No.608251

ALO~聖魔の剣~ 第19剣 進路はどうしよう?

本郷 刃さん

第19剣です。
アスナが【絶剣】の存在を知る話になります。

どうぞ・・・。

2013-08-13 09:58:25 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:11535   閲覧ユーザー数:10624

 

 

 

 

 

 

 

 

第19剣 進路はどうしよう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナSide

 

1月6日、火曜日の午後4時頃。

夕食前の時間を使ってALOにダイブしているわたしはアインクラッド第22層にある自宅で冬休みの課題をしています。

右隣ではシリカちゃんが課題の数式と睨めっこをしながら唸りを上げて、

左隣ではリーファちゃんが課題の英文を見つめて顔を顰めています。

向かい側の椅子に座るリズは、休憩だと言ってゲーム内で売られている小説を読みながら、

木苺のリキュールを飲んでいる…ずるい。

こういった夕食前の出られない時間で友達と一緒に勉強できるのは結構いいと思ったりします。

そこで、隣に座っているシリカちゃんがわたしの肩に凭れ掛かってきました。

猫妖精族(ケットシー)特有の大きく突き出た三角形の猫耳をぴくぴくさせながら、幸せそうな寝息を立てています。

 

「シリカちゃん、起きて。いま寝ちゃうと夜眠れなくなって困っちゃうよ~」

「うにゃ…むにゅ~…」

「冬休みもあと3日しかないんだから、頑張って課題を進めないと」

「みゅぅ、はぃ…。でも、ねむいです…」

 

シリカちゃんは可愛いく、それでいて大きな欠伸を浮かべてから、

途中まで進めている課題のホロウインドウに再び手を付け始めました。

それにしてもここまで眠たくなるなんて、どうしてかな?

 

「もしかして、この部屋あったかすぎるかな? 温度下げようか?」

「アスナさん、多分アレのせいだと思いますよ」

「え?……あぁ、なるほどね…(くすっ)」

 

訊ねてみたところ、リーファちゃんが笑みを浮かべながら答えたので、彼女が向けている視線の方を見てみて、納得しました。

 

視線の先には壁に備え付けられているペチカがあって、その赤々と燃える暖炉の斜め前には木製の揺り椅子が1つ。

その揺り椅子に深々と身体を沈み込ませながら眠っているのはわたしの大好きなキリトくん、

それに彼の膝とお腹の上に子供姿で眠っている大好きなユイちゃん。

さらに暖炉から少し離れたところにあるソファで眠るルナリオ君とハクヤ君。

そしてヴァル君も眠っていて、彼のお腹の上ではシリカちゃんの相棒である小竜のピナが寝息を立てて眠っています。

こうして彼らを見ると、外見は似ていなくてもまるで兄弟のように思えてくる。

でもいいなぁ~、わたしもキリトくんとユイちゃんの3人で眠りたいなぁ~。

そして特にキリトくんの綺麗な眠り方を見ていると、なんだかこっちまで眠くなることが多い。

いつの間にか体がふんわりとして、眠気が……。

 

「って、アスナさん。自分が寝てますよ!…あ、リズさんも、リーファちゃんも!」

「「「はっ!?」」」

 

シリカちゃんのツッコミにわたしだけでなく、リズとリーファちゃんも意識を取り戻した。

危ない危ない、ほとんど眠り掛かっていたけど…。

 

「ルナくん達、お正月前には課題を全部終わらせていたんですよね~」

「こっちのこと、少しは手伝ってくれてもいいのに」

「まったくね……なんかイタズラでもしようかしら?」

「やめときなよ、リズ。見つかった時が怖いんだから~」

 

リーファちゃんが言うようにキリトくん達はお正月に入る前に全ての課題を済ませていたそうで、

わたし達が課題の続きを始めた時にそれだけ告げると彼を始めとして、みんな椅子とソファで眠ってしまったのだ。

シリカちゃんの言葉に賛成するように言ったリズは「どうしてやろうか」と言っているけど、

わたしは何かをしたリズを彼らが起きた時に何故止めなかったと問われる方が怖いので、先に注意しておく。

 

「それもそうね……にしても、どうしてアレを見てると眠くなるのかねぇ~?」

「そこも謎の1つだよね。眠気覚ましにお茶とデザートにでもしましょ」

 

苦笑しながら答えるリズにわたしは休憩を提案して、

最近クエストで入手した『タップするだけで99種類のお茶がランダムに湧き出す』マグカップを棚からだして、

フルーツタルトも用意し、それぞれ異なるお茶を飲んだ。

 

「そういえば、結局【絶剣】はあの後も勝ち続けているのよね?」

「そうみたいですよ。昨日も挑戦者が後を絶たなかったみたいですから…」

「ホントに凄いですね~」

 

リズが何かを思い出したかのように聞くと、リーファちゃんとシリカちゃんがそれに同意するように話しに加わった。

一体なんの話だろう?

 

「『ゼッケン』って、なんの話?運動会でもするの?」

「違うわよ。絶対の絶にソードの剣、それで【絶剣】ていうの……って、アスナに話してなかったっけ?」

「う、うん。初めて聞いたけど…」

 

その言葉が良く分からなかったわたしは思い当たる『ゼッケン』のことを言うと、リズが笑いながら訂正した。

だけど、わたしに話していないことを思いだしたみたい。

 

「お兄ちゃんからも、聞いてないんですか?」

「聞いてないよ」

「珍しいですね~、キリトさんがそういう話題をアスナさんに話さないなんて…」

 

リズに続けて2人もそう言ってきた。

 

「アレかしら? 婚約者宣言のせいであたし達みんなアスナにも伝えたと思ってたのかも」

「「ああ~」」

「も、もぅ~、からかわないでよ///」

 

親友の言葉に頷く2人の妹分ちゃん。

わたしは2日前のみんなにキリトくんと婚約者になった宣言をしたのを思い出し、照れてしまう。

 

「はいはい。えっと、【絶剣】の話だったわね……これは通り名なのよ。

 あまりにも強いから、誰かがそのプレイヤーをそう呼び始めたの。

 意味は多分、“絶対無敵の剣”とか“空前絶後の剣”だと思うけどね」

 

ビックリした、まさかそんなプレイヤーがいたなんて…。

わたしも【バーサクヒーラー】などという不名誉な通り名と、

黒白の覇王妃(こはくのはおうひ)】という非常に名誉な通り名を持つくらいにはこの世界での剣の実力はあるほうだ。

そんなわたしとしても是非とも気になる。

 

「それで、その【絶剣】さんはどんなひとなの?」

 

興味津々で聞いてみると3人は最初の方から話し始めた。

 

噂をよく聞くようになったのは年末年始辺り、つまり丁度1週間程前から。

それならばわたしが知らなくても無理はない、京都の本家に帰省していたのだから。

その帰省も最初は嫌だったけど、後半は喜び満載だったから好しとしよう、うん……話が逸れちゃった。

そしてその絶剣さん、なんでもデュエル専門で24層にある小島に午後3時に現れて挑戦者1人ずつとデュエルを行うという。

しかも最初の30人を一気に返り討ちにしたというのだから驚きでしかない。

HPを3割削れた人は1人もおらず、リーファちゃんとリズも挑戦したところ、

リーファちゃんは6割削ったところまでが限界だったという。

そのうえ挑戦者が集まるように、賭けネタになんと11連撃のOSSを用意しているらしい。

そして種族は闇妖精族(インプ)で得物は片手直剣なのだけれど、わたしのレイピアくらい細いとのこと。

しかも通常攻撃がソードスキル並みのスピードというのだから、新種のキリトくん達か!と思ってしまったのは内緒にしておこう…。

 

「そんなに凄いなら、わたしでも無理かなぁ……あ、そういえば、キリトくん達はどうなの?

 『神霆流』のみんななら、勝ったんじゃないの?」

 

そう思ったわたしの言葉にリズ達は顔を見合わせてから苦笑した。

 

「実は、キリトさん以外は戦っていないんです」

「必殺技級の技を賭けの対象にしているのが、気に障ったみたいで…」

 

シリカちゃんとリーファちゃんの返答を聞いて、わたしはなんとなく理由が分かった。

彼らは武人……であれば、彼らのその反応にも納得がいく。

 

「じゃあ、キリトくんはどうだったの?」

「負けたわ…デュエルでは(・・・・・・)、ね…」

「デュエル、では? それってどういう…」

 

意味深なリズの言い方、その真意は次の言葉で分かった。

 

「お兄ちゃん、絶剣さんのHPを残り5%まで削ったうえに剣も取れないところまで弾いたんですけど、

 その時点で降参しちゃったんです」

「仕切り直したいって言ってましたよ。納得がいかないからって」

「なんか、キリトくんらしいね」

 

さらに聞けば、賭けのネタはいらないというのだから彼らしいという言葉にも拍が付く。

 

「俺が、どうしたって?」

 

顔を合わせて話しをしていたわたし達は体をびくっとさせてから、声の聞こえた方を向く。

キリトくんが揺り椅子から体を起こしています。

 

「【絶剣】の話しをしてたんだよ。あと、お兄ちゃんのデュエルの話しも」

「あぁ、あれか」

 

キリトくんはまだ眠っているユイちゃんを抱きかかえて揺り椅子に寝かせて、

ストレージから自分のコートを取り出すとユイちゃんに掛けてあげています。

 

「ま、あたしとしてはアンタが絶剣と何を話していたのかが気になるんだけど~……やっぱ無理?」

「駄目、こればかりはアスナが聞きたいって言っても教えられないからな。かなり大事な話しだし」

「わたしでも駄目なんだ…」

 

リズの言ったことにキリトくんは即答して、わたし自身も内容が気になったけど、

彼がそこまで言うのならこれ以上は聞くのをやめておこう。でも、やっぱり気になるなぁ~。

キリトくんが駄目なら、直接その絶剣さんに聞いてみないといけないよね…。

それに、その人はなんだか他にも目的がある気がする…。

 

「戦うつもりか?」

「うん、戦ってみたいって思うし」

「そうか。まぁ、別に止める理由はないからな……もしも、アスナが選ばれたとしても…」

「え、なんて?」

「なんでもない、頑張れよ」

「うん…」

 

彼の最後の言葉が聞こえなくて、だけどキリトくんは本当になんでもないかのようにそう言ったから、それ以上は聞けなかった。

なんだかこの1件に関してキリトくんはまるで関わろうとしないようにしている風に感じる。

 

「それで? キャラはどっちを使うつもりなんだ?」

「あ、使い慣れてるこっちでいこうかなって…」

 

多分だけど、キリトくんが言っているのはわたしのサブアカウントであるキャラクター、

近接特化能力構成(ビルド)にしている風妖精族(シルフ)短剣(ダガー)使いの『エリカ』のことだと思う。

だけど、やっぱり使い慣れているのはこの『アスナ』だから、本気で戦うならこっちが一番だもんね。

 

「みんな、付き合ってもらっていいかな?」

「勿論、見に行くわよ」

「名勝負になりそうですからね!」

「それは間違いないね。お兄ちゃんも勿論行くでしょ?」

 

同行を願ってみると、3人とも快く承諾してくれた。だけどキリトくんは…、

 

「悪い、俺は別に用事があるから……良かったら、その話しを聞かせてくれ」

 

そう言って断りました。用事があるなら仕方がないよね。

 

「ねぇ、キリトくん。1つだけ聞いてもいい?」

「ん、どうした?」

「【絶剣】さんはそんなに強いんだよね? なら、元SAOプレイヤーって可能性はないのかなぁ?」

 

そう、みんながそこまで強くて、しかもコンバートプレイヤーかもしれないというなら、その可能性もあるはず。

 

「それはないよ。あの戦い方と強さでSAOプレイヤーだったのなら、間違いなく攻略組だったはずだ。

 そして、その戦い方と強さを俺達が忘れるはずはない。ま、アイツも違うと自分で言っていたからな」

 

キリトくんは断言した。彼が言うのなら間違いないかも。

それからわたしは現実の時間が6時になったのに気が付いて、みんなに断りを入れてからログアウトしました。

 

アスナSide Out

 

 

 

明日奈Side

 

自室で目を覚まして、自分の姿を確認して小さな乱れを直してから部屋を出た。

玄関の前を通り過ぎる時、ハウスキーパーの『佐田 明代(さだ あきよ)』さんが丁度帰宅するところだったみたい。

佐田さんは元から結城家に仕えている橘さんとは違い、1年前に雇われた人だ。

橘さんは既に60代後半なので、その負担を少しでも減らそうとしたらである。

わたしは佐田さんに「いつもありがとうございます」とお礼を言い、

彼女は恐縮したようにペコペコと頭を下げてから、笑みを浮かべて帰っていきました。

そして広々とした20畳はあるかというダイニングに入ると、既にテーブルについている母さんとその傍にいる橘さんがいました。

 

「ごめんなさい、遅れちゃって…」

「少しくらいなら構わないわ。でも次からは気を付けなさいね」

「どうぞ、お嬢様」

「ありがとうございます」

 

母さんに遅れたことを謝ると柔らかい笑みを浮かべながらそう言った。

橘さんに椅子を引いてもらったので、自分の席に座る。

先程、佐田さんが兄さんは帰りが遅くなるって言っていたっけ?

とりあえず、わたし達の食事となりました。

昔みたいに会話がまったくないということもなく、適度に母さんと橘さんと言葉を交えながら楽しい食事になった。

母さんとの食事がこんなに楽しくなるだなんて、前は思っていなかったから、いまは凄く嬉しい。

これも、和人くん達と出会えたお陰かな?

 

「そういえば、明日奈。貴女、進路はどうするつもりなの?」

「う……進路、ですか…」

 

母さんの問いかけに言葉が詰まる。

まったく考えていないわけではないけれど、まだ早いと思っているも確かだから、そこまで深く考えていないのも事実で…。

 

「まだ早いと思うかもしれないけど、今から考えておいても良いと思うわ。

 いまの貴女の成績ならどこの大学でも狙えるのは間違いないから、それほど心配はしていないけれど」

 

わたしの成績は学年でも相当高い、というかトップクラスである。

というのも和人くんが教えてくれるからなんだけどね。

年下の和人くんに教えられるというのが贅沢な悩みの1つです、はい。

 

「和人君は進路をどうするかは、言っていないのかしら?」

「VR技術の勉強をするからそっち方面の研究が出来る大学に行くとは言ってたけど、

 そのVR技術の権威がある人からもアメリカの大学を紹介されているって聞きました」

「凄いわね…。ちなみに、何処の大学か分かるの?」

「えっと、カリフォルニア工科大学とサンタクララ大学だったかな?」

「……………」

 

かなり驚いた様子を見せた母さん。わたしも聞いてみたけれど、両方ともなんだかすごいところみたいだし…。

 

「まぁ、貴女も彼の隣を進むというのなら、色々と考えておいた方がいいわね」

「はい。しっかり考えておきます」

 

和人くんとの仲を認めてもらえたとはいえ、自分の人生なんだからしっかりしないといけない。

でも、進路か~……和人くんはどうするのかなぁ? ホントにアメリカに行っちゃうのかな~?

な、なんだか色々と心配になってきちゃった…!

結局、和人くんのことを色々と考えてしまい、食事の味もあまり分からずに食べ終わってしまって、

その後は悶々と自室で過ごしてしまいました。

 

 

進路、和人くんがアメリカに進む道を決めたとして、わたしはどうしたらいいのだろう?

このことを相談したら、彼は必ず優しく答えてくれると思う。だけど、ホントにそれでいいのだろうか?

それではいままでと何も変わらないような気がする。

わたしも和人くんも、自身で認めるほど互いに依存している。

でも、何処かで和人くんは依存しないようにしているのが分かる……ならわたしは?

彼に甘えているだけなのではないのか?

そう思うと自分でもっと考えた方が良いと思い、問題(進路)はわたしだけで解決しないといけないと、考えるようになっていた。

 

明日奈Side Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

はい、実は今回で初めてアスナが【絶剣】の存在を知りました、婚約者宣言で忘れていましたからねw

 

そして進路をほぼ決めている和人に対して、明確な道を定められていない明日奈が悩む描写も書いてみました。

 

原作でいう明日奈と京子さんの食事シーンですね・・・まぁ、原作と違い本作では物々しい雰囲気での食事ではありませんが。

 

次回はアスナVSユウキになりますが、戦闘シーンは原作とほぼ変わらないので、戦闘シーンは纏めるだけになる予定です。

 

それでは次回で・・・。

 

 

 

 

 


 
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