第2剣 イブまでもう少し
キリトSide
昨日の凜子さんとの外出から一夜明けた12月21日、
クリスマスが近づいた日曜日の午前9時を過ぎた頃に俺はALOへとダイブした。
使用しているアバターはALOから始めた方のキリト、今日も背中に純白と翡翠の剣『イノセントホープ』と、
漆黒と紫紺の剣『アビスディザイア』を背負い、みんなと共に戦いに赴く……と言いたいのだが…。
「なぁ、アスナ? そろそろ離れてくれないか?」
「いや…///」
「あの、でもな…」
「や…///」
イグ・シティにて借りている自宅のソファ、そこに座ってアスナを待っていると、
やってきた彼女に即抱きつかれ、ずっとこの調子ということだ。
ちなみにユイもアスナと一緒に俺の反対側に抱きついている。
「だって、昨日の夜は会えたと思ったら、キリトくんすぐに寝落ちしちゃったじゃない」
「そうですよ。疲れていたのは分かりますが、いくらなんでも30分で寝落ちは酷いですよ!」
「うっ、ごめん…」
彼女達の言う通り、俺は夕食や風呂などを終えてからALOへとダイブし、みんなと合流したのだが、
昼間や講義、病院での話しなどの影響か、最近溜まっていた疲れが現れ、さっさと寝落ちしてしまったのだ。
アスナとユイがお冠になるのも当然、朝起きた時はスグにも呆れられてしまったほどである。
そのスグはというと、今日は部活があるので夕方までには帰ってくるだろう。
「そう言うわけだから、まだまだキリトくん成分を補給します」
「パパ成分を補給です♪」
さらにむぎゅっと抱きつかれる。ま、俺に非があるのは事実だし、嫌な事など微塵も無いので甘んじて受け入れよう。
しかし、だ…ユイはともかくアスナは別のはず、佳し…。
「(ぼそっ)でもアスナは、昨日の昼にたくさん補給しなかったっけ?」
「(ぼんっ)あ、あぅあぅ…////// そ、それは、その、そうだけ、ど…//////」
アスナの耳元で小さくそう呟けば、一瞬で真っ赤になり、その顔を隠すように俺の胸元に顔を埋めた。
本当に可愛いなぁ~、俺の奥さんは…。
「おぉ~い、キリト。入っていいか?」
「ああ、構わないぞ」
そこで外からハクヤの声が聞こえてきたので、それに返答した。
ドアが開くと彼の他にも数人が続いてきた。どうやらみんなと合流してやってきたらしい。
ハクヤの後ろからリズ、ヴァル、シリカ、ハジメ、そして
GGOにて巻き起こった『死銃事件』。
その数日後、シノンはALOのアカウントを作成し、この世界にやってきた。
種族はケットシーを選択し、GGOの彼女に似た容姿であったのには何か作為的なものを感じたが…。
それからまだあまり時間も経っていないが、彼女自身の腕なども相まってか、既に相当なステータスなどを得ている。
武器もリズお手製の弓を愛用している。ちなみに現在では、彼女も男性陣をほとんど呼び捨てにしており、
俺達としてもそちらの方が馴染みやすく、また俺達も呼び捨てにしている。
「それで、どうして貴方達は朝っぱらからイチャついているわけ?」
「まぁアレだよ。俺が昨日、即寝落ちしたから…」
「……それなら納得だな」
シノンの疑問に俺が短く答えると、ハジメはすぐに頷いた。
このクールカップルの存在も既に俺達の間では周知の事実である。
「キリトさん。リーファちゃんはどうしたんですか?」
「剣道部の練習だよ。夕方までには終わって帰ってくると思うから、その後じゃないかな」
「だからルナ君もいないんですね」
シリカが不在のリーファの事を尋ねてきたので教えておき、ヴァルもルナリオがダイブしていない理由に気付いたようだ。
「シャインとティアさんは朝霧家の用事で夜からの合流、カノンさんも私用があるって言ってたな」
「クラインは仕事でしょ? エギルも最近はダイブできる頻度が減ったものね」
ハクヤとリズは不在の仲間達のことに話している。
黒猫団も現在は自分達のギルドで活動しているし、まぁ今でもよく一緒に行動している。
そういえばケイタが、学校のクラスメイトがギルド入りしたって言ってたっけ?
しかも女子だった気がするが…。
「キリトさん。依頼の類はきていないんですか?」
「今日はまだきていない。ま、こっちも今は1日での受領件数を小さくしているからな。
大した依頼じゃなかったら、相手方も遠慮してくれるだろ。こっちが忙しいのも承知してもらっている」
「ギルド結成以来、俺達への依頼は多かったからな~。自重してくれるのはありがたい」
ヴァルの質問に返答すれば、ハクヤがそのように言ってきた。
確かに、俺達がギルドを結成してからというもの、依頼などが絶え間なくやってきたりしたのには苦笑しか出来なかった。
『アウトロード』、それが俺達のギルドの名だ。
“無法者”を意味する『
その2つを掛け合わせてアウトロードという名になった。
つまり、『無法者の道』という意味合いを持っている。
ギルドを結成したのは10月頃、各種族の領主達による緊急会談の場で行われた話し合いの議題に、
俺達のことが上がったのが切っ掛けだった。
何故か俺もその場に呼ばれたので、参上したわけであったのだ。
内容自体は俺達にとってはどうでも良かったのだが、どうにも各種族の領地では大きな悩みだった。
その内容とは、『キリト一派の扱い』である。
実は俺達、実力が実力なだけあって、種族ごとにスカウトを受けていた。
もしも俺達がグループで1つの種族に味方することになれば、バランスが崩れることなり、それを領主達は危惧していた。
かといって俺達はギルドを作ったりするわけでもなく、
各々が好きなように集まって活動しているため、領地側がスカウトを諦める事もしない。
それでは俺達としても穏やかに過ごす事が出来ないし、とはいえ領主達も見過ごすのもどうかということになった。
そこで俺は自身達でギルドを結成し、一部のイベントやクエスト、
ボス攻略などを除いた場合のみ、各領主やギルドからの依頼を受けることになった。
イベントに関しては俺達自身が参加したいし、種族間での抗争になど興味はなく関わりたくはない、
そしてボス攻略に関しては俺達も望むことなので、それらを除いてもらうことにした。
以上が俺達がギルドを結成した主な理由である。
なお、男性陣でのチームを『
「……さすがにリアルでも忙しくなっている時期だ。彼らとて領主であるのだから、配慮くらいはするだろう」
「それもそうよね。ま、あたし達にとっては都合がいいけどね」
「24日に解放される30層までのアップデート、ですからね」
ハジメの言葉に続いたリズの言葉、その意味を知っているシリカが確認するかのように言った。
「確か、22層にどうしても一番最初に辿り着かないといけないのよね?」
「そうなの…。わたしとキリトくん、ユイちゃんにとって、すごく、すごく大事な事だから…」
シノンが口にした言葉、それは当然の疑問で、アスナは真剣に返答した。
聞いたシノンは勿論、事情を知っているみんなも決してそれ以上は何も言わない。
それどころか、理由を知っている為に微笑を浮かべていたりする。
俺達…いや、俺とアスナとユイがアップデートされる20層以降の攻略に拘るのは、かつての自宅を取り戻す為だ。
アインクラッドの第22層『コラル』のフィールドにあるはずの自宅、そこに再び住まう事が俺達3人の願いである。
アップデートが行われれば、既に20層の迷宮区最上階は解放されているので、そこからすぐに21層の迷宮区に入り、
最上階にあるボス部屋でボスを倒し、22層への扉を解放する。
そうすれば、俺達の家を取り戻せる……なお、この攻略にはシャインとティアさんの2人も意気込んでいる。
理由は簡単、2人のアインクラッドでの自宅も22層の主街区コラルにあるからだ。
「さてと…アスナ、ユイ、もういいよな?」
「「うん(はい)」」
優しく問いかければ素直に頷き、俺から離れる2人。
「それじゃあ、今日も頑張りますか」
「「「「「「「「はい(ああ)!」」」」」」」」
みんなに視線を向けてから号令を掛け、俺達はイベントやクエストに参加、
そして自宅購入資金の調達とスキルを上げる為に、フィールドへと繰り出した。
3日後、12月24日のクリスマス・イブの夜、その日に今の俺達の力を賭してみせる。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
はい、キリト達がギルドを結成している設定をここで追加しました!
ネーミングに関してはいつものようにスルーの方向でお願いしますw
次回は21層攻略前の和人達の様子になりますので、お楽しみに。
それでは・・・。
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第2剣です。
今回はほのぼの+説明回になりますよ~。
どうぞ・・・。