「それじゃ。」
彼は言った。ちょっと待ってよ。ホントにそれだけ?もっと一緒に居たいとか何かないの?
「…ちょっと…。」
それだけはないんじゃない?というその先の言葉が出ない。厚かましいかな?嫌われないかな?それとも彼は本気で私のことを思ってないの?気持ちが伝わらないって、こういうときもどかしくなる。そもそも私は無口な方だ。言葉が出ない。
「どしたの?」
彼は軽い口調で言ってくる。私は思いがけず彼の手を握った。
「……その、」
だからなんでその先が出ないの?私のバカ。ドジ。間抜け。まったく、彼も首をかしげてしまってるじゃない。私はその手を離す。悲しくなる。もうさよならなんて。
「別に何でもない。」
「あっそうだ。」
彼は何かを思い出したように手を打つ。
「んっ、なに?」
「そうだ、ちょっと目ぇつぶって。」
「なんで?」
「何でもいいから。とりあえず、ほら。」
彼は言う。目つぶってるときに帰るつもりなんだ。いつも彼はそうだ。おちゃらけてて、軽率で、何をしてもヘラヘラ笑ってる。全く、あなたは私のことをどう思ってるの?それを聞かせてよ。いつものごまかした返答じゃ、わからないんだから。もう、しらな……
そう思ってると、突然キスをされた。
「へへへっ、それじゃあ、こんどこそ、またねー」
彼はそういうと、大きく手を振りながら人ごみの中に消えていった。……全くもう…。私はもうあきれるしかなかった。メールで徹底的に問い詰めてやるんだから。
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五分小説です。
読みやすいように書いています。
本当に何となく書いています。