第17剣 VS絶剣・ユウキ
キリトSide
駆け出した俺と【絶剣】の通り名を持つ
俺は右手に持つ漆黒と紫紺の片手用両刃直剣『アビスディザイア』を振るい、下方から斬り上げる。
それを彼女は自身が持っている細めの片手用両刃直剣で斬り下ろしながら受け止めた。
剣同士がぶつかり合ったことで強烈な火花が発生し、互いに近距離で見つめ合う形になる。
少女は笑みを浮かべ、俺にも笑みが浮かぶのが分かる。
剣を交えたままでいたが、このままでは埒が明かないので、剣を握る手に力を込め、そのまま斬り上げの威力を高めた。
結果、彼女の剣は弾かれ、俺は追撃を掛けるように斬り下ろす。
剣が弾かれたことで少女は驚愕と焦りの表情を浮かべたが、
弾かれた時の勢いを利用して自身の身体を回転させ、回転の勢いで再び俺の剣とぶつけ合った。
先程とは打って変わり、現在の彼女の表情は楽しそうなものから、真剣と焦りが混ざったものに変わっている。
「はぁっ!」
「っ…やぁっ!」
気合いの声と共に剣をぶつけ合う俺達。
互いに剣戟の応酬となり、攻撃において一切の隙を見せず、舞を舞うかのように戦う。
剣を振るい、それを僅かな動きで回避し、反撃にと高速の突きを繰り出してくる。
その突きに対し、彼女の剣の側面に自身の剣を添えるように逸らさせ、俺も反撃の突きを行う。
しかし、それさえも彼女は並外れた反応速度で避け、体勢を持ち直してから再び反攻してくる。
厄介な…俺並みの反応速度なんじゃないのか?内心でそう考えながら、舌を巻く。
それなら、こちらも
「ふっ、はっ、しっ!」
「うっ、くっ、えぃっ!」
俺は高速の連続突きを首と四肢と胴体の3ヶ所に向け、フェイントを含めて計12連撃を放ったが、
なんと彼女はそれさえも全てパリィしきってみせた。
なんて反応速度だ、今の連撃はアスナやサクヤ、ユージーン将軍や他の上級プレイヤー達でも凌ぐのは難しいはず。
『神霆流』の面々のレベルでようやく捌ける攻撃、それを捌ききるとは…!
「っ、てやぁっ!」
「ぐぅっ!」
さらに彼女は俺が捉えられるか否かの剣閃が放たれ、
なんとかギリギリで回避することが出来た……が、俺の右頬に
躱しきれずにダメージを受けた、その事実に驚愕する……のではなく、心地の良い高揚感を覚えた。
「え……っ!」
直後、少女は呆然とし、すぐに表情を戻した。ダメージを受けたからだ。
彼女が俺に対して放った速度の剣閃の一撃を、俺も彼女に向けて放ったからである。
再び一撃を交えて、俺達は一度距離を取った。
彼女の表情から真剣、警戒、焦り、困惑、僅かな恐怖、それらが見て取れる。
それは彼女にとって、今まで起こったことがないことを垣間見たからなのだろう。
そしてそれは、自身が身につけている反応速度を上回るかもしれないという攻撃を受けたからだと予測できる。
同時に、俺は他のことについても予測した。
まず間違いなく、彼女はコンバートプレイヤーであるということ。
これほど自由自在に
続いて元SAOプレイヤーであるという線については、逆に違うと断念出来る。
SAO史上最高の反応速度を持つ者に《二刀流》というユニークスキルは与えられる。
おそらくこれは、俺の方が僅かに上回っているだろう。だが観点はそこではない……本命は彼女の戦い方である。
仮に彼女がSAOプレイヤーであったとしたら、これほどの戦いを行える者を、
そしてこれほどの戦い方をする者を俺やハクヤ達が忘れるはずがないのだ。
極めつけは動きの再現度、在り得ないのだ……アミュスフィアでこれほどの動きを再現できるなど…。
俺でさえ制限を受けており、その制限をリアルと様々なVRゲームなどで培ってきた技術で補い、
可能な限りの再現を可能にしている状態だ。
だが、彼女の動きには抑制が見られない……つまり、
彼女が使用しているのはナーヴギアか、もう1種のダイブマシンでなければならない。
ナーヴギアを使用するという物好きは俺くらいだろう(本当の本気で戦う時、1人で遊ぶ時に使います)
あれほどの事件があった後、まともな道を生きているのならばナーヴギアを毛嫌いし、
被るどころか処分をする者がほとんどだったなかでそれを所持し、
なおかつあれほど楽しんでいるのだから、ナーヴギアを使用しているという線も薄い。
可能性は後者にほとんどを置かれる。
ならば後者のマシン、医療を目的としたフルダイブマシン『メディキュボイド』でこそ、これほどの再現を行える…。
つまり、彼女の正体は…。
高速の思考をそこでやめ、渦中の人物である彼女を見据える。
ほんの少しとはいえ、俺が動かないことに戸惑いを感じたのだろう、どうしようか悩んでいる様子である。
「すまない、仕切り直そう…」
「う、うん…」
「それと、少しばかり本気を出すから……呑まれてくれるなよ?」
「え……っ!?」
俺は本気ではない程度に覇気を解放した。
再び驚愕に表情を変えた彼女、同時に僅かな恐怖が確かな恐怖へと変化したようだ。
空気には呑まれていないようだから、問題無いだろう。
「いくぞ!」
「っ!」
声を掛け、距離を縮める。
斬り上げ、斬り下ろし、斬り払い、薙ぎ払い、剛突、高速突き、フェイント、それらを様々なパターンで繰り出すのは俺の剣。
怒涛の
少女の表情には焦りの色が濃く、HPは下回り始めている……そろそろ来るか?
そう考えた時、ほんの僅かに俺は足を滑らせた。
「ここ、でぇっ!」
それを見逃さずに彼女は自身の剣が青紫色の光を帯びた、ソードスキルの発動だ。
周囲も俺が隙を見せてしまったと思い、これは決まると判断したようだ……が、それは違う。
この動きこそ、俺のOSSのモーションなのだ。
アビスディザイアに白い光が帯び、前にいる少女と観衆が気付いたが、既に遅い。
「やあぁぁぁぁぁっ!」
「うおぉぉぉぉぉっ!」
互いの雄叫びと共に放たれるOSS。
キリトSide Out
No Side
ユウキはキリトの、左肩から右斜め下へ向けての5連続突き、次いで左下腹部から右斜め上へ向けての5連続突き、
最後にその斜め十字を形作った突きが交錯した部分に向けての強烈な突き繰り出した。
11連撃オリジナル・ソードスキル《マザーズ・ロザリオ》!
キリトはユウキの、右肩、右腕、右脇腹、右脚、中央下腹部、左脚、左脇腹、左腕、左肩、首の順で高速突きを繰り出し、
円を描くように斬りつけ、最後に突きで描いた星の中央である胴体中央に向けて、強烈な剛突を繰り出した。
12連撃オリジナル・ソードスキル《スターサークル・レイン》!
2人の剣戟が幾つか交錯するが、互いにOSSをぶつけ合い、決着がついた…。
No Side Out
キリトSide
最後に互いに放ちあった突き、それによって少女の剣は音を立てながら弾かれて空中を舞った後、彼女の背後に突き刺さった。
アビスディザイアは俺の右手の中に健在で、少女の首に剣を突きつけている。
彼女のHPはまだ残っているが、残り5%程度である。
少女は息を吐き、残念そうな表情をした。
「はぁ~、負けちゃった…」
「ああ、勝負は俺の勝ちだな……だが、決闘はキミの勝ちだ」
「え? それって、どういう意味…?」
「こういう意味だ…『
俺の言葉の意味が分からないという彼女の為に、降参の言葉を放つ。
「「「「「「「「「「……………」」」」」」」」」」
周囲に沈黙が流れ、俺はこのあとの展開を予想して、耳を塞ぐ……そして…。
「「「「「「「「「「えぇ~~~~~!?」」」」」」」」」」
大音量の驚きの声。少女と観衆全員分だからな、塞いでも音が残りそうだった。
「な、なな、なんでっ!? お兄さんが勝ってたんだよっ!? なんで降参しちゃうのっ!?」
「まぁ落ち着いてくれ。取り敢えず、名前はユウキでいいんだよな?」
「う、うん…」
困惑する彼女を落ち着かせる。
それからユウキと呼んでいいかと訊ね、俺もキリトと呼ぶように促し、話しをすることにした。
「俺が降参したのは、単に今の勝負に納得がいかなかったからだ。
ユウキ自身、デュエルの最中で俺の変化とかに戸惑って、本来の力を出せなかったんじゃないのか?」
「え? そ、そうなのかな?」
「少なくとも、俺はそうだと思うぞ」
ユウキにそう言い聞かせることで、周囲の観衆に対しての建前を納得させる。
そう、あくまでも周囲への建前だ……俺には本題の方がある。小さな声で彼女に伝える。
「ユウキ。キミが求めている者は俺ではない。いや、俺ではキミ達が求める者になることは出来ないと言った方が正しいな」
「っ……キリトは、一体何者なの?」
「それについて、少し話しをしたい。勿論、誰にも絶対に話さない」
「…うん、いいよ。それじゃあ、他の人の挑戦が終わった後でいいかな?」
「ああ、悪いな」
周囲に聞き取られないように静かに、小さな声で話し俺達は距離を空けた。
「えっと、ボクとキリトのデュエルは賭けの対象はなしで日を改めてすることになりました。
ですので、ボクと勝負がしたい人はどんどん掛かってきてください!」
「ちなみに、ここで彼女を倒すことが出来たら、俺にも並ぶ実力ということになるな」
ユウキの言葉の後に俺がそう付け加えると、我先にと挑戦者達が手を上げ、名乗りを上げの状態となった。
それから彼女は挑戦者達と戦うことになり、俺は仲間達の元に移動した。
「ちょっとキリト、アンタなに考えてるのよ~」
「そうですよ。折角勝てる勝負だったのに…」
戻ってみれば最初にリズとシリカにそんなことを言われてしまい、見ればシノンとリーファも勿体無いと言わんばかり。
ティアさんとカノンさんはそんな彼女らの様子を見て苦笑している。
「別に11連撃のソードスキルが欲しいわけじゃないからな。
現に俺は片手剣のOSSで12連撃を出せる。仕切り直して、戦いたいというは本心の1つだよ…」
「1つ、ねぇ…」
そう話すと木の陰からハクヤ達が出てきた。
「少し、彼女と話しをすることになった。どうにも、厄介な事情を抱えているからな」
「お前さん、あの娘と知り合いなのか?」
「会ったことはない……が、俺の予想が正しければ彼女の名前と事情を知っていることになる」
俺の意味深な言葉を聞いたエギルが問いかけてきたので、それに少しばかり返答する。
詳しくは話せないので、少し申し訳ないが…。
それからしばらくして挑戦者がいなくなった時に、俺とユウキはその場を離れて2人で話しをすることにした。
キリトSide Out
To be continued……
オリジナル・OSS設定
《スターサークル・レイン》
肩、右腕、右脇腹、右脚、中央下腹部、左脚、左脇腹、左腕、左肩、首の順で高速の10連突きを繰り出して星を描き、
星を囲むように円を描いて斬りつけ、最後に突きで描いた星の中央である胴体中央に向けて、強烈な剛突を繰り出す12連撃OSS
後書きです。
デュエルはユウキの勝利、勝負はキリトの勝利という結果になりました。
11連撃のOSS《マザーズ・ロザリオ》を、12連撃のOSS《スターサークル・レイン》で討ち破ったキリトさん。
実際、ユウキが動揺していたのも事実ですし、キリトが本気で納得していないのも事実です。
2人の再戦はデュエルトーナメントを予定していますので、またの機会に・・・w
そんでもって見事な推理でユウキが彼女だと思い至ったキリトさん、マジパネェw
決闘後の2人の会話は次回に持ち越しとなります。
最後に、ストックが底を尽いてしまったので、更新が2~3日に1回になる可能性があります。
一応、1日1話を目指していますけど・・・。
それではまた・・・。
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第17剣です。
キリトVSユウキになりますが、戦闘描写は多くないです。
どうぞ・・・。