No.592915

蓮華の苦悩、一刀の想い(前編) 【真・恋姫†無双】

南無さんさん

こちらは真・恋姫†無双の二次創作となります
前回読んでくださった方。コメントをくれた皆様。
誠にありがとうございます。
今回は蓮華視点のお話です。
時系列的に申しますと雪蓮が亡くなった後になります。

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2013-06-30 17:09:29 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:8702   閲覧ユーザー数:7433

コツコツと歩く音を鳴り響かせながら、私は廊下をひた進む。

 

 

 

 

……今の私は気分がすこぶる悪い。

 

彼には失望した。

 

少しは見所があると思った私が馬鹿だったわ!

 

 

 

 

…………許せない。一刀があんな事を言うなんて!

 

 

 

 

 

一刀が……一刀が姉様の死を忘れろだなんて!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蓮華、辛いのはわかる。―――俺だって同じ思いだ。

 

 だけど、あれから二週間も経過しているんだ。

 

 気持ちを切り替えないと孫呉は衰退の道を辿ってしまう。

 

 このままだと雪蓮が望んだ民に優しい国作りができなくなってしまう。

 

 ……蓮華。お願いだ。新たな孫呉の王として義務をはたしてくれ」

 

 

 

「わかっているわよ!けど姉様が死んだのよ!誰よりも勇猛果敢で

 

 民を愛して、泰平への夢を望んだ優しい姉様がっ!

 

 私には悲しむ時間すら与えてくれないの!?」

 

 

 

「…蓮華。酷なことを言うけど、足手纏いな王は必要ない」

 

 

「北郷!!貴様あああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「……思春」

 

 

「しかし!!冥琳様!」

 

 

「…でも、も、しかしも無い。少しおとなしくしていろ」

 

 

「ッッッッツ!!………御意に…ございます」

 

 

「お前達も、一切の言葉を口に出すな。今この時は北郷と蓮華様の言葉に

 

 耳を傾けるようにしていろ」

 

 

 

「蓮華。雪蓮がこの状況を見ていたら間違いなく悲しんでいる。

 

 雪蓮は君に期待していたんだ。君なら素晴らしい王になると

 

 だから、君は雪蓮の期待に応えなければいけない。

 

 それが後を継いだものの使命だと、俺は思う」

 

 

「わかってる。わかっているのよ。…でも駄目なの。姉様がいないと考えるだけで

 

 体の震えが止まらないの。怖いのよ。私が姉様の替わりなんて勤められるはずが無い!」

 

 

「…………蓮華。………君には失望したよ。二週間前と言っていることが変わらないじゃないか

 

 今、君が言っていることは子供が駄々をこねている事と一緒だ」

 

 

「………一刀……?」

 

 

「蓮華。…一端、……雪蓮のことを忘れろ。

 

 今は立派な君主と為ることだけを考えろ」

 

 

「なっっっっ!!一刀!私に姉さまのことを忘れろというの!!!」

 

 

「……一端と言っているんだ。今は死んでいった人を思うのではなく、今を生きる民と国のことだけを

 

 考えてくれ。……もう一度いう。辛いのなら雪連のことは忘れろ」

 

 

「一刀……一刀が、そんな事をいうなんて!一刀にとって姉様は簡単に

 

 忘れてしまうほど 小さな存在だったの!?」

 

 

「……………死んだものは生き返ってこない。………ただ…それだけだ」

 

 

 

「……そう。見損なったわ一刀!!貴方がその様な人だったなんて!!!

 

 

 今すぐ私の前から消えなさい!!!!!

 

 

 貴方が消えないのなら私がこの部屋を出ていくわ!!!」

 

 

 

「お待ちください蓮華様!!!北郷!!貴様!!!!」

 

 

「思春はここで待機していろ。私が向かう」

 

 

「しかし!!冥琳様っ!」

 

 

「これは、命令ではないが…私の願いだ。頼む思春。蓮華様のことを思うなら

 

 

 私に任せてくれないか」

 

 

「………御意に…ございます」

 

 

「…………冥琳。すまないけど後を頼めるかな―――」

 

 

「…ああ。了解した。少し休んでいろ北郷」

 

 

「……うん。…わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は歩く速度を緩めなかった。端から見たら、私は怒気を纏っているだろう。

 

実際にそうだ。その一歩一歩に力を込めている。

 

信頼していた人に……裏切られたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――雪蓮の事は忘れろ―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

私の心がひどく痛む。…一端、忘れろですって。忘れられる筈が無い!

 

姉様は私の目標だった。憧れだった!…そんな姉様を忘れられる訳

 

………ないじゃない。

 

 

 

 

「……お待ちください。蓮華様」

 

 

 

 

後ろから冥琳が話し掛けて来る。今は誰とも会いたくない。この状態だ。

 

まともに会話が出来るとは思えない。正直、一人にしてほしいと思った。

 

 

 

「……何か用。冥琳。見ての通り私は今、虫の居所が悪いの。

 

 話しかけてこないでくれるかしら」

 

 

 

「そうは参りません。蓮華様。私は貴女に用件があるのです。王が軍師の言を聞くのは道理。

 

 また、逆も然り。私情で断るなど言語道断。それでは孫呉の王としての責務を

 

 全うできるとは思えません」

 

 

 

「……私は王ではない!!王になど為りたくもない!!私は只、姉様の元で泰平を

 

 掴みたかっただけなの!!………姉様がいないと私は

 

 …何もできないのよ……」

 

 

 

「……甘ったれるな!孫仲謀!!!!!」

 

 

 

「冥……琳……?」

 

 

 

 

「雪蓮が何故、貴女に後事を託したのか!何故、貴女に孫呉の未来を託したのか!!

 

 それは蓮華様。王の資質があるのはあなただけなのです。何より

 

 雪蓮が貴女の事を認め、そして、自分より優れた王に為ると

 

 確信していたからです」

 

 

 

 

「……でも、私は姉様の様に戦場で武を振るう事は出来ない!

 

 姉様みたいに、人を惹きつける力なんて私にはないのよ!!」

 

 

 

 

「………蓮華様。貴女は勘違いなされておられます。

 

 一つは、雪蓮の様になれとは私を始め皆も、申しておりません。

 

 貴女の資質は『武』ではなく、孫呉の絆を力に変え『守』る事。

 

 雪蓮の様に一騎当千となり、武で戦場を支配されるのではなく、

 

 勇を用いて、味方を鼓舞し、虎のような猛々しい心で、将兵とともに戦い、

 

 怯む事無く果敢に民草を守ること。そして、貴女は時勢を読む能力、

 

 物事を注意深く考える事に長けています。これが、貴女の才能。

 

 『名君』と為れる資質なのです」

 

 

 

「私が…『名君』?」

 

 

 

「はい。蓮華様なら必ずや『名君』と為れましょう。

 

 …それと、もうひとつ。貴女は人を惹き付ける力がないと仰いました。

 

 それも間違っておられます。そもそも、その様な力がなければ、

 

 将兵達が寝返りを企てるか、はたまた家族の元へ帰郷、致すでしょう。

 

 その様な報告はおろか、素振りすら見せておられません。

 

 貴女は自分を卑下し過ぎておられる。

 

 将兵達は貴女を信頼しております。

 

 もっと自信をお持ちください。蓮華様」

 

 

 

「………わかったわ。姉様の為にも、孫呉の未来の為にも、

 

 私は『名君』と為る事を誓うわ。

 

 ……迷惑を掛けたわね。冥琳。…ごめんなさい」

 

 

 

「…いえ。謝る必要はございません。蓮華様が王としての道を進んでくれた。

 

 私や皆、それと……北郷にはそれだけで十分でございます」

 

 

 

「…一刀の事は口にしないでくれるかしら。……あんな薄情者なんて

 

 私の前から消えてしまえばいいのよ」

 

 

 

「……蓮華様。北郷が心の底から、あのような事を口に出したと思われますか。

 

 先程の言は、北郷の本心ではありません」

 

 

 

「………信じられないわ。平気で忘れろだなんて言ったのよ!

 

 雪蓮姉様との絆は、…どうでもよかったのよ」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

…冥琳は、右手で左腕の肘を持ち、

 

左手を口元に寄せ物静かに、思案の海へと入っていった。

 

 

 

 

 

「……………お前の事だ思春。いるのだろう。頼みたい事がある」

 

 

 

「ハッ。………ここに」

 

 

 

 

 

思春は音を立てることもなく、この場に現れ

 

下知を待っていた。

 

 

 

 

「思春。北郷以外の将へ大広間で待機しているよう伝えてくれ」

 

 

「御意にございます」

 

 

 

 

言を聞き終わると、思春は消えていた。

 

彼女のことだわ。直ぐにでも、頼みを完遂するだろう。

 

 

 

 

「さあ。蓮華様。私たちも参りましょう」

 

 

「私も行けと言うのね。…わかったわよ」

 

 

 

 

 

私はこの時まだ知る由もなかった。

 

 

 

一刀の本心を…

 

 

一刀の想いを…

 

 

 

そして、この後、直ぐ知ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……深い後悔と共に……

 

 

 

 

 

 


 
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