No.575131 リリカルなのはSFIAたかBさん 2013-05-11 09:32:20 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:4754 閲覧ユーザー数:4324 |
第十七話 わかりました!
アリサ視点。
ホテル・アグスタの玄関前では私は信じられない光景を見た。
玄関前には当然駐車場がある。
その駐車場に止めてあった車は見るも無残に壊されていた。
「スバルさん!こっちの
「よしっ!この調子ならこっちの
「任せてください!フリード!」
「…やっぱりおかしいと思うのは私だけなのかな?」
目の前の
なにやってんの?!
キャロの使い魔的存在の白いチビドラゴン。フリードがキャロの魔力ブーストで大きくなって火炎の息吹を吐いてガジェットの足止めをしているのはわかる。
ティアナのもつ二丁拳銃から魔力弾が放たれながらもガジェットのAMFに阻まれて無効化される。だけど、それの動作でガジェットの移動は止まる。ティアナの攻撃。いや、足止めは有効だ。
だけど、次が問題だ。
あの品行方正なフェイト。その真面目さを引き継いだはずのエリオが駐車場に止まっていたはずの一般人の車を破壊。そして、その瓦礫を投げてガジェットを破壊するスバルがいた。
フォワード陣で唯一、今行っている動作に疑問を持っているのは、あの突撃思考のスバルだけだった。
「あ、アリサさん!援護に来てくれたんですか!」
「え、ええっ、そうよ。じゃっ、ない!なんで車を壊してその破片でガジェットを破壊しているの?!三行で答えなさい!」
キャロが私の到着に気が付いて私に声をかけてくるけど、私は目の前の惨状を作り上げた四人を問い詰めた。
「AMFでこちらの攻撃が効かない。鉄くずのくせに生意気だ。
なら、物理攻撃だ。
ちょうどいい
ティアナの説明でよくわかった。
とりあえず魔法攻撃はしたけどあまり効果がみえないから瓦礫攻撃した。と。
「言いたいことは分かったわ。だけど、これが世間一般にばれたら管理局のイメージが落ちるわよ…」
「ばれなきゃ犯罪じゃないんですよ」
「どこぞの邪神みたいなことを言わないの!」
「それにばれても大丈夫ですよ。『外に出たらガジェットに壊された瓦礫を投げた』といえば車の持ち主も納得します」
壊された車の持ち主はたまったもんじゃないでしょうけどね…。
「それに私達管理局員は『魔法』の為に平和を守る部隊じゃありません。平和の為に『魔法』を使っているのですから」
「・・・やっぱりティアナさん。カッコいい」
「憧れますぅう」
ティアナの発言を聞いたエリオとキャロは羨望の眼差しで見ている。
まあ、私もD・エクストラクターを使っているから何とも言えない。だけど・・・。
「それに…。いざとなればはやてさんが責任を取ってくれるから大丈夫。すでに言質は取っています。だから…」
今頃はやては後悔に打ちひしがれているでしょうね・・・。
「大丈夫だ。問題無い」
(や)神は言っている。
嘘だと言ってよイー○ック!
と、
そう悶えているはやての姿が見えた気がした。
「ま、まあ。これから私もこっちでガジェットの掃討にあたるから。瓦礫攻撃はやめてね。フレイム・アイズも魔力や熱を持った物なら感知できるけど鉄くずには反応は示さないから…」
「わかりました。それじゃあ、…エリオ!あんたはホテルの中に行って、他の部隊の人と一緒に一般人の護衛に行きなさい!」
機動力もあり、近接戦闘をこなすエリオ。同じ近接型でも攻撃力が大きすぎるからホテルを壊すかもしれない。
この時のティアナの指示は正しい。
「わかりました!」
エリオは力強く答える。機動六課でその姿を見ているフェイトは嬉しがっているだろう。
「もし、無理にホテルから出ようとしている一般人がいたら、…見殺せ!」
ちょ?!ティアナ!?
確かに今の状況で一般人がホテルの外に出たら危ない。それを助けようとして局員が怪我を負う。その怪我が原因で戦闘不能になり、結果としてホテルの中にいる一般人の警備に支障が出る。
だから、ティアナの指示は人道的には間違ってはいるが、結果論的には正しい。だけど、もう少し言い方が…。
「わかりました!」
エリオ?!元気よく返事をしないで!
フェイトは今頃ショックを受けているかもしれない。
ドオンッ!
エリオがホテルの中に突入していくと同時にホテル・アグスタの一角から桜色の光線が壁ごと撃ち抜かれた。
この
やることなすこと大胆すぎる。
でも、その行動力のおかげでティアナ達がガジェットを短時間で叩き潰すことにより魔導師のなのはも動けるようになったという訳か…。
「ごめんね皆!私も今から戦線に出るから!」
「それならなのは!今すぐ高志のところに行って!あいつ一人でアサキムと戦っている!」
「っ!わかった!皆!ここのガジェットを片付けたら一般人の避難を優先させて!絶対に私や高志君の所に来たら駄目だよ!」
「…っ。わかりました」
遠回しに戦力外だという事を言われたティアナは悔しそうに表情を曇らせた。
ティアナも知っているんだろう。アサキムに下手な罠。小細工は効かない。なんせ『知りたがる山羊』にそのような物は効かない。
アサキムに対抗するには圧倒的火力による制圧。それがベストだ。
それはスフィアリアクター。もしくはなのは達のような管理局屈指のエースだ。
ティアナの悔しさが自分のことのように思える。
私だってせっかくフレイム・アイズを強化したのに結局何も出来なかったから。
高志視点。
体中に溢れる力の塊に振り回されながら、だけど、その勢いに逆らわずアサキムに叩き付けていた。
それが正しいと体が。いや、『本能』が告げている。
だけど…。
ガッ、ガガッ、ガアンッ!
改めて思い知らされる。
アサキムの技量に!
「ははははっ!凄い力だね!受け流しても残るこの鈍い衝撃!さらに洗練されたスフィア!君が!君こそが『傷だらけの獅子』にふさわしい!」
俺の持つライアット・ジャレンチもインパクトする際アサキムの持つ赤黒い剣で受け流される。鎧の部分を殴っても体を回転させて衝撃を逃がす。
攻撃はぶつけることが出来ても受け流されるだけ。
このままじゃ…。
ガクンッ。
と、体中から不意に力が無くなる。マグナモードの。いや、俺のスタミナや精神力の限界が来た。
上空で戦っていたエネルギーも底をつき地面に落ちていく。その失速を見たアサキムはそこに兜にはめ込まれていた宝石から魔力砲を放ち攻撃を加える。一度勢いを失ったガンレオンは弱くなる。その理由として背中で展開していた熊手の様な形をした翼は背中に納まっていた。
「やれやれ…。もう少し粘っていて欲しかったんだけどな」
ダメージでマグナモードが解けたわけじゃない。魔力切れでそうなったわけじゃない。
「…ぜぇっ、ぜぇっ」
ただのスタミナ切れ。呼吸するだけでもきつい状況になるまでアサキムは俺の攻撃を受け流し、いや、遊んでいた。
「獅子の力を五分も使いこなす。普通の人間なら狂ってもおかしくないその力を使い切って見せるその根性も認めてあげるよ」
褒められてもうれしくない。
俺が空から落ちて地面に叩き付けられる姿を黙って見ていたアサキムは俺とホテルのある方角を見ていた。
「…あっちは妨害にあったみたいだね」
「
「まあ、君。いや、僕はもう少し
アサキムは自分の持つ剣を左手で握りつぶすかのように押し付ける。
そして、紫色の液体を滴らせた左手を天に掲げる。
あれは!?やばい!アサキムの大技
「さあ、垣間見るがいい!」
俺はその言葉を聞いてすぐその場を逃げ出そうとした。が、聞いたことのない女の声が響く。
「今だぁああああああっ!!」
[ユニゾンイン!]
体の中に熱した鉄を押し込まれた感触に俺は思わず前のめりに倒れる。
「あぐぅああああああああ!!」
俺は思わず声を上げて自分の胸の所を抑える。
今にも燃え上がる。いや、溶けてしまいそうな高熱に苦しい!
だが、そんなことに構わずアサキムは呆れながらも攻撃を仕掛ける。
(つくづく運が悪いね。タカシ)
俺とアサキムの間に行く獲物の魔方陣。その魔方陣が俺に向かって突き進み、押しつぶそうとする。
それから逃れるために体を起こそうとするが体に入ってきた何かが高熱を帯びて動けない。
『動くんじゃねえ!動けばお前の中から焼き殺す!』
一体何が俺の体に起こっている!?
体の中から声が聞こえる。まるでユニゾンしていた頃のアリシアと状況が似ていた。
だけど、アリシアの時と違って心強さ。応援されている心強さじゃない。脅迫。そして、アサキムによって押しつけられる魔方陣。
「君の中にいる彼女の事を教えてあげるよ!タカシ!」
圧迫していると思われていた魔方陣の中に鳥型に変形したシュロウガ。アサキムが突っ込んでくる。
その魔方陣通過するたんびにシュロウガを包む怪しい紫の光がまとわりつく。
そして、アサキムが押しつぶしている俺にぶつかった瞬間にまるで俺の周囲を呑みこもうとする黒い爆発が起こる。
「優しすぎる『傷だらけの獅子』!君は『白歴史』の礎になる人々を見捨てることは出来るか!」
ズッドオオオオオオオオオオオオォォォォ…。
ガンレオンの装甲を砕く威力ではない静かな爆発。だけど、その威力に装甲は関係ない。
その装甲の意味をなさずに獅子の鎧を通過して俺の脳裏に見たことが無い映像が流れてくる。
その映像を見ているだけで頭が痛く、そして気分が悪くなり、心が痛くなる。
―…私は。私は貴方とは違う!―
―羨ましいな…。欲しかったな…。その『力』…―
―俺達の夢は!?お前は俺達を裏切ったのか!―
―守るって…。言ったのに…。約束したのに!―
―…返せ!***を。…。返せぇええええ!―
―***。…俺は、俺はぁああああ―
―予言は…防げなかった―
燃えて崩れ落ちていくミッドの街並み。
傷ついて涙を流す人々。
泣け叫ぶなのは達。
それはあまりにも精巧な映像で、フィクションだというにはリアル過ぎて…。
今、体に感じている痛みなんかよりも心を痛みがあった。
中でも…。
―あ、ああ。ああああああああ!!旦那っ!旦那ぁああああああああ!!―
『なんだよ!?何なんだよ!この映像はよぉおおおおおおおお!!』
体の中に入り込んだ存在の声が。悲鳴が俺の中で鳴り響く!
その心の悲鳴が俺の心を『傷つけた』。
「がああああああああああああああああああああああああ!!!」
『うああああああああああああああああああああああああ!!!』
見せられた映像から流れ込んでくる『悲しみ』。そして、そこから来る『痛み』が俺の体を支配していった。
リインフォース視点。
「な、何や!?何が起こっているんや!?」
現在、主はやてと我々ヴォルケンリッターは画面に映し出されたスフィアリアクター同士の戦いを見ていた。
タカシがアサキムと交戦している映像が一変した。
アサキムの作り出した魔方陣。アレは攻撃対象を捉える代物じゃない。あれは攻撃を
ガンレオンの装甲に((身体面では傷がついていない。
だけど、タカシの脳波や呼吸は乱れていた。過呼吸を引き起こしている。
『がああああああああああああああああああああああああ!!!』
今まで彼を映し出していた映像にノイズが奔る。
「っ!別のカメラを!他のカメラから映像を!」
主はやての悲鳴じみた指示で六課のスタッフが急いでコントロールパネルを操作すると、高町なのはの持つレイジングハートからの通信が入る。
『こちらスターズ1!状況を教えて!あの黒い卵みたいな物は一体?!』
そこに映し出されたのはタカシがいただろうと思われる場所に突如として現れた謎の球体。
その球体からは観測不能の魔力が観測されていた。
威力が大きいのではない。まるで生き物の集合体の様に細かく変動し、その判断が出来なかった。
『…あ、がぁ、ああああ』
タカシのバイタルが弱まっていくと同時に黒い卵にひびが入るそこから赤い光を纏いながらアサキムが飛び出す。
『もう堕ちているんだよ。…君も。僕も』
と、言いながらアサキムは自分の這い出てきた卵の方に目を向けると、その卵の殻は消失し、そこに残ったのはうつぶせに倒れたガンレオン。そして見たことが無い少女の人形のような物がタカシの傍に転がっていた。
「…あれは。リインと同じ?」
主はやてはその存在に少なからず驚きを示した。だが、私の中にある『悲しみ』のスフィアが悲鳴を上げた。『傷だらけの獅子』にかけられた『鍵』が今にも解けそうになっていたから。
「か、はっ」
「リインフォース。大丈夫か?」
ザフィーラが私の体によりそって支えてくれた。
「だ、大丈夫だ…」
私は胸に走る違和感を隠して答える。が、
―悲しみの乙女。聞こえているんだろう。『傷だらけの獅子』が君を助けながら僕に勝てるとでも思っているのか?―
アサキムがスフィアを通じて話しかけているのか、頭に響くアサキムの声に私が怯えていると。
―彼を助けたければその厄介な封印を解け。さもなくば『傷だらけの獅子』は今、この場で僕に狩られるだろうね―
『レイジングハート!エクセリオンモード!』
『オーライマスター!』
高町の持つレイジングハート、そのセカンドシフト。砲撃特化にした状態でアサキムに砲撃を行う。
アサキムはその攻撃に気づいていたのか余裕を持ってかわす。
アサキムの方は興がそがれたのか私に対しての念話を切って、なのはの砲撃を受けながらもその場から撤退していく。
「高町!タカシの傍に落ちているやつを拾ってくれ!」
『わ、わかった!あの人形?だね』
高町の攻撃が届く寸前にその拘束魔法をかけようとした瞬間だった。
『させん!』
『・・・っ』
ガアンッ!と高町の持つレイジングハートを攻撃されたので画面に一瞬だけどノイズが奔る。
『なにっ?!』
『ガリュー!アギトを拾って離脱しろ!』
『っ』
見慣れない銀色の槍を持った男性がなのはと対峙していた。
『あ、貴方は一体!?』
高町が話しかけようとしたが、昆虫の外郭で包まれたかのような人物は目当ての人形型の何かをもって転移していった。
それを確認したもう片方も戦おうとはせず、力で彼女の体勢を崩すと同時にその場から転移していった。
―今回はここまで。次は君が出てくることを願うよ『悲しみの乙女』。これ以上『傷だらけの獅子』を傷つけたくないというのなら、ね―
銀の槍を持った男が転送してその場から消えると、同時に私の頭の中に響くアサキムの声も消え得た。
「~~~っ!転送先割り出して!絶対に尻尾を掴むんや!」
「「「了解!」」」
悔しそうに顔を歪める主はやての指示を受けてオペレータースタッフの皆が手元のパネルをせわしく動かしているが、恐らく
「…リインフォース。大丈夫か?顔色が悪いぞ?」
「あいつは悲鳴こそ上げたが致命傷は負っていない。だから、安心しろ」
私の顔色を窺ってシグナムやヴィータが話しかける。
私はそれに頷き返すことが出来なかった。
タカシが悲鳴を上げている間。私の中にあった『悲しみの乙女』のスフィアに反応があった。まるで、彼の『痛み』に呼応するかのように。
彼に付けてもらったスフィアの鍵もひびが生じたかのように感じた。
「…ガジェットの全滅を確認。安全ルートを探索。なのはさん!フォワード陣と合流を」
『了解っ』
「高志君!?大丈夫か!」
『…だ、大丈夫だ。少し気分は悪いけど問題無い。悪いけど、俺は一旦ここから離れた所で姿を消しているから…。後、よろしく』
一応、諜報。スパイ活動を行ってきた彼が人目につくのはマズイ。
そう思ったのか主はやてもそれを許可した。
『高志君っ。無茶していない?』
『大丈夫だから、ちびっこ達のところに行ってやれ…』
『…う、うん。絶対無理しちゃ駄目だからね!』
そう言って高町ホテル・アグスタ玄関前へ。タカシは森の中へ姿を消していった。
その姿を見て私は思った。
いや、彼が姿を消した十年前から固めていた意志を主はやてに伝えることにした。
「…一応、終息。て、ことかな?」
「ええ、恐らくは。少なくてもホテル・アグスタが襲撃される恐れはないかと」
「それじゃあ、後は任せるわ。ベッドの上で休んでいるから、何かあったら叩き起こしてええからな」
今の状態でも本当ならベッドの上から出てはいけない。だけど、無理を押して主はやてはこの指令室に立った。
だから、私も答えなければならない。
タカシに。主はやてに。そして、自分自身に。
「「「はい」」」
索敵を行っているスタッフに声をかけてから、六課の指令室から退場している主はやてに私は声をかけた。
「主はやて」
私の呼びかけに主はやては振り返った。
「…先に謝らせてください。申し訳ございません」
「な、なんやリインフォース。あらたまって…」
主はやては私の態度に驚いて少し目を丸くしたが、私は続けて言った。
「本日をもって私。リインフォースをヴォルケンリッターを脱退。主はやての元から離れさせてください」
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第十七話 わかりました!