俺達が中学生になり、入学式を終えてから1週間ほど経った。
「「「「「行ってきます」」」」」
「「行ってらっしゃい(いってらっしゃーい)」」
メガーヌさんとルーテシアに見送られ、俺達は自宅を後にする。
「今日も学校楽しみだなー♪」
テンションが高いレヴィ。
「「「…はあ………」」」
それとは対照的に元気の無いシュテル、ディアーチェ、ユーリ。
何て言うか…哀愁漂い過ぎ。
「3人共、もう諦めろ。あれから1週間経ってるんだぞ?」
「分かってます…分かってますけど……」
「現実とは常に非情なモノですね」
「ユーリの言う通りだ。我が世界に一体何をしたというのだ?」
これから向かう海中の自分のクラスにはコイツ等が哀愁を漂わせざるを得なくなっている元凶…銀髪トリオがいるからな。
「皆元気無いなー。もっとテンション上げて行こうよ!」
「「「……………………」」」
そんな発言をするレヴィを睨む3人。いや、気持ちは分かるけどね。俺達のクラスにはアイツ等いないから平和そのものだし。
「でもレヴィ。今日は
「……学校なんて無くなればいいのにね」
俺の一言で意気消沈し、肩を落として暗い表情を浮かべるレヴィ。
何故運動好きなレヴィが『体育の授業がある』と聞いただけでここまで落ち込むのか…。
それは体育の授業に関しては1組、2組、3組合同で授業が行われるからだ。
合同という事は当然銀髪トリオが絡んでくる。特にレヴィ、フェイト、テレサはアイツ等とクラスが違う分この時間帯は余計に絡まれる。
もっともコレは今から2ヶ月半の間だけで6月の下旬から先…丁度授業内容が水泳になる頃からは各クラス毎に分かれて行われる事になる。
ちなみにこのやり方は1年生の間だけで2年生、3年生は最初から各クラス毎に分かれているんだそうだ。
早く夏になってほしいと俺は切に願う。アイツ等事ある毎にコッチ睨んでくるし。
「まあ愚痴ってても仕方ないって。さっさと学校行こうぜ」
「「「「…はい(…うん)(…ああ)」」」」
学校へ向かう俺達の足取りは重く感じられた………。
学校へ向かう途中で元聖祥組の6人と合流し、一緒に登校する訳だが
「「「「「「「「「「……ハア~………」」」」」」」」」」
皆さん元気ないですハイ。
合流した時の6人は元気があったけどやはり体育の事を考えると気が滅入ってしまう様で
「何でアイツ等はこの世界に存在しとるんやろうか?」
「アレこそが世界の生んだ歪みだと私は思いますね」
「毎度毎度、アイツ等が近寄って来るだけで僕、怖気が走るんだ」
言いたい放題ッスね。まあ、こんな事でも言わんとストレスが大変な事になるんだろうな。
そして海中の正門が見えてくる。
「あれ?」
何か人だかりが出来てる。
「何かあったのかな?」
「さあ?」
「とりあえず行けば分かるだろ?」
俺達が正門前に到着し、すぐ傍に居たクラスメイトに話し掛ける。
「おはよう。なあ、何かあったのか?」
「ん?よう長谷川………っと!?てて、天使の皆様方!!?」
俺の背後にいるシュテル達を見て慌てた様子のクラスメイト。
この1週間で海小卒業の生徒達からなのは、フェイト、はやて、アリシア、アリサ、すずかの6人はシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、椿姫、テレサに続く新たな天使達と認定されている。
「て、天使だって言われたよフェイト//」
「な、何だか照れちゃうね姉さん//」
「天使…ね。中々良い表現の仕方じゃない//」
「でも少し恥ずかしいかな//」
「まあ気分は悪ぅないけど//」
「にゃはは…//」
元聖祥組のメンバーは皆、若干照れている。
「僕は天使なんて言われるより強くてカッコイイ何かがいいなぁ」
「悪い気はせんが我は聞き慣れてしまったな」
「「私もです」」
逆に長谷川家の面々は顔色一つ変えていない。
成長したなぁ。当時はそう言われて今のなのは達みたいに若干照れていたのに。
っと、今は昔の事を思い出してる場合じゃないな。
「で、これは何の騒ぎなんだ?」
「(ヤベ!朝から天使達に出会えた。今日の俺、幸運過ぎね?)////////」
「………おーい………」
「(今日は意味も無く少し早めに家を出たのが吉となったぜ)////////」
「聞いてますかー?」
「(これからはこの時間帯に学校に登校するべきだな!うん、そうしよう!!)////////」
…駄目だ。全然俺の声届いちゃいねぇ。
こうなりゃ誰か他の奴等に声掛けて貰うか。
「という事で誰か俺の代わりにアイツに聞いてくれ」
「じゃあ私が」
小さく手を上げ立候補したのはユーリ。そのまま何か考え込んでいる俺のクラスメイトに声を掛ける。
「すみません。どうして正門前に人混みが出来てるんですか?」
「はっ!風紀委員がどうやら検問を行っているのです!!」
「検問?」
「服装や髪形のチェックとかをしているみたいです!!」
「じゃあ、この人達は順番待ちって事ですか?」
「肯定です!!ちなみに対象になってるのは俺達1年生だけみたいです!!」
「そうですか…ありがとうございました」
「いえ!お役に立てて何よりです!!(うおおおおっっ!!!ユーリさんと会話出来たぞーーーーーーっっっっ!!!!)」
敬礼しながら答える男子生徒とユーリの会話。聞くだけ聞いたユーリはコッチに視線を向ける。
「という事らしいですよ?」
「服装や髪の乱れ……大丈夫だと思うけどなぁ」
「ユウキユウキ、私は大丈夫でしょうか?」
すかさずユーリが俺の袖を引いて聞いてきたので『ふむ』と言葉を漏らしてユーリの服装、髪の乱れを確認する。
「…………うん、別に問題は無いぞ」
「そうですか。良かったです」
ホッと一息ついて安堵するユーリ。
そして人混みの中にある列に並ぶため、俺達は移動する。そこで見た光景は…
「よし、次だ」
「ひいい~!た、助けて!!」
風紀委員にチェックされて悲鳴を上げている生徒だった。
「ならあの御方の名を言ってみろ!」
風紀委員の指差す先には一つの像があった。
……どうやら粘土で作ってるっぽいな。
「むっ!あの粘土像、中々の完成度ですね。私も負けていられません」
確かにシュテルの言う通り、まるで本物の人間の様な完成度だ。
てかシュテル、そんな事で対抗意識燃やすなよ…。
「し、知らない!あんな人誰かなんて言われても知らないよ!!」
「何だとー!?あの御方はかつて海小で教師を務めておられた御方だぞ!!」
「そ、そんな事言われても僕、海小の卒業生じゃないんですー」
「何だぁ?お前も知らないのか?仕方ない、やれ!」
「「大人しくしろよ!!」」
「ぐへへへへへ」
風紀委員の1人が別の風紀委員達に指示を出す。2人の風紀委員がそれぞれチェックを受けていた生徒の両腕を掴んで逃げられない様にし、もう1人は笑いながら近付いてくる。
「げぇっ!?ケツバットーーーッッ!!!?」
そう…笑っている風紀委員の手に持ってるのは『笑っ〇はいけ〇い』シリーズの罰に使用されるゴム製のケツバットだ。
「やってしまえ!!」
「オラアアアアッッッ!!!!!」
パコーン!!!
「ひぎいいいいっっっ!!!」
小気味良い音が響くと共に両腕を解放された男子生徒はお尻を片手で押さえて校舎内に逃げていく。
よく見ると他にもお尻を押さえてコチラを見ている生徒達がいる。
アレは既にチェックを受けて尻を叩かれた後みたいだ。
「次ぃっ!!」
そして次の生徒が引っ張られる。
「貴様ぁっ!!制服のボタンが1つ付け忘れているではないかぁっ!!」
「えっ!?…あっ!!」
「貴様にもケツバットの刑だあっ!!」
「ひいっ!!どうかお許しを!!」
「なら貴様にも聞こう。あの御方の名を言ってみろおっ!!」
「そ、それは…」
「まさか貴様も『海小の卒業生ではない』とか言うつもりではないだろうなあっ!?」
「い、いえ!!海小の卒業生です!!」
「なら知っている筈だあっ!!さあ言ってみろおっ!!」
「し、知りません!!」
「何だとおっ!?なら貴様もケツバットだあっ!!」
「そんな…どうかお許しを」
男子生徒は必死に許しを請う。
だが生徒の哀願も聞き入れて貰えず、ケツバットの刑は執行された。
そんなこんなで列は消化されていき、ついに俺の前に並ぶ生徒の番がやって来た。
「次ぃっ!!」
「うわあああっ!!!」
…何つーか風紀委員がやっていい事じゃないよなコレ?
ここまでの間、俺達の同学年は誰1人として刑を受けず通過できた奴がいない。何かしらの理由をつけて粘土像の人物名を訪ね、答えられない生徒の尻を叩いていく。
これ以上の暴挙は放っておけなくなった俺はそのままケツバットの刑を執行しようとしている風紀委員を背後から足払いをかけて転ばした。
「「「何だお前はあっ!!?」」」
当然風紀委員は俺に突っ掛かってくる訳だが
「アンタ等、いくら何でもやり過ぎだ。流石にコレは風紀委員のやる事じゃないだろ?」
「何だとおっ!?口答えするのか貴様ぁっ!!」
「ていうか自分達の見た目は良いのかよ?特にその髪形」
風紀委員の見た目は全員、服装はちゃんと制服なのだが髪形は
コイツ等はアレか?『北斗の拳』のやられ役の部下達か?
「テメエ!風紀委員に逆らうだけでなくシンボルであるモヒカンを馬鹿にするとは上等だ!!なら先にお前に聞いてやる!あの御方の名を言ってみろぉっ!!」
粘土の像を指差す風紀委員。だが…
「知らねーよ」
俺は即答する。
「ならお前にケツバットを貸してやる!!」
そう言って風紀委員の1人が俺にケツバットを強引に渡してきた。
「ほら、お前ならコイツのケツを平気で叩けるんだろ?そういうツラしてやがるぜ」
え?俺の顔ってそんな風に見えんの?スゲーショックなんですけど?
…まあいい。
「これで叩くんですか?」
「そうだ!やってみろ!」
「じゃ、遠慮無く」
俺はそのままケツバットを振り上げ
パコーン!!
「あ……あら?……俺じゃないって……」
「こうですか?」
パコン!パコン!パコン!パコン!パコン!
「ぱっびっぶっぺっぽぉっ!」
そのまま倒れ、目を回して気絶する風紀委員。
別に強く叩いた訳じゃ無いのに気絶するなんてどんだけ打たれ弱いんだよ。
「あ、ありがとう…」
「ん?ああ、良いよ良いよ。それよりさっさと行きなって」
「お、おう…」
叩かれそうになっていた同学年は俺にお礼を言うと、そのまま校舎に向かって走り去って行った。
俺はその後ろ姿を見送った後、風紀委員達の方へ歩いていく。
「アンタ等、コイツの事を知りたいんだったな?」
ドガアッ!!
そう言って俺はその粘土像を蹴り飛ばす。
グシャッ!!
吹き飛んだ粘土像はそのまま地面にぶつかり、原型の一部が潰れてしまう。
「ならば教えてやる。コイツは
本名は未だに不明なんだよなあの人。
「「「何ぃっ!?」」」
いきなり狼狽え始める風紀委員達。そんなに驚く事か?
「ほ、本物の教え子か!?」
「嘘言ったってしょうがないでしょうが…で、こんなバカげた風紀の取り締まりを行う様に指示したのはどちらさんで?」
そこまで口にすると1人の男が近付いてくる。
「貴様があの御方の教え子だと?名は何と言う?」
ガタイが良く背も高い大男で太い腕には『風紀委員長』の文字が書かれた腕章が…そしてやはりモヒカン。
アンタ、本当に中学生か?どう見ても大人だろ?
「海小の卒業生にして今年の新入生、長谷川勇紀ですけど?」
「っ!!?そうか、貴様があの…」
『あの…』って何?俺の事何か知ってるのか?俺は目の前のモヒカン風紀委員長さんとは初対面なんだけど…。
「ふっ…俺も運の良い男だ。この学園に入学していると聞いた貴様とこうも早く出会えるとは」
風紀委員長さんは不敵な笑みを浮かべる。
「俺はあの御方の弟子でロリコンだ。そしてあの御方は常々言っておられた。『小僧と坊主がいなければ今頃はロリハーレムを築けていただろう』と。貴様がその小僧と呼ばれていた人物だと言う事は調べがついている」
「つまりあの御方が成し得る事の出来なかった貴様を倒す事が出来れば、俺はあの御方と肩を並べる事が出来る!!いや!!ロリハーレムを築く事が出来る!!」
片並べたいのか?あの
「見ろ!!俺様の体術を!!あの御方から盗んだ体術で貴様を葬ってくれる!!」
ババッと構えを取る風紀委員長。
「「「カッコイイです風紀委員長!!そんなモヤシ野郎なんかヤッちまって下さい!!」」」
モヤシ……。
「ほああああっっっ!!!!!」
ブンッ!!
風紀委員長さんは正面からパンチを繰り出してくる。
パシッ
「何いっ!!?」
しかし俺は軽々と受け止め、そのまま強く握る。
「ぐっ……貴様みたいなモヤシに何故これ程の腕力が?」
鍛えてるからじゃね?ちなみに魔力で身体強化なんてしてないよ。
「ていうか風紀委員長本人が暴力振っていいんですか?」
そう言って握っていた風紀委員長の手を解放してやる。
「ふっ、海中の校則で風紀委員の取り締まりは風紀委員長のやり方に一任されているのだよ」
だからと言ってケツバットや暴力はいかんと思うのだが…。
「それにこの学園の『絶対校則』がある限り、大抵の事は許される!!」
絶対校則…ああ、あったねそんな校則。
入学式の日にこの学校の校長が言っていた絶対校則の内容。
『この学園は日本の治外法権であり、弱肉強食の世界である』
ぶっちゃけ、強い者が優遇される様なメチャクチャな校則。勝利こそが正義であり、何をしてもいいという…。
この中では教師が『体罰』と言っても間違いないくらいの厳しい指導をした事で教育委員会なんかに訴えようが裁判起こそうが一切裁く事が出来ないとか。
治外法権のせいで日本の法律では裁けないらしいのですよ。
こんな事学校のホームページには載ってなかったし。
でもそんなメチャクチャな学校であるにも関わらず、入学する生徒が何も言わないのは実際そこまで大きな問題は起きないのだとか。
…目の前で暴力振るってくる風紀委員長やさっきの風紀委員の取り締まりなんかを見た後では信じられないのだがね。
「…でも良く考えたら、その絶対校則がある限り俺が手を出してもいいんですよね?」
「勿論だ。もっともモヤシ如きでは俺に勝てるとは思えん。貴様があの御方に勝てたのも偶然が重なって運が良かったからだろう」
いや、見ても無いのに『だろう』って断言されてもな。
まあ、いいや。こんな茶番に付き合うつもりは無いし遅刻なんてしたくも無いからな。
俺は風紀委員長のパンチをしゃがんで躱し、そのままアッパーを繰り出す。けどあごには当てず掠らせる程度に留める。
「ふっ、狙いが甘いぞ。その程度の攻撃で……っ!!?」
突然フラフラしたかと思うとペタンと音を立て、尻餅をつく風紀委員長。
「ば、馬鹿な!?一体何が!?」
本人も理解出来ていないみたいだな。
ただ単に俺が少しばかり力を込めて(身体強化じゃないよ)放ったアッパーをかすった際の衝撃が脳に伝わって揺さぶられたせいで上手く立てず、動けなくなくなっただけだが。
ま、本人に教える義理は無いし。後は…
「はいコレ」
俺は落ちていたケツバットを拾い上げ、ギャラリーの1人に手渡す。さっき自分の尻を押さえていた奴だからここで制裁を受けた奴だろう。
「コレが…何?」
「うむ。今、風紀委員長は動けない。そして学校の絶対法則がある限り大抵の事は許される。ならケツバットを持つ君なら何をする?」
「っ!!」
俺の言いたい事を瞬時に理解したんだろう。ケツバットと風紀委員長を交互に見ている。そして…
「……………………」(ニヤリ)
イイ笑顔を浮かべ、ゆっくりと風紀委員長に近付く。その後ろには被害に遭ったのであろう他の生徒達も。
「ま…待て!!止めろ!!止めるんだ!!」
必死に生徒達を止めようと声を上げる風紀委員長。他の風紀委員達は風紀委員長が尻餅をついた時点で逃げ出していた。
人望無いね風紀委員長。
「スマン。ちょい手間取った」
俺はシュテル達の所へ小走りで戻る。
「いえ、それ程待ってませんから」
「時間的にもまだ余裕はあるから大丈夫だよ」
「そうか?けどもう用は済んだからさっさと行くか」
「「「「「「「「「「はい(うん)(うむ)(そうだね)(了解や)」」」」」」」」」」
俺達はそのまま検問が行われていた場所を通り過ぎ、校舎の方へ行く。
その後『パコーーン!!』と、とても良い音と悲鳴が聞こえてきた。
「…で、ディアーチェ」
「何だ?」
「お前、
最初は風紀委員に入る予定だったよね?
「馬鹿言うな!!あんな塵芥共の巣窟になど行くか!!それに髪形をモヒカンにしたくなんてないわ!!」
デスヨネー。
ディアーチェがモヒカンになんてしたら俺、絶対泣くと思う………。
「《で、今から始まる訳だ………体育が》」
「《今日からは体育担当の先生が授業を進めてくれるんだったっけ?》」
「《ああ…》」
「《先週の体育の際は担当の先生が休みだったもんね》」
「《どんな先生かな?》」
「《怖い先生じゃないといいよね》」
俺達は今、クラス毎に並んで整列し、体育担当の先生が来るのを待っている。
で、直接喋ると馬鹿達に絡まれるので念話を使ってレヴィ、フェイトと会話をしていた。
しかし今日はその馬鹿達の中に暁の姿が無い。
どうやら学校を休んでるらしい。という事は管理局の仕事で引っ張り出されたか。
アイツ等の内、1人でもいないだけで溜まるストレスは大分抑えられるからな。
「《…ていうか不快な視線感じるんだけど…》」
「《私もだよレヴィ。まあ出所は何処か分かってるんだけど…》」
顔を若干顰めるレヴィとフェイト。すぐ近くにいるテレサも同様で出来るだけ意識しない様に努力はしてるみたいだが。
「「(ヒャハハ、流石俺の嫁達。良い感じに育ってきてるぜ)」」
その顔を顰めさせてる原因の2人は舐め回す様にレヴィ、フェイト、テレサを見ている。そして視線を感じなくなったかと思うと今度はシュテル達を見てる様で…。
「「「「「「「「「「おいお前等!天使の方々を卑しい目で見るんじゃねえ!!」」」」」」」」」」
その馬鹿2人に対して他の男子達が吼える。
「「ああ゛っ!!?それはテメエ等の方だろうがモブ共!!」」
…なんかこのやり取り体育の授業が始まった直後はいつもやってるよな。
ちなみに男子達は卑しい視線等は向けず、逆に崇拝する様な視線を向けているらしい。『卑しい事を想像するのは本人達のいない所で』との事。
結局はどっちもどっちって事じゃねえか。
「ん~~ふっふっふっふっふっ。元気な小僧共じゃわい」
そこへ野太い笑い声が聞こえた。向こうからコッチにやってくる人がいる。
どうやらあの人が体育担当の先生の様なんだが…
「先週は顔を出せなんだので今日が君等とは初対面じゃな」
長く伸びている自前の髭を触りながら先生は喋る。
「自己紹介をしておこう。ワシが体育の担当を務めておるウィグルじゃ」
鉄兜を被り、長い髭を生やしている巨体の先生はどこからどう見てもカサンドラの獄長さんだった。
「授業を始める前に1つ言っておこう。ワシの目が届く内はこの授業をサボれんと思っておく事じゃ。ワシはこの学校に赴任してから今まで一度も生徒をサボらせた事など無いからのう。『サボれずの体育伝説』は伊達ではないという事じゃ」
別に聞いてもいないのに語り出すウィグル先生。『不落のカサンドラ伝説』が『サボれずの体育伝説』って…。
「おおおーーー!!!何か凄そうな伝説だーー!!!!」
レヴィは目を輝かせ、感心している。
「んっふっふっふ。まあ授業をサボろうなんて考える生徒自体普通はおらんと思うがのう。一応忠告はしておいたぞ」
まあ普通はサボらないですよね。いくら義務教育だからって言っても通知表の評価が悪いと高校の進学にも関わるだろうし。
「では授業を始める前にトラックを軽くランニング、腕立て、腹筋をして身体を温めてもらおうかの」
そう言って髭を強く引き始める。
まさか!?原作の
ブチッ…ブチッ…
音を立て、髭が何本か抜ける。
「1…2…3…4………5本。なら今から生徒諸君にはトラックを2周半と腕立て、腹筋を25回ずつやって貰おうかの」
髭が抜けた本数で基礎トレを行うランニングの周回数や腕立て、腹筋の回数が変わるのか。
5本であの内容だと1本抜けるとトラック半周、腕立て、腹筋が5回ずつって事か。
「ほれ、早く始めんか。授業が始められんぞ?」
全員ポカンとして先生の行動を見てたから誰一人として始めようとしなかった。そして先生の言葉でハッとする生徒一同。
「ユウ、どうする?」
「どうするも何もやらないと授業が始まらないんならやるしかないだろ」
「だよね。…よーし!気合入れていくぞー!!」
元気良く声を上げてトラックを走り出すレヴィ。その後を追い掛ける様に俺が続きフェイトやシュテル達、そして他の生徒も走り始める。
ただ、西条と吉満だけが何もせずその場に残っている。
「お前達は何故行かんのじゃ?」
「ハッ!何でオリ主の俺様がそんなメンドくさい事しなけりゃならねえんだよ」
「あんなのは体力の無えモブ共だけでいいだろうが」
「……ほう、つまりお前達はワシの指示した基礎トレを
あ、先生の闘気が膨れ上がった。
「んっふっふっふ。よくぞワシの授業にサボる意思を示しおったな。その無謀なる勇気だけは誉めてやろう」
「あ゛っ?何言ってんだヒゲ野郎」
「それより俺のなのは達を無理矢理走らせてんじゃねえぞ。一教師の分際で」
吉満、一教師だろうが先生は先生だ。ちゃんと言う事聞けよ。
「「ついでに言っておいてやるヒゲ野郎!!オリ主である俺様に『無謀』なんて言葉は辞書に無えんだよ!!」」
「それはお前達がまだ恐怖というものを味わった事が無いからだ。だがここでお前達は生まれて初めて恐怖というモノを知る事になる」
「「言いたい事はそれだけか!ヒゲ野郎!!」」
「んふふ、お前達のその自信を恐怖で打ち砕いてくれるわ!!」
ウィグル先生と西条、吉満の会話は続く。俺達は走りながらその会話を聞いているがアイツ等何でタメ口なんだ?
……考えるまでも無いか。何たって『自称・オリ主』だし。
「今までにお前達の様に無謀にもワシの授業をサボろうとワシに挑戦してきた生徒達の末路を見せてやろう」
え!?いたの!!?サボろうと挑戦した生徒が!!?義務教育で留年の心配無いとはいえ、普通はマジ有り得ないって!!!
「見ろおっ!!」
その先生の大声と共にある方向を指差すのでいつのまにかランニングをしていた筈の俺達も足を止めて先生の指差した方向に視線を向ける。
「あの墓は今からサボりを挑戦しようとしているお前達の様に無謀にも『サボれずの体育伝説』に挑戦した生徒達が眠っている」
グラウンドの一角には無数の墓石が建てられている。
「「「「「「「「「「(多っ!!)」」」」」」」」」」
多分皆も俺同様、墓石の多さに驚いてるんだろうなぁ。
って、違う違う違う!!!学校に墓石って!!!
「思えば…哀れな生徒達じゃった。この墓標が増える事がワシの伝説を生み、更に記録を更新してゆくのだ」
いや先生!!そんな昔を思い出し、懐かしむ様な表情を浮かべて言われても…。
「すぐにお前達の名を刻んだ墓もあそこに加わるだろう!!安心して討ち取られい!!」
そう言い切ったウィグル先生の両手には鞭が握られている。
「「「「「「「「「「(どこからその鞭出したんですか先生!!?)」」」」」」」」」」
「あ、ちなみに墓の下には本当に生徒の死体があるわけではないからの。安心せい」
「「「「「「「「「「(むしろあったら怖いわ!!)」」」」」」」」」」
流石に『絶対校則』があろうと殺人はヤバいっしょ。
「けっ、武器を持ったぐらいでオリ主の俺様に勝てると思うなよジジイ!!」
最初に飛び出したのは吉満。
「この程度、俺の嫁であるシグナムの連結刃に比べりゃばあっ!!!?」
喋ってる最中に鞭の直撃を受け、地に落ちる吉満。そのままピクリとも動かない。
どうやら一発でダウンした様だ。
「ヒャハハ、ザマアねえな吉満。流石は踏み台だぜ。おいヒゲ野郎!!次は最強のオリ主である俺が相手だ!!」
「んっふっふっふ。次は貴様だな。ならワシも特別に奥義を見せてやろう」
先生は鞭を放り投げる。
「食らえオラアアアアァァァァッッッッ!!!!!」
馬鹿正直に正面から突っ込んでいくが
「食らえい!!蒙古覇極道」
ドゴオンッ!!
「あらばあっ!!?」
先生の巨体から繰り出されたショルダータックルをマトモに受け、グラウンドの端まで吹っ飛ぶ西条。
「んふふふふふ。ワシの伝説は不敗である!!!」
高らかに笑い、力強く宣言するウィグル先生。
後日、無数の墓石の中に西条、吉満の名が刻まれた墓石が建てられるのだった。
なお、一部の生徒達は『本当に埋められたら良かったのに』と思ったとか思わなかったとか………。
~~あとがき~~
西条、吉満、暁は『絶対校則』を利用してなのは達を強引に自分のモノにしようとはしません。何故なら『もう自分にベタ惚れだからする必要が無い』と思っているからです。
あと北斗の拳はネタにし易いので今後もチョクチョク出すかも、です。
それから体育の『2ヶ月半は全クラス合同』というのは自分が中学1年生の時、実際に行われていた授業のやり方です。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。