第11弾 予選第1回戦
キリトSide
転送された先は暗闇の中で、1枚の六角形パネルの上にいた。
薄赤いホロウインドウがあり、そこには[Kirito VS アイオン]と表示されている。
SAO以降のゲームではカタカナや漢字での表記も可能となっているんだったな。
ウインドウの下部には[準備時間:58秒 フィールド:失われた古代寺院]という文字列。
主武装に『ファイブセブン』、副武装に『コリブリ』をセット、そして両腕に
あとはカウントが0になるのを待つのみだ、それにしても…。
「未だに『死銃』とは接触ならず、か…」
聞いたのはあの音声のみ、どんな姿なのかはハッキリとしておらず、どんな戦い方なのかも分からない。
ただ、本大会に残ってくるのは間違いないはず…つまり、好機はその時だ。
「だが、予選中に遭う可能性も無しではないな…」
ここは、気を引き締めていかないとな…。そこでカウントが0になったようで、再度転送された。
今度は陰鬱な黄昏の空の下に放り出された、ここがバトルフィールドか。
足元の枯草が風によって揺れ、すぐそばには古代の神殿の柱が立っていたり、倒れていたりしている。
まずは手近な柱に体を預けつつ、周囲の様子を探る。
相手の出現箇所は500m以上の地点、既に何かしらの手段でこちらを見つけているか、
はたまた俺と同じように警戒しつつ探索中か、どうしたものかと考えていたその時、
「っ!?…くっ!」
―――タァンッ!
俺の頭部があった場所を1発の弾丸が通り抜けた、どうやら相手は狙撃手らしい。
こちらが新顔だと分かって挨拶代わりに1発放ったみたいだが、それが仇になったな。
「そっちに居るんだな…」
俺はすぐに体勢を立て直して弾丸が向かってきた方角にある林に直進した。
途中、5発もの弾丸が放たれてきたが、今度は予測線が現れたので全て回避する事が出来た。
俺の接近に伴い、相手は不味いと察したのか今度は数十本もの予測線が伸びてきた。
同時に横っ飛びで回避、さらに相手の姿を目視で捉える。
アサルトライフルを構え、迷彩柄のフードを被り、こちらに攻撃を加えようとしている。
「なら、こうする!」
「なっ!?」
再び俺に向けられた数十本の予測線を回避するように樹の枝に飛び乗り、別の樹に飛び移りながら接近する。
「く、くそっ!」
さらに銃撃が行われるが俺に着弾するよりも先に別の樹に移動する為、精々1発掠る程度。
そして障害物の無いルートを見つけ、そこからファイブセブンで狙いを定め、
照準が重なった瞬間、一気に5回トリガーを絞った。
内2発が着弾してHPを削りつつ怯ませる事ができ、そのまま飛び掛かる。
アイオンも必死に体勢を立て直して引き金を絞ろうとしたが、
「はっ!」
「うわっ!?」
それよりも早く俺がアサルトライフルを蹴り落とし、そのまま両腕に装備した手甲により左手で殴りつけ、
右手に持ったファイブセブンで一気に頭部と心臓部を撃ち抜いた。
相手のHPは0になり、無数のポリゴン片となって消滅した。
「これで1回戦は突破…本気は、まだ見せるわけにはいかないな…」
そう呟いて、俺は転送された。
キリトSide Out
アスナSide
わたしの前に表示されたホロウインドウには[Asuna VS
シノンから言われていた通りに武器をここで整える。
主武装にライトホワイトの『フォトンソード・G4カゲミツ』、副武装に『コルト・ガバメント』をセットする。
あとは戦闘になるのを待つだけ…。
「キリトくん、わたし、頑張るね…」
暗闇の空間の中、彼の笑顔を思い浮かべて緊張を解す。
銃を使った戦闘は初めてだけど、わたしは全力を尽くす。
カウントが終わって、わたしは転送された。
黄昏時の空の下、幾つもの大きな岩塊が聳える中でわたしは周囲の様子を窺いながら少しずつ移動を始める。
コルト・ガバメントを構えて岩陰から前方を覗いて、音を聞き分け、何もない事を確認してまた前進。
そして、また岩陰から様子を確認しようとした瞬間、
突然目の前に男の人が現れた。
「きゃあっ!?(ダンッ、ダンッ!)」
「うわぁっ!?」
思わず銃を2回撃って、驚いた相手もそのまま被弾し、だけどすぐに別の岩陰に隠れた。
び、びっくりした~…でも、攻撃は当てる事ができた。
問題はここから、どうやって戦えばいいのかなぁ…。
少しずつ岩陰から相手が隠れた岩塊を覗こうとした、
―――ダァンッ!
わたしの顔の真横に弾丸が放たれ、真横を掠めて行った。
一度身を隠してから再び銃で反撃、相手もすぐに隠れた。
それなら…と、わたしは岩塊の上に飛び乗り、岩から岩へと移動する。
そして相手が隠れていると思う岩塊の上に乗り、様子を窺いながら下を見てみると……いた!
声を殺しながら、カゲミツG4を抜き放ち、岩塊の上から飛び掛かる。
「っ!」
「んなぁっ!?」
相手の持つ銃を斬り裂き、さっき弾倉を取り換えたガバメントを連射し、
陣皇のHPが0になったのでポリゴン片となって消滅した。
「か、勝てた~…」
初めての銃主体の戦闘に緊張していたけれど、最初がお互いに不意打ち状態だったのでなんとか勝つ事ができた。
そこでわたしは再び転送された。
アスナSide Out
ハジメSide
ホロウインドウに書かれているのは[Hazime VS
[準備時間:58秒 フィールド:戦場旧市街地]と表示されている。
この時間を使って装備をセットするという事か。
右手でメニューを開き、主武装に『バヨネット・ソードモデル』、副武装に『ドラグノフ狙撃銃』をセットする。
準備が終わり、戦闘開始を待つ…それにしても、だ…。
「……シュピーゲル、彼の気配は何処かで…」
そう1人呟く、何処かで感じた感覚…つい最近の事である。
だがそんなものは学校に行っていれば同じようなものを感じる。
やはり気のせいか…?そう考えたところで顔を上げ、カウントを見てみると間もなく戦闘が始まりそうだった。
「……いまは集中しなくてはな…」
そして俺はバトルフィールドに転送された。
私が転送された場所は鉄製の二階建ての家や小さなマンション群が集中しているところだった。
どうやらグロッケンとは違うSBCの居住区が戦場と化した時のものをフィールドに模したのだろう。
「……とりあえず、隠れるか…」
少し歩いた先にあるマンションの入り口に立つと、上空に向けて銃声と共に1発の弾丸を放つ。
すぐさまマンションの階段を駆け上り、ドラグノフを構え、スコープを覗き込んで周囲を探る……すると。
「……見つけた…」
こちらに向かって走ってくる人影、あれが対戦相手の餓丸だな。
両手でアサルトライフルを抱えながら走り、顔の上半分を覆うレンズ付きゴーグルを着けており、
防具としてのヘルメットを被っている。
相手はこちらに気付いていない、攻撃的システム・アシストである《
円内にいる餓丸は7割ほど、故に70%の命中率。
既に200m地点に到達している相手、そして150m地点になった瞬間に…、
「……喰らえ」
ドラグノフ狙撃銃の引き金を引いた、弾丸は胸部のほぼ中央に着弾し、ダメージを大きく奪う事ができた。
だが一撃で仕留められなかったのは痛手だったが、考えている暇はない。
相手はすぐさま物陰に身を隠した、おそらくこのまま後退するか、待ち伏せなり行うつもりだろう。
後退されると厄介なので、この5階のマンションから隣の3階ほどの建物の屋上に飛び移り、
さらに別の建物に飛び移ってから地面に下りる。
そして記憶している奴の位置に向けて走る、ドラグノフは背負い、右手に銃剣を掲げて。
「……あと、50m…」
そう小さく呟いた、その瞬間に相手は物陰から僅かに体を露わし、その手に持つアサルトライフルを放ってきた。
それらを上空へと跳躍する事で回避、空中で体を回転させて姿勢を直し、着地した瞬間に一気に加速。
再び私を見やった相手は驚愕の表情と共にライフルを放った……が!
「ふっ!」
―――ガガガガガキィンッ!
「う、うそだろっ!?」
私は右手に持つ銃剣を使い、急所や重要な箇所に着弾するはずだった弾丸のみ斬り裂いた。
勿論、銃剣にも耐久値はある…しかしそれが砕けるのは側面や一ヶ所への集中攻撃に限る。
余程の攻撃が当たらなければ一撃で砕ける事はない。
「……チェックメイト」
そのまま銃剣の刃でアサルトライフルを斬り裂き、次いで餓丸の身体を斬り裂いた。
HPが無くなった餓丸のアバターはポリゴン片と化して消滅した。
「……まずは1勝…」
その言葉を言うと、私は転送させられた。
ハジメSide Out
To be continued……
後書きです。
はい、キリトさんは無手(手甲装備)で戦っていますw
アスナさんは弾丸を斬りはしませんが、近接戦では【閃光】の名に恥じない戦いをします。
ハジメは銃剣で弾丸斬りを行い、加えて原作でキリトが戦った餓丸と戦ってもらいました。
次回はハジメが奴と遭うことになります。
それでは・・・。
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第11弾です。
キリト、アスナ、ハジメの第1回戦の様子になります。
どうぞ・・・。