No.587476 ソードアート・オンライン 黒と紅の剣士 第九話 問題の解決策やぎすけさん 2013-06-15 13:06:33 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1611 閲覧ユーザー数:1561 |
そこは、とある会社の研究室。
とはいっても、室内のほとんどは会社の創設者である“その男”の作業場となっている。
男は身長180cm代のやせ気味の長身で、着崩したスーツ上に白衣纏い、長く伸びた髪は後ろで縛っている。
部屋の中には、機械の備品から怪しげな薬品の資料に至るまで、ありとあらゆる種類の物品が不規則に並べられており、中には大麻やMDMAといった薬物や鋼製の刀剣、銃火器といったものまである。
?「さて、これはこんなもんでいいかな。」
男はPCに表示されているデータを見て、問題点や副作用、主成分その他もろもろの情報を確認する。
そこに出ているのは、MDMAなどの薬物に対する解毒薬の構築理論だった。
?「まあ、前に作ったのと大して変わらないんだけど、副作用が無くなった分進歩したって言えるのかな。でもやっぱり仕事としてやるとやる気でないから時間かかるな~。たかが麻薬の解毒剤作るのに“3176時間42分31.163秒も”かかっちゃったよ。休憩時間が1493時間37分29.058秒だから、作業時間は1683時間5分2.005秒ってところか。うわ~、また最長記録更新。でも、まあいいや。」
男がそう言いながら背伸びをしていると、入り口のドアをノックする音が響く。
社員「社長。よろしいですか?」
?「は~い。空いてますよ~」
男が声を返すと、ドアが開いた。
入ってきたのは、メガネをかけた若い女性社員だった。
社員「失礼します。」
?「あ~、固い、固い。そんなに石頭みたいにならなくていいよ。それに僕のことは社長じゃなくて、
社員「は、はあ・・・」
空の態度に女性社員が困惑した表情をしていると、空はどうでもいいことのように別のPCを手元に引き寄せ、そのキーボードを操作しながら言う。
空「それで、何の御用。まあ、新しい仕事の依頼でしょうけど。」
空の言葉に我に返った社員が、持ってきた資料を見ながら内容を話す。
社員「はい。以前契約なさった企業からの追加発注と、レクトの結城浩一郎様からアミュスフィア2に関するパーツの依頼が来ております。」
空「面倒なものや経費が高いものは全部こっち任せか。向こうもいいご身分だねえ。まあいいや、じゃあ・・・」
空がそこまで言いかけた時、突然男の端末から着信音が鳴った。
流れ始めたのは、10年前に流行った某ハンティングゲームのメインテーマである。
空は眼にも留まらぬ速さで端末をポケットから取り出すと、通話ボタンを押して、電話に出る。
空「もしも~し。君から電話してくるなんて珍しいね。何かあったの?」
欲しがっていたおもちゃを買ってもらったばかりの子供のように嬉しそうな声で、男が訊ねると、不機嫌そうな声で相手が返してくる。
?「相変わらずのようだな。空。」
空「おいおい、呼び捨ては酷いんじゃないか?仮にも君の兄なんだよ。まあいいや。で、どういう要件だい?君から連絡してくるってことは結構深刻な事態なんだろうけど。」
?「単刀直入に言う。HIVとAIDSの両方を治す薬を作ってくれ。」
空「ほうほう。それはまた急だね。」
?「頼めるか?」
空「僕を誰だと思っているんだい。君の兄だよ。まあ、約724時間51分17.675秒後くらいにはできると思うから。出来上がったら送ってあげるよ。」
?「わかった。助かる。」
空「いいんだよ。たった一人の
そこまで話すと、電話が切れた。
空は端末をポケットに仕舞い直す。
それを確認した社員が、問いかける。
社員「弟さんからですか?」
空「うんそうだよ。それじゃあ、僕はこれから“仕事”に入るから。」
社員「では、どれから始めますか?」
空「ん?ああ、その仕事は全部キャンセルしておいて。僕はこれからHIVとAIDSの特効薬の開発をするから。」
そう言うと、左手で先ほどからいじっているPCを操作しながら、右手で近くにあったスプレー缶を持ち上げる。
社員「キャ、キャンセルって、契約破棄されますよ!よろしいんですか!?」
空「その程度で解除されるなら、なくていいよ。」
眼を丸くして訊く社員に対して、空は缶を振りながら返した。
社員「しかし・・・!?」
社員が食い下がろうとした瞬間、空の持っていたスプレー缶から炎が吹き出し、社員の持っていた書類を焼き払う。
社員が燃えた書類を落とすと、空はもう一度火炎放射スプレーを噴射して書類を完全に焼き尽くした。
空「これで、契約書はもうないから、契約はできないね。」
社員「“双葉”社長!!」
社員は怒鳴ると、空のことを睨みつける。
すると空は、スプレー缶を社員に向けて言い放つ。
空「“俺”はな。見知らぬ
その顔は、さっきまでの遊んでもらっている子供のようなものではなく、不吉なことを予感させる悪魔のような不気味な笑みが浮かんでいた。
大地視点
俺は今、和人の家にいる。
理由は、以前キリトが絶剣とデュエルした後に、絶剣について調べてほしいと言われたので、その結果報告に来たというわけだ。
報告したのは、絶剣ことユウキの本名と、彼女の置かれている状況、そして彼女が入院中の病院などのことだ。
報告を終えると、和人は難しい顔をして頭を抱えた。
和人「どうにかできないのかな・・・」
大地「HIVもAIDSも、それにユウキ以外のギルメンの病気だって特効薬や劇的な回復が見込める治療法は、今のところない。」
和人「わかってる・・・けど・・・」
大地「諦めたくはないよな。」
俺の言葉に、和人は俯いてしまった。
和人の彼女である明日菜は現在ALOでユウキと接触し、彼女たちのギルド【スリーピング・ナイツ】に所属している。
スリーピング・ナイツは、ギルメン全員が治療困難な重病患者で、その内何人かは余命3か月未満という状態にある。
もしも、ギルメンの容体が急変したり、最悪亡くなられたりした場合、彼女は相当辛い思いをするだろう。
友達として、またSAOをともに生き抜いた仲間として、そんな思いはして欲しくない。
大地「仕方がない。あまり頼りたくはないが、あいつならやれるかもしれない。」
俺はそれだけ呟くと、ポケットから端末を取り出して、唯一生き残っている血の繋がった男に電話を入れた。
電話を終え、端末をポケットに仕舞うと、テーブルを挟んで向かい側に座る和人が訊いてくる。
和人「誰にかけてたんだ?」
大地「誰でもいいだろ。」
素っ気なく返して、出されたお茶を啜ると、和人は一瞬ムッとした顔をした。
大地「そんなことより、どうだったんだお前の方は?」
和人「どうもこうも、さっき話した通りさ。」
大地「違う、ひとつ報告してないことがあるだろ。ボス攻略を独占してる
和人「ああ、そっちか。予想通りというか予想よりも酷いな。」
大地「と言うと?」
和人「あいつらは同盟ギルド以外の主に小規模ギルドがボス戦に挑戦するのを利用して、情報収集した後、すぐにボス部屋の前を大人数で閉鎖して、自分たち以外のプレイヤーがボスを攻略できないようにしているらしい。」
大地「なるほど。つまり旧SAOの軍みたいな汚物がいっぱいいるってことか。」
和人「ここ最近、一部のギルドによる狩場の独占が問題になってるって聞いてたけど、これはそれ以上にたちが悪いな。」
大地「まあ、1度痛めつけてやった方が効くかもな。」
和人「それはそれで別の問題になりそうだな。」
そう言って、俺たちは軽く笑う。
だがすぐにいつもの笑みを浮かべて、訊いてみる。
大地「で、どうするんだ?」
和人「どうするって?」
大地「そいつらの排除だ。やるんだろ?」
そう言うと、和人は不敵な笑みを浮かべて返してきた。
和人「ああ。お前も手伝ってくれるか?」
大地「もちろん、そのつもりさ。その代わり“あれ”の秘伝書を俺に伝授してくれ。」
和人「あれ?」
大地「お前がSAO時代からお世話になってる“あれ”だよ。」
和人「お前も使う気か!?」
俺の言う“あれ”が何を指すかに気付いた和人は目を丸くする。
和人「1日2日で使いこなすのは難しいと思うぞ。」
大地「俺を誰だと思ってるんだ?お前の相棒デュオだぞ。そのくらいの無軌道くらいやってみせるさ。」
俺が笑って返してやると、和人は呆れた顔をしてから言った。
和人「じゃあ、帰ったらすぐにダイブしてくれ、いつもの訓練場で待ってる。」
大地「わかった。じゃあまた向こうで。」
俺は荷物を持つと、和人に別れを告げて家を出た。
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