No.612080

『夏モノ』コラボ企画 真・恋姫†無双~家族のために~

九条さん

コラボ企画第一弾!
『夏モノ』に関してをテーマに執筆しました

※各キャラの水着に関しては原作の萌将伝参照

2013-08-24 21:32:20 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1971   閲覧ユーザー数:1765

恋姫×夏モノ コラボ作品

『夏だ! 海だ! さまーばけーしょんだ!』

 

 

 

 唐突だが、俺達は今、海に来ている。

 

 呉の重要な拠点のうちのひとつである建業。そこからさらに東へ東へと進んだ先で一度広大な土地は途切れている。

 その先には、現代では日本海と呼ばれる広大な海が広がっている。

 

 俺達がいるのはまさにそこだ。

 見渡すかぎりゴミなんてものは見つからない砂浜

 青々とし、浅いところなら底が見えるほどに澄んだ海。

 天気にも恵まれ、強い日差しは日々事務処理に負われ、部屋に篭りがちな俺には眩しいほどだ。

 

 だが、それ以上に彼女達の姿のほうが眩しいかもしれない。

 呉の重鎮。それも皆、美少女といえるほどの美貌の持ち主だ。

 それが水着を着て一堂に会するというのだから、テンションが上がらないことはないだろう。

 

 ちなみに今はその彼女達の着替え待ちである。

 着替えるための建物などあるわけもなく岩陰で着替えることになったのだが、思春から「覗くなよ」とドスの聞いた声で言われたときは命の危険を感じた。

 そもそも覗くつもりなんてないのに……。

 

 とはいえ、なんでこんなことになったのか疑問になると思う。

 俺もなんでこうなったのかはよくわかってないんだが、たぶんあの一言が始まりなんだと思う。

 

 

 とある日。

 いちいち指示を仰ぐ為に部屋を移動するぐらいならと、二十人ほどの人が入る大部屋を作り、呉の重鎮達はそこに集合してそれぞれ書簡と向き合っていた。

 サボりの常習犯達もこれでは逃げることができず、半ば強制的に書簡と向き合っている最中、俺が何気なく放った一言に王様が食いついた。

 

『海か……』

 

 本当に小さくボソッと言った言葉だが、目聡く反応したサボりの王様はやっていた仕事(といっても冥琳が回してきたものをざっと見て判を押していただけ)を休憩して話しかけてきた。

 

「ねぇ、深って海を見たことあるの?」

 

 何か面白いものを見つけた子供のように目を輝かせてこっちを見る雪蓮。

 

「ん? ああ、ここじゃないけどあるよ」

 

 それに対し、手元の書簡を影華と共に捌きながら答える。

 このとき、ちゃんと雪蓮の様子に注意しながら対応していればこんなことにはなっていなかったのかもな。一つ教訓になった。

 

 答えながら質問の意図に気付いた俺は聞いてみた。

 

「ってことは川は見たことあるけど、海はないのか?」

 

「そうなのよねー。たぶん、ここにいる()(たち)も全員そうよ?」

 

 周囲に目をやり、反応を伺う雪蓮。

 密かに耳を澄ませていた何名かが頷く。

 すでに仕事をやる雰囲気ではなくなってしまったのを感じたのか、冥琳が深い溜息を吐いた。なんか、本当にごめん……。

 影華は俺の様子から察したのか「給仕の者を手伝ってきます」と、すでに退席している。

 

 再び影華が戻ってきたとき、真面目な雰囲気はどこかに吹き飛ばした王様が、明命や穏と一緒に海への思いを語り合っていた。

 冥琳に謝罪をしていた俺は、影華から飲み物を受け取るともう一度冥琳に頭を下げた。

 

「本当にごめん。せっかく皆真面目に仕事をしていたのに」

 

 何度も頭を下げる俺の様子がどこかおかしかったのか、ふふっと笑っている冥琳。

 

「別に、雪蓮のアレは今に始まったことではないさ。だからお前が謝る必要もない。幸い、今日の分の仕事はすでに終わっているし、そろそろ皆の集中が途切れるところだと思ったからな」

 

「じゃあ……」

 

「だが、アレを故意でないとはいえ焚きつけたのは紛れもなくお前だ。責任は果たしてもらうぞ?」

 

 飴があれば鞭がある。このときほど痛感したことはないだろう。

 

 俺は苦笑しながら、今後の予定を考えていた。

 

 

 これが大体十日ぐらい前。

 あの後、熱の冷め切らない雪蓮、明命、亞莎、穏に俺が知っている海について語らされた。

 蓮華がさりげなくずっと聞いていたのは黙っておこう。

 

 そして次の日には雪蓮が冥琳を説き伏せ、避暑の日を定めた。

 その避暑の日が今日ってわけだ。

 避暑の日とは、言ってしまえば呉の重鎮が一斉に休暇を取る日だ。そんなことをして問題はないのか冥琳に聞いてみたが

 

『アレを黙らせるには飲まざる終えなかった』

『後進の育成にはもってこいだった。次の日には皆、目を回すであろうがな』

『あとで覚えておけよ、深』

 

 と、物凄く怒ってらっしゃいました。

 本当にごめんなさい。

 

 

「深、皆さん準備が出来たようですよ」

 

 音もなく俺の右やや後ろ側に現れた影華が告げる。いつものことだし驚くことはない。

 明日のことは明日になってから考えよう。せっかく海に来たんだし、まずは楽しまないとな。と、その前に

 

「黒にしたんだ。うん、似合ってる似合ってる。いつも以上に綺麗だよ」

 

「あ、ありがとう」

 

 真っ赤になって俯く影華。いつもは済ました顔をしてるけど、不意を突かれるとその仮面が外れる。

 そんな可愛い影華を見て、俺も若干顔が赤くなるのを感じた。

 これで今日もがんばれる。

 

 初めての海でテンションがマックスを優に超えていた何名かを押さえると、皆で準備運動をする。

 学生時代にプールサイドでやった伸脚とか屈伸とかだ。

 やってから思ったけど、一部を除いてみんな身体が柔らかかった。特に明命なんかは足を百八十度に開いた状態で上半身を地面につけていたし……。身体の硬かった人は名誉の為、名前は伏せておくよ。

 

 準備運動が終わり、まずは何からやろうかと考え始めたとき、俺の荷物をあさっていた雪蓮がそれを見つけた。

 

「ねぇ、深。これって鞠?」

 

 雪蓮が取り出したのは、鞠よりも一回り大きい、バレーボールぐらいの大きさの玉だった。

 この時代にあるとは思っていなかった鞠。街を警邏しているとき、子供達が遊んでいるところを偶然発見した。そこから鞠を作っている職人さんのところに行って、もう少し大きいものを作れないか交渉したところ、値段は少し張ったがなんとか作ってもらえた。

 

「それはビーチバレー用のボールだよ」

 

「びーちばれー?」

 

 なんだか分からないけど面白そうねといった顔で少し首を傾げる雪蓮。

 俺はビーチバレーの簡単なルールを説明しながら、もう一つの大事なものを荷物から取り出す。

 

「ビーチバレーっていうのは、二対二でこのボール……球を打ち合って点を競う運動で、必ず地面につく前に球を打ち上げなきゃいけない。……たしかここに……え~と、触れていいのは自分の陣地の中で三回まで。それを超えるか、相手が打ってきた球が自分の陣地内に落ちたら相手の点になる。あったあった……これも必要なんだ」

 

「? それは?」

 

 俺が取り出したのはビーチバレー用のネット。

 鞠職人にバレーボールの作成をこじつけた日から毎晩、影華と共に仕事が終わってから作ったものだ。

 当然、ネットの素材であるベクトランなんてここにはないから、あまり太くない縄を繋げていっただけ。強度は申し分ないはず。

 

「これはネットっていって、互いの陣地の中心に立てるんだ」

 

「? ……あ~、だからあんなに長い槍なんて持ってきてたのね」

 

 そう。俺は槍を二本持ってきている。どちらも八尺ほどの長さで、大体ビーチバレーのネットの高さと同じぐらいのものを。

 

 普段、そんなものを使わないから不思議に思っていたんだろう。

 俺と影華と雪蓮がビーチバレーのコートを組み立てていると、いつのまにか興味深そうに皆が集まっていた。

 ちょうどいいからと、さっき雪蓮に説明したビーチバレーのルールを改めて皆に説明。先端に色のついたくじを用意し、チーム分けを行った。

(※なお、このくじには作者の悪意などは一切存在致しませんことを、予めご連絡させていただきます)

 

 

赤チーム:凸凹王様ペア……雪蓮、蓮華

青チーム:特技睨むペア……思春、亞莎

黄チーム:貧乳呪詛ペア……明命、小蓮

黒チーム:魔物宿るペア……穏、祭

 

審判:深、冥琳、茜

進行:影華

 

 くじ引きを終え、改めてルールの確認。

 

・トーナメント制

・十一点先取で勝ち

・ネットに触る、又は越えると相手の得点

・二回連続でボールに触れると相手の得点

・コートに穴を開けるなどした場合、即刻退場

・妨害行為も同様

 

 

 細かくいうともっとあるが、楽しむだけならこれだけ守れば問題はないだろう。

 みんながルールを覚えたことを確認してから、最初の試合が行われた。

 

 第一試合。赤チームvs青チーム

 第二試合。黄チームvs黒チーム

 第三試合は勝った方同士がぶつかることになる。

 

「それでは第一試合、選手の入場です」

 

 実況の影華に呼ばれ、コートに入ってきたのは雪蓮、蓮華の赤チームと思春、亞莎の青チーム。

 

「蓮華、たまには姉妹の本気というものを見せてやりましょう」「はい! 姉様」

 

「蓮華様、遊びとはいえこれも勝負。手は抜きません」「ええと、が、がんばります!」

 

「両チームともやる気が見て取れるようです。先攻は赤チーム、雪蓮様のサーブからとなります」

 

 茜からボールを受け取る雪蓮。両手で堅さを確認してから、位置へとつく。

 

「それでは、第一試合、始め!」

 

 笛の合図などなく、合図は出すが打ち始めるのは個人のタイミングである。緊張感が高まったところで雪蓮がサーブを打つ体勢に入った。

 

「たしかこうだったわ……っね!」

 

 ボールを上に投げジャンピングサーブ!

 最高の打点で打ち出されたボールは、ネットを越えたあたりで急激にその角度を変え誰もいないところへ落ちる。

 

「……っ! させんっ!」

 

 即座に反応した思春が右手を出して横っ飛び。高く高く打ち上げられたボールはふらふらとネット際へ。

 

「二度はないのよね!」

 

 ジャンプした雪蓮がスパイクを放ち、亞莎がブロックの為に跳ぶも高さが足りず一点。

 

「まだまだね~」「さすがです、姉様」

 

「ご、ごめんなさい!」「気にするな。取れなかった私も悪い」

 

 その後も青チームは雪蓮の弾丸サーブに苦しめられ、得点は十一対二で赤チームの勝利。

 苦しめられたとはいえ一度もサービスエースをさせなかった思春もそうだけど、意外と蓮華のレシーブが上手かった。何度も尻餅はついてたけど。

 

 

「それでは第二試合の選手は入場してください」

 

 第二試合。明命、小蓮の黄チームと、穏、祭の黒チームの対決は、選手入場前から不穏な空気が漂っていた。主に黄チーム側から。

 

「明命! あんな乳共はけちょんけちょんにするわよ!」「はいなのです!」

 

「なぁ、穏。物凄く身の危険を感じるのじゃが気のせいかのぉ?」「そ、そうですね~……」

 

 若干殺気立っているようにも見える二人だが、冥琳は問題ないと試合開始を宣告。

 先ほどとはまた異なる緊張感を持って、第二試合が開始された。

 

 先攻は黄チーム、明命のサーブ。

 雪蓮とは違い、アンダーからの放たれたサーブはゆるやかに放物線を描き、後方に構えていた穏の元へ。

 難なくレシーブしたボールを祭がアタック!

 だが、身長差を理解している小蓮と明命はブロックを放棄。二人とも後方で防ぐ構えを取っていた。

 そして放たれたボールを明命がレシーブし、それを小蓮が相手コートに打ち返す。どうやらスパイクを放っても身長差で抜けられないから、ひたすらに守り、相手のミスを待つ構えのようだ。

 

 それから何度もスパイクを打ち続けた黒チームだが、次第にミスを連発。

 途中、穏からゆるくスパイクを打ってみてはどうかとの進言がされたが、熱くなっていた祭は聞く耳を持たず。

 最後は怒りに任せた全力のスパイクを、小蓮、明命が身の危険を感じて回避。避けられたボールはコートに穴を開けるという惨事をもって、黒チームは強制退場となった。南無……。

 

「巨乳死すべし!」「正義は必ず勝つのです!」

 

 決勝戦。

 自身の才能を遺憾なく発揮し、弾丸サーブを放つ雪蓮率いる赤チーム。

 小さいのだって伊達じゃない! その怨念を力に変えて粘りの試合を見せた黄チームの激突。

 両チームは対戦前から激しい火花を散らしていた。

 

「悪いけどこの試合はシャオ達が勝つんだからね! そして深と……」

 

「なっ!? そんな話は聞いてないわよシャオ!」

 

「え~? だって最初の試合が始まる前にお姉さまが言ってたもん。勝ったちーむが一日深と一緒にいられるって~」

 

 え? そんな話、俺は聞いてないんですが。……なんで目を逸らすんですかね、この王様は。

 影華が「それなら私も……」って、いや、まぁ、あとで王様にはお話を聞いておこうか。

 ちなみに抉れたコートは、抉った本人の手により修繕された。

 

 そんなことがあって、各自初戦よりもテンションがあがった状態で決勝戦が始まった。

 今回のサーブは小蓮からだ。

 明命と同じくアンダーから放たれたサーブは、遅すぎるが故にふらふらと空中で蛇行しながら相手コートへと向かっていく。それを焦らずに雪蓮がレシーブ。

 ネット際に寄せていた蓮華がトスを上げ、雪蓮が強烈なスパイクを放つ!

 

「させませんっ!」

 

 掛け声とともに落下地点へと飛び込む明命。懸命に伸ばされた手はボールを捉え打ち上げることに成功する。それを小蓮が難なく返し、その間に明命は体勢を整え振り出しに戻る。

 気が付けばそんなループが完成していた。

 攻め手に欠ける黄チームと、攻めてはいるが黄チームの脅威の粘りによって中々点が入らない赤チーム。

 だが、長いラリーの終わりは唐突に訪れた。

 十何度目かのスパイクを雪蓮が放ったとき、さっきまで飛び込んでいた明命が動かなかった。……足を庇ったまま。

 試合を中断して俺と冥琳が駆け寄り、明命の状態を確認。

 幸い、大事には到らなかったが、短時間で足へ負荷がかかったため痛めたのか、足首が赤く腫れていた。見てみると手も真っ赤になっていたため、これ以上は危険と判断。途中棄権ということにした。

 

「ぶ~、悔しいけど勝負より明命の身体のほうが大事だもんね~」

 

 こんなことを言われてしまえば、勝利者の特権ということで俺に近付こうとしていた雪蓮は黙って下がるしかなく、一部不完全燃焼のままビーチバレー対決は幕を閉じた。

 

 

 実は他にもやっていたことがあるが、これはまた別の機会に話すことにしようか……。

 

 

 

 

「あれ? 深は~? 雪蓮はどこにいったの~? ……はっ! ……なんか皆が楽しそうなことをやってる気がするわ。……家督を譲ってから扱いがひどい! 母を置いていくなんてずるいわよー!」

 

 そんな叫びが城で響いていたとかなんとか……。

 

 

こんばんわ 九条です。

 

前回からまたまた期間があいてしまいましたが

かねてから告知していたコラボ企画の投稿です

いかがでしたでしょうか~

 

同じくコラボ企画に参加してくださった雪月さんの作品もご覧になってはいかが~?

雪月さんの作品『真・恋姫†無双 ~孫呉千年の大計~』

URL → http://www.tinami.com/view/612081

 

※終わり方が微妙なのは仕様です

 次回もあるかもしれない!?

 

コラボ企画は今後も不定期で企画していこうと思っています

参加は自由ですので、事前に申告してくだされば

コラボ企画用の連絡先をお教えいたしますので、奮ってコメントを残してくださいね!

 

 

最後になりましたが

いつも支援・コメント・閲覧してくださってありがとうございます。

これからも自分の書きたいように書き続けていきますので

応援のほど、宜しくお願いします!


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
10
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択