それは突然の事故、だった。
父親と母親、そして、その一人息子。その、どこにでもいる平凡な家族は、たまの連休を利用しての旅行へと、父親の運転する車で高速道路をひた走っていた。車内は和気藹々としており、これから始まる家族水入らずでの一時をどうやって過ごすか、そんな話に花を咲かせていた。
しかし、それは唐突に起こった。
一家の乗る乗用車のすぐ目の前を走っていた大型トレーラーが、突然その巨体をぐらつかせたかと思った瞬間に横転した。父親は突然の事態にあわててハンドルを切り、それを避けるべく行動したが、間に合わなかった。彼らの乗用車を含む十数台の車を巻き込み、トレーラーは爆発、炎上した。
トレーラーの中には大量の花火用の火薬が積まれていたらしく、その火薬に事故の衝撃でおきた火花が引火した、とは、後の事故調査でわかったことである。
事故から数時間後。
その多数の死者、重軽傷者を出したこの大惨事の生存者の中に、一人の少年が含まれていた。そう、先述のトレーラーの直後を走っていた乗用車、その中に居た子供である。あれほどの事故に巻き込まれたにもかかわらず、彼は両足の複雑骨折のみをしただけで、その命に別状はなかった。
しかし、彼の両親は……助からなかった。父親は運転席に挟まれ即死。母親は、息子と一緒に後部座席に居たためか即死は免れたものの、運び込まれた病院にて手当てむなしく一時間後には息を引き取った。その、自らを必死に手当てしようとしている、偶然にも、その運び込まれた病院にて医師をしていた親友に、子供のことを頼むと静かに告げて。
そして一年後。
「……それじゃあ、石田せんせの子になるん、決めたんや」
「……まあ、ね。母さんの大親友だし、僕もさちおば、げふんっ、……ねえちゃんのこと、好きだし」
海鳴大学病院という、海鳴市にある大きな病院の二階ロビーにて、少年と少女が朗らかに話をしている。少年のほうはよくあるジャージ姿、少女のほうは病院服という格好で、少年はロビー据付の椅子に座り、少女は車椅子に座っている。
「そっかそっか。あ、ほんならこれからもちょくちょく会えるんかな?なにしろ、私にとって君は数少ないというか、唯一無二の友達やしね」
「もちろんさ。僕にとってもそれは同じだしね。面会どころか退院したら家にも押しかけてやるよ」
「うん!いつでも大歓迎やで!」
あはははは、と。楽しげに笑う二人。一年前、両親を亡くしたことを知った少年は、親の死を号泣して悲しみ、三ヶ月はまともに食事すらもできないほどに落ち込んだ。そんな彼をよく叱咤激励したのが、今、彼のそばに居る少女である。
少女、八神はやてもまた、彼とは別の事故で両親を失い、自身は命助かりこそしたものの、原因不明の麻痺によって両足が不自由となり、車椅子なしには居られない体になった。しかし、彼女はそんなことをおくびにも出すことなく、たまたま同室になったこの少年を気にかけ、ことあるごとに声をかけ続けた。
はじめは完全に無視していた。その後はいらない気遣いだと怒鳴りもした。しかしそれでも、はやては懲りずに彼に声をかける。
そんなはやての気遣いを受けているうち、とあることがきっかけで、少年は自分がどれほどに馬鹿だったのかを痛感。それまでのことを彼女に謝り、『友達になってほしい』、そう、告げた。
そしてそれから半年。今では二人は大の仲良しになっていた。
そしてこの日、少年はいよいよ退院となることが決まり、それと同時に、母親の友人であり、その最期を看取ったこの病院の医師、石田幸恵という女性の養子となることを決めた。ただし、自分の苗字を石田に変えることに関してだけは、彼はかたくなに拒んだ。
自分が今の苗字を変えてしまったら、この苗字を名乗る者が誰もいなくなってしまう。親戚も居ない。だから、自分がこの苗字を、父母に代わって繋いでいきたい、と。
幸恵もそんな彼の想いに心打たれて納得、少年はその苗字を変えることなく、彼女の義理の息子になった。
「……じゃあ、そろそろ行くよ。さちねえちゃん、待ってるし。……またな、はやて」
「……うん、また、な」
はやてに見送られつつ、少年は義理の母となった幸恵の待つナースセンターへと歩いていく。
「来たわね。はやてちゃんとちゃんと、お話してきた?」
「うん、これからもたくさん会おう、って約束してきたよ」
「そう、よかったわ。……あの子ももうじき退院だけど、これからは一人暮らしになっちゃうし、強がっていてもやっぱり寂しいだろうから、どんどん仲良くしてあげてね」
「もちろん!」
はやては退院後、一人で実家に住むことになっている。生活費などは、彼女の父親の古い友人という人物がその財産を管理し、彼女が一人前になるまで後見することとなっている。
しかしなぜ、彼女のような幼い少女が、両親を亡くして身寄りのないにもかかわらず、ハウスキーパーの助けがあるとはいえ一人で暮らさなければいけないのか。そんな、当然誰もが抱いていいはずの疑問を、この時不思議と、誰も気にすることがなかった。
その理由ははるか後、三年後に起きた、はやて自身が関わることとなる、とある事件後に明らかになるわけだが、それはまたその時に語ることにしよう。
「……それじゃあ、そろそろ行きましょうか。帰ったらまず、お買い物に行かないとね。もうじき学校も始まるしね」
「えっと。せいしょうだいがくふぞく……だっけ?」
「そうそう。私立聖祥大学付属小学校。制服ももう届いているから、後で着て見せてね?じゃ、行きましょうか、九郎くん」
「うん、さちねえ。……か、かあ、さん」
こうして、少年、『
新しい環境、新しい場所。
それらに対する期待と不安、それらが入り混じった彼のその心中をまるで慮るかのように、彼のその懐の中では、母親の唯一の形見である、その一つのペンダントトップが、静かに、そして優しく、その淡い光を点していたのだった。
そして、それから三年後。
新暦65年6月4日。
八神はやて、9歳の誕生日より、この物語は動き出す。
『P・T事件』
『闇の書事件』
後にそう、記録されることとなる、同一年内にほぼ同時に起こった、この、二つの事件。それらに関わったことが、九郎とはやて、この二人のその後の人生の大きな結節となる。
始まりの場面は夜。
海鳴大学病院より、検査帰りのはやてと、それに付き添っていた九郎が、短いような長いような、そんな時間をバスに揺られているところから。
不屈の少女と運命の少女。
夜天に集いし雲たち。
夜天の王たる少女。
砕け得ぬ闇と欠片の少女たち。
そして、紫天の王となる少年。
もう一つの、ありえたかもしれない、その世界を、これより皆様のお目にかけましょう。
魔法少女リリカルなのはA's Another
始まります――――――――――。
あとがき。
とりあえず、石は投げないでください(えw
だって、恋姫の話が最近まったく書けないんですの!!わが情熱よどこ行った!?(お
というわけで、前々から書きたいなと思っていた、純粋なリリカルなのはのお話を書いてみました。
いままでクロスというかネタとしてはちょいちょい書いていたわけですが、今回は完全にマジで書いた、A'Sの再構成ものです。
基本は原作準拠でストーリー改変はほぼなし。アニメと映画、双方の設定を混ぜていきますので、そのあたりはご注意を。
一応、主人公組というかヴォルケンズも、P・T事件に多少は絡みます。どっか別サイトで似たような話を見た気がしますが、それに似通わない様注意してやっていきますです。
さて、主人公の真咲九郎。
容姿的にはクロノが一番近いですが、彼よりもちょっと背が高く、顔も細面って感じです。年はなのはたちより一つ上の十歳(物語開始時点)。魔力ランクとか特性とかは当分秘密でwぶっちゃけると、彼が魔法を使うようになるのは物語中盤ぐらいからになります。
はやてと同じく事故で両親を亡くし、母親の友人だった(もちろん捏造)、原作でははやての主治医を務めていた石田先生の養子となっています。その関係で、はやてとは仲のいい友人関係となり、彼女が一人暮らしするようになってからは、ちょくちょく家にも遊びに行っています。
そしてこの物語で一番やりたいのは、やはりなんと言っても初代リインの救済!
まあ難しいのはわかってます。でもそこを何とか、無い頭ひねって、チートとかなしで、無理なく達してみたいわけで。
みんなが笑顔のハッピーエンド!
そこを目指してがんばっていきます。
それでは皆様、次回、第一話にてお会いしましょう。
ちゃおw
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はい、狭乃狼でございます。
とうとうやってしまいました、リリカルなのはss!w
アニメと映画、双方の設定を使っての原作再構成です。
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