episode189 海底に潜む魔物
上でそんな事があっているその頃、隼人達は信じられない物を目撃していた。
「・・・・」
隼人は静かに唸って目の前の物を見る。
「これは・・・・・・明らかに自然の物じゃないですね」
ラウラの声に緊張味があって、少しぎこちない。
「あぁ」
「そうだね」
「・・・・」
「そのようだな」
「・・・・」
隼人達の目の前には、建造物と思われるものが沢山海底にあったのだ。
「海底都市か」
アーロンがボソッと呟く。
「噂には聞いていたが、まさか実在していたとはな・・・」
「最近別の海域でそれらしきものがあるって聞いていたけど、こっちにもあったなんて」
「こいつはかなりの大発見だな。しかも魔の三角海域の海底に眠っていたとは。
通りで今まで見つからなかったわけだ」
忌み嫌われている海域なので、調べるものが殆ど居なかったのだろう。もしくは何らかの理由で発見されなかったか・・・
「・・・・」
「束さん。こっちは中々凄い物を発見しましたよ」
と、ネェル・アーガマに通信を入れるが――――――
「・・・・?」
しかし一向に通信は繋がらず、ノイズが走っていた。
「何だ?通信が繋がらない?」
「え?」
隼人の言葉に他のメンバーも通信を試みるも、ノイズが走って通信が繋がらない。
「どういう事だ?さっきまで繋がっていたはずだが・・・」
「こっちも繋がらない」
「こちらもだ」
他のメンバーも同じであり、誰も上と繋げられない状況になっていた。
「何が起きているんだ?バインドの通信妨害か?」
「だが、周囲にはバインドらしき反応は無い・・・」
隼人は周囲を見渡すも、それらしき影は見当たらない。
「・・・・」
アーロンはこの現象に冷や汗を掻いていた。
(・・・同じだ。あの時もこれと同じ現象が・・・)
脳裏を過ぎるあの光景で本能的に危険を感じていた。
(来る・・・やつが・・・!)
「各機警戒しろ!」
アーロンは他のメンバーに呼びかける。
隼人達は一瞬戸惑うも、臨戦態勢を取る。
すると右方向より多数のミサイルが飛んでくる。
「っ!」
隼人は脳裏に感覚が過ぎっていち早く気付き、ハイパーバズーカをミサイルの方に向けてトリガーを引き、弾頭を放つ。
弾頭は少し突き進んだ所で破裂して無数の弾丸が放たれてミサイルの大半を撃ち落すと、後に続いて他のメンバーも砲撃を行い、ミサイルを撃ち落す。
「バズーカのマガジン・・・散弾にしておいて正解だったな」
息を呑むと、ミサイルが飛んできた方向を見る。
「不意打ちとはな。あいつらか!」
「・・・いや、違う」
隼人はセンサーに反応している物を見て息を呑む。
「数は1。しかも・・・反応が大きい」
「何?」
すると離れた場所に巨大な影が蠢く。
「な、何だ・・・?」
輝春はそれを見た瞬間背筋が凍る。
「・・・なんて・・・大きさだ!?」
ラウラは目を見開いてその影を見る。
「こいつは・・・」
隼人もその巨大さに息を呑む。
そしてその影が隼人達の近くまで近づく。
横へと伸びた巨大な翼の様なユニットを全体の殆どを締め、昆虫の様な足を持った生物的な姿をしており、、本体に緑色の一つ目が隼人達を見ていた。
その大きさは隼人達の何十倍もの大きさを持ち、薄っすらとこげ茶の色が見えていた。
「・・・やはり、ここにまだ居たのか」
アーロンは身構えると、その影を見る。
「・・・『シド』」
「・・・・?」
するとシドと呼ばれる巨大物は緑色の一つ目を発光させると、両側に広がる翼型ユニット下部よりアームを五基以上出すと、先端より赤いビームを放ってくる。
『っ!!』
隼人達はとっさに散開し、ビームをかわす。
しかし赤いビームは隼人達を追う様に追尾する。
「なに!?」
隼人はとっさに上昇して赤いビームを岩にぶつける。
(追尾性があるビームだと!?)
内心で驚くも、直後に赤いビームが飛んできてとっさにスラスター全開で回避する。
(こいつも原作同様の性能ってわけか!)
ラウラはフィールドを張って防ごうとするも、何とか防げても衝撃で思い切って吹き飛ばされる。
「くっ!なんてパワーだ!」
とっさに体勢を立て直すと一気に飛び上がり、更に飛んでくる赤いビームをかわす。
輝春は背中のグラストロランチャーを両脇より展開して両腕のシールドライフルを同時に放つも、シドの装甲表面に直撃すると同時に散り散りに弾かれる。
(くそっ!ここまでビームの出力が減衰するのかよ!?)
内心で舌打ちしてとっさに赤いビームをかわす。
シノンはライフルと背中の四連マルチ・ランチャーと実弾キャノンを同時にシドに向けて放つ。
同時にシャルロットも両腕のダブルガトリングと背中の大型バックパックのミサイルコンテナを展開してミサイルを放つが、両者の放った弾はシドの装甲の硬さに弾かれる。
「・・・硬い」
シャルロットは言葉を漏らすも、すぐにバックパックの大型キャノンをシドに向けて放って直撃させる。
さすがにシドは揺れるも、その瞬間景色に溶け込むように姿を消す。
「っ!?」
「光学迷彩だと!?」
「厄介な物を・・・」
隼人が舌打ちをすると、直後にシドが別方向より現れ、アームより赤い誘導ビームを放つ。
「っ!」
隼人達は追尾してくる赤いビームを回避するのに精一杯だったが、シドは両側の翼ユニットよりミサイルを大量に放つ。
「ちっ!」
隼人は赤いビームをかわすと、ハイパーバズーカを連続で三発放って広範囲に散弾を放ち、ミサイルの半分を撃ち落す。
直後に空になったマガジンを排出すると直接バズーカに新しいマガジンを展開して装填する。
他のメンバーもミサイルをかわすと、ミサイルが海底に着弾して爆発し、砂が舞い上がって周囲を覆い隠す。
「全員一時撤退だ!体勢を立て直せ!」
通信は使えないのでアーロンはスピーカーでメンバーに伝え、それぞれ散り散りになってその場を離れる。
「参ったな・・・こいつは・・・」
「・・・・」
散り散りに分かれた隼人はアーロンと岩陰に隠れて周囲を警戒する。
「まさかこの海域にあんな化け物が潜んでいたとはな」
「・・・・」
「あれだけの火力だと、近付くのは容易じゃないな」
「・・・あぁ。そうだな」
アーロンは少し呆然となっていた。
「・・・アーロン」
「なんだ?」
「さっきあの化け物を『シド』と呼んでいたな」
「・・・・」
「知っているのか?あれを?」
「・・・・」
「どうなんだ」
「・・・・」
アーロンはしばらく黙るも、口を開く。
「・・・あぁ。知っているさ。
お前が思う以上にな」
「・・・・」
「・・・あれは七年ほど前の事だ」
「・・・・」
「俺と束が出会って数ヶ月経った頃に、俺はこの辺りに調査しに赴いた」
「・・・・」
「その日も嵐が吹き荒れ、厚く黒い雲に覆われて光が無い暗闇だった。
調査内容である調査船の捜索をしていた時に、シドに遭遇した」
「・・・・」
「シドは俺を見つけるとすぐに猛攻を仕掛けてきて、俺は避けるのに必死だった」
「・・・・」
「だが、あまりもの猛攻に遂に直撃を受け、更に全方位より攻撃を受けて俺は瀕死の重傷を負った」
「・・・・」
「俺は奇跡的にシドから逃れる事が出来たが、その代償はかなり大きかった。
左腕と右脚、それに体のあちこち・・・いや、体の半分が別の物になっている」
「・・・そうか。通りで作戦開始前から緊張味があったわけか」
「気付いていたのか」
「まぁな。で、どうする?」
「どうするも何も、やつの弱点すら分からないのだぞ。
それにあの巨体では攻撃は通じにくい上に、ここは海の中。攻撃力の低下は免れん」
「やっぱりか・・・」
隼人は「うーん」と静かに唸る。
「せめてエクセリオン・ゼロになれれば、何とかなるだろうが・・・無い物を強請っても仕方無いか」
「・・・・」
それからしばらく隼人は色々と考え、ある作戦を思いつく。
――――――――――――――――――――
『くっ!』
リインフォースは背中の赤い翼より赤い羽根を飛ばし、向かってくるミサイルを撃ち落すとすぐに右手のバスターライフルをデストロイに向けて放つが、装甲表面に直撃するも弾かれる。
直後に左手の指先端のビーム砲を向けてビームを放ってくるも、とっさに前方にフィールドを張ってビームを弾く。
(以前の様にリフレクターが張れなくなっているとは言えど、質量が大きすぎる!)
五体のデストロイは以前のベルリンの時と比べると、量産時にコストを省いているのか、人型形態でも展開出来たはずの全方位リフレクターと装甲表面のコーティングが無くなっている。
とは言えど、質量が大きい為に装甲表面にすらダメージを与えられない。
セシリアはツヴァイとユニゾンすると、全武装による一斉射撃を広範囲に放ち、デストロイに直撃させるが、両腕のリフレクターに半分が阻まれてダメージがほとんど無い。
「硬い・・・!」
『ここまで大きいと・・・気が滅入るです・・・!』
直後にデストロイはマスクにある大型ビーム砲を放つも、セシリアはビームをかわすとビームライフルを連結させる。
すぐにロングライフルをデストロイに向け、トリガーを引いてビームを放ってデストロイの胴体に直撃させるが、表面が焦げた程度だった。
箒は後方よりマドカとエリーナの援護を受けながらデストロイに接近すると、ビームサーベルを振り上げながら急上昇し、胴体にビーム刃を切り付けていくが、装甲表面に浅い傷とこげを付けるだけだった。
「くそっ!ダメージが殆ど与えられないとは・・・!」
とっさに右方向に飛んでデストロイがミサイルと放ってくるも、箒はリフターのビームキャノンを放ち、マドカが複合シールドのビーム砲を放って撃ち落す。
「・・・以前よりコストダウンされているとは言えど、でかすぎるな・・・」
右手の大型ビームライフルをデストロイに向けてビームを放つが、左のカメラアイに直撃させて破壊する。
(ドラグーンが使えれば楽なのだが、この悪天候ではさすがに使えんな)
(しっかし、話で聞いたよりもでかいなぁ・・・)
エリーナ右手と左手に持つGNスナイパーライフルⅢを同時に放っていくが、デストロイの装甲に阻まれて弾かれる。
(それに・・・硬い。参っちゃうなぁ・・・こりゃ)
直後に機体各所のアーマーを展開し、ミサイルを放つ。
簪は背中のビームキャノンを放ってデストロイを牽制すると、瞬間加速を掛けて飛び出し、ヘヴィーハンマーを勢いよく振るってデストロイの胴体にぶつけると、その衝撃波で数歩後ろに下がる。
「っ!」
直後に両足の増加アーマーよりミサイルを放ってデストロイに直撃させて牽制する。
(ヘヴィーハンマーでようやく後ろに下がらせるのがやっと・・・。
その時点で凄い事だけど・・・)
デストロイは胸部のビーム砲を放つも、簪はとっさにスラスター全開で飛び上がってかわし、すぐにハンマーを振り被って急降下し、渾身の力でデストロイの頭部にヘヴィーハンマーを叩き付けると頭部を衝撃波で押し潰す。
(でも、やって見せる!)
簪はデストロイが突き出す右手を宙返りをするようにしてかわす。
「中々やるな。コストダウンしたとは言えど、デストロイを足止めするとは・・・」
高い高度よりクイーンは戦いを見物していた。
「しかし、まさかあのハンマーをやつらが所持していたとはな。いや、Gシステム78を制覇したやつらが持っていてもおかしくは無いな」
簪が持つヘヴィーハンマーを見つめながらネェル・アーガマを見る。
(マテリアルを手に入れた証には貴様らを特別に我らの傘下に入れよう)
(分かっておりますわ)
と、誰かに機密通信を入れる。
「っ!」
クィーンはとっさに後ろに飛ぶと、炎の様なエネルギー波が通り過ぎる。
「くっ・・・!」
千冬はレヴァンティンを構え直すと、クイーンを睨む。
「ほぅ・・・」
クイーンは千冬の方に向き直る。
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!