No.591931

遊戯王GX cross story turn5 不幸と天使とアカデミアの影

さあ!原作ブレイクニレンダァ!の回だぜ!

2013-06-28 08:47:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4685   閲覧ユーザー数:4496

デュエルアカデミア港にて

 

「うー…ん。やっぱり陸地はいいねェ、揺れないから」

 

アカデミアに食料やカードを運ぶ船から降りた一人の少年が長旅をしたかのようにぐぐぐっと背筋を伸ばす。

 

「運が良かったな。今日この船がアカデミアに食料とカードを運ぶ日で」

 

そんな少年に向けて船長が声をかける。

 

「ああ、助かりましたよ!ところで……」

 

ふとアカデミア本校の方角に目を向ける少年に船長もそれにつられる形で方角に視線を向ける。

 

「アカデミアから歓声が聞こえるんですけど……なんでですかねェ?」

 

「ん?そういえば今日は月一試験とかいうのをやってる日だって聞いたな」

 

(ああ、そういえばあったねェそんなの……すっかり忘れてたや)

 

ポリポリと頭を掻きながら少年はどうでもよさそうに欠伸をする。

 

「しっかし、普通こう毎月試験をやるもんかねえ……。とにかく変わった学校だよ。ここは」

 

「(変わった学校、ね……まっ、確かにね)それじゃあボクは行きますよ。お世話になりました」

 

「おう、しっかり勉強しろよ!」

 

律儀にお辞儀をする少年に船長は明るく返す。

 

(さて、と……)

 

懐から数枚の書類を取り出しと少年はそれを一枚一枚ゆっくりと読み進める。

 

「織斑一夏。吉井明久。上条当麻。遊城十代。高町なのは。フェイト・テスタロッサ。八神はやて。御坂美琴。そして、篠宮遊輝……か、アイツが一目置いているという新入生の実力、どれほどのものか見せて貰うヨ」

 

クスリ、と不敵な笑みを浮かべながら書類を懐に戻すと少年はアカデミアへゆっくりと歩みを始めた。

 

 

 

 

「……不幸だ」

 

場所は移り変わり、デュエルフィールド。そこで上条当麻は自分の不幸体質を物凄く呪っていた。

昨日の不吉な三枚のカードと悪質な悪戯にしか見えないような三つの食べられないドローパン。おまけに今朝の筆記試験を完全遅刻(これはトメさんを助ける為なのでノーカン)等々、とにかく上条当麻という男には不幸が常につきまとっているのである。

 

そしてそれは、今現在にも言えることだった。

今年の一年生の数は奇数、これにより実技試験では一人……今回は当麻のことなのだがとにかく生徒が一人だけ余ってしまうことになるのだが、他の一年生にもう一度やらせるというのも不公平だし、かといって二年は偶数な為に無理。残された道は教師とのデュエルかまたは一年生と同じく奇数である三年生とのデュエルの二つに一つとなってしまうのである。

因みにこの話を知ったとき、当麻はすぐさま頭を抱えて「不幸だ……」と呟いたらしい。

 

(別に相手が誰であろうと勝てばいいだけでせうよ?ですがね、いうらなんでもこれは遅すぎじゃあありませんかね?)

 

当麻が呼び出しを受けてデュエルフィールドに立ってから既に10分が経過している。にもかかわらず、肝心の対戦相手が未だにその姿を見せてこないのである。いくらなんでもこれは酷い。対戦相手を舐めているとしか見えなかった。

 

(全く……何時になったら上条さんは美琴とイチャイチャ出来んでしょうね)

 

普段、寮が別なのもあって最近ご無沙汰である当麻にとって美琴と側にいることも出来ず、待たされ続けている事に次第に怒りを募らせ始める。

 

そう思っていた時だった。

 

当麻のいるデュエルフィールドに一人の男子生徒がやってきた。

オベリスクブルーの青の制服に、若緑のどこかワカメを連想させる髪型。おそらく彼が当麻の対戦相手なのであろう。

 

「遅れてごめんね。ちょっと向こうでゴタゴタがあったものだから」

 

「はぁ……」

 

ゴタゴタ、ということに若干気になっていたが向こうがデュエルディスクを構えるのを見て慌てて自分もディスクを構える。

 

「俺は藤原優介。見てのとおりオベリスクブルーで三年生だ」

 

「……上条当麻です」

 

『それデーハ。これより実技試験最終戦を始めルーノデス!』   

 

少し離れたところではクロノス教諭がマイクを片手に開始宣言を行っていた。まぁ、ぶっちゃけ磯野さんには程遠いが……

 

「「デュエル!!」」

 

当麻LP4000

 

藤原LP4000

 

「俺のターン!ジェネティック・ワーウルフを召喚!」

 

ジェネティック・ワーウルフ ATK2000

 

作者が書いてきた作品ではその殆どがやられてばかりの可哀想なモンスターがフィールドに現れる。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

当麻

手札四枚

モンスター ジェネティック・ワーウルフ 

魔法:罠 伏せ一枚

 

「俺のターン。手札から《光神化》発動。手札の光神機(ライトニングギア)-轟竜の攻撃力を半分にして特殊召喚する」

 

光神機(ライトニングギア)-轟竜 ATK2900→1450

 

「さらに速攻魔法《地獄の暴走召喚》。デッキから二体の轟竜を特殊召喚する」

 

光神機(ライトニングギア)-轟竜×2 ATK2900

 

…………嘘だろ?

この時当麻はそう呟くしかなかった。確かにこのコンボはwikiで載るくらい有名なものだ。しかし、それを後攻1ターン目から決めると誰が思ってただろうか?

 

「くそっ、暴走召喚のデメリットとしてこちらの場にもジェネティック・ワーウルフを二体特殊召喚する……」

 

ジェネティック・ワーウルフ ATK2000

 

本来ならば守備表示で出したいところであるが轟竜には貫通効果を備え持っているので、もしも守備にしていたらワンターンキルが成立しているところだった。

 

「それくらいどうってことない。ゆけ!二体の轟竜でワーウルフを攻撃!」

 

「ぐうっ!」

 

当麻LP4000→2200

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。そしてエンド時に光神化によって特殊召喚された轟竜は破壊される」

 

藤原

手札二枚

モンスター 光神機(ライトニングギア)-轟竜×2

魔法:罠 伏せ一枚

 

「くっ、俺のターン!」

 

勢いよくカードを引く当麻。引いたカードを確認するとしばらく考えてから行動にでる。

 

「ジェネティック・ワーウルフをリリースして光帝クライスを召喚!」

 

光帝クライス ATK2400

 

「クライスの効果発動!そっちの轟竜二体を破壊する!」

 

クライスの放った光が二体の轟竜を包み込むと次第に二体は消滅した。

 

「クライスの効果であんたはカードを二枚ドローできる。さあどうする?」

 

「無論、引かせて貰うよ」

 

そう言って藤原はカードを二枚引く。

 

「この瞬間、トラップ発動!《ダブル・バイッセス》」

 

ダブル・バイッセス 

通常罠

 

相手がドローフェイズ以外でカードを二枚以上ドローしたとき、その枚数分自分はカードを引く。

 

「これにより俺もカードを二枚ドローさせて貰うぞ」

 

「へえ、中々やるね」

 

「そいつはどうも……さて、このままダイレクトアタック、と言いたいところだったがクライスは召喚、特殊召喚されたターンは攻撃宣言できないからカードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

当麻

手札六枚

モンスター 光帝クライス

魔法:罠 伏せ二枚

 

「俺のターン」

 

慣れた手つきでカードをドローする藤原。引いたカードを見るとその表情は僅かながら変化した。

 

「俺は永続魔法《神の居城-ヴァルハラ》を発動!」

 

藤原の背後に神の住まう城が出現した。

 

「げっ」

 

ヴァルハラの姿を確認すると当麻の顔に嫌~な汗が流れ始めていた。

 

「効果は知ってるみたいだね。じゃあヴァルハラの効果を発動。手札からゾルガを特殊召喚する」

 

ゾルガ ATK1700

 

「そしてそのゾルガを生け贄に捧げ、光神テティスを生け贄召喚」

 

光神テティス ATK2400

 

「ゾルガが生け贄素材となったことでライフを2000回復させて貰うよ」

 

藤原LP4000→6000

 

「さらに永続魔法《一族の結束》を発動。これで僕の天使の攻撃力は800ポイントアップする」

 

光神テティス ATK2400→3200

 

最悪だ……。誰もがこの時、そう思えた。

相手の場には凡骨の意地の天使版であるテティスに自フィールドにモンスターがいなければ天使を呼び出すヴァルハラ。おまけに攻撃力アップの結束。

攻略するのは楽ではないと感じさせられていた。

 

「バトル!テティスでクライスを攻撃!」

 

先程まで互角の攻撃力だったはずの双方だったが結束の力によって強化されたテティスに、クライスは粉砕された。

 

当麻LP2200→1400

 

「くっ!」

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

藤原

手札零枚

モンスター 光神テティス

魔法:罠 神の居城-ヴァルハラ、一族の結束、伏せ二枚

 

「くぅ…俺のターン……!これは」

 

「?」

 

引いたカードを見た当麻の表情は先程までの絶望しかけていたそれから勝機を見出したそれへと変わる。

 

「いくぜ!俺はエヴォルテクター・シュバリエを召喚!」

 

エヴォルテクター・シュバリエ ATK1900

 

「さらに装備魔法《スーペルヴィス》をシュバリエに装備!これによりシュバリエは再度召喚されたことになるぜ!」

 

「これは、少し不味いかな?」

 

「シュバリエの効果発動!装備されたスーペルヴィスを墓地の送り、テティスを破壊する!」

 

スーペルヴィスのカードが光となってシュバリエの持つ剣に纏われたのを確認したシュバリエはそれをテティス目掛けて撃ち込み、破壊した。

 

「さらに墓地に送られたスーペルヴィスの第二の効果により俺はジェネティック・ワーウルフを蘇生する」

 

ジェネティック・ワーウルフ ATK2000

 

「バトル!ジェネティック・ワーウルフとエヴォルテクター・シュバリエでダイレクトアタック!」

 

藤原LP6000→2100

 

これでライフの差は一気に700にまで縮み、勝敗もわからなくなってきた。

 

「よし!俺はこれでターンーー」

 

「おっと、エンドフェイズに永続トラップ《神の恵み》を発動させて貰うよ」

 

「……マジすか」

 

神の恵み。自分がドローする度にライフを回復する非常に厄介なカードで、主に凡骨の意地や、先程のテティスのような大量ドロー系のカードが入ったデッキと相性抜群なカードなのである。

 

当麻

手札五枚

モンスター エヴォルテクター・シュバリエ、ジェネティック・ワーウルフ

魔法:罠 伏せ二枚

 

「俺のターン、そして神の恵みの効果によりライフを500回復」

 

藤原LP2100→2600

 

「さらにヴァルハラの効果で俺はアテナを特殊召喚する」

 

アテナ ATK2600→3400

 

今度は天使が場に現れるだけで600のバーンを喰らわせるアテナが舞い降りる。ここにスペルビアが無かったのは当麻にとってはなによりも幸運だった。

 

「シュバリエの効果は厄介だからね。先に退場して貰うよ、アテナでエヴォルテクター・シュバリエを攻撃!」

 

アテナの持つ三叉から繰り出された連突きに耐えきれず、シュバリエは呆気なく破壊された。

 

「くっ、トラップ発動!《ガード・ブロック》俺が受けるダメージを0にしてカードを一枚ドローする」

 

「決められなかったか……ターンエンド」

 

藤原

手札零枚

モンスター アテナ

魔法:罠 神の居城-ヴァルハラ、一族の結束、神の恵み、伏せ一枚

 

不味い。

 

この時当麻は直感的にそう感じていた。もしも次のターンでモンスターが引かれた場合、アテナのバーン効果と第二の効果によって当麻のライフはたったの200となる。そうなればあとはダイレクトアタックしてしまうだけで当麻の負けになる。

 

「負けて、たまるかよ!俺のターン!」

 

負けたくないという想いでカードを引く当麻。そのカードは、当麻が今この状況でもっとも欲しかったカードであった。

 

「!来たぜ、逆転のカードが!手札から《死者蘇生》!墓地のシュバリエを特殊召喚するぜ!」

 

エヴォルテクター・シュバリエ ATK1900

 

「今更そんなモンスターをだしてなにをするきなんだ?」

 

「へっ、すぐにわかるさ。リバースカードオープン!《収縮》発動!これでアテナの攻撃力を半分にする!」

 

アテナ ATK3400→2100

 

(?どうしてこのタイミングで?ダメステで使うほうがいいはずなのに……)

 

「そして二体のモンスターをリリース!光と闇の狭間より現れろ、俺の最強ドラゴン!光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)

 

光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン) ATK2800

 

当麻のフィールドに舞い降りたのは半身が白、そしてそのもう半身が黒のドラゴン。これこそが当麻のエースモンスター、光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)である。

 

「いけ!光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)!アテナをぶちのめせ!シャイニング・ブレス!」

 

光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)より放たれたブレスがアテナを飲み込まんとする。

 

「そうはさせない!トラップ発動《次元幽閉》。これで光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)を除外する!」

 

アテナの前に次元の裂け目が出現した。

 

「甘い!光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)はあらゆるカード効果を無効にする!」

 

光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)の角から発せられた雷が次元幽閉のカードを焼き払う。

 

「そんな……」

 

光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン) ATK2800→2300

 

光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)は自らの効果の代償として攻撃力を下げる。

 

藤原LP2600→2400

 

「さらに速攻魔法《バトルラッシュ》を発動!」

 

バトルラッシュ

速攻魔法

 

自分のレベル8以上のドラゴン族モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊し、ダメージを与えたとき、ライフを半分支払うことでそのモンスターはもう一度攻撃する事ができる。

 

当麻LP1400→700

 

「だがそれは君のモンスターによって無効となるんだろう?」

 

藤原の言うとおり、このカードは自身にも範囲が及んでいる。現に光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)はバトルラッシュのカードを破壊せんとその角に雷を溜め始めていた。

 

「だったこれでどうだ!チェーンして速攻魔法《禁じられた聖杯》!これでこのターン、光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)の効果は無効となり、その攻撃力は400ポイントアップする!」

 

光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン) ATK2300→3200

 

「……ここまで、か」

 

先程アテナに放たれていた光のブレスが、今度は藤原を飲み込んだ。

 

藤原LP2400→0

 

 

 

 

「まさかあの藤原が負けるとは……」

 

遊輝たちとは反対側の観客席。

そこに藤原と同じ制服を身に纏った男子、カイザーこと丸藤亮は驚いたような顔つきで藤原と当麻を見ていた。

 

「いやはや流石は当麻。やるねぇ~」

 

その隣で面白そうに眺めているのはフェイトの姉であり、遊輝とはやての義姉となるであろう少女、アリシア・テスタロッサ。彼女は入学時からなにかしらと縁のある亮らと共に試験を観戦していたのである。

 

「まあ、本人はあくまでやつの実力を計るためだったからな。次は負けないだろう」

 

「あ~、そういえばあの天使、入れてなかったもんね」

 

これまで何度も自分を苦しめてきた一枚のカードの存在を思い浮かべながらアリシアは苦笑する。

 

「そういえばブッキー、今日帰ってくるっぽいよ?」

 

ここにはいないもう一人の友人の事を話すと亮は「そうか……」と言ってその場を後にした。

 

(相変わらずクールだね~。ま、そこがモテる理由なんだろうけどさ)

 

よく言えば冷静な男性。悪く言えば希に冷たいというか不器用になる奴。それが彼の友人たち三人の中での丸藤亮という男であった。

 

「さて、そろそろ私も『仕事』に戻るとしますかな」

 

これからする事にめんどくさそうに、それでいて楽しそうな顔を浮かべながら、アリシアも亮にならってその場を後にする。

 

彼女の存在が、そしてこれから起こす行動が、後にアカデミアに多大な影響を与えることに、誰もが知る由もなかった。


 
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