第3剣 クリスマス・イブ
志郎Side
「クリスマス・イブ、か…」
12月24日、クリスマスの前日であるこの日、俺は駅のホームで恋人を待っていた。
「SAOから生還して1年、恋人とイブを過ごすなんて贅沢、考えていなかったっけ」
実際、SAOから生還した直後のクリスマスに里香と再会したが、恋人同士が過ごすようなものじゃなかったし、
SAO時代の1回目のクリスマスはキリト達と過ごし、2回目のクリスマスは全員がバラバラだったりした。
だからまぁ、ちゃんとしたクリスマスを過ごせるっていうのは純粋に嬉しい。
「ごめん、志郎。待った?」
「里香。大丈夫だよ」
そこに待ち人であり恋人である里香が駆け寄ってきた。
「服、似合ってる」
「ありがと/// それじゃあ、行きましょう」
「そうだな」
俺と里香は手を繋ぎ、デートの為に街の中へと歩み出した。
デパート内にある服や本、アクセサリーショップを周ったり、ゲーセンで遊んだりして過ごし、
現在は喫茶店でデザートを食べながら休憩している。
「それにしても、12月24日の今日に30層までのアップデートがされるなんて、運営側も粋なプレゼントをしてくれるわね」
「まったくもってその通りとしか言えないな。俺達がその手伝いを出来るってのが、また嬉しいもんだよ」
「そうね。あたし達が明日奈達にしてあげられる恩返しだもんね…」
里香の言う通り、俺達は和人の存在あってこその今の時を生きることが出来ている。
和人がいなければ、などと思うとゾッとしたりもする。
「とりあえず、いまは夜に向けて英気を養いましょ。はい、あ~ん」
「あむ(むぐむぐ、んくっ)、それが一番だな。ほい、あ~ん」
「あ~む(もぐもぐ、こくん)、美味しいわね///」
というわけで、デート中なのにしんみり空気はいらないのでクリスマスらしくイチャつくとしよう。
周囲で砂糖が生産されているような気がするが…自重しろ? やだよ。
「ん? クリーム付いてるぞ(ペロ)」
「ひゃっ、な、なな…っ//////!?」
彼女の口元にチョコレートケーキのクリームが付いてるのに気付き、
テーブル越しに舐め取ると、真っ赤になった里香を堪能できた。
ふぅ~、役得役得♪
志郎Side Out
刻Side
「えへへ~♪」
「………」
スグの自室に来ているボクは、目の前で顔をニヤつかせながらナノカーボン竹刀を抱き締める彼女を見てムスッとしてしまうっす。
確かにスグはお兄ちゃんっ子だし、和人さんがALOから解放されるまでの間に少しの溝があったのも事実。
和人さん自身もそれがなくなったことが嬉しいっていうのもわかるっす。
だからこそ、偶には妹である彼女にプレゼントと言うのも納得っす。
けどっすよ、だからって彼氏の前でそのプレゼント竹刀を抱き締めるっすか、普通?
しかもクリスマスにっすよ?
「……それで、ボクはどうしたらいいんっすか?」
「ふぇ? なにが?」
いや、可愛らしく首を傾げて聞き返されても……佳し、かくなるうえは…。
ボクは立ち上がってから、ベッドに座っているスグの後ろに座り込み、そのまま彼女のお腹に腕を回して抱き締める。
「と、刻くん///? どうしたの///?」
「スグが竹刀を抱き締めるんなら、ボクはスグを抱き締めるっす」
「あ、その…///」
「いいっすよ、いいっすよ。どうせボクは和人さんからのクリスマスプレゼントの次なんっすからね」
「うっ…お、お願い、機嫌直して~///」
「どうしよっかな~?」
「そこをなんとか、ね///?」
スグは自分が竹刀に首ったけだったのを理解したのか、どうにかボクの機嫌を取ろうとしている。
とはいえ、こちとら散々目の前で放置されたわけっすから、少しくらいやり返したって構わないと思うっす。
「ん~……それじゃあ、スグからキスしてくれたらいいっすよ」
「なっ//////!? うぅ~、一回だけだよぉ///?」
「十分っすよ♪」
お願いよろしくそう要求し、スグの顔が目の前まできたところで彼女は瞳を閉じ、ボクと唇を重ねた。
少し重ねるだけのキスだったので、すぐに離れてしまったっす。
しかし、そこで終わらせるのも勿体ないので…。
「はい、これでおわりんむっ//////!?」
「ん、ちゅっ…ふぅ~…。今度はボクからっすよ///(ニィッ)」
「お、お手柔らかに…//////」
というわけで、もう少しの間だけ楽しむことにしたっす。どうせこの後は出かけるっすからね。
刻Side Out
烈弥Side
「いらっしゃい、珪子。さ、上がって」
「こんにちは、烈弥くん。お邪魔します」
イブの今日は珪子が僕の家にきた。
明日のクリスマスには僕が珪子の家にお邪魔することになっているからだけど。
それに、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんも珪子に会いたがっていたからね。
ちなみに母方の祖父母で、父方の祖父母は既に2人とも亡くなってしまった。
「いらっしゃい、珪子ちゃん」
「よく来てくれたね~」
「こんにちは。お爺ちゃん、お婆ちゃん」
挨拶を交わす珪子とお祖父ちゃんとお祖母ちゃん。
両親と姉を強盗に殺され、1人になってしまった僕を育ててくれた2人は、
いつも1人で居た僕を気に掛けてくれていた。
和人さん達と知り合って、家に連れてきた時は喜んでくれたし、
珪子を連れてきた時なんか泣いて喜んでいたのを覚えている。
「いつも何もないところだけど、ゆっくりしていってね?」
「いえ、そんな…。あたしは烈弥くんと一緒に居られればどこでも…///」
「ふぉっふぉっふぉ、わしと婆さんの若い頃を思い出すの~」
「やっぱりそうなんだね」
お祖母ちゃんが僕達のお茶を出しながら言うと、珪子は少し照れながら言ってくれたのが嬉しかったりする。
お祖父ちゃんの言葉を聞くに、いまと変わらず仲睦まじかったことが分かるかも。
「あ、これ、ケーキです」
「おやまぁ、ありがとう」
「それなら、久しぶりに紅茶でも飲もうかの」
「僕が淹れてくるよ」
珪子は持ってきていたショートケーキが入った箱を台に置き、4つの苺のケーキを取り出す。
僕が紅茶を淹れてから、みんなで談笑しながらケーキを食べ、それからの僕の部屋に移った。
「でも、良かったの? 別に外に出掛けても良かったんだよ?」
「うん、いいの。今日は夜が忙しくなるから、あまり疲れが出ないようにしたいの」
僕としては別に何処かに出掛けるのも良かったけど、そういうことだったんだね。
「だけど、明日はゆっくりデートするからね/// 夜は家にも来てほしいから♪」
「うん、分かってる」
珪子は今日、僕の家で夕食を取ってから、僕が彼女の家まで送り届けることになってる。
そして明日は2人でデートをした後に、珪子の家に行くという予定。
やっぱりクリスマスだから、2人で過ごしたい。
このあと僕達は、心行くまで談笑し、偶にいい雰囲気になったりしたのは、ご愛嬌ということでお願いします///
烈弥Side Out
景一Side
「……詩乃、寒くはないか?」
「ええ、平気よ」
私と詩乃はバイクで高速道路を移動し、現在は神奈川県にある砂浜にまでやってきた。
「……しかし、冬の海に来たいと言うとは、さすがに考えなかったぞ?」
「あら、別にいいでしょ? 綺麗に晴れていて、空気はひんやりしてるけど、海は穏やか。
デートには最高のシチュエーションだと思うけど?」
「……ふっ、それもそうだな」
山猫、そんな風に自身で評価をしたりする詩乃だが、いまの可愛らしく、
それでいてイタズラを成功させたような表情に少し見惚れ、同意する。
そこでふと、彼女が口にしだした。
「私、いますっごく幸せ…。だって、ケイと恋人になれるなんて、思ってなかったもの。
せめて過去を振り払うことしか出来ないと思ってたから…」
「……詩乃…」
「だから、ね……こんな幸せで、いいのかなって、思っちゃったりして…///」
彼女は純粋に喜びがあると共に、やはり戸惑いもあるようだ。
それはつい先日まで私同様に過去の
人としての最上とまで言われる幸福の“愛情”、
その中でも愛し合うことを知ることが出来たことに戸惑いがあるのは仕方がない。
それ故に、私は詩乃の手を強く握り締めた。
「ケイ…///?」
「……いいのではないか? 救った命と奪った命、どちらにも応える為には生きなければならない。
それならば、幸せに生きた方が良いに決まっている。
私達の贖罪は生きる事、そして進むべき道は幸福を掴むことだ…」
「…うん//////」
私の言葉を聞いた彼女は頬を紅く染めながら笑顔を浮かべた。
みんな詩乃のことをクールというが、やはり私の前ではいつも通りの可愛い詩乃である。
ぬ、自重しろ? 解せぬ…。
「そうだね、幸福にならないといけないなら…えい(ちゅっ)//////」
「……む…?」
「
彼女からの優しいキス、これは……狙い撃たれてしまったな…。
景一Side Out
和人Side
「どうしたんだ、明日奈?」
「え、あ…えっと、ね…」
本日、俺は結城家の明日奈の自室へとお邪魔していた。
正しくは午前中の間にショッピングモールなどに出掛け、昼食を外で済ませてからここにやってきたわけだ。
彼女のベッドに2人並んで腰を掛け、少し話しをしていたら明日奈がボーッと…いや、不安そうな表情をしているのに気が付いた。
「今日の夜、だね…」
「…あぁ、そうだな…」
どうやら、というよりもやはりというべきだろう。
彼女が考えていたのは今夜アップデートされる30層までの階層、その中の21層迷宮区の攻略と22層の解放のことだ。
そして22層にある俺と明日奈とユイの家、そこに辿り着くことが今回の目的だから。
「なにか不安なことでもあるのか?」
「その、大したことじゃないんだけどね……緊張してるんだと思うの…」
「なるほど。なんとなくだけど、分かるよ…」
戦いや攻略に、ではない。あの家が在るか否かということだ。
新生されたアインクラッド、迷宮内や一部のフィールドを除けば外見上変化した部分はほとんどない。
街や村なども大きな変化は見られず、その代わり新たな村やサブ迷宮などが追加されたくらいだろう。
さらに付け加えるとするなら、アインクラッド内のイベントが修正・増加され、NPCが妖精族になったくらいか。
簡潔に明日奈の感情を考えるならば、その変化した部分の中にあの家が含まれていれば、かなりショックなことになる。
勿論、俺もそれは同じである……が、心配ばかりもしていられない。
「明日奈。確かに俺達の家が在るかは俺にも分からない…もしかしたら、無くなっている可能性も少なからずある。
だけど、在る可能性の方が十分に高いし、なにより……俺はそう信じたい」
「っ!……そっか、そうだよね…。ウジウジしてても仕方ないよね!」
「そういうことだ。それでこそ、俺の半身だ」
「ふふ、ありがと、和人くん///♪」
俺の言葉を聞いた彼女は元気を取り戻したようである。
「これはもしかすると…元血盟騎士団副団長、【閃光】のアスナが見られるかもな」
「お望みとあらば、お見せしますよ」
「それは重畳。ならば俺はキミの剣として、立ちはだかる敵を薙ぎ払う修羅となろう」
そんな問答を掛けてみれば、明日奈が答えたのはこんな言葉だ。
「う~ん、修羅になるのは困るかな~? 和人くんにも、キリトくんにも、ありのままでいてほしいから///」
なんともまぁ、嬉しい言葉だ。ありのままで、か…。
「…くくく、はははははっ! そうか…なら俺は、俺のままキミの道を守るよ」
「頼りにしてるね///♪」
「ああ、任された」
俺は彼女の期待に応えるように、そう返事をした。
そのあとは明日奈とイチャイチャして過ごし、早めに帰宅してきた彰三さんと京子さん、浩一郎さんと夕食を取り、自宅に帰った。
そして、スグと交代で用意を進め、俺達はALOへとダイブした。
和人Side Out
To be continued……
後書きです。
ふぅ~、イチャつかせたぜ・・・ん? クライン達のがないって? それは聞かない方でお願いします。
とにもかくにも、今回はみんながこんな感じだったってわけです!
次回は第21層攻略戦になりますが、あっさりと終わりますのでそこら辺はご理解ください。
それでは次回で・・・。
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第3剣です。
第21層攻略前の和人達の様子、イチャイチャしていますのでコーヒーをお忘れなくw
どうぞ・・・。