No.600101

XrossBlood -EDGE of CRIMSON- (クロスブラッド-エッジオブクリムゾン-) 第一話[4]

u-urakataさん

異能力者バトルファンタジーと銘打ちながらも戦闘はここからという…

2013-07-21 20:42:58 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:235   閲覧ユーザー数:235

   3-1/別行動

 

 バギーは森の西口へと走っていた。先程よりは舗装されている道路へ出たので、幾分スピードが出せる。

 車内では綾斗が何やら難しい顔をしていた。

「…………あの、有理隊長。少しよろしいですか?」

「うん?どうしたの、綾斗君?」

「実は、カルマ副長のことなのですが……」

「ニースがどうかした?」

「いやなんというか、いつもと何か違った感じがして」

「たとえば?」

「失礼な言い方になってしまいますが、普段は寡黙な副長が今日はよく話されるなと。指令を与える側なのだから当然の行為かもしれませんが、それとは別に……こう内側から湧き上がるような何かを感じるんです。僕の気のせいかもしれませんが」

「綾斗君も感じ取れたのね。まあニースも隠す気はなかったみたいだけどね」

「では、やはり」

「あれはね、一言で言えば“闘気”といったところかしら」

「闘気……ですか?」

「そうね。詳しい事は省くわ。いずれニースから話してくれる時が来るかもしれないし。今言えるのは、彼にとってこの森は特別で何が何でも守りたい、そんな場所だということ。だから司令官になってもらって森を守るベストな作戦を練れるように手配したの」

「では、この作戦の司令官を推挙したのは隊長なのですか?」

「ええ、推挙といえるほど堅苦しいものでもないけど、ここは誰よりも森を知り、森を愛している『カルマ・ニールメスタ』に任せてください、くらいのお願いはしたわ」

「なるほど。でもそれならなおさら冷静でいるべきではないのですか。あの時の副長は普段よりも」

「確かに熱くなっていたわね。でもね綾斗君。ニースのあの雰囲気は、作戦の司令官であると同時にクロスブラッドの戦士である証拠なのよ」

「クロスブラッドの戦士……ですか」

「私達は血清開放、ブラッド・フォームをすることで能力を行使できると同時に、その人格にも影響が出てくることは知っているわよね。これを制御するために『血清(ワクチン)』がある。逆にワクチンがなければ制御できない。けどそれは応用すればワクチンの摂取量によって状態をコントロールすることに使える、ということなの」

「つまり、副長はワクチンの量を加減してあの状態でいると?」

「ニースの今の状態はアイドリング、臨戦態勢でいつでも戦える、ということね。とはいえ、血が暴走を起こす確率がないわけではないから正直オススメは出来ないわね。確かにこれができるようになればこういった緊急の要請にも対処する幅が広がるのだけれども、綾斗君にはまだ早いわね。とりあえず戦士と呼べるほどの経験を積まないとリスクが大きいから」

「なるほど。これはクロスブラッドの、いや、クルセイダーの戦士の戦い方の一つだったのですね。勉強になります。あ、もしかして隊長もワクチンを調整しているのですか?」

「うーん、私もできるけれど、今言った通りリスクが大きいから滅多にしないわね。……もしかしたら私がニースを司令官にしたからこの方法をとらせてしまったのかも。そうだとしたらこれは私のミスかもね」

「大丈夫です。副長が簡単に血の本能に負けるはずがありません」

「そうね。きっと」

 その時、風の流れが変わった。

 いや正確には変わったような気がしたと有理は感じた。

 それは……。

「……どうやら、向こうは始まったみたいね」

「始まったって、もしかして副長と犯人が!?」

「おそらく」

「……副長、頑張ってください」

 二人は風に戦士の武運を祈った。

 風はそれを運んだ。

 ……。

 …………。

 ………………。

「……おい、作者。オイラのこと忘れてない?いくら運転してるからってオイラも会話に入らせてくれよ」

 ……。

 一人、別の意味の祈りを捧げる者がいた……。

   3-2/衝突

 

 バギーは足を止めた。

 周りは小規模とはいえ所々火の手が上がっている。さらにはその中で最も火の勢いが強い部分と、バギーから降りてきたカルマの直線上には何人か人が倒れている。森の警備に当たっていた者達だ。幸い、皆気を失っているだけで大事には至っていないようだ。

 カルマはそれらの現状を見ながら直立のまま自分の目の前に存在する赤い塊に話しかけた。

「……お前か」

 赤い塊――いや、炎の化身の如き物体はカルマに気付き、その体を向けてきた。カルマと同等かそれ以上の身長、おそらく2メートル位だろう。人の形に炎を纏った怪物は背後の羽のようなものを震わせ威嚇するように立ちはだかっている。

「ナンダ、オマエハ」

「……聞いているのはこちらが先だ。答えろ。お前がやったのか」

「ソンナコト、ミレバワカルダロウ」

 怪物の顔も炎に包まれているため、表情を読むことは出来ないが、おそらく嗤っているとカルマは感じていた。

「……確かに、そうだな」

 ここで会話を止めたカルマは肩に担いでいた己の得物、魔沙狩を強く握り締め、

「……倒す」

 呟いた。

 同時に敵の口……と思われる部分から3発の火の玉が発射されていた。それは防犯カメラに映っていた火の玉と同じものであった。

「…………ふっ!」

 繰り出された3発の火を最小限の動きでかわす。足元を狙った1つは右足を後ろに反らせて、左右の腕を狙った2つを魔沙狩で叩き落した。

「カワシタトハ、ナカナカヤル。ソレニソノオチツキヨウ。コノヨウナコトニナレテイルナ。オマエ、クロスブラッド――イヤ、クルセイダーカ」

「だとしたら、どうする?怪物」

「ドウトイウコトハナイ、タダ……イカサナイダケダ!」

 怪物は両腕を突き出し動きを止めた。程なくして両手を重ね、その中心にボウリング玉程の大きさで、表面も凹凸がない滑らかな赤い球状の物体を作り出した。

「先程の火球とは違うな。密度も、当然威力も、か」

 カルマは魔沙狩を正面に構え直した。

「ヤキツクシテクレル!イラプト・スフィア!!」

 高密度の炎の塊が一直線に向かっていく。

「…………!!」

 咄嗟に魔沙狩を地面に突きたて盾代わりにする。

 炎の球体と、大斧が衝突した。

 そして。

 天を(つんざ)くほどの巨大な火柱が、上がった。

 火柱だけではない。衝撃によって生じた突風が周囲のものを飛ばしていた。木の葉はもちろん、倒れていた警備の人間すらも。

 爆心地となった魔沙狩の部分は黒い煙に視界を遮られて状況を把握することが困難になっている。

「ククククッ」

 しばらくして、怪物が笑い声を上げた。

「クククククッ、ハーッハッハッハッ」

 黒煙が晴れてきた大地には魔沙狩が刺さっているだけで辺り数メートルには何も残っていなかった。当然、カルマの姿も。

「ショセン、コノテイドカ。ニンゲンナドジツニモロイ」

 顔の無い頭部で笑いを表現した。

 そして、今起きた出来事など既に興味が無いといった仕草で森の方へ歩みを進めようと後ろを向こうとした時、

「……なるほど、先刻の火柱はやはりお前の仕業だったか」

「……ナニ!?」

「火種が分かった以上、野放しにはできないな。もっともそうでなくとも……生かしはしないが」

 どこからとも無く聞こえてくるカルマの声に怪物は困惑した。

「キサマ、ドコダ、イッタイ、ドコニイル!」

「何処にいるか、か。ならばよく見てみろ。お前の足元を」

「アシ……モト!?」

 顔を下に向け足元を見る姿勢をとる。すると、

「ウ……ン?」

 凝視している地面は徐々に亀裂が走り、そして。

獣技(じゅうぎ)虎襲爪打(こしゅうそうだ)!!」

「…………!」

 地面からは姿を消していたカルマが、今まさに相手の顎を狙った左の掌底打ちを繰り出そうとしていた。

「クッ……!!」

 寸前のところで体を後ろに反ってかわす。しかし、かわしたことで体勢が崩れたため、カルマの瞬時の判断で放たれた右のローキックを避けることは出来なかった。人間でいうところのふくらはぎを強打しよろめいたが何とか姿勢を正す。

「ナ、ナカナカヤル」

「…………」

 攻撃を繰り出した本人はこちらを凝視しているだけだった。全身土埃にまみれ、右足のズボンが焼け、コンバットブーツが露になっている以外は初見の時と同じ直立不動で。

 カルマは、やがて静かに口を開いた。

「……お前に一つ聞いておきたい」

「ナンダ、トツゼン」

「なぜ、かわした」

「ナンノコトダ」

「先程の攻撃のことだ。見ての通り、打撃を与えた右足はお前が身に纏っている炎で焼けた。他の部位でも同じ事になるだろう。徒手空拳の類でこちらが不利なのは見ても明らかだ。にもかかわらず攻撃をかわした。何も纏っていない素手の一撃をかわすということは、自身が当たったらまずい箇所なのか、それとも無意識の内にかわしていたのか」

「ソレガドウカシタカ……ダガソウダナ、オマエテイドノコウゲキナラバ、ムイシキデモカワセルダロウ」

「……そうか、分かった」

「ナニガワカッタトイウノダ。ジブンガフリダトイウコトカ」

「いや、不利なのはお前の方だ」

「ナニ?」

「理解していないのならば教えてやろう。本来火の玉に過ぎなかったお前は主が能力を繰り返すたびに進化を遂げ、いまや主と共存の道を辿っている。しかし、これに至るには主との肉体的及び精神的融合が必要だ。その過程で手に入れた“感覚”というものは生物が“生きる”ために重要な要素だ。今までは使われては消えるの繰り返しだったがこれからはそうは行かない。感覚を持つというのは“生きる”ということ。そして同時に感覚を失うということは“死ぬ”ことを意味する」

「!?……ナニヲ」

「……最初の一撃、虎襲爪打は当たっていれば確実に顎を粉砕していた。お前はそれを感じ取り、それを恐れ、それを拒む為、かわした。無意識の内に、だ。ようするに……」

「ダマレ!!」

 怪物は右の手刀を繰り出した。いや、正確には繰り出していた。無意識に。はっとなり自分の行動に困惑するかのように掌を顔に近づける。

「イマノハ?」

「お前の意識下は理解したようだ。攻撃が当たれば自分は死ぬかもしれないと。生物ならば、感覚が年月を経るにつれて研ぎ澄まされるだろう。それに準じるならばお前の感覚は赤子同然だ。どこをどうされるとどうなるか、それがまだ分からない。分からない故に、恐怖してしまう」

 カルマは手刀をかわした勢いで一気に間合いを離し、真沙狩の刺さっている場所へ戻っていた。

「……ダカラ、ダカラドウシタトイウノダ。ワタシハイゼンヨリモチカラヲエタ。イマハ、オマエヲタオセバモンダイナイ。ダカラ!!」

 左腕を振り、炎の玉を投げつける。しかし、カルマには当たらない。一つの固体となっている怪物の精神が乱れ、集中力を欠いているのだろう。

「……ああ、そうだ。お前が不利な理由だが、それだけでは無い」

 ごく自然な動作で俯き、右膝の辺りに手を当てながら喋りだす。当然怪物の姿は見えていない。

「我は本来、寡黙だと皆から言われているが、例外の時がある」

 膝にはサポーターがついているのだが微かに赤い光をはなっている。カルマが掴んでいるのはパット部分。どうやらそれを外そうとしているようだ。

「ナニヲイッテ……マ、マサカ!?」

「持って生まれた力を解放するとき、人格にも変化が生じる。今まではその途中故に力の発現は抑えられていた。だが、ここからは!」

 パットに力を込め、ひびを入れる。そして怪物に視線を移した。

「少し手荒になるが、仕方がない。……ブラッド・フォーム!!」

 サポーターを砕いた。

 と同時に赤い光はカルマの全身を包む。

 しばらくして、赤い光はやがて緑の光と変わっていった。

 光が落ち着いた時、男は得物を担いで立っていた。

獣演武装(アニマ・リンクス)。これが我の、能力」

 外見は変化していない。しかし、カルマの内から流れ出ているオーラのようなものが怪物に事実を突きつけている。本能が警鐘を鳴らす。この男は、強い、と。

「グッ…………」

「その名の通り、獣達の身体能力を持ち、人の身を以って獣の動きをとることが出来る。と、その様子だとどうやら説明は不要らしいな。本能が教えてくれただろう。お前が不利な理由を」

 直感ながら、実力の違いを感じ取った怪物は後退りをしたかったが、動けない。

「さて、無駄口を叩いていると有理に怒られちまう。そろそろ始めるぜ。我はクルセイダー、オーズ第6小隊副長、カルマ・ニールメスタ。お前の名は!?」

「ナ、ナマエダト!?」

「そうだ。これから殺(や)り合う奴の名ぐらい知っておかねぇとな」

「ソンナモノハナイ。ワタシハアルジトトモニアル。アルジハワタシデアリ、ワタシハアルジダ」

「なるほど。確かに。……いいだろう。ここにはその主もいないからな。この場ではお前をガルダムと呼んでやる」

「……スキニシロ」

「……では、ガルダム。…………行くぞ!!」

 話を終えると同時に、カルマは身を屈めた姿勢で一気に疾走する。

「コイツ、ハヤイ!!」

 瞬時にガルダムの真正面、先程攻撃を仕掛けた間合いまで詰め、両手持ちした武器で切り上げる。

「クソッ」

 かろうじてバックステップでかわしたガルダムが同時に火の玉を作り出し壁代わりにする。

「はあああっ!」

 ガルダムの頭部辺りまで切り上げた斬撃は軌道を変え切り下ろされた。斬撃に触れた火の玉が小さな爆発を起こしていく。

「チィィ!」

 間髪入れずに炎を打ち出す。大小様々な火の玉がカルマのいる方へ一直線に飛んでいく。しかし、

「甘えぇ!」

 その全てを魔沙狩の乱撃によって切り裂く。

「今度はこちらの番だ!受けろよ!(おおかみ)(きば)!!」

 なおも打ち出され続けている火球をものともせず、カルマは突進した。

「……!」

 またもや至近距離に迫られたガルダムは、咄嗟の判断で左側に炎の盾を展開する。そこへカルマの放った薙ぎ払いが衝突した。

「グウオオオ!」

「でぇぇぇりゃあああ!」

 衝突による炎の盾の粉砕と衝撃で爆風が生じ、ガルダムは右側へ大きく吹き飛ばされた。

「バ、バカナ。コレホドノ、チカラヲモツトハ」

 かろうじて立ち上がったが、まだ足元はおぼつかない。相当のダメージを負ったようだ。

(……コノママデハ、イズレ、ヤラレル)

 カルマの予想以上の力にガルダムは驚愕していた。このままでは殺られる。なんとしてもこの脅威を脱しなければと。

(……い、……おい、聞こえるか)

(……ア、アルジカ?)

(どうやら聞こえるようだな。共存を成したことでテレパスの特典がついてきているとは)

(……デ、ナンノヨウダ)

(頃合だ。こちらも戦闘が始まる。戻ってきてくれ)

(シカシ)

(お前が戦っている相手が只者ではないことは重々承知だ。だがこちらに向かってきているのは複数。本腰の入った奴らだ。戦闘力が低下している俺では到底勝ち目は無い。このままでは殺されるだろう。一つにならなければな)

(ヒトツニ……)

(俺達は二人で一つだ。どちらかが欠けてしまえば存在することができないだろう)

(ソウダッタナ。ワカッタ。ソチラヘムカウ)

(頼んだぞ。……おっと、ご到着のようだ。手早く頼む)

(アア……)

 

 

「…………」

「ほう、まだ立てるとはな。なかなかやるじゃねえか」

 カルマはただガルダムを見ていた。様子から察するに今の攻撃は彼の本気ではなかったのだろう。

「面白い戦いになりそうじゃねぇか!」

 魔沙狩を前に突き出し構え直す。一方のガルダムは立ってはいるが、腕を下げ戦闘姿勢を崩している。両者の差が明白になっているように見える。

「……イヤ、ドウヤラ、ジカンギレノヨウダ」

「あん?何を言ってやがる。これからが面白くなるって言うのによ」

「ソノオモシロイジカンハ、オマエジシンガコワシタノダロウ?ナカマガツイタラシイゾ」

「そんなことが分かるのか?」

「ワタシトアルジハツナガッテイルカラナ」

「ああ、そういうことか。だがそれはそれ、これはこれだ。お前はここで倒す。逃げられたら後で有理がうるさいからな」

「……モウ、イクゾ」

「何?」

「……イラプト、スフィア!」

 ガルダムは自分の両拳を地面に叩き付けた。カルマに放った高密度の攻撃をゼロ距離で放出。結果、足元からは巨大な火柱が上がる。

 ガルダムは火柱と己の羽を利用して、上空へと飛んだ。そのまま主の元へ戻るために。しかし、

山猫(やまねこ)(ちょう)

「……!!」

 ガルダムと同じ高度に、カルマはいた。血清開放状態の彼にはこの程度の高さはあまり意味を成さなかった。数十メートルの高さ周囲の木々を利用しつつジャンプし、今ガルダムの前にいる。

 魔沙狩を大きく振りかぶる。

「シマッタ!」

「斬!!」

 巨大な戦斧が炎の体を捉えた直後。

 これまでで最も大きな爆発音が響いた。

 直後、煙に包まれた上空から、一つの塊が落下してきた。

 それは地面に激突する寸前に棒状のものを突き刺して停止した。

 煙が晴れたとき、そこには一人の男が立っていた。男は空を見上げる。

「くそっ、やられたな」

 着地の際に地面に刺した相棒を引き抜きつつ呟く。

「右腕一本、丸ごと爆破するとは」

 カルマは真二つにするつもりで対峙していた。上空の風の影響で若干真正面より左にずれていたが構わず武器を振り下ろし、右腕を切り落とした。しかしそれは既に敵の武器となっていた。武器――爆弾と化していた右腕は切り落とされると同時に爆発。威力はそれ程でもなかったが、カルマは目標を見失いそのまま落下、ガルダムの方は爆風を利用してこの戦域を離脱した。

「……しかたねぇ。戦闘終了だ」

 一言呟くとズボンのポケットを探り出した。取り出したのは湿布のような白い布。カルマはそれを右膝にあてがった。戦闘中には光を帯びてよく見えなかった箇所、光が収まった今ではそこに十字の傷跡があることが見て取れた。傷を覆うように布を貼り付けると、カルマに変化が訪れた。

 体に纏っていた緑の微光も戦闘前から綾斗達が気付いていた闘気も薄れ、やがて完全に消えた。

 どうやら貼り付けるタイプのワクチンのようだ。

「……よし」

 布を貼り終えたカルマは改めて周りの状況把握に取り掛かった。

 まず、倒れていた者達の安否を確認。

 確認後、バギーに設置されている無線で連絡をとる。

「カルマ・ニールメスタだ」

「はい、こちら、作戦支給班」

「A地点へ救急班を送ってくれ。重傷者はいないが気を失っている者もいる。火災は沈静化しつつある。これは我が消しておく。あとD地点は近いうちに戦闘が始まる。戦闘は有理達にまかせて他の者は消火活動に専念しろ」

「了解しました。A地点に救急班の出動要請。D地点の警備に消火要請を伝えます」

「頼む」

 連絡を終えたカルマは森を見つめる。

 この場所の放火の被害は小火が数箇所あるだけだ。本格的に活動される前にガルダムの化身と遭遇できたのは幸運といえる。もっとも彼等は火を放つことを最優先にしているためこちらの事を気に留めていない、というのが本心だろうがそれでも焼き尽くされずにすんだのはカルマの対応が優れていたためだ。

「……消すか」

 口調も少しずつ本来のカルマに戻りつつあった。

 それでも彼はまだ安堵していない。敵を仕留められなかったこともあるが何か起こりそうな、そんな感覚を肌に感じていたからだ。

(頼んだぞ、有理、誠、綾斗。火を消し終えたらすぐに向かう)

 一抹の不安を抱えながらも彼は闇を纏う森に灯された明かりを消しに歩き出した……。

 

 


 
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