No.612110

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第九十二話 魔法少女?いいえ、魔法幼女です!

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-08-24 22:48:09 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:26886   閲覧ユーザー数:23862

 「ねえ勇紀君。どうしても駄目かしら?」

 

 土曜日…。

 現在俺はある1人の女性に頭を下げられている。

 その人こそ、フェイトとアリシアの母親であり、現在は管理局の技術部に所属している大魔導師、プレシア・テスタロッサその人である。

 

 「貴方の持つ若返りの薬……リンディには渡したのにどうして私には駄目なのかしら?」

 

 「いえ……渡す渡さない以前に、人に物を頼むのにこの仕打ちはどうなのかと…」

 

 「何故?こうやって頭を下げるだけじゃ駄目なの?」

 

 本気で分かってないのこの人?

 

 「もしかして身体!?リンディは自分の身体を売って貴方と取引したの!?じゃ、じゃあ私だって脱ぐわよ!?貴方に抱かれても良いわよ!?だから若返りの薬を…////」

 

 「そんな取引してませんから!!落ち着いて!!服脱がないで!!//」

 

 物凄い事を口走り、服に手をかけながら迫って来たプレシアさんを制する。

 服を脱ごうとした際に胸元のボタンを外したせいでプレシアさんの豊満な胸の谷間がハッキリ見える状態に。

 やっぱりテスタロッサ家の発育の良さは可笑しいぐらいに凄いです。使い魔の2人を含めて。

 

 「そもそも取引をする相手を縛る(・・・・・・・・・・)ってどういう事ですか?」

 

 そう…俺は今、バインドで雁字搦めにされているんですよ。

 プレシアさんに呼ばれてテスタロッサ家にお邪魔しに来たのに、玄関に上がった瞬間設置型のバインドに捕まって、そのままリビングにまで連れてこられた。もし俺以外の人が来たらどうするつもりだったんだ?一般人を縛ったらシャレにならんと思うけど。

 

 「だって…本題をいきなり切り出したら勇紀君、逃げるかもしれないじゃない?」

 

 「いや…逃げはしませんよ」

 

 返答に渋ったり拒否したりはするかもしれないけど。

 

 「ていうかリンディさんの件で少しやり過ぎたかなぁとは思ってるんですよ」

 

 貴女を筆頭にどれだけの女性局員が俺に押し掛けて来た事か…。

 ここ最近は若返りの薬を求めて俺を追い掛けてきたりする人は無くなったけど。

 目の前にいるこの人を除いて。

 

 「そこを何とかお願い!!私に出来る事なら何でもするから!!//////」

 

 「そう言って服を脱ごうとするなー!!////」

 

 何ですぐに服脱いで迫るかなこの人は!!?色仕掛けのつもりか!!?

 思春期の俺にとっては辛い事この上ない攻め方だよ!!

 今ここにはプレシアさん以外誰もいないからこの人の暴走を止められる手段が無いに等しい。

 

 「ていうかそこまでしてフェイトやアリシアと一緒に学校へ通いたいんですか?」

 

 「勿論よ!!フェイトやアリシアだけ楽しそうなんだもの。私も混ざりたいの!!」

 

 親バカここに極まれり。

 

 「それに……貴方もいるじゃない////」(ボソッ)

 

 「はい?何か言いました?」

 

 「いえ何も…それより、若返りの薬……分けてくれないかしら?」

 

 「分かりました!分かりましたから服に手をかけないで!!」

 

 これ以上、断ったら服を脱ぐどころか縛られたままナニされるか分からん。

 若返りの薬を手に入れるためなら本当に自分の身体を差し出すどころか、身動き取れないまま襲われかねん。

 唯我独尊(オンリーワンフラワー)使ってこのバインドを消失させてもこの人の事だ。何かしらの対策を練ってそうだし。

 

 「じゃあくれるのね!?」

 

 「分けますよ。だからこのバインド解いて下さい。逃げたりもしませんから」

 

 『分かったわ』と言って即座にバインドを解いてくれるプレシアさん。

 ニコニコと笑顔を浮かべ今か今かと待っている。

 そんなプレシアさんを見て俺は溜め息を吐いてから、宝物庫から以前リンディさんに分けた女性局員が求めてやまないアイテム…若返りの薬を取り出し、テーブルの上に置く。

 

 「これが…若返りの薬なの?」

 

 「そうです。リンディさんに分けた若返りの薬です」

 

 フェイトやアリシアと同い年になれる様に分量を調整しなきゃな。

 そう思い、コップを用意しようとしたら

 

 「これで…これで私も少女へ若返れる!!」

 

 そう言って瓶のフタを開け、グイッと薬を一気飲みし始めた。

 

 「ちょ!!?プレシアさん!!?」

 

 「ゴクゴクゴクゴクゴク…」

 

 喉を鳴らしながら薬を流し込んでいくプレシアさん。そんなに飲んだら…

 

 「うっ!」

 

 突然プレシアさんが呻き出す。

 瓶をテーブルに置いた直後フラフラと上半身が揺れている。

 そしてプレシアさんの身体に変化が起きる。

 みるみる内に身体は縮んでいきやがて若返りの効果が収まった時

 

 「あら?勇紀君、やけに大きくない?」

 

 俺を見上げるプレシアさんがいた。

 そんな事を言うプレシアさんに俺は無言で手鏡を渡す。

 頭に疑問符を浮かべながらも手鏡を受け取り、ソコに映る自分を見たプレシアさんは

 

 「な…何コレーーーー!!!!?」

 

 絶叫を上げる。

 そう…若返りの薬を飲み過ぎたプレシアさんは現在、幼女にまでその容姿を遡らせていたのだった………。

 

 

 

 「……それでプレシアは幼女の姿になってしまったという訳ですか」

 

 プレシアさんが幼女になって1時間経つ頃に帰ってきたリニスさん。最初にプレシアさんの姿を見た時は

 

 『このプレシアの面影がある子は誰ですか!?ま、まさか勇紀君とプレシアの子ですか!!?』

 

 と凄い剣幕で詰め寄られた。

 いきなりプレシアさんに隠し子…しかもその父親が俺と言われた。

 いくら何でも慌て過ぎだよリニスさん。

 俺はその答えを否定し、プレシアさんが幼女になった経緯を説明した。

 

 「俺が止める間もなくガブ飲みしましたから…」

 

 「ううっ…」

 

 リビングで正座させられているプレシアさん。見た目から推察するとルーテシアより年下…2~3歳にまで若返ったみたいだし。

 

 「プレシア、いい加減『フェイトやアリシアと学校に通いたい』なんていう願望は捨てなさい。私や貴女が所属する技術部は常にデバイスや設備なんかの開発を行ったり問題点を抽出、改善しなければいけないのですよ?無限書庫を除くと管理局で一番忙しい部署といってもいいぐらいです。しかも貴女が抜けると今取り組んでいる『カートリッジシステムの身体にかかる負担削減』の研究に遅れが生じて支障をきたすのですよ!分かってるんですか?」

 

 リニスさんは大変お冠です。

 にしてもプレシアさんがカートリッジシステムの改善に取り組んでたのか…。

 この人ならすぐに改善出来そうなもんだけど。

 

 「リニチュ(・・)、わた()はフェイトとアリ()アと楽()い思い出を作りたいだけなの」

 

 「…何だか言葉が可笑しくありませんかプレシア?」

 

 「あー…リニスさん。今のプレシアさんは『さ』『し』『す』『せ』『そ』の『さ行』が上手く発音出来ないみたいなんですよ」

 

 ついでに言うと『ざ』『じ』『ず』『ぜ』『ぞ』みたいに濁点がつく場合や『しゃ』『しゅ』『しょ』みたいに小文字がつく場合とかも上手く発音出来ないみたいだ。

 

 「…本当ですか?見た目に合わせてキャラ作りとかしてるんじゃないんですか?」

 

 「プレシアさんにキャラ作り、出来ると思います?」

 

 「……そうですね。あのプレシアがキャラ作りなんて無理でしょうし」

 

 リニスさんはプレシアさんを見ながら言う。

 

 「ただいまー♪」

 

 と、玄関から元気な声がリビングに聞こえてきた。

 アリシアが帰ってきたみたいだ。

 『出迎えてやらないと』と思った矢先にプレシアさんが立ち上がり、玄関へ駆けていく。

 

 「アリ()アー。おかえりなちゃ()ーい」

 

 「へ?」

 

 「今日のお()ごとは大変だった?怪我とか()てない?」

 

 「えーっと……家は間違えて…ないよね?お嬢ちゃん誰?フェイトが新しく保護した子かな?」

 

 「わた()はプレ()アよアリ()ア」

 

 「プレチア?お母さんに似た名前だね?…それによく見たらお母さんに何処となく似てる様な…」

 

 アリシアは会話をしながらプレシアさんとリビングにやってくる。

 

 「あっ、勇紀来てたの?」

 

 「おー、お邪魔してるー」

 

 小さく片手を上げて挨拶する。プレシアさんが『お仕事』とか言ってたから本局にでも行ってたのか。

 

 「ねえ勇紀。この子って勇紀が連れて来たの?それにお母さんいないみたいだけど…」

 

 「プレシアさんならソコにいるじゃん」

 

 「へ?」

 

 俺が幼女になったプレシアさんを指差すと目が点になるアリシア。

 まあ、ちゃんと理解出来てないんだろうな。

 

 「ソコにいるのは若返りの薬を飲み過ぎて幼女の姿になってしまったプレシアさん本人だよ」

 

 「……………………」

 

 アリシアは沈黙する。そしてプレシアさんの方に視線を一度向けた後、もう一度コチラに向き直る。

 

 「…………マジ?」

 

 「マジ」

 

 俺は頷いて答える。

 

 「えっと……お母さん、元に戻るの?」

 

 「若返りの効果を打ち消す薬を作れば元に戻せる。薬の材料と調合の仕方は悪魔図書館(あくまとしょかん)使えばすぐに調べられるから」

 

 「そ、そっか……よかったー。このまま元に戻れなかったら結構な問題だもん」

 

 そうだねぇ。この姿だと学校の三者面談や授業参観、家庭訪問に対応出来ないもんな。

 ま、その時はリニスさんを代役として立てればいいんだが。

 

 「駄目!アリ()アとフェイトの母親はわた()!!リニチュ()に代役なんてぢぇ()ったいにちゃ()ちぇ()ないわ!!」

 

 ですが今のプレシアさんの容姿は合法ロリどころじゃないッスよ。

 

 「(……て言っても聞かなさそうだなぁ)」

 

 腰に手を当ててペッタンコになった胸を張る様に『フンッ!』とした感じで立っているプレシアさん。

 

 「あはは、お母さん可愛らしいね」

 

 そんな母親の頭を撫でる娘。

 フェイトが帰ってきたらどんな反応するかねぇ………。

 

 

 

 次の日…。

 朝、目覚めた俺の携帯が唐突に鳴り出した。

 ……プレシアさんからだ。まだ薬の準備は出来てないのにどうしたんだろうか?

 電話に出た俺にプレシアさんは簡潔に一言

 

 『家に来てくれないか()ら?』

 

 と言われた。何でも自分で出来ない事があるので手伝ってほしいらしい。

 今日の朝食を担当していたシュテルにもその旨を説明し、『俺の分は必要無いから』と連絡してから家を出た。

 途中、コンビニでパンと牛乳を買ってからテスタロッサ家へお邪魔する。

 

 ピンポーン

 

 『どちらちゃ()までちゅ()かー?』

 

 インターホンを鳴らすとすぐに中から声が返ってくる。

 

 「長谷川です」

 

 返事をしてから待つ。

 

 ガチャリ

 

 『いらっちゃ()い勇紀君。上がって上がって』

 

 出迎えてくれたプレシアさん。

 そのままお邪魔させて貰う。

 

 「こんな朝からどうしたんです?」

 

 何かあったのだろうか?フェイト、アリシア、リニスさん、アルフさんの姿は見当たらない。

 昨日同様に管理局で仕事してるのかな?

 

 「ちょっと問題が浮き彫りになっちゃって…」

 

 「問題?」

 

 俺が聞き返すとプレシアさんはコクンと頷く。

 

 「ちょ()の…なが()ちぇ()が届かないの」

 

 「は?」

 

 「だからちょ(しょ)っきを洗ったり出来なくて困ってるのよ…」

 

 プレシアさんが見る視線の先はキッチンの流し台。

 確かに幼女になったプレシアさんの身長では届かない。

 

 「普通に椅子を使って高さを補えばいいのでは?」

 

 「っ!!ちょ()のはっちょ()うは無かった!!」

 

 いや、気付きましょうよ。アンタ大魔導師なんですから。

 

 「後は浮遊魔法使うとか」

 

 「っっっ!!!目から鱗が落ちるようだわ!!!」

 

 だから気付いて下さいよ。

 プレシアさんはニコニコ笑顔を浮かべながら椅子を引っ張って来て、その上に乗って食器を洗い始める。

 この人実はかなりの家事好きで普段はリニスさんと2人で料理やら掃除、洗濯を分担してやってるらしい。

 

 「洗い物完了~♪」

 

 「お疲れ様です」

 

 何か大した事無い用事だったな。

 

 「じゃあ俺はこれで…」

 

 「あら?もう帰るの?もっとゆっくり()ていけばいいのに…」

 

 「薬の材料を集めないといけませんので」

 

 幸いにも全てミッドで集める事が出来る。他の管理世界や管理外世界へ行ったり、この世界に材料そのものが無い可能性も考えていた。

 もっともミッドの北部、東部、南部、西部、中央と材料のある薬局がバラバラなので集めに行くだけでも結構時間が掛かる。

 

 「ねえ、わた()もついて行っていいか()ら?」

 

 「ついて来るんですか?」

 

 「家に居ても暇だ()…」

 

 「管理局のお仕事は?」

 

 「今日はおやちゅ()みよ。有休取ったから」

 

 ……昨日、リニスさんが『凄く忙しい』って言ってなかったっけ?なのにそんな簡単に有休取れんの?

 

 「フェイトがね…『働きちゅ()ぎは身体によくないから』って言って無理矢理とらちゃ()れちゃったの」

 

 ああ…フェイトは心配性だもんな。

 

 「母親思いのむちゅ()めを持ててわた()はうれ()いわ」

 

 その母親思いの娘を昔、虐待してましたけどね。

 

 「けどフェイトに言われたなら尚更家でゆっくりしてた方がいいのでは?」

 

 「ちょ()うなんだけど、引き籠もっていてもおちちゅ()かないのよ」

 

 プレシアさんはテレビを点けて適当にチャンネルを変えるも、面白い番組なんて無さそうだし。すぐにテレビの電源を落としてコチラに向き直る。

 

 「だからお願い!!わた()もいっちょ(しょ)に連れてって!!」

 

 「……フェイトが心配し過ぎるあまり泣いたとしても知りませんよ?」

 

 念を押して忠告するが、それでもついて来るとの事。

 ……本当に知りませんよ………。

 

 

 

 「…残念でしたね」

 

 「うう~…」

 

 ミッドにやって来た俺とプレシアさん。

 最初は順調に材料を集められていたのに最後に寄った薬局では材料が丁度品切れになっており、再入荷までに1週間程掛かるらしい。

 

 「わた()はいっちゅ(しゅ)うかんもこのちゅ()がたのままなのね」

 

 肩を落とし、落胆するプレシアさん。

 

 「まあ、1週間経てば材料手に入るんですから」

 

 「この身体、不便なのに…」

 

 それは若返りの薬を飲み過ぎたプレシアさんのせいでしょう。

 

 「でもね。悪い事ばかりぢゃ(じゃ)ないのよ。昨日はアリ()アといっちょ(しょ)にお風呂に入って髪の毛洗って貰えたの♪」

 

 突然、落胆した様子から一転し、嬉々とした表情で語る。

 

 「ちょ()れに今日のあちゃ()はフェイトに髪をちゅ()いて貰って、ねぐちぇ()もなお()てくれたのよ♪」

 

 そんなに満足してるならもう幼女の姿で良いじゃないッスか。

 嬉しそうに語り出すプレシアさんを見ながらそう思う。

 

 「「「「「「「「「「んだオラアッ!!!」」」」」」」」」」

 

 「「「「「「「「「「やんのかコラアッ!!!」」」」」」」」」」

 

 「「???」」

 

 突然、大声が聞こえてきたので俺とプレシアさんは反応し、声の飛んできた方向に視線を向ける。

 そこにはいかにもリーゼントやパンチパーマの髪形で学ランを着た『ヤンキー』って感じのグループが2つ。お互いに睨み合っていた。

 ……ミッドに学ランってあるんだ。

 また1つ、俺はミッドの事について理解した。

 

 「あ?コラ?こちとらタコ高だぞコラ!」

 

 「タコ?イカより弱ぇくせに粋がってんじゃねえぞコラ!」

 

 「んだとコラ!」

 

 「やんのか?お?」

 

 お互いのリーダーっぽい奴等が一歩前に出て言い合っている。足を止めて遠巻きに眺める通行人が増えていく中、不良達が言い争う事数分……

 

 「迷惑な連中ですね」

 

 「管理局員が来る気配はぢぇ()ぢぇ()ん無いわね」

 

 プレシアさんの言う通りだ。この辺りを警備してる局員はどうした?いい加減来てもいいと思うんだけど。

 まさか誰も通報していないのか?

 

 「うーん……ちょっとこの辺を担当してる警備隊に連絡してみましょうか?」

 

 「ちょ()うね。ちょ()れが良いと思うわ」

 

 俺はデバイスを通じて警備隊に連絡を入れる。

 どうやら付近を巡回してる警備隊の人がコッチに向かって来てる最中らしい。ちゃんと通報はされてた様だ。

 

 「ていうか何で揉めてるのか()らね?」

 

 「縄張り争いとかじゃないですか?」

 

 もしくは仲間の敵討ちとか。

 けど、連中はどんどんヒートアップしている。

 …局員として割って入った方がいいかなぁ。

 通行人の皆さんにも迷惑がかってるし。

 

 「プレシアさん、ちょっとアイツ等止めてきます」

 

 「局員が来るまで待たないのか()ら?」

 

 「……俺も一応局員ですからね」

 

 苦笑して答え、そのまま2つの不良グループの間に割って入る。

 

 「はいはい、そこまで」

 

 「「何だテメエは!!?」」

 

 「ただの管理局員ですよ。もっともこの辺りを担当してる警備隊じゃなく救助隊所属で今日は非番だけど」

 

 俺がそう言うと目を丸くしてコチラを見る不良達。そして

 

 「「「「「「「「「「ガハハハハハハハハハハ!!」」」」」」」」」」

 

 盛大に笑われた。

 ???爆笑される様な事を言ったつもりは無いんだが?

 

 「お前みたいなガキが局員だとは…」

 

 「余程、管理局ってのは人材不足が深刻になってるんだなワハハハハ」

 

 「こんなガキが正規の局員になれるなら俺も局員になれそうだぜ」

 

 「俺も俺もガハハハハ」

 

 俺を指差して笑いながら言いたい放題の不良達。

 

 「アンタ等みたいな連中が簡単に局員になれるならここまで人材不足は深刻じゃねえよ」

 

 「「「「「「「「「「んだとゴラア!!!」」」」」」」」」」

 

 見事なまでに息ピッタリだ。君達敵対し合ってたよね?

 まあ、そんな事はどうでもいい。

 

 「で、アンタ等がいがみ合ってる原因は何ですか?」

 

 とっとと解散させないと通行人の皆さんの邪魔だからな。

 

 「丁度良い、テメエはコレを見てどう思う?」

 

 不良グループの男がズイッと俺の眼前に何かを突き出してくる。

 どうやら何かの雑誌の切り抜きを貼り付けたファイルの様だ……っておいおい……

 

 「テメエはなのはさん(・・・・・)シュテルさん(・・・・・・)のどっちが素晴らしい女性だと思うんだ?」

 

 ファイルに貼り付けられていたのはなのはとシュテルの写真だった。

 何でこんな写真の切り抜き持ってんの?

 

 「(まさか盗撮か?)」

 

 もしそうならここでコイツ等全員現行犯逮捕だな。

 

 「オイ!!言っとくがコイツは盗撮した写真なんかじゃないからな!!」

 

 「そうだ!!雑誌に掲載された写真を切り取って貼り付けただけだからな!!」

 

 弁明しながら切り取った元の写真が掲載されていたらしい雑誌を見せてくる。

 ……どうやら嘘は言っていない様だな。日輪庭園(ヘリオスガーデン)でも確認してみたが心の色に変化は無い。

 

 「お前は当然なのはさんに一票入れるよな!?」

 

 「何言ってんだ!!シュテルさん派だろう!?なあおい!!」

 

 「……ていうか何でこの2人を比べてんの?」

 

 髪形や瞳の色を覗けば基本瓜二つなんだけど?

 

 「何を言っている!!貴様の様なガキには、なのはさんの幼さが残る可愛さが理解出来ないのか!?」

 

 「ほざいけんじゃねえぞイカ風情が!!シュテルさんのクールビューティーこそが管理局の至高だろうが!!!」

 

 「黙れタコ!!あの屈託の無い笑顔こそが癒しの頂点だろうが!!」

 

 「んだとオラア!!!」

 

 「ああ゛!?やんのかゴラア!!」

 

 コイツ等の対立してる原因を聞いて俺は呆れるしかなかった。

 コイツ等、年齢は俺達より年上らしい。そんな連中が年下の魔導師であるシュテルとなのはを比べて争うとか…しかも年下なのに『さん』付けで……。

 

 「ちょっと待ちなちゃ()い!!」

 

 そこへプレシアさんが『待った!』をかける。何時の間に来たんだこの人?

 

 「何だこのチビは?」

 

 不良達の視線がプレシアさんに集まる。

 

 「まさかお前みたいなチビも管理局員だなんて言うんじゃないだろうな?」

 

 「ちょ()うよ」

 

 プレシアさんが答えると不良達は一瞬キョトンとした表情を浮かべたが

 

 「「「「「「「「「「ガハハハハハハハハハ!!!」」」」」」」」」」

 

 一斉に爆笑し出した。

 

 「世も末だなあ管理局。ガキとチビの力を借りなきゃなんねえなんて」

 

 「おいチビ、悪い事は言わねえ。さっさと家に帰ってママのおっぱいでも吸ってな」

 

 馬鹿にした様な態度と言葉で接する不良達。

 対するプレシアさんは頬を膨らませ、怒っている事をアピールするだけ。

 見た目が3歳の幼女なだけに怖いどころか微笑ましいと言わざるを得ない。

 

 「プレシアさん、一体何しに来たんですか?」

 

 あっちで大人しく待っていてくれたら良かったのに。

 

 「ちょ()の子達に聞きたい事があるのよ」

 

 こんな不良達に聞きたい事?

 プレシアさんはシュテルとなのはの写真が貼られたファイルに目を向けて言う。

 

 「貴方達!どう()てアリ()アとフェイトのちゃ(しゃ)()んは無いの?」

 

 ソコが気になってるの!!?流石親バカ!!

 

 「「「「「「「「「「アリチア?フェイト?」」」」」」」」」」

 

 不良達は当人達を知らないのか首を傾げている。

 ひょっとして知らないのか?なのはを知ってるんだからあの2人を知っていても可笑しくないと思うんだが…。

 それと『アリチア』じゃなくて『アリシア』な。プレシアさんの発音が悪いから仕方ないけど。

 

 「この子達よ」

 

 プレシアさんが空中のディスプレイにアリシアとフェイトの顔写真を表示させる。

 その写真を見た不良達は声を揃えてこう言った。

 

 「「「「「「「「「「ビッチに用は無え!」」」」」」」」」」

 

 いきなり酷い事言うなコイツ等。

 ビッチて……。

 俺はすぐ側のプレシアさんに目をやるが

 

 「……………………」(パチパチ)

 

 額に青筋を浮かべ、身体に電気を纏い始める。

 娘をビッチ扱いされて怒ってる!!?

 

 「あのー、何でこの2人の呼び方がそんなに酷いんですか?」

 

 プレシアさんの重圧にビクつきながら俺は不良達に尋ねてみる。

 

 「金髪の女なんて皆ビッチだと相場が決まっているだろうが!!」

 

 謝れ!!金髪の女性の皆さんに謝れ!!

 いや、先にプレシアさんに謝れ!!!

 尋常じゃない魔力を漲らせ始めたプレシアさん。

 

 「ふ、ふふふ……」

 

 怖っ!!!先程までの微笑ましい怒り方じゃない!!逆鱗に触れまくられた今のプレシアさん、見た目幼女なのに超怖っ!!!

 

 「これから貴方達がこの場に倒れ伏す原因は唯一つ…」

 

 ゆっくりと言葉を紡ぐプレシアさん。

 その姿を見て不良達も若干腰が引けている。

 

 「貴方達はわた()をおこらちぇ()た……チャ()ンダーレイ()

 

 ピシャアアアアアンンンンンンンッッッッッッ!!!!!!!

 

 「「「「「「「「「「ぎゃああああああああっっっっっ!!!!!」」」」」」」」」」

 

 天から降り注いできた雷をまともに浴びる不良達。

 

 「(てかプレシアさんの攻撃力上がってね?)」

 

 とても大人の時に放てるような威力じゃない。若返ったせいなのか威力がかなり上がっている。

 ダイダロスに頼んで魔力量を計測して貰ったが今のプレシアさんはSSSランク相当の魔力を保持してるとか。

 幼女モードマジパねえなオイ。

 

 「……チャ()ンダーレイ()……チャ()ンダーレイ()……チャ()ンダーレイ()ィィィィッッッッ!!!!」

 

 ピシャアアアアアンンンンンンンッッッッッッ!!!!!!!

 ピシャアアアアアンンンンンンンッッッッッッ!!!!!!!

 ピシャアアアアアンンンンンンンッッッッッッ!!!!!!!

 

 最初の一撃で不良達の意識が飛んだにも関わらず、プレシアさんは雷の雨を止ませようとせず、ひたすらに浴びせている。

 もう止めてあげて!!不良達の意識(ライフ)は0よ!!

 

 「(…って、言って止めたい所なんだけど…)」

 

 「うふふ…誰がビッチなのか()ら?言ってご覧なちゃ()い!!ほら!ほら!!」

 

 今のプレシアさんを説得するのは無理っぽいなぁ…。

 無印編でフェイトを虐待していたラスボスモードが幼女の姿で久々に降臨中。

 

 「わた()の愛()い愛()いむちゅ()め達をビッチ呼ばわりとは良い度胸を()ているわね。ちょ()んな暴言を吐いた事をたっぷりと後悔ちゃ()ちぇ()てあげるわ。ほら、何か言い分は無いのか()ら?あは、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 プレシアさんの高笑いが辺りに響く。

 周囲はドン引き、俺もドン引き中である。

 結局警備隊の人達が来るまでの数分間、プレシアさんは笑いながらオーバーキルを堪能していたのだった………。

 

 

 

 1週間後…。

 

 「ようやく元の身体に戻れたわ♪」

 

 先週受け取れなかった材料を無事に手に入れ、調合した薬をプレシアさんに渡して飲ませると若返りの効果が無くなり、以前の母親モードに戻る事が出来た。

 元の姿に戻った事により、『さ行』の発音もちゃんと出来ている。

 

 「ついでに言うと謹慎(・・)も解けたんですよね」

 

 「ええ…ホント、どうして私が謹慎なんて…」

 

 いえ、当然の処置だと思います。

 何せ不良達に雷の雨を散々浴びさせたんですから。

 相手はガラの悪い連中とは言え民間人、しかも非魔導師です。

 あの後、慌てて駆け付けた警備隊に取り押さえられ、そのまま事情聴取された挙句、プレシアさんは謹慎処分を食らう羽目に。

 よく考えたら唯我独尊(オンリーワンフラワー)使って即座に止めたら良かったんだけどプレシアさんの迫力があまりにも凄まじかったもので…。

 ちなみに俺はお咎め無し。一応、不良達とは話し合いで解決するつもりだったし。

 

 「けどあの不良達、今度はプレシアさんに夢中(・・・・・・・・・・・・)になっちゃいましたね」

 

 そう言うとプレシアさんは顔を顰め

 

 「『今の私』にじゃなくて『あの姿の私』にでしょ?」

 

 「はは…」

 

 俺は苦笑せざるを得なかった。

 あの雷の雨のせいで頭のネジが壊れたのか今、不良達は『なのは』『シュテル』ではなく幼女姿のプレシアさん……彼等曰くの『魔法幼女プレチアたん至上主義者』となってしまった。

 しかも全員がプレチアたんに罵倒され、雷の雨に浴びされられる事を希望している。

 『プレシアさん』ではなく『プレチアたん』にだ。

 今では周囲に迷惑を掛けなくなった代償として全員がドMのロリコンになった事は喜んで良いのだろうか?

 それより無印編でフェイトにやってた様に鞭まで使い出したらどうなるのだろう?

 ……彼等の快感を得るネタが1つ増えるだけか。

 

 「もう今はどうでもいいわ。それより今度こそは飲み過ぎず、少女に若返ってみせるわ」

 

 そう言って俺を見るプレシアさん。

 ……分かってますよ。出せばいいんでしょ出せば。

 宝物庫から取り出すのは当然若返りの薬。

 今度はちゃんと俺が分量を量ってからプレシアさんに渡す。

 ソレを飲んだプレシアさんは、今度はちゃんとフェイト、アリシアと同い年の年齢にまで若返った。

 ……だから何故貴女も身長が縮んだだけでほとんど見た目変わらないんですか?

 リンディさんといい、この人といい……桃子さん、メガーヌさん、クイントさん辺りも変化し無さそうだなぁ。

 

 「ふふふ…これよ、この姿が私の求めていた姿なのよ」

 

 鏡を見て満足そうに頷くプレシアさん。

 リンディさんに続いて転校して来る気満々だねこの人。

 リニスさんを説得できる自信あるのか?

 そんなプレシアさんがふと、コチラに向くと近付いて来て

 

 「んぐっ!!?」

 

 いきなり唇を奪われた………。

 

 

 

 ~~プレシア視点~~

 

 私は現在年下(今は同い年)の男の子とキスをしている。というより私から彼の唇に自分の唇を重ねた。

 

 「んんっ……////」

 

 「んうっ……ちゅっ……////////」

 

 異性とキスしたのって何時ぶりかしら?

 ……離婚した元夫以来かしらね確か。

 あの男は今振り返ってみても駄目な夫だったわね。仕事一筋で家族の事を顧みようともしなかったもの。

 それに私と結婚した理由も自分の経歴に箔をつけるため。

 当時、管理局で高ランクの魔導師資格を取得し、技術班の主任に抜擢されるぐらいの結果を出していた私と籍を入れれば周囲のコネも増えるし…。

 アリシアが産まれた時だって出産に立ち会おうともせず、子守りをした事も無い。

 ホント、最低な男だったわ。アリシアが産まれてすぐに離婚を提示した時も顔色1つ変えずに離婚届にサインするし。

 

 「……んっ……ぷはっ……////」

 

 彼から唇を離し、その顔を見ると頬を真っ赤にさせている。

 

 「いいい、いきなりなな、何するんですか!?////」

 

 結構動揺してるわね。可愛いわ♪

 

 「気にしないで……今回の一件で手間をかけさせたお詫びのつもりだから////」

 

 もっともお詫び以外の気持ちが大半以上を占めているのだけど。

 まさか私がここまで惹かれるなんてね。初めて会った時は『アリシアとフェイトの友達』という認識でしかなかったのだけど。

 

 「(人生何が起こるか分からないものよね)////」

 

 それに家族思いで管理局の魔導師としても優秀。

 

 「(アリシアもフェイトも彼を好いているのよね)」

 

 ついでにリニスとアルフも。

 どうしようかしら?リニス、アルフはともかく自分の娘達と彼を巡って争いたくはない。

 

 「(なら……する事は1つよね♪)」

 

 私達テスタロッサ家の女全員を嫁に貰ってもらいましょう。

 そうすれば家族で誰1人として争う必要もなくなるし、彼はハーレムを築けるし。

 『ハーレムは男の夢』と聞いた事もあるしね。誰も損する事の無い実に平和な解決策ね。

 

 「(後は勇紀君が私達に好意を持つ様にこれからじっくりと仕掛けていけばいいだけね)」

 

 勇紀君に抱き着きながら今後のプランをじっくりと練っていく。

 しかしプランを練る事に意識が行き過ぎていたため、帰ってきたリニスに背後から意識を刈り取られてしまい、私の記憶はそこで途絶えてしまった………。

 

 

 

 ~~プレシア視点終了~~

 

 ~~あとがき~~

 

 父親設定は捏造です。ていうかこの作品内で未亡人はリンディだけの予定です。

 それとプレシアも当然海中に通いますよ。クラスはアリシアと同じクラスで。

 


 
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