No.582482

一刀の晋王転生録 第四章二十九話

k3さん

今回はちょっと視点が変わります。そして瑠理がなにやら……

2013-06-01 22:14:19 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2570   閲覧ユーザー数:2237

 姓:司馬 名:昭  性別:男

 

 字:子上

 

 真名:一刀(カズト)

 

 北郷一刀が転生した者。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:懿  性別:女

 

 字:仲達 

 

 真名:理鎖(リサ)

 

 一刀と瑠理の偉大なる母。第三章で死亡した。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:師  性別:女

 

 字:子元

 

 真名:瑠理(ルリ)

 

 母を目標にする一刀の姉。一刀を異性として愛す。

 

 

 

 

 姓:張  名:春華 性別:男

 

 真名:解刀(カイト)

 

 一刀と瑠理の父にして、一刀の師。第四章前編で死亡した。

 

 

 

 

 姓:王  名:元姫 性別:女

 

 真名:美華(ミカ)

 

 一刀に異常なまでに執着する一刀の妻。

 

 

 

 

 姓:鄧  名:艾  性別:女

 

 字:士載

 

 真名:江里香(エリカ)

 

 後の司馬家軍の宿将。司馬家に対して恩を感じている。

 

 

 

 

 姓:賈  名:充  性別:女

 

 字:公閭

 

 真名:闇那(アンナ)

 

 司馬家の隠密。一刀のために働くことを生きがいとする。

 

 

 

 

 姓:王  名:濬  性別:女

 

 字:士治

 

 真名:澪羅(レイラ)

 後の司馬家の水軍の将。一刀を気に入り、司馬家のために戦う。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:望  性別:女

 

 字:子初

 

 真名:理奈(リナ)

 

 一刀達親戚で、一刀と瑠理とっては義姉という立場。

 

 

 

 

 

 

 姓:杜  名:預   性別:女

 

 字:元凱

 

 真名:綺羅(キラ)

 

 一刀とは同期。親同士の仲は良くないが、当人達の仲は良い。  

  第二十九話

   「一刀と劉協」

 

 

 一方、洛陽に残った一刀達は休憩の合間に息子の献刀の世話をしていた。

 

 一刀が戦に参加しなかったのは自ら辞退したためだった。瑠理と居るとやはり精神が不安定になると言う自覚がある。自覚出来る分、

 

完全に鬱になった訳ではない。

 

「美華、少しは落ち着いたか?」

 

「うん、少しだけ……一君は?」

 

「ああ、俺も少しは、な……」

 

 時折、世話を止めて会話をするが、すぐにそれは止まってしまう。

 

「ちちうえー、ははうえー」

 

 献刀が一刀達を呼びながら近づく。

 

「ん、ああ、ごめんな」

 

 一刀達は献刀の世話を再会する。やはりあまり会話は進まずに。

 この日、一刀達は別々の部屋で寝ることにした。だがそれはこの日に限らなかった。あの日、瑠理と争った時から美華からそうして

 

ほしいと言った。

 

「嫌いになった訳じゃないの。ただ少し一人で考えたい事があるの」

 

 と言って。

 

 一刀としてもそれが良かった。彼も一人でじっくり考えなければならない事があった。無論、姉の事だ。

 

(どうすれば良いだろう? 父上、母上……二人は気付いていたのかな? この事に……だとすれば俺に一体何をさせたかったん

 

だ?)

 

 色々と思考を回らせるが、やはり答えは見つからない。そんな時、扉が開く音が聞こえた。

 

(ん? 美華か?)

 

 そう思いながら扉の方向を振り返ってみると、そこにいたのは劉協だった。

 

「! 劉協様! どうしてここに!」

 

 一刀は姿勢を正しながら、劉協に問う。

 

「そなた……なにやら姉の司馬師と何かあったようじゃな? それで司馬師を避けているな?」

 

「ええ、まあ、そんな感じですね……」

 

 特に隠す必要が無いほど、姉とギクシャクしている事は、すでに周囲に知られている。流石に何かまでは知られていないが。

 

「やはり……そうであったか……実は私の方は兄上に避けられるようになってな……」

 

「え? それはどういう……」

 

 一刀が聞いてみると、あの何太后の死刑から二人の仲が拗れてしまっているらしい。

 

「どうしてです!?」

 

「伯母上に司馬師の暗殺を止めようと諌めた事があってな」

 

「え!?」

 

 一刀は初めて聞く事実に驚く。

 

(それって、姉上も知らないんじゃ……)

 

 実際にそのとおりで、瑠理もこの事は知らない。

 

「司馬家に敵意を持たれてまでの利益は無いし、そもそも司馬家を廃する大儀も無い、司馬家の力無しに漢は持たないと言ったんだが

 

な……結局強引に事を進め、その結果そなた達に死刑にされてしまった」

 

「……」

 

 一刀は特に何を言う訳でも無く、ただ劉協の言葉を聞く。

 

「別にそなた達を責めるつもりは無いぞ? あの時の司馬師の伯母上を死刑にする理由に関しても反対できる意見は私も持ち合わせて

 

は居なかった。という事は、伯母上が間違っていたということだったのだろう……だが兄上はそう納得しなかった……今度は兄上が司

 

馬師を殺そうと躍起になってしまっている。無論止めようとしたが、前に伯母上を止めようとしたのが気に食わなくて私が司馬家と通

 

じているのかと怒鳴ってまったく取りあってくれぬのだ」

 

「そうでしたか……」

 

 一刀は何とも言えない気持ちになった。

 

「それで一体どうするつもりです?」

 

「無論、兄上を止める」

 

「! どうしてまだそんな気持ちになれるのです! 避けられるという事は止まるつもりが無いということでもあるのですよ!」

 

 一刀は思わず叫んでしまう。自分は姉上が止まらず、自分から避けた、一方、劉協は劉辯が止まらず、避けられている。立場は違う

 

が似た境遇の劉協がそれでも止めようと気になるのが分からなかった。

 

「兄上のためじゃ」

 

「え……?」

 

「あのままにすれば兄上は間違い無く破滅する。先ほどと同じような事を言うが、兄上は司馬家が居るからこそかろうじて漢が保たれ

 

ている事に気付いていない。司馬家が討たれればその均衡が崩れる。かといってこのまま敵対すると司馬師に討たれる時が来るかもし

 

れない。このままでは兄上に未来は無い。母上を死に追いやった伯母上はともかく、兄上には生きてもらいたいし、出来れば幸せに

 

なってもらいたいのだ。だから私は兄上を止める」

 

「!」

 

 未来と幸せという言葉。

 

 そして兄に避けられても向き合おうとする姿勢に一刀の心に突き刺さる。

 

(お、俺は……姉上の未来と幸せについて考えていたか? 俺は姉上と向き合っていたか?)

 

 一刀は首を振る。

 

(そうか! 俺がしなければならなかった事とは、姉上を避けてどうすればでは無く、姉上と姉上の想いと向き合って、姉上とちゃん

 

と向き合ってこれからの事を考えなければならなかったんだ! これじゃ答えが出なくて当然だ! 俺は答えを出そうとしていたん

 

じゃ無くて、先延ばしにしようとしてたんだ!)

 

 まだ答えは出ていない。しかしどうするべきかをはっきりした一刀は元の表情に戻っていった。

 

 劉協はそれに気付く。

 

「ん? なにやら先ほどとは雰囲気が違うな」

 

「劉協様のおかげで答えまでの道が見えた気がしました、本当にありがとうございます」

 

「ふふ、そうか……私もそなたと話をして少し気が楽になった……」

 

 お互い僅かに微笑む。

 

 ふと一刀はある疑問を抱き、劉協に聞いてみるとする。

 

「あの、どうして俺と話そうと? 一応ではありますがお互い敵同士ですよ?」

 

「それは兄上と司馬師の関係上でそうなったのであろう。私とそなたの間では個人的なところでは敵対するようなものはあるまい? 

 

それにそなたの人柄については知っているつもりだ」

 

「劉協様……ええ、そうですね……」

 

「それにそなたには助けられた恩があるしな、これからも出来れば兄上のことで相談に乗ってほしい」

 

 この瞬間、一刀と劉協の間に奇妙な友情が芽生えつつあった。

 

(俺は今から姉上の所に行こう。まずは月に留守を預けてもらわないとな)

「悪い、孫権は討てなかったよ、姉御」

 

「申し訳ありません」

 

 澪羅と綺羅は瑠理に頭を下げた。やはり如何に可能ならばという事であったにしても孫権を逃がしたのは痛手である事は変わりない

 

のだ。

 

「問題は無い、劉備軍を滅ぼした後に、孫権を攻めれば良い。その時はまだ万全な状態では無いだろうから滅ぼすのはたやすい……そ

 

れでも思うことがあるのならばこれからの劉備の殲滅で奮戦してくれるば良い」

 

「はっ!」

 

「無論です!」

 

 澪羅と綺羅は早速劉備軍との戦いに備えるために隊を整えに行く。

 

「瑠理」

 

 入れ違いになる形で理奈が瑠理に歩み寄る。

 

「劉備軍はどうします? 恐らく今も孫権が策を成功させていることを期待して、撤退路に居るかと思いますけど?」

 

「簡単、それを利用するだけ……!?」

 

 瑠理は腹部の下部分を手で摩る。

 

「? 瑠理? 大丈夫ですか?」

 

「問題無い」

 

 瑠理はすぐに理奈に向き直り、平然と向き合う。

 

「そう、ならいいのだけれど……」

 

 それから理奈は瑠理とこれからの動きを打ち合わせ、その場を去る。

 

 理奈が離れた後、再び瑠理は腹部の下部分を手で摩った。


 
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