桃香の知り合いの城まで行き玉座に入って俺達は一息ついた。
城の前で桃香が「本当に領主様だったんだー」って小声で言ったのをしっかりと俺は聞いていた。
決して豪華とは言えないがそれでも立派な建物で、少なくとも桃香の村にはこんな建物無い。
城下町も大盛況とまではいっていないが、それでも貧困や犯罪が頻繁にみられる街ではなさそうだった。
笑顔が溢れていた、それなりに慕われているのだろうな。
「まずは自己紹介とでもいくか。私は公孫瓚だ。真名は白蓮、よろしくな」
「真名まで?!よろしいのですか?」
「桃香が許してるんなら私も許すよ」
(器が大きいっていうより人がいいって感じだな・・・)
「それでは私も。名は関羽、字は雲長。真名は愛沙です」
「鈴々は張飛、字は翼徳なのだ。真名は鈴々なのだー!」
「俺の名前は北郷、真名は一刀。桃香の兄だよ」
「ん?桃香に兄なんていたっけ」
「いたよー、話してなかったけど」
「そうか。本当はもう1人紹介したいんだが仕事サボっててな。まあ客将だからあまり強く言えないんだよ。いてくれてる事だけでありがたいからな」
「そんな事言われると出にくくなるではありませんか」
「うおっ!いたのかよ!」
赤い槍を持った女性が白蓮の後ろの柱から現れる。
槍とか鉾とか偃月刀とか長い武器が多いな、この時代は。
大は小を兼ねるって言うからか?
ついでにいうと胸はまあまあだ、桃香には負けるがな!
「気配を消してましたから。公孫瓚殿はまだまだですな、そちらの2人には気づかれてましたが。是非ともお手合わせ願いたいですな」
「そうなのか?」
「はい。殺気が無かったから無視していました」
「鈴々も気付いてたのだー!」
「申し遅れました、私は趙子龍。真名は星です」
「真名まで?!」
「何を驚かれているのですか?」
「いやっ、私は預けられてないから・・・」
「おやっ?そうでしたか、なら今預けましょう」
「なんだか軽いな。まあいい、私の真名も受けとってくれ」
「御意」
「さてと、星が認めるくらいなんだから2人は武官として扱わせてもらうぞ」
「わかりました」
「俺は白蓮の元について勉強させてもらってもいいか?」
「私も頭が言い訳じゃないぞ?」
「知識はあるんだろ?それを聞くだけきいてあとは俺の問題だからいいよ」
「そうか、一刀がいいならいいさ」
この城にくる道中で聞いたんだが白蓮の軍にも軍師がいないらしい。
本当は軍師に教えてもらいたかったのだが仕方なく私塾に通っていた白蓮に教わる事にした。
馬鹿な桃香と同級生だからあまり期待していないが領主で軍師なしでここまで来てるのだから悪くはないはず。
「私はどうしてたらいいの?」
「桃香は街をぶらぶらして官職の人には言えないような事を聞いてきたり顔覚えてもらうなり子供と遊んだりしてきてくれ」
「つまりいつも通りにしてこいってことだ」
「分かった」
絶対分かってないな・・・そういう事をして行く事で得られるものがある。
まあ得意の仁徳でなんとかなるだろう。
文字は義母さんに教わったから大体の読み書きはできるようになった。
二年もあったんだからそれ以上の事も少し教わった、あの人って何者なんだろうな。
白蓮のところに来てまだ数日しかたってないとある朝。
俺と桃香は朝食をとっていたところに白蓮が慌ててやって来た。
「桃香、愛沙と鈴々を借りるぞ!賊が出たんだ、しかも数が多い」
「それなら私も!」
「お前は俺と一緒にお留守番だ」
「でも・・・」
「お前が行って何ができる?」
「それは・・・」
「次から連れてってもらえ、今回は数が多いから万が一が起こりやすいからな」
「わるいな、桃香」
「ううん、無理言ってごめんね」
白蓮が去ってから俺達は無言で食事をとり街に出かけた。
桃香は何故行きたがったのか俺には理解できなかった。
「まあ気にするな。今はお前らしく笑って子供達と遊んでこい」
「・・・うん!」
俺は桃香の背中を押してやりそのまま子供と必死に遊ぶ桃香を眺めるだけで一日が終わった。
だって白蓮忙しいしな、そんな時に足を引っ張るなんて真似したく無いしな。
後日、また賊が現れたと言う知らせを受け今度は俺たち2人も行く事になった。
賊の数が増えて来た感じがする。
白蓮曰く賊の出現頻度が倍以上らしい。
一応討伐に向かう前に俺と白蓮で作戦を練ってからきた、つまり俺は軍師的な立ち位置にいた。
だけども白蓮は騎兵を率いて前線にいるため本陣は俺と桃香と近衛兵しかいない。
戦場に着くと俺は遠くから桃香と一緒に見渡す限りの人を見続けていた。
それは生きている人、死んでいる人両方だ。
数多くの命が俺の手によって運命が左右している。
俺が考えた動きで他人の生き死にが決まると思うとかなり思いな。
実際はそんな大きなことはやってないのだが初陣という不安からネガティブな思考に走っていた。
顔に出ないようには出来るが辛い事は余り隠せそうにない。
これが命を預かるって事か。
俺を信じてくれる人もいるんだな、期待に答えたくなるじゃないか。
これを無視するんじゃ無くてしっかりと背負って生きていく、これが俺の最初の課題だな。
横で俺と同じように戦況を見守る桃香は心配で祈るようにも見えた。
「桃香?」
「何?」
「大丈夫か?」
仮にも俺はこいつの兄貴なんだから心配させないようにしないとな。
実はこいつの事で少し気になることがあった。
別に恋愛感情とかじゃないぞ?
前回から引き続きどうしてそんなに戦争を見に行こうとするのか。
「うん・・・平気だよ」
「そうか・・・・・・・無理するなよ」
「うん・・・」
「無理なら言えよ?俺が頑張るからな」
「ありがとうお兄ちゃん。でも大丈夫だよ・・・・・・悪い事していい理由なんて無いもんね」
こいつ・・・・・人の命が見えてないんじゃないか?
善意と悪意が戦ってて悪意が善意に変わる感じなのかもしれないな。
つまり何も消滅したり生まれてたりするのが感じれてないから平気なんだな。
これは・・・・・・知らな過ぎないか?
こいつに無知の知という言葉を教えてやりたい。
まず自分は何も知識がないと思うことから始まるから人は成長するんだって言ってやりたい・・・・。
と思う反面、その事に気付いて欲しいとも思う。
気付いたならあとは飛躍的に伸びるだけだから。
「はぁ・・・・・」
「・・・どうかしたの?気分悪いの?」
「いや、気にするな」
母さんが言ってた通りに俺が優秀な先生役となって教えないといけないのか・・・・・・・・損な役回りだな。
戦闘は伏兵と罠を用いて敵を動揺させそこに白馬陣で一気に殲滅。
作戦通りに行って損害は少なかった。
ただ少ないだけで傷を負った者やその命を散らしたものいた。
彼等の死を無駄にしないために・・・・・・・頑張ろう!
今の言葉にはいろんな意味を込めた、伝わるといいな。
まあ、言うは易く行なうは難しなんだけどな。
「ご主人様って前々から思ってましたけど見かけと違って意外に賢いですよね?軍師なのですか?」
「突然現れてと馬鹿にされたのをあえて無視するけど俺はただの知識人だよ」
「はぁ・・・」
俺達が白蓮のところに来てこれで三度目の賊討伐が行われていた。
なんだか黄色い布を巻いた連中が暴れてるらしい。
たまたまなんじゃないか?ただの当て付けじゃないか?とか思ったが他所で現れた賊も同じような格好をしているらしい。
つまり何かの目印か旗印なんだろう。
はい黄巾党ですねわかりますわかってます。
所詮烏合の衆なので大きな問題なく終わりそうだ、一騎当千の武将が白兵戦でそうやすやすと負けるわけがない。
ふと、ずっと黙ったままだった桃香が話しかけてきた。
「私って・・・本当にお荷物だね・・・・・・」
「突然どうした?」
「愛沙ちゃんも鈴々ちゃんも前で頑張ってるしお兄ちゃんも頑張って頭使ってるし。それなのに私って・・・」
「(悪気はないんだろうがさらっと悪口言われてるな)・・・・・じゃあどうしたらいいか考えてみれば? なんで白蓮があんな仕事を桃香にやらせたか理解出来たら一人前だろ。まあ少し悩んでわからなかったらいつも通り気楽にしてたらいいんじゃないか?お前の思う通りにやってみろ」
「うん・・・」
いろいろ偉そうに言った俺も白蓮からどう言う理由で桃香を街に出してるのか分からなかったから聞いたことは秘密だ。
とはいえこのままでは変わる見込みがないので誰かが言わないといけないの。
「やっぱり俺か・・・」
「そういえばご主人様は管路の噂をお聞きになられましたか?」
「いや、聞いてないけど」
「なんでも流星に乗って天の御使いが舞い降りて大陸を平和に導くとか。すいません噂なので曖昧にしか覚えてなくて」
「最近回ってるのか、その噂」
「そうですね。少し前から管路が噂を流してるっていうことは聞きましたが無いようが伝わってきたのは最近ですね」
「嘘だな」
「はいっ?」
「まずそんな噂話ながして管路に何の得があるっていうんだよ?どうせ流れ星が見えたから実際に自分が落ちてきたふりをしたんじゃないか?自演乙www」
「は、はあ・・・」
「というか根本的なところから間違ってる。流星に跨って急降下してきたら地上まで肉体が持たんない。というか空に人いないし、
天とかねーし」
「はあ・・・・・・・・・・・」
このあと一刀の管路ディスりは城につくまで続いた。
関羽は二度とこの人の前で管路の名前を出さないことを誓ったらしい。
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八話ですね
戦闘は雑魚相手にわざわざ書いてたら終わらないっていう理由により余り書いてませんすいません。
天文学的確率で待ってる人がいる気がするので、その人は気長に続きを待っててね!