episode190 侵入者
シドは海底をゆっくりと前に進みながら緑の一つ目を左右に動かす。
するとシドの真上より金色の光が急降下してくる。
シドはすぐに気付き、翼型ユニットよりミサイルを放つも、金色の閃光はミサイルを横切ると一瞬でミサイルが細切れになった爆発する。
「ちっ!勘の鋭いやつだ!」
隼人は舌打ちをして左腕のビームトンファーを収納し、一気に飛び上り、右腕のアームドアーマーBSを展開する。
(水中とは言えど、出力と収束率を上げれば通常時と変わらない筈)
そのままフィンの間より通常よりも出力と収束率を上げたビームを撓らせながら照射する。
ビームはシドの装甲表面に直撃して抉るも、シドはすぐに後方に下がると展開したアームより赤いビームを放つ。
隼人はそのままサイコフィールドを一瞬で圧縮すると、それを一気に解き放って衝撃波とフィールドを放って赤いビームを打ち消す。
(しかし、自分で言い出した作戦とは言っても、こいつはかなりしんどいな)
少し息を切らしながらもシドに接近を試みる。
隼人が考えた作戦とは・・・あまりにも隼人への負担が大きいものであった。
先に隼人がバンシィ・ノルンをデストロイモードで全力全開で先制攻撃を行い、シドを消耗させるシンプルなものであるが、シドの火力に加え、水中で戦っている事を考えれば隼人は負担が激しいデストロイモードのリミッターを完全解放している。
その為、隼人への負担は通常時の二倍以上となる。
赤いビームの弾幕を掻い潜ると、瞬間加速を掛けて水中を切り裂くが如く飛び出し、左腕のアームドアーマーVNを突き出してシドの翼型ユニット左側を殴りつける。
その一撃で思い切って後方に吹き飛ばされるも、直後にアームよりビームを放ち、隼人はとっさに左腕のアームドアーマーVNを前に出してビームを防ぐが、装甲表面が焼かれた瞬間に水で冷やされて解けた状態になる。
「っ!」
隼人はとっさに後方へと飛び出して距離を置く。
するとシドは翼型ユニットを展開すると、そこから自分の姿と同じ形状の小型機を一気に数百機も出してくる。
「なにっ!?」
すると数百機の小型シドは一斉に隼人へと向かって飛び出してくる。
隼人は全速で後退して小型シドから逃れようとするが、小型シドは一斉に翼型ユニットよりアームを出し、夥しい量の赤いビームを放ってくる。
(チート過ぎんだろうがこれ!?)
ビームの量に驚くも、とっさにビームから逃れようと飛び出し、その間にサイコフィールドを前面に集中展開すると、周囲にも更に圧縮する。
(ちょっと荒っぽいが・・・やってみるか・・・!)
隼人は覚悟を決め、身体の向きをスラスター全開でビームの雨の中に飛び出す。
ビームはサイコフィールドに弾かれていくが、あまり物量に衝撃による負担は尋常ではなかった。
「ぐぅ!」
バンシィ・ノルンの関節が悲鳴を上げ、それによって別空間にある隼人の身体中に激痛が襲うも、何とか耐え、ビームの雨を潜り抜けて小型シドの群れの中に入る。
「こいつで・・・どうだぁぁぁぁ!!」
そのまま一気に高密度に圧縮したサイコフィールドを一気に解き放ち、周囲に衝撃波と化したフィールドを放って全ての小型シドを消滅させると、その周辺を大爆発が呑み込む。
「なんて無茶を・・・」
遠くよりアーロン達はその光景を見ていた。
「師匠・・・」
「隼人・・・」
ラウラとシャルロットは心配そうに舞い上がる砂煙を見る。
「・・・だが、これでやつのオールレンジ攻撃は無くなった」
「少なくとも隼人の目的は達せたか」
「・・・・」
「これよりシドに攻撃を仕掛ける。ラウラは隼人を回収後、すぐに離脱しろ」
「分かった」
そうしてアーロン達は散開して飛び出す。
「・・・隼人君」
「・・・・」
その頃、海底都市がある場所に、ユニコーンとバンシィが建物の陰に隠れながらその光景を見ていた。
シドに遭遇する前に二人は隼人の命令で先に海底都市の調査に向かっており、その直後にシドが隼人達に襲撃をして来た。
「ただでさえ身体は限界が近いって言うのに・・・あんな無茶苦茶な攻撃をするなんて」
「あまりにも無謀すぎる。下手したら今回の戦いで限界を迎えるかもしれないのに」
二人は心配と同時に危惧感を覚えていた。
「でも、あのシド・・・」
ユニコーンはシドを見る。
「・・・さっきから特定のポイントから動いてないね」
「うん。まるで何かを守るように攻撃をしているような・・・」
「とにかく、こっちはこっちで調べよう。シドに見つからないように」
「・・・・」
バンシィは無言で頷くと、海底都市の中を進んでいく。
「うぐっ・・・!」
砂煙からバンシィ・ノルンが飛び出てくるも、あれだけの爆発の影響がない筈が無く、装甲が少しボロボロになっていた。
「さすがに無理をしたか・・・」
隼人は前方を見ると、シドは仁王立ちの如くそこにいた。
すると右方向より砲撃が飛んできてシドの装甲に直撃する。
「・・・俺の役割もここまでか」
と、バンシィ・ノルンのサイコフレームの金色の輝きが消えると装甲が閉じていってユニコーンモードになると、直後にラウラのセラヴィーが後ろから抱えてその場から離脱する。
「大丈夫ですか、師匠?」
「あぁ。何とかな」
隼人は首を横に向ける。
「待っていてください。すぐにここを離れます!」
「いいや。離脱はしなくていい。どっかの岩陰に向かってくれ」
「で、ですが!」
「・・・頼む、ラウラ」
「・・・・」
ラウラは悩むも、そのまま隼人を連れて少し離れた場所にある岩に向かっていく。
――――――――――――――――――――
「・・・・・」
ヴィヴィオは不安そうにベッドの隅に座り込んでいた。
(お父さん・・・)
頭の中で隼人の顔を思い出す。
「・・・・・」
「・・・・・?」
すると部屋の扉が開く。
ヴィヴィオは顔を上げて前を見る。
「っ!」
しかしすぐに表情は恐怖へと変わる。
「随分と探しましたわよ、聖なる王」
と、邪悪にも口角を上げるシスターがそこに居た。
直後に艦内に侵入者が入った警報が鳴り響く。
「っ!?」
束は警報に驚く。
「侵入者!?こんな時に!」
とっさに艦内のチェックに入る。
『た、束・・・様』
と、格納庫にいるくーこと『クロエ』より通信が入る。
「くーちゃん!何が――――――」
と、モニターを見た瞬間束は絶句する。
モニターには、血だらけのクロエが台にしがみ付いて居た。
「くーちゃん!?何があったの!?」
『・・・侵入者・・・です。ナンバーズの一人が・・・』
「ナンバーズ!?」
『不意を突かれました。すぐに・・・』
クロエはそのまま気を失ってモニターから消える。
「くーちゃん!!」
束はすぐに席を立って格納庫に向かう。
「しかし、簡単な仕事でしたわね」
シスターはヴィヴィオを腕に抱えて艦内を歩いていた。
(とは言えど、俄かには信じ難いですわね。こんな小さな子供が彼らの計画の要であるとは・・・)
顔を下に下げて腕の中で気を失っているヴィヴィオを見る。
「これでわたくし達も―――――」
と、後ろに振り向き際に右腕にクロノスを部分展開して飛んでくる弾丸を弾く。
「不意打ちとは・・・あなたらしくもないですわね」
「どうかしら。人のやり方は時が過ぎるにつれて性格が変わるのと同じ事よ」
と、ハンドガンをシスターを向ける楯無が近付いてくる。
「それより、ヴィヴィオちゃんをどうするつもりなの」
殺意を向けて銃口を向ける。
「あなたには知らなくていい事よ」
「そう言って下がると思って?」
「・・・まぁ強いて教えれる事は、交渉の材料よ」
「交渉・・・?」
「そう。強大たる力を手にする為の交渉材料」
「・・・・」
楯無は目を細めるも、すぐに察しが付いた。
「・・・そういう事。それがあなた達の目的ってわけね」
「・・・・」
「所で、あなた達の仲間は助けなくて良いの」
「仲間?何の事かしら」
「・・・・」
楯無はセーフティーを外す。
「・・・あぁ。そういえば居ましたわね。四人ほど」
「・・・・」
「ですが、捕まった屑など必要ありませんわ」
「なに・・・?」
「それに、あの時あの屑たちが捕まったのも、仕組まれた事なのですわ」
「・・・なぜそんな事を。仲間なのに・・・」
楯無は怒りの篭った声を出す。
「力の無い者など仲間なのではありませんわ。力こそが全て。弱者は滅び行く運命。
ですから、厄介払いが出来たものです」
「・・・外道め。どこまであなた達は」
歯をギシリと噛み締める。
「どこまでも言いなさい。今のあなたには何も出来ない」
「・・・・」
その通りである為に何も言い返せなかった。
「では、わたくしはこれで」
「っ!待て!!」
楯無はハンドガンの引き金を引いて弾丸を放つが、シスターはクロノスを全展開して弾丸を弾くと、背中のキャノンを壁に向けてビームを放ち、壁を撃ち抜くと爆発する。
「っ!」
爆風に左腕を顔の前に出し、すぐに退けるがその時にはもうシスターの姿はなかった。
「・・・くっ!」
楯無は奥歯を噛み締め、左手を握り締めて壁に叩き付ける。
――――――――――――――――――――
「このぉぉぉぉ!!」
簪はヘヴィーハンマーを勢いよく振り下ろし、デストロイの左肩に叩き付けると左肩を粉砕し、そのまま腕の付け根も破壊して叩き落す。
デストロイは苦し紛れに右腕を振るうも、簪はとっさに飛び上ってかわすと背中右側のビームキャノンを放って右腕に直撃させる。
「っ!」
直後にハンマーを横へと振るい、右腕にぶつけると腕を吹き飛ばし、そのまま身体を回転させながらハンマーを遠心力の力に任せて回し、デストロイの胸部ビーム砲にぶつけると、胴体諸共破壊する。
それによってデストロイは後ろへと海面に倒れ、全身に電流が流れると大爆発を起こして木っ端微塵となる。
「っ!」
セシリアは向かってくるミサイルをドラグーンで撃ち落すと一気に接近し、背中のビームキャノンを前方に向けて展開し、腹部のビーム砲と一緒にビームを放ち、デストロイの頭部を撃ち抜く。
デストロイは胸部のビーム砲を放とうと、エネルギーをチャージする。
「あの時から全く学習をしていらっしゃらないようね!」
セシリアは左手にビームサーベルを抜き放つと、瞬間加速を掛けて飛び出すとビームサーベルを突き立て、そのままチャージ中のビーム砲に突き刺す。
すぐに離れて右手に持つロングライフルをビームサーベルに向け、ビームを放ってサーベルに直撃させて爆発させた。
それによって行き場を失ったエネルギーが爆発し、デストロイは胸部から大爆発を起こし、そのまま後ろに倒れて爆発を起こして木っ端微塵になる。
「同じ手が二度も通じるとは・・・思っていませんでしたわね」
『そうですね』
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!