「幽々子様もそうなそうと言ってくれればそれなりの用意したのに・・・。あの企み癖はもうちょっとどうにかならないかなぁ？」

「お嬢様お出掛けになるなんて一言も言ってなかったのに。困ったものです。」

「お茶やら用意するのはいいけど、それから何も言わずにスキマに放り込むなんてひどいよ。師匠ぉ。」

「こういうのは身内だけにすればいいのに必ずと言っていいほど他の方々を巻き込むのは紫様の悪い所です。全く。」

「物事ハッキリ付けたがる癖になんでかこういう事に乗るかなぁ？まぁ仕事じゃないならいいけどさぁ。」

藍さんの話に拠ると今夜はここに居る主や上司や永遠亭に集まって当主会談とやらをやってるらしい。

ただ、その会談の内容までは藍さんは知らされていないらしい。

一応名目的に

『これからの幻想郷に起きる異変解決に対する妖怪側の対応』

という事らしいがそれすら嘘の可能性があるって言ってた。

というか、主人の言動を疑う式神って藍さん位よね。

そして、当主達が会談やってる最中にその下の人（？）がここに集められたのは

「上は上で話しをしてるから下の者は親睦でも深めてなさい」

って言ったそう。

でもそれも何か裏があるかもと藍さんは付け加えるのを忘れなかった。

つまり本当の事は分からないと。

「わからないなら変に考えるより楽しんだ方がいいんじゃん。酒も差し入れられた事だしさぁ。」

まぁ、それはそうよね。

あ、今のは小町さんのセリフね。

と言うわけで今はもう普通に宴会状態。

そして自然、冒頭にあるような各々の上司への愚痴大会。

・・・・ハッ！！これが目的何じゃぁ！！！

「ね・ねぇ？もしかして愚痴を言わせてそれを盗み聞きして後で脅すなり弱みにするなりの魂胆なんじゃぁ・・・。」

一同喋るのをやめて顔を見合わせる。

が、次いで出てきた言葉は異口同音に

「今更盗み聞きされても普段から言ってる事だし・・・」

だった。

考えてみれば私も言ってたっけ。

ん？てことは逆に敢えてここらで存分に言わせて直接言われないようにする為とか？

ガス抜き的な。

それも言ってみたところ

「それならそれこそ言い放題で構わないじゃん。乗ってあげよう。」

あ、うん、確かにね。

そして再び雑談。

ちなみに今のも小町さんのセリフね。

が、いつしか

「ところで霊夢って結局誰が本命？」

「それより魔理沙はどうなの？」

「どうでもいいけどミスティーをお持ち帰りしたい。」

「この前アリスを後ろから抱き付いてる幽香を見た。」

そして自然と噂話というか所謂コイバナに。

・・・がそっち方面に話しが移った時に酔いが覚めるような感覚。

だって、私と咲夜さんに話しが来るんじゃ無いかとちょっとトキドキ。

知られて無いって事はないよね？

少なくとも藍さんを知っていてもおかしくない。

隠す事じゃないんだけど・・・。

うーん、やっぱり恥ずかしいかなぁ？

いっそ誰か盛大にバラして！！

酔いが覚めると言ったけど、実はそんなに酔ってなかったりするんだけどね。

最近分かったけど、私はお酒に強い方らしい。

以前は幽々子さまとしかお酒飲んだ事がなかったから他の人と比べるような機会が無かったのでわからなかったんだけど。

ちなみに咲夜さんはああ見えて実は弱い。

なので今は結構薄めにしつつ後に残らない様に梅割り。

ちなみにお湯割りなんだけど、猫舌なので温めにしてる。

こうやってみると可愛いよね。

あ、既にほろ酔い状態。

他の面々をというと。

小町さんは酔ってる風だけど、うーん、どうなんだろう？

というか結構濃いめで飲んでるから強いんだろうとは思う。

でも陽気さがいつもと変わらないからよく分からない。

よく分からないと言えば藍さんもだ。

顔に出ないんだよね。この人。

言動に変化ないからまだ大丈夫かな？

うどんげは・・・。

もう酔ってるっぽいかなぁ？

さっきから私に寄りかかってきたり手を回してきたりしてる。

絡み酒ってやつ？

あれ？でもそんなに飲んでたっけ？

私よりもお酒弱いけど、まだそこまでは飲んでないと思うんだけど。

というかなんかさっきから咲夜さんに向ける視線が鋭いような？

初対面ってわけでは無いのに。

もっともこうして面と向かってというのは始めてだからまだ緊張してるのかな？

それにお仕事の時の咲夜さんは厳しい感じがするからそのイメージを持ったままとか？

咲夜さんは怖い人じゃないですよぉ。

まぁその内打ち解けてくるでしょう。

・・・まさかとは思うけど、うどんげも咲夜さんの事を・・・とか？

もしそうならうどんげと言えど譲れないからね！！

そのうどんげ。

他の人の観察やら考え事とかしてたので流れがよく分からないんだけど。

うん、本当にわからないんだけど、なぜか私の話しをしてる。

「そうそう！あの時妖夢ったらさぁ～。」

とか

「それで妖夢が私にね～。」

えーと、何？急に。

とりあえず苦笑いしつつ相づちを打つ私。

そこまではいい、それ以上私の黒歴史を言ったら無理矢理口閉じさせるからな！？

まぁ、黒歴史とは言ってもただの失敗談レベルだし、そもそもそんなにつきあいが長いわけでは無いから割と最近の事なんだけどね。

黒歴史というなら藍さんの方が知ってると思う。

なにせ私が小さい頃から紫様と一緒に白玉楼に来てたし、どうかすると幽々子様と紫様だけで話しをするときは必然的に藍さんと二人きりだしね。

てか面倒を見て貰ったと言った方がいいかも。

その藍さんが参戦してこないか不安になりチラリと見る。

ん？

なんだろう？表情としては苦笑い気味なんだけど、目は寂しそう・・・とも違うな、なんだろ哀れみ？んん？

それもうどんげに対して。

分からないこと多すぎる・・・。

というか咲夜さんはこれに乗じるかのようにうどんげから私の失敗談を聞き出そうとしてる。

今度紅魔館に行ったら美鈴さんから色々聞き出してやる！！

でも現時点で色々聞き出してるのは咲夜さん。

「えー？妖夢てっばそんなことしたのぉ？」

「今度それネタにしよう。」

あー・・・よく分からないけど楽しそうですねぇ。

打ち解けた様で何よりですお二人さん。

とりあえずさっきから妖夢妖夢うるさいです。もぉ！

「うどんげ？その辺にしとかないと私もあの事バラしちゃうよ？」

言われっぱなしもあれなんでわざとらしく意地悪な笑みをしながら言ってみる。

それにつられたのかそれまで”鈴仙”と呼んでいた咲夜さんが

「そうねぇ、うどんげさんのも聞きたいな」

と言った瞬間

「私の事は”鈴仙”と呼んでください！！」

えと、怒る所そこ？

というか私は”うどんげ”って呼んでるけどいいの？

あ、でもそういえば永遠亭の人以外はみんな”鈴仙”って呼んでるなぁ。

何かあるのかな？

突然の大声（と言うほどないけど）で一瞬空気が固まる。

言われた咲夜さんは苦笑いして謝る。

思わず出てしまった大声に自分でも驚いたのか慌てて取り繕うとするうどんげ。

「あ、ご・ごめんね。急に大声出して。ちょっと酔いが回ってきたのかなぁ？ははははは」

「えーと、そういう訳で飲もうよ？ね！？」

何がそういう訳か分からないけど、この場を空気を誤魔化そうと手近にあったグラスを手に一気に飲み干す。

「それあたいの！！」

実はそれは小町さんのだった。

しかしその制止は遅く、すでにグラスに入ってたお酒は消えていた。

と同時にうどんげの表情が凍り付き・・・

コテン

静かに倒れた。

「あーあ・・・、あたいさっきからストレートで飲んでたのよねぇ。それを一気だものねぇ。」

呆れるように言いながらうどんげの顔を覗き込む。

次いで私もうどんげの様子を見るために覗き込む。

どうやらそのまま寝てしまったようだ。

このまま寝かせておこうという暗黙の了解的な空気が流れ、隣の部屋に移した。

あ、とりあえずブレザーとスカートだけは脱がした。

さて、私の黒歴史を吹聴するような酔っ払いは消えたことだしまったりと飲みましょう。

にしてもうどんげはなんであんな事言い始めたのかなぁ？

「さーて、うるさくなりそうなのが居なくなった所で・・・。お二人さんの事を詳しく聞かせて貰いましょうかね。

なに、酒の肴にするだけだ。気にしなさんな。」

仕切り直しっと思ってるところへ今度は小町さんからの攻撃が始まった。

とりあえず、そのニヤニヤ顔がなんかアレです。

って、今日は私ばっかり絡まれてない？

その後しどろもどろになる私と嬉しそうに話す咲夜さんの姿があった。