No.576278 リリカルなのはSFIAたかBさん 2013-05-14 16:54:01 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:5714 閲覧ユーザー数:4965 |
第十八話 イビル・ジョーとラージャンとメイド。
高志視点。
「う、うぐぇええ…」
マグナモードの反動。アサキムの精神攻撃。そして、胸の中に入ってきた謎の高熱。
その三つが合わさって俺はホテル・アグスタの近くを流れている川で全裸になって服を洗いながら胃の中に残っていた僅かな残留物を出し切った。
「鎧の駄目な所ってこういう所だよな…」
ガンレオンの装甲を解くのが遅くて鎧の中で思わず嘔吐してしまった。ズボンの方はともかく上着の方は流石にそのままという訳にもいかない。
匂いも酷いので体も洗うついでに服も全部洗うことにした。ズボンの方にも少しついていたし…。
と、ズボンの方も洗い終えたので後は乾燥機内蔵のガンレオンに放り込めばいい。
プレシアが魔改造してくれたおかげでもう一つの家みたいになったガンレオンはこういう時にも役に立つ。
ゴウンゴウン。と、服を入れたドラム式乾燥機の様に振動している。
無論、ガンレオンの中はちゃんと川の水で綺麗にしたよ。
「そこにいるのは誰ですか!」
と、川の中で水浴びをしていたら森の中から女性の声がすると同時に人影が飛び出してきた。
字体だけ見ると思わずモン○ターボールを即投げたくなる。
リザー○ン好きやもん。初期のポケ○ンはやはり○トカゲ一択です。
冗談はここまでにして。
青の強い紫色の長い髪をポニーテールで一括りにして女性が現れた。
スバルやティアナ達よりは年上。もしかしたらなのは達と同年代かもしれない女の人が出てきた。
「ここは今、禁制区域です!どうしてこんなとこ、ろで…」
殺気は感じるけど敵意を感じたので思わず待機状態のブラスタを右手で握りしめ女性と対峙していた。が、次の瞬間。その敵意が霧散する。
「い、い、いいい」
「い?」
「いびるぅう・じょおおおおおおおおおおお!!」
「え!?どこ!?」
フリードのようなドラゴンもいるんだ。
モンスターハンターに出てきた。ティラノサウルスにも似たモンスター、イビル・ジョーだっていてもおかしくない。俺は思わず辺りを見渡すがイビル・ジョーらしき影も気配も感じない。
もし、ここにはやて。もしくはアリシアがいればこう言っていただろう。
『高志ぃい、前前!』と、
女性が一気に距離を詰めて高志との距離を詰める。そして、
彼女の指す、イビル・ジョーへ。正確にはその宿主に攻撃を行う。
「ちょっ?!あ…」
そこで高志は気が付いた。
自分が今、全裸であるという事に。そして、彼女が自分から視線を逸らさない。つまり、自分しか見ていない。正確には下半身。そして、イビル・ジョーと言っている。
「この変態露出狂ぅうううう!!」
体全体を高速回転させながら拳を振るう。その拳はまるで巨大な猿型モンスター、ラージャンにも見えた。
アリシア視点。
「(魔法で)ぶっとばされてぇ~。(剣で)斬らぁれてぇ~。(拳で)殴られてぇ~。で~もぉ~いい加減、報われても~、いいんじゃないの~?」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「なにがあったの?」
「・・・聞くな」
真っ白なガンレオンの中から悲しい小生物の歌が聞こえた。
あの後、お兄ちゃんは応援部隊としてよばれた私達テスタロッサ母娘がホテル・アグスタの周辺を警戒していた。
私達姉妹は森の周辺を。
お母さんが川の周辺に行ってみると、上から全裸のお兄ちゃんがどんぶらこどんぶらこ。と、流れてきた。
…見たかった。その愉快な所を。
「ギン姉。何をしたの?」
「ちょっと、その…狩猟を。…撃退したけどね」
ホテル・アグスタの事件から一週間後。
はやてが管理局で研修を受けていた頃にお世話になった部隊長ゲンヤさんの部隊にいたギンガさんが機動六課で働くことになったので挨拶に行ったら、訓練から終わったフォワード陣や怪我から復帰した隊長陣。そして、お兄ちゃんが帰ってきた。
そして、ギンガさんと対面した瞬間にお兄ちゃんが壊れた。
ただ、暴れるとかそういうのじゃない。いきなり真っ白になった。直立不動で。
そして、この替え歌である。
「俺のベルが鳴るぅう~」
「そこは殴ってませんから!」
二人の言葉を聞いて何故か男性陣は内股になり、ザフィーラ(狼形態)は伏せをしてギンガを警戒する。
「だ、だって仕方ないじゃないですか!気が付いたらいきなり目の前にイ○ル・ジョーがいたんですよ!やっとティガ○ックスに馴れたと思ったのにあんなのが出てきたら…」
轟竜がどうしたんだろう?
と、六課の玄関付近で騒いでいると食堂からティーダさんが現れた。
「一体どうしたんだい?高志さん?!どうしたんですか!真っ白になって!」
「ティガッ。じゃなかった、ティーダさん!」
「ティーダさん!」
ガシガシッ!
と、白一色から脱したお兄ちゃんとギンガがティーダさんに抱きつく。
そして、二人はお互いにしていることに気が付いたのか両者ともに牽制し合う。
「ティーガじゃなかった、ティーダさんになに抱きついているんですか!」
「そっちこそ!俺の唯一の癒しのティーダさんに何しやがる!俺だけじゃなくティーダさんの部位破壊もしたいのか!」
「だからしてないじゃないですか!」
「いいや、したね!俺の心はお前のおかげで三日は誰とも口がきけなかったんだぞ!唯一、許せたのはティーダさんとザフィーラだけだ!」
そう、ホテル・アグスタでの一件でお兄ちゃんは誰とも口をきくことは無かった。
女性陣の方も声はかけたが拒否を見せた。
また、見られたことがよほど傷ついたのかお兄ちゃんは一時女性不審になっていた。
フォワード陣唯一の男性エリオも声をかけたが、付き合いが浅いエリオとはそこまで仲がいいわけではないので反応がなかった。
という訳で、ザフィーラ(人型)と一緒にティーダさんの部屋でやけ酒をしたお兄ちゃんは二日酔いをした後に何とか六課の勤務に戻れた。
「…何があったんですか?」
ザフィーラの方は「とりあえず呑め。そして忘れろ」と、酒瓶を何本か持って高志が引きこもっている部屋に赴き、ティーダはつまみを作って持ってきた。
この事があり、高志はこの二人に対して多大な信頼を置いている。
「なんや、騒がしいな」
「…何があったんだ?」
「ティーダさんの…、取り合いですか?」
指令室で書類をまとめていたはやてとその手伝いをしていたリインフォース。そしてリインの三人がやって来た。
「話をまとめると高志君はギンガに辱めを受けたということか…」
「違います!」
「ギンガさんが高志さんに辱め受けたです?」
「そうです!」「ちげえよ!」
「辱めあったという事か」
「「違う!」」
…どういう特殊プレイ?
「ま、まあまあ。今日は二人の好きな物を作ってあげますから、今日の所はこのへんで…」
「く、ティーダさんに免じてここは退いてやる」
「こっちの台詞です」
後になって知るけど、ギンガとティーダは妹同士の縁で知り合い、恋人同士らしい。
喧嘩別れになる形で今日はお開きになった。が、お兄ちゃんとギンガは今日のティーダさん特製の夕飯で仲直りになった。
「そうだ、タカシ。これを飲んでおけ」
昼食後、リインフォースが何やら紙包みに入れられた薬をお兄ちゃんに渡した。
食後に飲む薬って…。体のどこかを悪くしているのかな?
「精神安定剤だ」
「…いつもすまんね」
いつも飲んでいるのか。
まあ、六課に来てから殆ど心穏やかに過ごせた日々の方が少ない。
…もうちょっと優しくしてあげようかな。
…無理。だってリアクションが面白いんだもの。
「それに。迷惑はこれからもかけるのだから…」
「それを聞くと気が滅入るなぁ」
どんどんテンションが下がっていくお兄ちゃんに苦笑するリインフォースだった。
だけど、この時気付いていればよかった、
リインフォースが渡した薬が安定剤の真逆の効果を持つ薬だったという事に…。
リインフォース視点。
昼の訓練を途中で切り上げたタカシは自室にこもってウンウン唸っていた。
薬が効いているのか部屋から出ようとはしなかった。
「…大丈夫か?」
「…大丈夫だ、問題無い」
…やばそうだ。
「一番いい装備を頼む」
「大丈夫だ。それはつけてきた」
「つけてきた?」
疑問の言葉を投げつけてきた彼の言葉を無視して私は部隊長秘書としての権限で強制開錠し、部屋に入っていく。
「ちょっ!リインフォース?!」
タカシは慌てて部屋に置かれていたベッドに潜りこんだ。
今の状態を見られたくないんだろう。特に女性には…。
「い、いま非常にやばい状態だから帰ってください!」
「
何故それを!と、ベッドの布団から顔を出すと驚きの表情を見せたが、私の姿を見てさらに驚きの色を強める。
「な、なんでメイド服?!」
「お、男はこういう服が好きなんだろう?」
そう、今は白と黒のフリルが多くふわふわした地球の給仕服をつけている。
誰にも気付かれないように人目を避けてきたのだ。昼間の宿舎は人気が少ないとはいっても夜勤明けの者や非番の者に姿を見られた時は恥ずかしかった。
だが、これから行う事を考えればそれも和らぐ。
「今日はお前を、な、慰めに来たんだ」
「慰める?てぇっ!?」
「…これ以上言わせるな」
うつぶせに丸まっている彼から布団を取り払って、あお向けにして押し倒す。
布団をどけた瞬間に何やらむわっとした匂いがした。
「…むっ」
「り、リリリリ、リインフォース!?」
顔面を真っ赤にして抵抗しようとするが私はそれを口で口を塞ぐ。
「やっぱり、こういうのが好きなんだな」
「な、ななななななな!??!!」
「メイドはいやか?」
「大好きです(キリッ)」
そうか。そうだな。なんせ…。
「お、大きくなっているからな」
「言わないで!恥ずかしい!」
先程から、その、お尻にあたっているのだ。
「私も恥ずかしいんだ」
「な、なんでこんな真似を!?」
顔を真っ赤に染め、体をプルプルと震えさせたタカシを組み敷いた状態で私の奇行を訪ねてくる。
「…お前の。…力になりたいんだ」
「…俺の?」
私は覆いかぶさるように彼に抱きつきながら喋る。
『悲しみの乙女』のスフィアの解放。
タカシがこれを封印しているから私に『スティグマ』を刻まれることはない。そして、主達にも刻むこともない。
だけど、それは私がこれ以上強くなれないという事だ。
ただでさえ弱っているこの体。だが、私が『悲しみの乙女』を受け入れれば強くなれる。だから、私は先日主はやてにヴォルケンリッターの脱退を願い出た。
「はやてから離れる?」
「そうすればヴォルケンリッターの皆に『スティグマ』を、そして『放浪者』にすることもない」
「でもお前は!」
「私は『悲しみの乙女』を持っているんだぞ?そして、アサキムがいる限り私は狙われ続けるだろう。それに…」
私は元とはいえ、闇の書の管理人格を司っていた。
そんな業を持ったモノを管理局の元から放出するのは許される事ではない。
だが、ゼクシスに預けるならば話は別だ。半分管理局。半分民間企業のような組織ならば預けても文句は言えないだろう。
なにせ、ゼクシスにはプレシアという技術協力者にアリサやすずかといった対AMFのチームだ。今、この組織の反感を買えば管理局もただでは済まない。
それに私が狙われればお前が『傷つく』。私を。皆を守る為に。
それが分かっているからアサキムは私を狙い、タカシは矢面に立つ。
「もう。嫌なんだ。戦う力を持っているのに戦えないというのが…」
「リインフォース。気にしないでもいい。俺は、俺がしたいようにしているからで、お前が気に病むことなんて…」
「なら…。私もしたいようにする。私はお前の傍でお前を守りたいんだ。それに、もう、私にはもう『スティグマ』は刻まれているんだろう?」
「…う」
先程の口づけで何かしらの反応があった。
それはスフィアだけじゃなく、私が女として感じ取ったものだが…。
「…違うな。私はお前が好きだ。だからここにいて、こうしている」
「リイン、むぅっ」
ここから先の事に言葉は不要だ。
だから私は体を合わせた。彼も男だ。そこからは何か吹っ切れたように私を抱きしめた。
夕飯前に互いの行為の後片付けをしていたら、不意にタカシが声をかけてきた。
「リインフォース。…その、ありがとうな」
「…いいんだ。これからよろしく頼む。私が欲しくなったらいつでも言ってくれ」
私は封印を解かれた『悲しみの乙女』のスフィア。そして、彼と同じ『放浪者』になったことをスフィア越しに、体の内側から感じる。
「ぶはっ!」
「なんだ?いやなのか?」
「い、嫌じゃねえけどさ。…その、あの」
慌てる彼。表情がくるくると変わるその動向に私はつい笑ってしまった。
私は知っている。彼が本当に好きなのはきっと…。
だけど、それを責めるつもりはない。私が彼にしたかった。それだけのことなんだから。
「だが、次は優しくしてくれよ。…痛かったんだからな?」
「んがぁっ?!」
後片付けも済み、私は未だに慌てふためいている彼の部屋を後にする。
今日から私は管理局の八神はやての騎士。ヴォルケンリッターではなく、ゼクシスの一員として『傷だらけの獅子』の傍で戦う。
『祝福の風』リインフォース。
だから、力を貸してくれ。『悲しみの乙女』。私はお前の因果を越えてみせる。
部屋に戻った私はその力の象徴たるガナリーカーバーを具現化してみる。
それは棺桶のような無機質な砲身ではなく、サメを思わせるような円筒形の砲身『グローリーモード』だった。
それはまるで、私のこれからの運命を切り開くために生まれ変わった力の様にも私は感じ取った。
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