No.601471

リリカル幽汽 -響き渡りし亡者の汽笛-

竜神丸さん

第3話

2013-07-25 16:52:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1596   閲覧ユーザー数:1570

「魂の…」

 

「運び屋?」

 

「…どういう事だ?」

 

突如現れた謎の女が告げた一言。

 

ギャリッジ達はその言葉の意味が理解出来なかった。彼等が疑問に思う中、幽汽は首をゴキゴキ鳴らしてから剣をブンブン振り回す。

 

「な、何なんだね君達は!? 運び屋だとか、訳の分からぬ事を言い出して!!」

 

ギャリッジが怒鳴るのを見て、幽汽達は楽しそうな態度で彼を見据える。

 

「クックックッ………さぁ、誰だろうねぇ?」

 

「悪いが、テメェ等がそれを知る必要は無ぇぜ?」

 

「その通り。何せ、テメェ等はここで捻り潰されるんだからなぁ」

 

ファントムが一枚の御札を取り出し、それを真上に向かって投げる。投げられた御札はそのまま建物の天井へと張り付き、そこから赤い波動のような物が建物内部全体に広がっていく。

 

「ぬ、何をしたかは知らんが……ッ!?」

 

ギャリッジは転移魔法を発動し、魔法陣を通って逃げようとする。しかし…

 

「ッ!?」

 

魔法陣が突如、ガラスのように砕け散り霧散してしまった。これにはギャリッジや部下達だけでなく、ダリルも驚きを隠せない。

 

「ば、馬鹿な!? 何故転移が出来ない!?」

 

「無駄だぜ? こっちでちょいと結界張らせて貰ったからな、中からの脱出は不可能だ」

 

「何だと!?」

 

「AMFか…!? いや、それにしては何か違う…!!」

 

「まぁ、あくまで脱出が出来ないだけだ。テメェ等も普通に、魔法とやらは使えるだろうよ。てか、それでテメェ等が戦えなくなるようじゃ」

 

幽汽の持っている剣に、青白い炎が纏われる。幽汽はそれを高く振り上げ…

 

「―――こっちがつまんねぇだろうがよ!!!」

 

そして振り下ろす。青白い炎の斬撃が、ギャリッジ達に向かっていく。

 

「なっ!?」

 

「くっ!!」

 

狼狽するギャリッジをダリルが無理やり地面に伏せさせ、他の部下達もその場に伏せる。斬撃が彼等の真上を通過し、後方に積まれている複数の木箱がまとめて斬られバラバラに崩れ落ちる。

 

「ハッハァッ!!」

 

「さぁ、祭りの時間だ…!!」

 

今のがスタートの合図だったのか、ファントムとシャドウがその場から動き出し、突撃し始める。

 

「ギャリッジ様を守れ!!」

 

「こちらに近付けさせるな!!」

 

部下達が一斉に銃や刀を手に持ち、ギャリッジを守るように構える。

 

「何でこうなるんだか……ディアマンテ!!」

 

≪Stinger mode≫

 

ダリルのデバイス“ディアマンテ”から音声が鳴り、ブレード形態から槍型のスティンガー形態へと形状が変わる。

 

「俺の相手はお前か」

 

ダリルと幽汽が対峙する。

 

「さぁて…せいぜい、俺を楽しませてみろよなぁ!!」

 

「チッ…!!」

 

幽汽は自身に満ちたような口調で言い放ち、ダリルに向かって己の剣を振り下ろすのだった。

 

 

 

 

 

 

『ピピピピピピ…』

 

工場跡地の外…

 

一機の球状の機械が、赤く丸い結界に張られた建物を見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

とある研究所《ラボ》にて。

 

「ドクター、どうなさいますか」

 

白衣を纏った紫髪の男と、紫髪でロングヘアーの女性が目の前にある映像を眺めていた。映像には結界で隔離された建物が映っている。

 

「ふむ、レリックの引き渡しが行われる所をガジェットに襲撃させようと思っていたが……まさかこんな想定外な事態が起こるとはね」

 

「やはり、ガジェットを向かわせるべきでしょうか?」

 

「いや、少しばかり様子を見るとしよう。アレが一体何者による仕業なのか、ある程度確認しておいた方が良いだろうからね」

 

「では引き続き、監視を続けますか?」

 

「そうするとしよう。頼むよ、ウーノ」

 

「はい、ドクター」

 

ウーノと呼ばれた女性に監視を任せ、ドクターと呼ばれた男―――ジェイル・スカリエッティは再び映像に視線を向ける。

 

「興味深いよ……これが果たして魔導師による仕業なのか、それとも別の勢力によるものなのか、気になって気になって仕方が無い…!!」

 

(はぁ、また始まった…)

 

スカリエッティは映像を見て楽しそうに歪んだ笑みを浮かべ、それを見たウーノは小さく溜め息をつく。

 

その時…

 

-ブツンッ-

 

「「!?」」

 

突如、映像が途中で切れてしまい、何も映らなくなってしまった。

 

「映像が…!?」

 

「ふむ、監視させていたガジェットが破壊されたのかな? だとすれば誰が―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピピ、ピ……ピッ』

 

結界に包まれた建物を監視していた機械―――ガジェットはペシャンコに潰され、無惨な形に破壊されてしまっていた。

 

その潰れたガジェットの中から小さな蜘蛛のようなメカが飛び出し、その場から逃げるように走り出し…

 

-グシャッ!!-

 

そして踏み潰される。

 

「覗き見は関心しませんね」

 

メカを踏み潰したのはシアンだった。足をどけると、メカがバラバラに砕け散ってしまっている。

 

「…さて」

 

シアンは現在戦闘が行われている建物の方に目を向ける。

 

「管理局の魔導師ではなく、犯罪者の方を利用しましたか。まぁそれでも構いはしな…」

 

シアンは途中で台詞が途切れ、横目で別方向を見る。

 

「…組織の犬ですか。嗅ぎ付けるのが早いですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッハァァァァァッ!!」

 

一方、建物内は乱戦となっていた。

 

幽汽とダリルが互いの武器をぶつけ合い、一歩も引かぬ戦いを繰り広げる。シャドウとファントムもギャリッジの部下達を相手に、己の武器で次々と叩き伏せていく。

 

「オラオラオラァッ!!」

 

「ぐっ!!」

 

幽汽が連続で剣を叩きつけ、ダリルがディアマンテで何度も攻撃を防いでいく。しかし幽汽の方が勢いに乗っているらしく、ダリルも少しずつ押され始め、一歩ずつ後ろへ下がらざるを得なくなる。しまいには壁際へと追い詰められてしまう。

 

「せぇりゃあ!!」

 

「くっ!!」

 

≪Blade mode≫

 

ダリルはディアマンテを再びブレード形態に戻してから、どうにか幽汽の剣を受け止める。二人は互いに押し切ろうとし、そのまま鍔迫り合いになる。

 

「くそ……お前等、管理局の手先か!?」

 

「管理局ぅ? 安心しろよ、俺達はあの組織の一員じゃねぇ」

 

「何…!?」

 

「まぁ、そうであろうがなかろうが………結局は戦う事に、変わり無ぇがなぁっ!!」

 

「ぐぁ!?」

 

鍔迫り合いの状態から、幽汽は己の剣でダリルのディアマンテを強引に弾き上げ、素早くダリルの腹部を斬りつける。怯んだダリルに左足で蹴りを加え、右方向へ吹き飛ばす。

 

「こいつでも、喰らっときなぁ!!」

 

「チィィ…!!」

 

幽汽が左手を振るい、ダリルに向かって青白い炎を撃ち放つ。ダリルも吹き飛ばされながらもディアマンテで飛んでくる炎を的確に防ぎ、地面に受け身を取って着地する。

 

「だったら、何故俺達を狙う!!」

 

「単純な答えだ、実力を測る為だよ!!」

 

ディアマンテから斬撃が放たれ、幽汽も斬撃を放つ。互いの斬撃が相殺し、爆発する。

 

「実力を測る為だと…?」

 

「俺達の上司から言われたんだよ、魔導師がどれだけ強いのか確認して来いって。別に管理局の魔導師でも良かったんだが、ちょうどテメェ等を見つけたから、テメェ等に狙いを変えただけって話さ。運良くターゲットも見つかって都合も良いしな」

 

「ターゲット……ギャリッジの奴がそうだってのか? お前等の言うターゲットってのは何なんだ?」

 

「悪いが、これ以上は黙ってるよう……上司から言われてるんでねぇ!!」

 

幽汽はダリルの質問に答える事もなく、再び剣を振るって突撃を仕掛ける。

 

「くそ、なんて厄日だ…!!」

 

ダリルもディアマンテを構え直し、突撃して来る幽汽を迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

「クハハハハハハハッ!!」

 

「ほ~ら、どうしたどうした!! その程度かぁ!?」

 

シャドウとファントムの二人は、ギャリッジの部下達を相手に無双を繰り広げていた。刀を振って迫ってくる者はファントムがS字型の太い鞭で殴り飛ばし、銃で狙い撃って来る者にはシャドウが鎌を回転させて銃弾を弾き返り討ちにする。

 

「あ~あ、こっちはイマイチ歯応えが無ぇなぁ」

 

「うりゃぁぁぁぁっ!!」

 

「おっと残念」

 

「な、何…!?」

 

ファントムの後ろから、一人の部下が刀で斬りかかる。しかし当たる瞬間にファントムの姿が消え、攻撃が空振りする。

 

「き、消えた!? 何処に…」

 

「そりゃ幻だよバァカ!!」

 

「ぐぎゃっ!?」

 

別方向から姿を現したファントムが、部下の高等部を鞭でぶん殴り、昏倒させる。

 

「く、くそ…役に立たん部下共め!!」

 

部下が次々と叩きのめされるのを見て、ギャリッジが毒づく。何とかしてこの場から逃げ出したい彼だったが、結界が張られている所為で転移も出来ず、出口から外に出る事すら出来ない状態になっているのでどうしようもない状況だ。

 

(何とか隠れて、隙を突いて逃げるしか…)

 

「おぉっと、隠れるんじゃねぇよ」

 

-ガキィンッ!!-

 

「むぉっ!?」

 

物陰に隠れようとしたギャリッジの足元に、飛んで来た鎌が突き刺さる。飛んで来た方向を見ると、シャドウが目をギラリと光らせながらギャリッジを睨み付けていた。

 

「くそ、何故だ、何故私を狙う!! 貴様等に恨まれるような事など、した覚えは無いぞ!!」

 

「あぁそうだな。俺達はお前に対して、特に恨みは無い。けどよ、そんなのはどうでも良いんだ」

 

シャドウが近くにあるドラム缶の影に右足を置くと、彼の身体が瞬時に影の中に入り込んだ。ギャリッジがそれを見て驚いたその時、彼の真後ろの影からシャドウが姿を現し、彼の首を掴む。

 

「ひっ!?」

 

「あんまり長引いちまうと、うちの上司に怒られるんでな。さっさと死んで貰うぜ」

 

地面に刺さっている鎌を抜いて、ギャリッジに迫る。

 

「ま、待て、見逃してくれ!!」

 

「そりゃ無理な話だ」

 

「お、お前達の欲しい物を与えてやる!! 金か、地位か、何でも与える!!」

 

「おっさん、残念だがな。こっちはアンタの要求を…」

 

シャドウが鎌を振り上げる。

 

「飲むつもりは無ぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 

 

 

 

-ドゴォォォォォォォォォンッ!!!-

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

突如、建物の天井が爆発した。それと同時に、建物に張られていた結界が消滅する。

 

「ば、爆発!?」

 

「何だ…?」

 

この場にいた全員が、爆発した天井に注目する。

 

「そこまでです!!」

 

爆発による煙の中から、二人の魔導師が姿を現す。

 

「私達は、時空管理局の者です!!」

 

「武器を捨てて、今すぐ投降しなさい!!」

 

高町なのは。

 

フェイト・T・ハラオウン。

 

二人の魔導師が、荒れ狂う戦場へと参戦した。

 

「…へぇ、面白ぇな」

 

幽汽は剣で肩を軽く叩きつつ、仮面の下で笑みを浮かべるのだった。

 

 


 
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