EP14 公輝と雫の過去
和人Side
あの修行の日々から3週間が経過し、夏休みも大詰めとなっている。
奈良から帰ってきた2日後にスグは剣道の大会に出場、地区大会を制覇し、全国大会にて3位に入賞するという成績を叩きだした。
全国優勝こそ逃したものの彼女自身はかなり満足そうだった。
それに公輝と雫さんは『高等学校卒業程度認定試験』を受けた結果、見事に合格したそうである。
1発合格する辺りはさすがの2人といえよう。
そしてもう1つ、俺は『バイク免許の一発試験』を受けてその名の通り1発で合格してみせた。
これによって『普通二輪免許』を取得し、エギルの伝手を使って中古のバイクを購入した。
今の時代ではかなり珍しいガソリン仕様であるが俺自身はこれを気に入っている。
環境に悪いとか音が煩いとか思う奴が多いと思うけれど、俺はコイツを気に入っているので手放すつもりはない。
そういえば明日奈もコイツのことを気に入っていたな……そこは似た者夫婦、もとい似た者カップルということだろう。
とまぁここら辺がその3週間の間にあったことだ。
そして、今日の俺達はエギルの店である『Dicey Cafe』を貸し切ってオフ会を行うことになった。
「直葉ちゃん凄いね! まさか全国大会で3位に入るなんて♪」
「和人や志郎から聞いた時はホントに驚いたわよ」
「ありがとう、珪子ちゃん、里香さん!」
「これも師匠の指導のお陰っすね」
「だな」
珪子と里香の賛辞と驚愕の言葉に素直に礼を言うスグ、刻と志郎はあの修行の様子を思いながらかそう言った。
確かに高校入学1年目にして、最初の大きな大会でいきなり全国3位という成績を収めたのは凄いとしか言いようがない。
まぁ師匠に一対一で剣道の稽古を付けられているし、元々の彼女自身の努力と才覚があれば可能とも言える。
「公輝さんと雫さんもおめでとうございます」
「『高認』、受かって良かったですね」
「ありがとうございます、明日奈さん、
「ありがとな!」
「……ふっ、2人なら余裕だったんじゃないのか?」
「僕もそう思います」
明日奈と幸からの祝いの言葉に感謝を述べる雫さんと公輝、景一は笑みを浮かべながら言い、烈弥も笑顔でそれに同意する。
まぁ40%程度の正解率でも合格が可能だったりするのだが、この2人は普通に70~80%くらいで正解できたのだろう。
「俺としては和人があのバイクの一発試験を受けてそのままの意味で1発合格したことに驚いたよ、やっぱりとも思ったけど(苦笑)」
「それは俺も思ったわ」
「「「同感(笑)」」」
「どう意味だよ…」
俺は彼らの様子に呆れるしかない。
確かにそれほど難しいとは言えない試験だがほんの少しのミスで減点されるし、
持ち点100が70点を下回った瞬間に不合格になるという意外とシビアなものだ…85点は残したけれども。
「あぁ、そうだ……エギル。バイクの件、ありがとう」
「紹介しておいた俺が言うのも難だが、本当にあのバイクで良かったのか?」
「そういえばそうよね。和人君ならもう少し良いのが買えたんじゃないの?」
エギルに礼を伝えると、彼に良かったのかと訊ねられ、奏さんにもそう聞かれた。
「構わない。ガソリンタイプのバイクは珍しいけど、折角のバイクなんだ。やっぱりあのタイプのものに惹かれる」
「そうか、なら紹介した俺も一安心だ」
今時ではほとんどが電池式の車やバイクになっており、環境に良く、音が煩くないなどの利点に溢れている。
けれど俺はあのエンジン気筒の音などが好きだ、だからこそあのバイクに決めたわけである。
「ま、なにはともあれ……直葉ちゃんの全国3位、公輝と雫さんの高認合格、和人の免許取得を祝って、乾杯!」
「「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」」
オフ会の一時はやはり楽しく、各自で飲食しながら雑談をしたり、ゲームでのイベントやクエストなどに関して話をしている。
ここに来ているほとんどが学生なので、皆もう少しで夏休みが終わることを惜しんでいるようだ。
現に何人かは「もう少しで学校か~…」などと言って溜め息を吐いている、俺は別にいまの学校に不満は特にないので問題無いが。
そんな時だった、公輝はみんなが見渡せる場所に立った、そして…。
「みんなに報告があるんだ、実は……俺と雫の婚約が正式に決まったぜ!」
―――ブフゥーーーーー!!!
「「「「「「「「「「げほっ、げほっ!(けほっ、けほっ!)」」」」」」」」」」
黒衣衆を除く男性陣は一斉に
明日奈の前にいた俺、里香の前の志郎、珪子の前の烈弥、スグの前の刻、幸の前の京太郎は顔面が濡れてしまった。
「「「「「……………(ポタポタ)」」」」」
取り敢えず、タオルで拭こう…。明日奈が口に含んだものなので少しだけ舐めとったのは内緒だ。
そしてエギルが用意してくれたタオルで頭を拭き、一同が落ち着いたところで話を再開する。
「それにしても本当にいきなりだな…」
「御盆の最中に正式に決まってな。このオフ会の時に報告しようと思ったんだ」
「驚かせてごめんなさいね♪」
苦笑しながら言った俺に答える公輝と雫さん、明らかに反応を楽しんでいるだろ。
そんな2人に呆れながらも、女性陣は婚約という言葉に色めき立っている。
「良かったら公輝さんと雫さんの馴れ初め、聞かせてもらえませんか?」
「あ、わたしも気になるかも」
里香の質問に明日奈も同意し、黒衣衆とスグを除く面々も興味深そうだ。
それに対して俺達はどうしたものかと苦笑して顔を見合わせる。
正直、話していいものなのかと思うが…。
「よっしゃ、なら話すとしますか」
「ふふ、そうですね」
「いいのか、公輝?」
「雫さんも…」
公輝と雫さんは話す気満々な様子であり、志郎とスグは呆気に取られたように2人に対し呟く。
「みなさんになら知っておいてもらってもいいでしょう」
「そういうことだ」
まぁ2人が良いと言うのなら大丈夫か…。
「それじゃあ…俺と雫の馴れ初め話、語らせてもらうぜ」
そうして、公輝と雫さんが3年前の4月から語り始めた。
和人Side Out
――3年前
公輝Side
「んじゃ、いってきま~す」
「いってらっしゃい」
「気を付けていくんだぞ」
今日は高校の入学式、お袋と親父に声を掛けてから学校へと向かう。
駅を目指して歩き、駅にあるバス停からバスに乗る。
俺のように真新しい制服に身を包んで緊張したような面持ちでいる生徒、
ある程度使った痕跡のある制服に身を包んでいるのは在校生だろう。
高校近くのバス停で停まり、そこから5分程歩けば学校へと辿り着いた。
学校は中高一貫の学園で、校門近くにいる教師の案内に従って体育館へと移動する。
それから入学式が始まり、結構長い校長の話が終わってから各自の教室へと移動……そんな時だった、周囲が少しざわめいている。
何事かと思って辺りを見回すと…。
「お…?」
なんとも美人な女子が2人、1人は濃い栗色に少し長めの髪と薄めの茶色の瞳を持ち、柔らかい空気を纏っている。
もう1人は艶のあるショートカットの黒髪と薄めで黒色の瞳を持ち、少し凛々しい空気を纏っている。
同じ年齢とは思えないくらいの美少女だな~。
「ま、俺には関係ないか!」
俺はさっさと教室に向かうことにした。
教室での自己紹介や学校説明が終わり、授業は明日からということで今日は下校ということになった……のだが、
例の美少女2人が男子生徒4人に絡まれている。
「折角の高校生活1日目だってのに、浮かれ過ぎなんじゃねぇのか?」
校庭とはいえさすがに校内なので俺が介入するのも不味いことになりかねない。
他の生徒が教師を呼びに行ったので様子を見ておくだけにするか、そう思った時。
「朝霧さんと井藤さん、大丈夫かなぁ…?」
「少ししつこそうだもんね…」
「男子が先生呼びに行ったけど…」
朝霧って……まさか、な…。だけど、もしもの可能性を考えるとなると…。
「あの子、朝霧さんって言うんだよな? もしかして、どっかのお嬢様とか?」
「え、う、うん…。多分だけど、お嬢様とかだと思うよ。物腰とか落ち着きとか…」
俺は近くに居た女子に聞いて
通りで学校に着いた辺りから
和人程じゃねぇけど、俺にだって多少強い人間の分別くらいはできる。
それらを考えると学校の周りに感じたのは…。
「ったく、止めるしかねぇよな…」
「あっ、ちょっと!?」
呟きながら美少女2人と絡む男子4人の元へ歩く俺に女子生徒が制止の声を掛けるが無視して進む。
間に入り込んだ俺は一言彼らに告げる。
「はいはい、そこら辺で終わりにしとけよ……
公輝Side Out
To be continued……
後書きです。
まずは直葉が全国大会で3位、まぁ八雲さんに鍛えられたらこれくらいなってもおかしくないと思いましたw
公輝と雫も『高認』を合格、和人も『一発試験』でバイクの免許を取得ですw
そしてオフ会で公輝からの重大発表となり、そこから公輝と雫の過去編へとなった今回の話し。
さてさて、一体どんな話になるのやら……是非、あとの話しをお楽しみに♪
それでは・・・。
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EP14です。
今回から「公輝&雫馴れ初め編」になります、果たして2人が出会い恋に落ちた経緯とは・・・?
どうぞ・・・。