No.603440 リリカル幽汽 -響き渡りし亡者の汽笛-竜神丸さん 2013-07-31 16:07:28 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1440 閲覧ユーザー数:1383 |
機動六課のファーストアラートから数日が経つ。
あれからシアン達は、ダリルの情報伝達もあって確実にターゲットを始末出来るようになり、順調に仕事をこなしていっていた。ただしターゲットが一人ずつ死ぬたびに、管理局ではこれを謎の連続殺人事件として対応に追われているが。
そんな時、シアンからこんな一言が告げられる。
「では今から、地球に向かいましょうか」
「「「…はっ?」」」
思わずそんな声が出たイマジン三人は、恐らくその反応が正しいだろう。
「いやいやいやいや待て待て待て待て!!」
「本当に待て!! いくらなんでも話が唐突過ぎる!!」
「説明!! 説明を求む!!」
突然シアンが告げた一言に、三人はとにかく突っ込みまくる。
「まだこの世界での仕事終わってねぇだろ!! なのに何でいきなり別世界へ行く事になるんだ、話が飛び過ぎだろうが!!」
ゴーストの言う事も最もである。現在滞在しているミッドチルダでのターゲットはまだ全員始末した訳ではない。なのにシアンが告げた一言は、ミッドチルダでの仕事を終えないまま次の世界に向かうという事になってしまう。
「シアンが仕事を放棄するなんて思ってなかったぞこっちは!!」
「あれか、仕事のし過ぎでとうとう頭が狂っちまったか!!」
「やかましいですよ」
-ビシバシズバッ!!-
「「「痛ぇっ!!?」」」
とにかく問い詰めようとするイマジン三人を、シアンが鞭でしばき倒す。
「馬鹿な事を言わないで下さい。少なくとも、あなた方よりかは狂ってはいませんので」
「「「地味に酷いなお前!?」」」
「地球へ向かうのにはちゃんと理由があります」
さりげなく罵られて三人がショックを受けているのをスルーし、シアンは地球へ向かう理由を告げる。
「あなた達だって、始末するべきターゲットのリストは見ているでしょう?」
「そりゃ見てはいるが…」
「リストに名前の載ってるターゲットが約一名、地球へ移住してるんですよ」
「「「…!」」」
その一言で、ゴースト達もようやく事情を理解する。
彼等は仕事をする際、リストに載った名前の人間を順番に始末していく。しかしそのリストもそれぞれの世界ごとで種類が分かれており、優先してこなさなければならないリストの順番も決められている。なのでその世界のリストに載っているターゲットが別の世界に移住している場合は、いちいちその世界に移動してまで始末しに行かなければならないのだ。
「な、何だ、シアンがとうとう頭狂ったのかと…」
「次にそんな馬鹿な事を言ったら、当分あなた方に休みをあげませんよ」
「「「うぉい!? だから労働基準法は!?」」」
「おや、イマジンに人間の法律なんかが通用するとでも?」
「「「畜生、鬼畜過ぎるコイツ!!」」」
「あぁ、そんな事を言うあなた方には休みなんてあげられませんね~」
「「「しまった俺達の休みがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」
ある意味で制裁が下され、ショックでズゥンと落ち込むイマジン三人。そんな彼等を放置し、シアンは席へと座る。
「…随分な仕打ちをするもんだな」
シアンが座っている向かいの席で、ダリルはイマジン三人の様子を見ながら話しかける。彼もシアン達の協力者という事で、この幽霊列車に乗せて貰っている。
「いえいえ、こんなのはまだまだ序の口ですよ」
「序の口って……なら他に何をやらかすつもりだったんだお前は」
「おや、知りたいですか?」
「…いや、やっぱ良い」
「あら残念、フフフフフフフフ…」
(…こいつは怒らせない方が身の為か)
シアンが腹黒い笑みを浮かべたのを見て、ダリルは冷や汗をかく。
「…ところでシアン」
「む?」
ダリルは別方向に視線を向ける。
「――――――ぅ、ん…」
視線の先には、未だ目覚めない銀髪の女性が座らされていた。
「その女の事についてなんだが…」
「えぇ、私も困ってるんですよね。何をしても目覚める様子がありませんから」
「いや、俺が言いたいのはそうじゃない」
「?」
「何でユニゾンデバイスをこの列車に乗せてんだ?」
「「派遣任務?」」
場所は変わり、機動六課本部の部隊長室。
なのはとフェイトははやてによって、次の任務内容が言い渡されていた。
「詳細不明のロストロギアを回収、か…」
「こっちに依頼されてな、私等で向かわなきゃならないんや」
はやての説明によるとこうだ。とある世界にて詳細不明のロストロギアが確認され、聖王協会と言われる宗教組織からそのロストロギアの回収を依頼されたのだ。その詳細不明のロストロギアがレリックである可能性も捨て切れない為、機動六課の面々で向かう事になったのだ。
「それで、どの世界に向かうの?」
「それはやな…………第97管理外世界、地球! それも海鳴市や!!」
「「…えぇ!?」」
はやての口から衝撃の一言が告げられ、なのはとフェイトは驚きの声を上げる。
「え、じゃあ…」
「私達にとっては、実質里帰りみたいな感じやな」
「海鳴市か……懐かしいなぁ」
第97管理外世界、地球。その日本の海鳴市という街は、なのはとはやての故郷であり、フェイトも一時期は海鳴市に住んでいた事もある。
「緊急出動でもない限りは、これから二時間後に出発する事になってる。その事をフォワードの皆にも伝えておいて欲しいんや」
「うん、分かった。私達の方から伝えておくね」
「ほい、よろしゅうな~」
なのはとフェイトが退室し、はやてが手を振る。
「…さて、何事も無ければ一番えぇんやけどなぁ」
はやては書類を纏めながらそう呟いた。
この時は、まだ彼女も想定していなかっただろう。
これから向かう先で、思わぬ再会を果たす事になろうなど…
「―――という事だ」
「ふむ、なるほど…」
場所は戻り、幽霊列車。
ダリルから告げられた話を聞いて、シアンは納得の表情を見せる。その告げられた話の内容は…
「まさか始めから、魂すら宿ってもいなかったなんて」
今なお眠る、女性の事だった。
ダリルによると、この女性はユニゾンデバイスという名の、デバイスの一種である事が判明した。デバイスは機械、つまり彼女は始めから生きた存在ではなかったのだ。それなら生者の気配も死者の気配もしないのは当たり前だろう。
「それにしても驚きましたね。まさかこの世界にはそんな技術があったなんて…」
「今まで見た事が無いのか?」
「少なくとも、今までの世界ではこういった存在は確認してませんね」
シアンですら、今までユニゾンデバイスのような存在は確認していなかった。なので最初に彼女を発見した際も、彼女がどういった存在なのかが分からないでいたのである。
「まぁ、別に良いじゃねぇか」
ゴーストが女性に近付く。
「この女がどういう存在だろうと…」
ゴーストが女性に憑依する。すると女性は急にパチッと目を覚まして緑色の瞳を光らせ、立ち上がってダリルの肩に手を置く。
「こうやって、取り憑く事は普通に出来るんだからな」
「……」
「…分かった分かった、そんな睨むなって」
ダリルに睨みつけられ、女性はダリルの肩から手を離す。最も、表情は全く反省してる様子は無いが。
「…で、地球だっけ? 行くなら早く行こうじゃねぇか」
「まぁそう慌てずに。この幽霊列車は既に、地球まで向かってます。目的地は日本にある街の一つ…」
シアンは車窓の外を見ながら告げる。
「そう、海鳴市です」
再び、事件は起ころうとしていた。
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第8話