No.608086 リリカルなのはSFIAたかBさん 2013-08-12 21:36:29 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:4015 閲覧ユーザー数:3679 |
第三十八話 ゼスト隊長お元気ですか。僕は元気です。
プレシア視点。
ジェイル・スカリエッティの放送から二日過ぎた。
私達ゼクシスはスカリエッティ一味と同じくらいに管理局に追われる身になった。
軽い打ち身だけで済んだ私は起動六課にいた人間の中で一番軽傷で済んだ人間。いや、済まされたという事かしらね…。
そんな立場に置かれようと私達は成すべきことを成す。
「…ご苦労様。二人とも戻ってきて頂戴」
『プレシアさん?!でも、まだ救助者が…』
『アリサ。今、私達が管理局と鉢合わせるのはまずいです。…大丈夫、こちらに向かっているのはギンガのいた部隊の者達です。きっとここにいる全員を助けてくれますよ』
ミッドから少し離れた次元空域に浮遊している戦艦アースラ。
元は管理局の船だったが、廃棄が決まっていた物を一年前プレシアが受け取り、ゼクシスの移動施設代わりに使われている。
外観は管理局を離れた時と大差ない。
だが、中身は大幅に改造されていた。
魔道兵の技術を持つプレシア。それをサポートするリニス。
そして、それを陰ながら高志のガンレオンやチビレオンで改造されまくったアースラは現在、中型の次元航行船の中ではトップの機動力を持つ戦艦になっていた。
「今、管理局に捕まれば永遠にスカリエッティに追いつけなくなる。それは分かっているでしょう?」
『…わかりました。アリサ・バニングス帰艦します』
アリサは瓦礫となった街並みを見下ろしながら、その場をリニスと共に離れた。
ガジェットに破壊された街に残された人達が心配なのだろうが、ここで足止めを食らう訳にもいかない。
スカリエッティの情報でスフィアリアクターはもちろん、Dエクストラクター保持者まで捕縛の対象になっている。
なかでも、『傷だらけの獅子』とその恩恵で生き返ったことがあると言われているアリシアの二人は最優先で捕まえる命令が出ているらしい。
そんなことしている場合じゃないのに…。
そんな事を考えているとブリッジに少し疲れた表情を見せたすずかとリインフォースが入ってきた。
「失礼します。プレシアさん、ユーノ君からの連絡を貰ってきました」
「スカリエッティ一味の居場所も…」
「そう。…それで機動六課はそれを知っているのかしら?」
私の言葉を聞いてリインフォースは苦笑した。
「知ってはいるが未だに自由に動けないとの事だ」
「街の防衛…。だけじゃなく、お偉いさんの愚痴を聞かされているから?」
私の質問に彼女は静かに頷くだけだった。
と、なればやはり私達ゼクシスだけでジェイル・スカリエッティのいる『聖王のゆりかご』に攻撃を仕掛けなければならない。
現在、八神はやての部隊。機動六課の隊長陣はデバイスを失ったヴィータ。六課施設を攻撃を受けた時にその場にいたシャマルとザフィーラの三名を除き、主戦力の殆どがほぼ万全だから、今も彼女達は町の防衛に回されているだろう。
そんな彼女達を管理局の上層部に掛け合って元凶の根城『聖王のゆりかご』に向かうには最低でも半日はかかるそうだ。
「…このままだと私達だけで『聖王のゆりかご』に攻め込むことになるわね」
「…ちょっ?!プレシアさん、正気ですか!あれだけのガジェットの群団を相手にしながら『聖王のゆりかご』を相手になんて無茶が過ぎます!」
すずかさんが私に意見してくるのは当たり前。だけどね。
このままだとミッドはガジェットに覆い尽くされてジェイル・スカリエッティが言う通り管理局に復讐。そして、スフィアを狩りつくすことになるだろう。
正直、管理局が潰れようが、潰れて世界が混沌になろうが知ったことではない。
私の娘。そして、
だからこそ、今この世界を脅かしている元凶。ジェイル・スカリエッティを倒さなければならない。
きっとあの不器用な『傷だらけの獅子』は自分よりも弱い存在を助けようと動くから。
…その力を持っているから。
少しでもその負担を軽くするためにも、『聖王のゆりかご』へ向かう。
「だから、すずかさん。あとでアリサさんにも言っておくわ。この船を降りるなら今しかないわよ。この戦い。勝っても負けても得る物は少ない。負ければ当然酷い目に会うわよ」
負ければD・エクストラクター保持者だから様々な非人道的な人体実験。この子達の場合、見栄えもいいから下種な男達の格好の餌食になるだろう。
そして、勝ったところでその危険性は少なくなるだけでなくなるわけではない。
勝てば称賛の目で見られるだろうが、そこには嫉妬、僻みが必ず生まれ、悪用しようとする人間が出てくるのだ。一生。
「はい。わかりました。降りません」
「…ふぅ。わかっていたけど貴女も対外ね。あんな男のどこがいいんだか」
「あんな男の為に世界と喧嘩する人に言われたくありません。それに勝てばいいんです。勝てば」
にこやかな笑顔で返すすずかさん。何気にティアナと同じ守護霊でも憑いていない?こう、メタリックなライオンの…。
私の意図もわかっているのに即答してくる彼女にはため息しか出てこない。
「男は度胸。女は愛嬌とは言いますけど、私は二つ持っているんですよ。きっとアリサちゃんもそうですし、リインフォースさんも同じですよね」
「まあ、な」
本当にあの強がりのバカ息子は美しく強い女に惚れられる体質らしい。
うちのアリシアも含めて…。
「それで『聖王のゆりかご』は今どこに?」
「ミッドのとある進路に保ったまま飛行中だ」
「その方向は?」
「ミッドチルダ。管理局本部のある方向だ」
「あ、あと、『聖王のゆりかご』はとある高度。この場合大気圏を突破した場所まで到達すると、この世界にある二つの月の魔力で絶対の障壁を張りながら地上表面に砲撃可能になるそうです」
最強の根城に閉じこもりながら相手を滅多撃ちか…。最悪ね。
ますます、私達がどうにかしないといけない。
「そこまでの到達時間は?」
「二日です。あの巨大な浮遊船。『聖王のゆりかご』は防御力はありますが速度はそんなにないみたいです。ですけど、到達した時、ユーノ君の見解じゃ超長距離砲撃が可能になるそうです」
「前半はガンレオン。後半はガナリーカーバーみたいね。で、管理局はそのことを?」
「はい。既に存じているみたいです。近くに大隊が三。中隊が七です。迎撃に出たガジェットを相手に後退しているみたいです」
偵察にしては多すぎる。かといって、攻め込むには少なすぎる。足止めも同様。
出来ることは『敵の攻撃を何とかしのぎながら情報を管理局に『聖王のゆりかご』の居場所を報告』することぐらいだろう。
管理局もそれを理解しているのにそれだけの戦力を投入しないのは単に内輪もめしているだけではなく、私達ゼクシスを警戒しての事だろう。
もしくはスカリエッティと戦い、戦力を出来るだけ削り、よくて共倒れ。そうでなくても両方が弱ったところを美味しくいただくつもりなのだろう。
まあ、私が管理局側の立場ならばそうする。単にもめて動けないだけだったら、管理局そこまで腐ってしまったという事になる。
「機動六課の方では、テスタロッサ妹の方が義兄であるクロノ・ハラオウンに打診をしている。次元航行船クラウディアが速ければ明日にでも機動六課に協力してこの事件攻略に出るらしい」
機動六課が現在追われる立場になったゼクシスに合流するには立場上無理がある。
下手をすればスカリエッティを出汁に、共謀しただのといちゃもんつけてくる輩が出てくるだろう。だから、機動六課はあくまでも管理局の立場でいないといけないし、ゼクシスはあくまでも民間協力の立場を貫かねばならない。
管理局は大きくなり過ぎた。
この世界で生きている以上必ず付きまとうだろう。
だからといっても管理局に無くられても困る。いわばその名前はいわば日本で言う警察。程度の低い悪党には水戸黄門の印籠のようにも見える。
まあ、すこし頭のまわる奴なら『偽善者』と罵るるだろうが考えても見てほしい。
そう言った輩にならばお前はこの次元世界を守れる自信はあるのか?と、尋ねてみたい。この広くなり過ぎた世界を一人で守るのは無理。それこそ管理局といった巨大な組織が。
管理局を庇護するつもりはない。
だけど、優しすぎるフェイトはきっと自分のように辛い過去を持った人間を見捨てようとしない。それに、あの子は強すぎる。だから、自らを管理局という立場においてでも助けようとするだろう。
今はただ沈黙している『傷だらけの獅子』のように…。
「だからと言って座して待っているわけにもいかないわね」
「ああ、ハラオウンは優秀な提督という立場もあるから場合によっては首都の防衛に回されるかもしれない。主はやて達も」
「と、なるとスカリエッティ攻略は私達だけで」
『ちょっと待った。それ以上は言わせるつもりはない』
攻めるしかない。と、言葉を発しようとした瞬間にアースラに非常回線が繋がる。
その回線先は航行船クラウディアの文字だった。
クロノ視点。
「ちょっと待った。それ以上は言わせるつもりはない」
やれやれ、ようやく見つけ出したと思ったらとんでもない事を言いだそうとしていたなプレシアは。
そういえば、最初に会った時も失礼ながら気が狂っているのではないかと思ったくらいだ。
『…あら、執務官。それとも提督と言えばいいかしら?まあ、貴方達の不手際と勝手な都合で追われる身になった私達に何か御用?』
やや険しい顔して画面越しに皮肉めいたセリフを添えて微笑んでくるプレシアに僕は言葉を続ける。
「話が長くなるようなので端的に言おう。僕の船クラウディアも管理局に追われる身になった」
『…は?』
ポカンとしたプレシアの顔は珍しい。
まあ、いつも暗躍していた母さんと共謀して僕とフェイトの地位を上げていたのだ。
なのはやはやて達の地位の向上に力も注いでいたしな。僕もアコース査察官と共にいろいろやっていたのだが、二人ほどではない。
それにタカも非戦闘員の二人にはできない事を、いろいろとやらかしてくれたおかげでもあるが…。
「まあ、完全にという訳でもない。ただ、首都防衛と万が一を考えて他の次元世界にスカリエッティが逃げ込まないように周囲の世界への警戒体制をしけと言われたんだ。それを師匠である僕に変化させたリーゼ達に任せた」
『なら…』
一度冷静さを取り戻したプレシアだが僕の次の言葉に再度驚かされる。
「だけど、つい先程ばれた。今頃お偉い人達の話し合いでは勝手に持ち出した人間として管理局に追われているだろうね」
『はぁっ?!』
「親友達と義理の妹を痛めつけてくれたスカリエッティをボコりに行く。と、無期限の有休願いと退職届を叩き付けて、信頼する部下を引き連れてクラウディアに乗り込んで今現在、はやて達が匿われている聖王教会に向かっているところだ」
『なっ、はっ、えぇっ?!』
ふくくっ。
今まで僕達をからかってきた母さんやプレシアの顔は『してやった』という笑いがこみあげてくるな。
母さん。リンディ・ハラオウン総提督も同じ顔で慌てていたな。
「提督~。先程のお義母さんもそうですけど、あんまり美人さんを苛めていると奥さんに言いつけますよ~」
「苛めてなどいない。仕返しをしているだけだ」
何気に僕の母をお義母さんと呼ぶな。
義理の妹。フェイトへの交際を許してもらおうと僕に言い寄ってくる通信官。
確か以前はどこかの優秀な部隊の者だと聞いていたが…。性格にやや問題がるというか。
「…え。つまり、実母を含めて美人な奥様方から苛められていたと。…羨ましい」
何故、顔を赤く染める?
「なんで、そんな台詞が出てくるんだ?」
「自分、SもMもいけますから。どっちもいけますから。どちらかといえば…Mです」
今度は満面の笑みで…。
別に彼の性癖は聞きたくなかったな。
というか、そういう事はフェイト本人に。いや、アブノーマルな性格だから突き放したほうがいいか。
「…コホン。そんなことより今の僕は正式に受理されていないとはいえ提督じゃない。ただのクロノ・ハラオウン個人としてこの船にいる」
『…随分と角が取れて丸くなったわね』
「提督のバリアジャケットがですか?未だにトゲがあるっすよ?」
性格の話だろうっ。
なんというかタカに似ていないか、こいつ。
『…なんというか愉快なクルーを乗せているわね。信頼してもいいのかしら?』
「…まあ、非戦闘員とはいえ実力は確かなものだ。それを行動で示すさ。こちらはまだ戦える機動六課の人間を引き連れてスカリエッティの捕縛。いや、喧嘩をしに行く」
その言葉にクラウディアの人間は苦笑しながらも力強い笑顔で答えた。
「今から三十六時間後にそれを決行する。出来るならそちらと合流して殴り込みたいんだが?」
『…はぁ。一杯喰わされたわね。こちらは『聖王のゆりかご』に全力を投入するつもりよ』
「ならこちらはスカリエッティのアジトを攻めよう」
『…アジト?』
アコース査察官が調べ上げた。文字通り命がけで調べ上げた調査結果だ。
『聖王のゆりかご』が起動しただろう場所からそう離れていない場所。そこにスカリエッティのアジトを見つけた。
そこには多数のガジェットと戦闘機人も。
『…失念していたわ。『聖王のゆりかご』ばかり見ていたから』
確かにあの映像はインパクトが大きくてスカリエッティもそこにいると思いがちだった。調査の結果、スカリエッティはそのアジトにいる。そして、未だに起動していない戦闘機人もいた。
『なるほど、AMFで魔法が聞きにくくなっているとはいえ戦力は『聖王のゆりかご』の方が圧倒的に多い。AMFが効かないDエクストラクターをこちらが請け負っている間に貴方達はアジトを攻めるというのね』
「ああ、だがそちらだけであれだけの戦力を相手させるわけにはいかない。こちらからは八神はやてとヴォルケンリッターを送る予定だ」
『となると、高町教導官。ハラオウン執務官。そして、フォワード陣でアジトを襲撃?』
「いや、フォワード陣だけで襲撃する。一応、管理局の予備策で残った隊長陣は首都防衛の命令が出ている」
ここでフェイトを職歴で呼ぶのはフェイトを思っての事だろう。
残念だがここでフェイトが命令に背くと彼女の立場が悪くなる。
僕が管理局を抜けた以上、母さんだけが後ろ盾になる。
「…まあ、管理局の命令など今の僕には知ったことじゃないけどな」
「提督~、一応今までのメモリーは記録にとってはいないけど謹んでください」
「性癖を暴露した奴がいう台詞か?」
僕が呟いたセリフに先程の男性クルーが忠告を入れるが彼は僕の皮肉にまたもや笑顔で返した。
「1000%の自分をさらけ出しても被害を受けるのは自分だけですから。そして、そんな自分を受け止めてくれる恋人を随時募集してますっ」
「恋人は無理だけど今度デートしてあげるわよ」
ついに己(性癖)の限界を超えたか。
だが、そんな彼に好感を持ったのか女性クルーの一人が笑いながら声をかける。
「これで我が軍の勝利だぁあああああ!」
その言葉を聞いて力強く握り拳を上げながら雄叫びを上げる男性クルー。
だが、その台詞はやめろ。負けフラグだ。
「…まあ、そういう訳だから?これから三十時間後にそちらに合流するつもりだ」
『…はあ、了解したわ。合流するかしないかはまだ分からないけど情報提供に感謝するわ』
プレシアはこちらの様子を見てため息混じりに通信を切ろうとするが、最後に一つ言い忘れたことがある。
「待ってくれ。最後に一つ。アサキムが『聖王のゆりかご』付近にいる映像が管理局を出る前に確認された。こちらが援軍を寄こすまでは間違っても攻撃しないでくれ」
此方が総力を集めて戦わないとやられるだろう。
ゼクシスと機動六課の戦力が集う前に戦えばこちらに勝機は無い。
「『聖王のゆりかご』にはヴィヴィオがいるかもしれないんだ。頼むからまだ、そちらのジョーカーは切らないでくれよ」
元は管理局の船とはいえアースラはもうゼクシスの物。
このクラウディアとは違い、次元世界の法律に
零号機チビレオン(これを聞いた時は驚いたが)を始めに、一号機にラッキースター。フレイム・アイズ。スノーホワイトを作り出している。
つまり…。
対スフィア。というかアサキムに悟られることなく、且つ悟られても避けることが困難だろう攻撃範囲。防御しても耐え切れないほどの高出力を持っているだろう。
見た目から砲撃を目的に作られたのが分かる。その急ごしらえではあるがアースラの右半分を覆い隠さんばかりの巨大な砲身。
機動六課が設立されてからアサキムが現れたことで急遽その開発ピッチを進めることになった巨大な砲身。まるで巨大なガナリーカーバーだ。
その最大級のD・エクストラクターを見て、僕は忠告を行ったが。
『…それを守る義理はこちらには無いのだけれどね。それに腹が立っているのは私も同じよ』
Dエクストラクター四号機。バトルフロンティア。
その操手であろうプレシアは怪しく笑うだけ笑って通信を切っていった。
Tweet |
|
|
10
|
2
|
追加するフォルダを選択
第三十八話 ゼスト隊長お元気ですか。僕は元気です。