

 こんなレースが続けばもっと盛り上がっていたんだが…。

 続く第2レースは赤組が2年男子の先輩、白組は3年男子の先輩、青組はすずか。

 レースは終始すずかがブッちぎりでトップを独占し、赤組の先輩はかなり差を付けられながらも2位でゴール。

 しかし白組の先輩は八神家へ突入後、リビングへ向かわず、階段を上がって2階にある部屋へ入って行く。

 

 「私の部屋やん!!」

 

 そう…そこは叫び主のはやての部屋である。テレビの映像は先輩の方を映している。

 てか映像が映るって事はここにもカメラあるって事だよね?

 個人の私室にカメラとか…もう立派な犯罪ッスよこれ。

 先輩はおもむろにタンスに手を掛け、中を物色する。

 そして下着の収納された棚を開けるとそのなかから白色のパンツを手に取り、マジマジと見詰めた後

 

 ズボッ

 

 パンツを被りやがった(・・・・・・・・・・)

 

 『ふおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!』

 

 「ぎゃあああああああああああ!!!!!!!!!1」

 

 画面の向こうで歓喜の雄叫びを上げる変態と化した先輩に、その映像を見て悲鳴を上げたはやて。気持ちは分かる。変態に自分の下着を被られたのだからな。

 

 『力がみ・な・ぎ・って・きたあああああああああ!!!!!!!!!』

 

 変態が被っているパンツが徐々に城から赤に変色していく。おそらく鼻から出てる液体が染め上げていってるのだろう。

 そのまま喜んで八神家を出て、屋根から下りた所で

 

 『逮捕します』

 

 お巡りさんに捕まって連行されて行った。完全に下着ドロと認識されたなアレは。

 だが、この光景を見たせいで海中の男子達(俺、亮太、誠悟、直博、先輩除く)の欲望に火が付き、八神家大迷惑なレースへと変貌した。

 

 『おぱんちゅ!!おぱんちゅううううううう!!!!!!』

 

 呪いウサギの絵柄がプリントされたパンツを手に取る変態。

 

 『神秘のブラ様を……そうちゃーーーーーーーっく!!!』

 

 ブラジャーを身に着ける変態。

 

 『くんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんか…………』

 

 ひたすらパンツの匂いを嗅ぐ変態。

 

 『これ等は記念……いや、戦利品としてゲット……いやいや、今すぐ身に着けておこう』

 

 その場でブラを装着し、パンツを穿こうとしてる変態。

 もう見るに堪えない光景だった。

 ただ物凄い殺気を纏いながら学校を出て行く赤毛、ピンク、金髪、銀髪の女性が4人。

 言うまでも無く守護騎士の皆さんである。

 その中にリインがいなかったという事は、自分の下着には手を出されていないという事だろうか?何にせよ守護騎士の皆さんはお怒りで自宅である現地に向かわれた。

 はやては自分が制裁するべき相手が連行されたため、怒りのぶつけどころが無く白組の中で暴れようとし、なのはやシュテルに必死に押さえられている。

 数分後、テレビの画面が途切れ

 

 『『『『ぎゃああああああああああああっっっっっ!!!!!!!!』』』』

 

 と断末魔の悲鳴のみが聞こえてきた。

 何が行われているかは想像つくけど想像しない。

 そんなこんなで海鳴町クロスカントリーはほとんど参加するのが女子生徒になってしまった。

 

 「…こんなのを後2年も経験しなけりゃいかんのか」

 

 そう思うと頭痛が……。

 

 「来年はもっとまともな運動会が良いなあ……」

 

 決して叶いそうにない願い事を俺は呟くのだった。

 

 「そんな事より勇紀、個人賞発表だよ」

 

 謙介の言葉で俺は朝礼台に登る校長に視線を向ける。そして発表される個人賞…。

 

 

 

 敢闘賞:ユーリ・長谷川              白組+100点

 理由:頑張ってたから。

 

 最優秀選手賞:レヴィ・長谷川           赤組+150点

 理由:全競技に出場し、上位成績を獲得してたから。

 

 ナメてる奴で賞:杉村謙介             赤組-200点

 理由:初戦からアレは無いわー。

 

 海鳴中学賞:アリサ・バニングス          青組+100点

 理由:いい試合だったから。テレサ嬢は残念。

 

 校長特別賞:校長            校長+300点

 理由:校長だから。

 

 

 

 「「「「「「「「「「ちょっと待ていっ!!!」」」」」」」」」」

 

 思わず1年生一同が突っ込む。

 何んだよ最後の校長が+300点って!!?アンタ一体何したんだよ!!?

 

 「気にするな1年生諸君よ。どうせ優勝は赤、白、青組のいずれかだ」

 

 だったら気にしなくても良い様に最初からそんな個人賞出すなよ。

 そんな俺の思いを無視して結果が発表される。

 結果は………白組が優勝だった。

 アレだけ色々やって優勝逃したか。

 冬休みの宿題免除、狙ってたのになぁ。

 

 「……以上で今年の戦争(うんどうかい)を終了する。明日は振替で休日だ。各々しっかり休む様に。では解散」

 

 こうして中学最初の運動会は幕を閉じ、俺ははやての家の掃除を手伝いに行った………。

 


 
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